装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

574 八大迷宮のダンジョンコア。才能ある引きこもり。

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「まず、お前が知らない大迷宮の主を上げておく」

 スローフの口から、俺が知らない大迷宮の主の名前が告げられる。
 デプリの東に存在する、奈落墓標の虚飾のバニティ。
 魔国のどこかに存在する、夢幻楼街の色欲のラスト。
 海を越えた南方に存在する、魂枯砂漠の強欲のグリード。

 その他にも、一応知っている部分でもおさらい。
 極彩諸島の怠惰のスローフ。(トガル北西の島々)
 断崖凍土の憤怒のヒューリー。(ギリスとノルトの境目の北海)
 深淵樹海の暴食のグルーリング。(ストリアと魔国の国境)
 天海深塔の憂鬱のメランコリー。(南東、陸地の中の海と呼ばれる場所)
 天界神塔の傲慢のアローガンス。(タリアスの首都)

 こんな形だ。
 こうして並ぶと、中二病感が加速した気がする。

「他にもダンジョンコアはこの世界にごまんといるが、特に名高いのはこの八つ」

 彼らが、平定者と呼ばれる遥か昔に世を正した存在。
 厄災と呼ばれるナニかを鎮め、世界に平穏をもたらした。

「他のダンジョンコアと違う点って、ありますか?」

「文字通り、格が違うなー」

「ダンジョンをどんどん巨大化すれば、いずれは特殊な立ち位置になると……?」

「いや、そういう訳ではない。……が、そういうことでもある」

「……?」

 トンチが効いた回答が来たのだが、どう察すれば良いのやら。
 それぞれポジションが開けば、引き継がれるとでも言うのか?
 尋ねると、スローフは言う。

「もともとが、こうなる運命だったと言えば良いのかー?」

「はあ……」

「要するに、みんながみんなダメな才能持ちだったってこと」

「なるほど……」

 乱世に英雄が生まれるように。
 英傑、豪傑、その他諸々の才能を持った個が出るが如く。
 彼らは至るべくして、ダンジョンコアへと至ったそうだ。
 つまり、言い換えると最強の引きこもり。
 今は色々とその中身が時代とともに変容しているが、根底は変わらないとのこと。

「グルーリングみたいに抗う奴もいれば、好き放題する奴もいる」

「スローフさんが良い例ですね」

「そのとーり! でも俺は中でも無害な方だぞ」

 カリプソのお尻にを触って、ふとももの匂いを嗅ぎながら彼は続ける。

「バニティは、隙あらば殺してくるし」

「殺……」

「グリードも、隙あらば奪ってくるし」

「ころ……」

「ラストなんか、洗脳されて一生労働奴隷か、性奴隷」

「ひえ……」

「今までお近づきになって来た相手が悪い奴じゃなくてよかったなー?」

「そうっすね」

 たまたまなのかもしれないが、九死に一生を得たような気分だ。

「断崖凍土のヒューリーだって、起きてて怒りを買えば余波で死ぬぞ」

「……」

「天界神塔のアローガンスはまだマシだが、強すぎて並の者なら余波で死ぬ」

「そ、そっすか……」

 それだけの才覚を持った奴らがダンジョンコアとして永遠を生きる。
 つまりは、老いることなくずーっとずーっとレベルが上がり続けるのだ。
 ある程度は停滞するかもしれないけど、経年とともに強くなる。
 控えめに言ってもやばいと思った。

「まあ、憤怒と傲慢はまだこっちから何かしなければ安全なタイプだ」

「ふむふむ」

「それぞれの能力も教えておきたいところだが、聞く?」

「できれば教えてほしいですね」

「でも多分聞いたら何かの因果関係に巻き込まれると思うぞ?」

「……」

 それはちょっと嫌だなと思ってしまった。
 スローフは言う。
 知ると言うことは、関わることに同義だと。
 世の中、知らない方が幸せなこともあるのだと。

 確かにそうだ。
 知らないこと、すなわち存在しないもの。
 人間、そのくらいに留めておく方が良いのだ。

「主様、つまりお前は知り過ぎた……ってされるの?」

「そうそう。なんかよくわからんけど、この世界って謎の力が働いてるからね?」

「ぁん、あんまり揉まないでよ。で、スローフ、その謎の力ってなんなのかしらー?」

「俺も知らん。詳しく知ろうとも思わん。けどそう言うもんだと覚えておくと良いぞー」

「な、なるほど……」

 なんとも気軽な雰囲気でそう言うが、心当たりはある。
 因果応報って恐ろしいよな、常々俺はそう思って来た。
 つまり、お天道様は見ているんだよ。
 誰が俺たちをこの世界に呼び込んだかを考えれば一目瞭然。
 次元を超えるほどの力を持った何かが、確かに存在するってことだ。

「ちなみに、そんなやばいダンジョンを勇者は攻略しようとしてますけど……」

 とりあえず、能力の話はさらっと流してそっちに話題を変える。

「ああ、なんかしてるっぽいな?」

「スローフさんから見て、攻略できそうですか……?」

「基本的には無理だけど、勇者ならいける可能性を持つ」

「な、なるほど」

 勇者すげー。

「ポテンシャルっていうよりも、何か別の力が働くもんなのさー」

「別の力……」

「それに他の何かが突き動かすことだってあるぞ。勇者を利用しようとする悪党なんてごまんといるから」

「ああ……」

 デプリとかそうだな。
 教団とかも、傀儡にしようと画策していたくらいなんだから。
 腕輪はぶっ壊して偽装しておいたけど。
 果たしてそれで勇者たちの命運がどう変わったのかは知らない。

「で、もし一つのダンジョンが崩壊するとするだろう?」

「はい」

「それは……そうなってみないとわからないってのが、一つの答えだ」

「わからない、ですか」

「うん。今までそんなことは一度もなかった」

 ダンジョンは人間にとって敵だ、という立ち位置になっている。
 しかし、平定者である八人を倒せる奴は今までいなかった。

「奥までこれる奴もいるぞ。でも基本、俺たちには勝てないし、その在り方を知って意見を変える者が多い」

 それが、過去の賢者や勇者だったと言う。
 なんとなく、邪竜を倒した件につながってくるな、この辺り。

「しかし、長い時が立った」

 スローフは言う。

「俺はそろそろバニティあたりが何か余計なことをしてくる様な気がする」

「余計なことですか」

「他は純粋に好き放題やるだけの奴だが、あいつだけは毛色が違う」

「毛色……」

「本質が虚飾で、その最終守護が悪意だぞ? 聞いただけでやばいだろ?」

「た、確かに……」

 なんとなく、デプリ上層部のお国柄と似たようなもんかなと思った。
 勇者に嘘を飾り立て教え、そして悪意を持って自由に使う。
 うん、なんとなく繋がりがありそうに思えてきた。

「裏でこそこそするのが好きな陰湿野郎だから、ま、そいつにだけは気をつけとけ」

「勇者、そこを攻略しようとしてますね……」

「とっくに関わり持たれておもちゃにでもされてんじゃねーか?」

「なんかそんな気がします……」

 勇者、やばいのと関わりを持っちゃったんだな。
 御愁傷様って感じがする。
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