装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

612 妾の百鬼夜行は無敵よ、無敵 バァーン

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「よし、とにかく勇者を連れて帰ろう」

 完全に倒したかの確認をする前に。
 勇者たちが昏倒している間に連れて帰ることにする。

 従魔をたくさん抱えているところを見せたくないのだ。
 嘘ついてただろ、とか面倒臭いことになりかねない。
 何も知らないまま、ダンジョン目指してくれ。

「あと、一応アドラーにもこの件は説明しておくか」

「再召喚したクロイツの王ね?」

「うん」

 イグニールの声に頷いておく。
 魔国との外交上の問題が収まるまで、勇者は待機だ。
 そんな感じでずっとクロイツ内で飼っといてもらう。

 大義名分はあるぞ。
 恨みを抱えるであろう一般市民なら話はわかる。
 しかし、軍部の中にそんなのがいるのはダメだ。

 先に進むのは各国の意見がしっかりまとまってからである。
 この辺の責任はアドラーを通して魔国に請求するのだよ。

「むむむ、ひどい目に遭いましたぞ~」

 例によって、骨はピンピンとしたまま復活する。
 バラバラバキバキから、いつの間にかしっかり骨格標本状態だ。
 それもそれで中々にキモいと素で思った。

「本当に生きてるわね」

「冷静なご指摘どうもですぞ~」

 イグニールに敬礼で返した骨は続ける。

「それにしても、あの一撃でやられないとは、軍師も中々のたまですな~」

「なに?」

 まるでまだ終わっていないとも取れる言葉。
 ロイ様が鋭い視線を壁に開いた大穴に向けた瞬間、壁の奥から軍師が現れた。
 額から血を流しながらも、気絶した部下を引きずって平気そうな表情。
 先ほどまでは何も無かった額には、2本の小さな角が生えていた。

「クソどもめ……これほどのダメージを負ったのは久しぶりかのう」

「あれを食らってよく生きているな」

 すぐにロイ様が俺たちの目の前に立ってくれる。
 心強い。
 ロイ様の言葉に、口に溜まった血を吐き出しながら軍師は答えた。

「妾は鬼じゃぞ? 耐久力、体力、ともに人の限界を遥かに超えておる」

 加えて、とセリフを続ける。

「巫女、故に、魔力も鬼族の中では随一のエリートじゃ」

「つまり、その辺のオーガとが違うと言いたいのか?」

「抜かせスライムの上位種、魔物と比べてくれるなよ」

「魔物の濃い因子を持った人間、魔族。その中でも貴様はかなり我ら寄りとも思えるが?」

「ふん、オーガを超えた鬼族のさらに鬼神にも匹敵するほどの力を持つのが……妾じゃ」

 そんな会話を聞きながら、ふと思った。
 魔族ってなんだろう。
 少し違う人間、亜人の様なものなのかな?
 だったら猫耳の女の子とかもいる?

 この世界に来て、ファンタジーにありがちな獣人にはまだ会っていない。
 夢が膨らむね。

「どれ仕返しじゃ。先手必勝、妾の命を取り損ねたことで貴様らの勝ちの目は潰えたぞ──地鬼召喚」

 その言葉とともに、目にも留まらぬ速さで軍師の足元に展開した魔法陣。
 中から3体、ズズズと着物をまとった白髪一つ目の女鬼が姿を現した。

「金魚の糞かと思いきや、貴様も従魔召喚が得意かの? ふふ、妾もじゃ──夜叉丸、双子天狗」

「おいおい、マジか」

「──羅刹、邪鬼、霊鬼、般若、式鬼、獄卒共──全部、全部じゃ、全て集えや鬼子たちよ」

 召喚魔法陣から次々と姿を表す多種多様の鬼たち。
 大きさもでかいのから小鳥の様な小さなものまで。

 どんだけ鬼の魔物いるんだよ、やばいだろ。
 まさに百鬼夜行と言っても過言ではない数の鬼。
 ロイ様が本気で王室諸君を呼び出した時以上の数の暴力が目の前に集っていた。

「ッ……」

「狼狽えるな盟主よ、これだけの召喚は魔力を大量に使うものだ」

「う、うん」

「故に、召喚主にはかなりの負荷がかかる。私はノーリスクだがな」

 この状況を前にして、そんなセリフを吐くロイ様。
 スライムの王種って、だいたいこういう時っていつも張り合うよな。
 しかし、本体に負荷がかかるならば、そこを突けば良いだけである。
 召喚を武器にして戦う相手は、召喚主本体を叩くのが一番良い。
 俺も過去にそうやって、何度も狙われて来たんだからよく知っている。

「私が再び特攻をかけて周りを蹴散らす。その時に全員で女を叩け」

「了か──」

「──鬼神石召喚」

 ロイ様の指示を聞いて、生唾を飲んで構えた時だった。
 今度は空中に魔法陣が出現して、次は鬼の足ではなく大岩が降って来る。

「おわっ!?」

 しめ縄の様な物が括り付けられた巨大な岩が、床にズゴンとめり込んだ。 

「たわけ、召喚を武器にする者がそこの対策を怠ると思うかの?」

「……つまりなんだよ? さっきから言ってる意味がわかんねーよ」

「残念ながら、そこのスライムと同じ様に妾もノーリスクじゃ」

 鬼神石と言われて巨大な岩から、ズオオオオッと灰色の領域的なものが形成される。
 まるでキングさんの水柱の威力をだいぶ薄めたもの中にいるような感覚だった。

「──ォォォオオオオオオオ!」

「──キァァァアアアアアア!」

 その中で鬼たちが一斉に叫び声をあげる。

「ふふふ、この鬼神石は、妾と鬼どもの使った魔力に呼応し、領域を拡大する」

「……で? それだけ?」

 見るからにやばそうだが、精一杯の強がりを見せる。

「ふくくく、それだけだったらよかったのう?」

 俺の強がりはお見通しだったのか。
 軍師はクツクツと笑いながら言う。

「領域内では体力と魔力の枯渇はない。さらに膂力上昇、行動速度倍加、妾と鬼以外の行動鈍化、回復阻害。ふふ、この範囲内におるだけでも、雑魚はダメージを受け死に至る禁忌にも近い領域じゃ……貴様らは良いとして、虫の息にまで痛めつけたカス勇者は耐え切れるかのう?」

「……チッ、そういう感じか」

 グループに入れてある勇者たちのHPが、みるみるうちに削られていた。
 言ってることは、どうやら本当のようである。

 非常に厄介な攻撃。
 しかも、まだあと一つバインドを残してあるんだよな、こいつ。
 さすがは軍師と呼ばれる立場なだけある。

 こいつがラスボスか?
 ボーナスステージくれた魔王よりも凶悪なスキルのに思えた。

「ほれ、どうする? どうするんじゃ? 早う動かねば、先に勇者が死ぬぞ?」

「くそっ」

「守るべき者がおると難儀じゃのう? 難儀じゃのう? うふふふふふふふ」

 この鬼神石の領域の範囲外に勇者たちを連れ出して避難する。
 それが一番良い方法だと思うが……。

 どうする?
 壁をぶち抜いて勇者たちをワシタカくんに輸送してもらうか?
 行けるか?
 こっちにはデバフましまし、相手にはバフもりもり。
 焦ってなかなか思考がまとまらなかった。

「落ち着いてトウジ」

 その時、イグニールがツカツカと歩いて、焦る俺の前に出た。

「向こうが召喚には召喚で来るなら、こっちも領域系には領域系でしょ?」

「は?」

「──豪炎の円陣」

 イグニールがそう呟いた瞬間のことである。

 ボッ──ゴオオオオオオオオオオ!!

 彼女を起点に魔法陣が展開し豪炎が俺たちを取り囲んだ。
 とんでもない豪炎に、この場が全て飲み込まれる。

「膂力上昇、行動速度倍加、行動鈍化、回復阻害? 洒落臭いわね──」

「なんじゃと? 貴様、そんな中級クラスの火属性魔法ごときで何ができる?」

「──こっちはINT7万弱の魔力を全てつぎ込んだ炎の渦、そして爆発よ」

 イグニールがそう言ったコンマ数秒後……炎が大爆発を巻き起こす。
 俺たちを取り囲んでいた百鬼夜行が、軒並み消し飛んだ。

 ……勇者たちも。






=====
イグニール「最近こういう出番無かったわよね~、ちょっとイラっとしてたし、スッキリ~」
トウジ(……逆らわないようにしよう)
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