装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

文字の大きさ
上 下
340 / 682
本編

609 俺、魔王倒しちゃってました?

しおりを挟む

 勇者の元へ向かう道すがら、コレクトが地図を発見した。
 施設案内の様なものである。

 俺が施設内をマップ登録できたら良いのにな、と思った矢先。
 やはり、何かを探すという直感において、コレクトは強い。

「出来した」

「クエ」

 さっそく地図を読み取り、マップ機能に登録した。
 ふむふむ、この場所は施設というより軍師の邸宅。
 俺らをバインドした奴の家ということだった。

 アドラーから事前に渡されていた魔国の地図でいうと北の方。
 魔国へ渡るためには、どうしても避けては通れない場所だな。

 俺が閉じ込められていたのは別棟地下にある牢屋。
 勇者たちが表示されている場所は、地上の大きな建物。
 距離はそこまで遠くないから、あっさりと着きそうだ。

「つーか、よくここまでこれたな……」

 マップを見ながら改めてそう思う。

「ウィンストが乗せてきてくれたのか?」

 ギリスからクロイツまでの距離。
 陸路じゃひと月以上は絶対にかかってしまう。
 俺が再召喚されて、約半月くらいか?
 いや、眠っていた期間も含めるともっと経つのか。
 それでも1ヶ月は経過していないぞ。 

「ううん、ウィンストはトガルの守護だから来てないわね」

 イグニールは首を横に振りながらいう。

「ここまでこの早さで来れた理由は、飛空船よ」

「飛空船?」

「トウジが想像してる様な大きなものじゃないけどね」

 どうやら、俺がいなくなってから飛空船の運行実験があったそうだ。
 この間見た様な小型船舶の様なものでの飛行実験。
 それに便乗する形で、イグニールたちはここまで来たらしい。

「よく来れたな……」

「多少トラブルはあったけど、実験はとりあえず成功ね」

 現に彼女たちがここにいるのだから、そりゃそうである。
 オスローの着手していた飛空船は、無事実験を終えたそうだ。

「でも船壊れちゃったし、オスローカンカンに怒ってたし」

「え? オスローも来てるの?」

「うん、オカロも来てるよ。森に隠した船を頑張って直してるところだし!」

 操船できる人ともなれば、あの二人しかいない。
 だからついて来るのも物の通りってやつか。

 想定外の長距離飛行によって、飛空船の推進器がいかれてしまったらしい。
 ヒヒイロカネのコアと竜樹を使った船体は無事だが、他が保たなかったそうだ。

 なるほどねえ……。
 推進器の部分もヒヒイロカネに変えれば良いじゃないかな。
 俺のインベントリとか、ヒヒイロカネも1000個単位あるし。
 帰ったら渡そう。

「つーか、二人残して来て大丈夫なのか?」

「トウジを見つけたらすぐ戻る予定だったから」

「なるほど」

 だったら、勇者の元に大所帯で行くのもあれだ。
 俺は一度ゴレオを戻してロイ様を召喚した。

「ふむ、図鑑の中からだと、かなり久しぶりの顔ぶれだな」

「そうだな。話は聞いてたと思うけど、頼む」

「良かろう。王室諸君全員であの親子を守護しよう」

 召喚していたポチたち以外は、精神世界を共にしていた訳だ。
 それ故のセリフだろう。
 何にせよ、全て分かっているならば話は早いので任す。

「私本体は盟主の元にいても良いか?」

「え? うん、良いけど」

 王室の仲良し連中がいれば、雑魚相手だったら余裕だろうしね。
 数の暴力はえげつないのだ。

「私も少しだけ気がかりなことがあってな、それを確かめる」

「気がかり?」

「盟主は力の源の中で、リソースをほとんど消滅させた」

「あっうん」

 散々荒らし回ったりしたことね。
 それがどうしたのだろうか。

「そして、怨嗟の鎖のモースと同じ様に、瓶の中に隔離した」

「これか」

 懐に入れていた小瓶を取り出すと、ジュノーが言った。

「あっ! パンケーキの元!」

「いや、違うんだが……」

 まあいいか。
 どうせ苦痛のカンカンをジュノーにやらせる訳だし。
 ちなみに幸せ攻撃が効くかはわからないので、他の精神異常系も試す。
 この概念体は、恋、快感、怒り、不快などの感情系異常攻撃の的だ。

「……話の腰を折る様だけど。魔王の力がどうしたのかしら?」

「ああ、俺が再召喚された前提なんだけど……」

 と、いう感じで早歩きしながらみんなに説明した。
 呼ばれた理由、役割。
 魔王の力に洗脳攻撃受けて骨が守っていたこと。
 その後、精神世界に呼ばれて邪竜にボコってもらったこと。

「……に、俄かには信じがたいですが……トウジ様の魂に変なのがいないところを見るに、真実ですぞぉ……」

 イグニールたちは、そんなことやってたんか的な目をするが、骨は大口を開けて驚いていた。
 この反応もなかなかに久しぶりって感じである。

「まっ、力の源。通称ゲンさんはコテンパンにして封じたから俺は安心だ」

「……トウジ、これって魔王倒しちゃったってことじゃないの?」

 イグニールの素朴な疑問。
 た、確かに……。
 ある意味倒したと言っても過言ではないのかもしれない。

 マジか……。
 知らんうちに勇者の役目も奪い去ってしまってたのか?

 いや、そもそも実質これで倒せたのかはわからん。
 単純に俺の目の届くところに置いたって訳なのだ。
 消し去ることはできないが、それは抑止力となる。
 そこを切り取って考えると、倒したと言って良い。

「とにかく、その話は後にして私の話を聞いてくれ盟主」

「うん。なんですかロイ様」

「力の源が封じ込められた。だったら勇者の中にあるものはどうなる?」

「……わからん」

 どうなるんだろう。
 単純に考えて、勇者弱くなるってことで良いのでは?
 魔王の力が弱まれば、それはただの勇者だ。
 良いことじゃん。

「勇者たちを連れ去ったあの女は、勇者の中にある魔王の力を増幅させる気だ」

「どうやって」

「それは知らんが、主が気絶する直前傀儡とかそんなことを言っていたから、何かしらの策があると言える」

「うん……」

「そこで、力の源を大きく削いだということは、勇者たちの中にあるものも自ずと弱まる」

 ロイ様は言う。

「使い物にならないという烙印を押されたら、魔国の敵である勇者はどうなる」

「……そりゃ」

 魔国の保守的な立場の人間だったら、拘束している間に殺す。
 絶対にそうする。
 んで、事故だったという体裁をとって遺体を返せばいい。
 いやむしろそのままどっかで朽ちても、この世界じゃ普通だ。

「不味いな」

「急ぐべきだ。さらに王室諸君と思念会議した結果」

「結果?」

「勇者もただでは殺されないだろうという結論になった」

「うん?」

「魔王と同じ様に、力の源というものが必ず存在するとしたら──ヤバイと」

 仲良し諸君、会議の結論がかなりふわっとしてるぞ。
 でも、あながちその回答は間違いではないのかもしれない。







=====
其の者は黒き衣をまといて、大量の従魔を従え、一撃では絶対に死なず、魔物の力を利用して死んでも帳消しになり、爆速で空を飛び、ダンジョンを持ち、邪竜と共に荒地の野に降り立ったものなり。(トウジ)
しおりを挟む
感想 9,834

あなたにおすすめの小説

無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~

鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!  詳細は近況ボードに載せていきます! 「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」 特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。 しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。 バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて―― こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

スキルを得られない特殊体質の少年。祠を直したらユニークスキルもらえた(なんで??)

屯神 焔
ファンタジー
 魔法が存在し、魔物が跋扈し、人々が剣を磨き戦う世界、『ミリオン』  この世界では自身の強さ、もしくは弱さを知られる『ステータス』が存在する。  そして、どんな人でも、亜人でも、動物でも、魔物でも、生まれつきスキルを授かる。  それは、平凡か希少か、1つか2つ以上か、そういった差はあれ不変の理だ。  しかし、この物語の主人公、ギル・フィオネットは、スキルを授からなかった。  正確には、どんなスキルも得られない体質だったのだ。  そんな彼は、田舎の小さな村で生まれ暮らしていた。  スキルを得られない体質の彼を、村は温かく迎え・・・はしなかった。  迫害はしなかったが、かといって歓迎もしなかった。  父親は彼の体質を知るや否や雲隠れし、母は長年の無理がたたり病気で亡くなった。  一人残された彼は、安い賃金で雑用をこなし、その日暮らしを続けていた。  そんな彼の唯一の日課は、村のはずれにある古びた小さな祠の掃除である。  毎日毎日、少しずつ、汚れをふき取り、欠けてしまった所を何とか直した。  そんなある日。  『ありがとう。君のおかげで私はここに取り残されずに済んだ。これは、せめてものお礼だ。君の好きなようにしてくれてかまわない。本当に、今までありがとう。』  「・・・・・・え?」  祠に宿っていた、太古の時代を支配していた古代龍が、感謝の言葉と祠とともに消えていった。  「祠が消えた?」  彼は、朝起きたばかりで寝ぼけていたため、最後の「ありがとう」しか聞こえていなかった。  「ま、いっか。」  この日から、彼の生活は一変する。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

【完結】魔物をテイムしたので忌み子と呼ばれ一族から追放された最弱テイマー~今頃、お前の力が必要だと言われても魔王の息子になったのでもう遅い~

柊彼方
ファンタジー
「一族から出ていけ!」「お前は忌み子だ! 俺たちの子じゃない!」  テイマーのエリート一族に生まれた俺は一族の中で最弱だった。  この一族は十二歳になると獣と契約を交わさないといけない。  誰にも期待されていなかった俺は自分で獣を見つけて契約を交わすことに成功した。  しかし、一族のみんなに見せるとそれは『獣』ではなく『魔物』だった。  その瞬間俺は全ての関係を失い、一族、そして村から追放され、野原に捨てられてしまう。  だが、急な展開過ぎて追いつけなくなった俺は最初は夢だと思って行動することに。 「やっと来たか勇者! …………ん、子供?」 「貴方がマオウさんですね! これからお世話になります!」  これは魔物、魔族、そして魔王と一緒に暮らし、いずれ世界最強のテイマー、冒険者として名をとどろかせる俺の物語 2月28日HOTランキング9位! 3月1日HOTランキング6位! 本当にありがとうございます!

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

ハイエルフの幼女は異世界をまったりと過ごしていく ~それを助ける過保護な転移者~

まぁ
ファンタジー
事故で亡くなった日本人、黒野大河はクロノとして異世界転移するはめに。 よし、神様からチートの力をもらって、無双だ!!! ではなく、神様の世界で厳しい修行の末に力を手に入れやっとのことで異世界転移。 目的もない異世界生活だがすぐにハイエルフの幼女とであう。 なぜか、その子が気になり世話をすることに。 神様と修行した力でこっそり無双、もらった力で快適生活を。 邪神あり勇者あり冒険者あり迷宮もありの世界を幼女とポチ(犬?)で駆け抜けます。 PS 2/12 1章を書き上げました。あとは手直しをして終わりです。 とりあえず、この1章でメインストーリーはほぼ8割終わる予定です。 伸ばそうと思えば、5割程度終了といったとこでしょうか。 2章からはまったりと?、自由に異世界を生活していきます。        以前書いたことのある話で戦闘が面白かったと感想をもらいましたので、 1章最後は戦闘を長めに書いてみました。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。