装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

568 夢見が悪い時は誰にでもある

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「勇者としての責務を果たす時が来た。そのためにあなたを──」

 どこか、聞き覚えのある様な声が響く。

「──断罪する」

「は?」

 断罪。
 その言葉を聞いて、俺は首を傾げていた。

「……?」

 最初に見えたのは、自分の手につけられた枷。
 そして次に鉄の檻。
 この状況を理解するまで、しばらく時間がかかった。
 周りに目を向けると、たくさんの貴族たちがいる。

 最初、召喚された時の様に、俺を取り囲っている。
 まるでサーカスの見世物みたいに。
 いや、その例えは間違いか。
 サーカスなんて見たこともない。

 見知ったもので例えるなら……動物園だ。
 そして俺は、檻に入れられた動物。
 
「なんだよ、これ……」

 ポツリと呟く俺に、玉座に腰掛けた少年が言った。

「僕が呼んだ」

「……呼んだ?」

「周りは君をただの人間だと思っている様だけど、違うよね?」

 え、ただの一般人ですけど。
 それを言う前に、口を開こうとすると勇者が告げる。

「今まで自由を謳歌したんだ、責務を果たして罪を償うといい」

「……罪?」

 わけがわからんし、笑えない。
 今まで生きてきた中で、俺は犯罪を一度たりともしたことはない。
 生きていることが罪だと言うのなら、この場の全員が罪人だろう。

「罪なんてない、俺は、何もやってない」

「アキノ・トウジ、国家を欺いた罪は大きいぞ」

「だったら鑑定の技能を使ってみればいい」

「……それすらも欺く、それがあなたの罪だ」

「話聞いてないのか……そんなの勇者でも無理でしょ……?」

 俺たちのスキルやステータスを確認する魔道具。
 それは高額なアーティファクト。
 遥か昔の賢者が作り出したものを欺くのは、今の勇者でも難しい。
 そんな代物で確認して、俺は白だと出た。

「潔白ですけどね?」

「そんなの潔白の証明にはならないぞ!」

 俺は勇者にいう。

「そういうのを悪魔の証明って言うんですけど? 勇者が悪魔の証明させるって、それ大丈夫なの?」

「口先だけは達者だな、アキノ・トウジ」

「アキノさんって呼んでもらえますか? 一応俺の方が年上なんで」

「このっ!」

 そんな会話をしながら、ようやく思考が元に戻ってくる。
 これは、俺はどういう訳か捕まってしまったらしい。
 勇者たちに、な。
 そして檻に入れられて、不当な扱いを受けている、と。

「そっちが勝手に俺を放逐しておきながら、今更何の用ですか?」

「それは俺に、勇者に協力しろってことだ」

 勇者は言う。

「俺たちがここに召喚されたのは、この世界を救うためだろう」

「もう平和ですけど?」

 俺は、放逐されてから必死でこの世界を生きてきた。
 いろんな国にも行って、この世界を見てきた。
 争い事なんて、どこにもない。
 多少の厄介ごとはつきものだが、全部勇者、お前のせいだ。

「知ってますか?」

 デプリとトガル国境の山脈で起こったスタンピード。
 それによって巻き起こった一人のゴブリンの闇落ち。
 その闇落ちゴブリンが起点となって起こる死の厄災。

「とばっちり受けたの、全部俺なんですけど?」

「はあ? その原因が俺らだって証拠はない!」

「いや、本人が……まあいいや……」

 話し通じないと思ったので、言うのをやめた。
 とにかく捕まる謂れはない。
 スキルもなにも持ってない。
 そして今後も勇者と関わるつもりもない。

「だから解放していただけませんかね?」

 そう告げると、玉座に腰掛けた少年が言う。

「力、持ってるよ。そもそも、この場にいるのが何よりの証拠だから」

「え……?」

「ステータスを確認してみなよ」

 そう言われてステータスを確認すると、スキルの項目に職人とあった。
 職人……え……なんだこれ……?
 これ、いったいどんな職なんですかね、謎なんですけど。

「えっと、わけわかんないっす、職人て」

「それみたことか! やはり隠し持っていたな!」

 勇者は水を得た魚の様に言う。

「お前は賢者である由乃から派生した生産枠なんだ!」

「いや……そんなこと言われても……」

 思い当たる節はあれど、俺のはスキルじゃない。
 しかも職人とか、また大雑把な別れ方。
 意味わからんぞ。

「確認は取れた? なら、言うこと聞いてもらえる?」

「嫌です」

 玉座の少年に、そう断言しておく。
 嫌なものは嫌。
 責務を果たせと言われても、なんの責務もない。
 だったら引きこもって職人らしくさせて欲しい。

 それが交換条件だ。
 うん、そうしよう。
 俺は職人なので、これから職人気質に行きます。

「ってことで、勇者は目上の人に対する態度がなってないので帰れ、二度と面見せんな」

「──!?」

 はは、言ってやったぜクソガキ。
 勇者だかなんだか知らんけど、お前は踊らされ過ぎだ。

「それじゃダメなんだよねえ、君には色々と協力してもらわないと」

「勇者が嫌いなんで断ります」

「だから、それがダメだって。力を合わせてもらわないと、やってけないよ?」

「そんなこといっても、俺は何もできませんよ」

「すべてのステータスが1万越えで、何もできないなんて言わないでくれるかな?」

 ……見られていたか。
 でも、それでも嫌なものは嫌だと言っておこう。

 この場にイグニールたちがいないということは。
 捕まったのは俺だけだってことだろう。

 それは好都合だった。
 一人なら、逃げようと思えばいくらでも逃げ出せる。
 こんな枷、こんな牢、小人の秘薬で一瞬だ。

「おっと、逃げようとしているね、それはさせないよ」

 俺の機微を感じ取ったのか、少年がそう言った瞬間、鉄格子が縮み始めた。

「あ、ちょっと」

 まだ逃げようとしていないのに、鉄格子がどんどん小さくなっていく。
 こ、このままだと押しつぶされる!

「そのまま圧殺されたくなかったら、言うことを聞いてね?」

「うぐぐ」

 ぎゅうぎゅうと小さくなっていく鉄格子。
 クソ、身動きが……い、息もできなく……。

 口で、はい手を貸します、とあっさり言えば良いものの。
 俺はどうしてもその一言が言えなかった。
 プライドかな?
 うん、プライドだ。

「い、今更……いったい、なんだ、ってん……だ……」

 鉄格子は止まることなく俺の体をコンパクトにした──



「──ハッ!? 鉄格子が!!」

 視界が黒く染まって、次の瞬間には元に戻る。
 バッと目を開けると、太陽が真上にあった。
 どこかの王室ではなく、周りは一面が海。

「……夢か? 夢だよな?」

 やべー、一瞬ひやっとした。
 安心していると、なんとも窮屈感がすごいことに気づく。

 なんだと思って右隣を見ると、イグニールがいた。
 口を尖らせたらキスできてしまう位置。
 うわっと思って左隣を見ると、マイヤー。
 こっちも同じ距離。

 で、腹の上にジュノーが乗って寝ているのを見て察する。
 窮屈感の正体は、俺の体が普通に戻ってしまったからだ。
 ペナルティが解けて元に戻る。
 すると、ボートも元に戻って、みんなが普通のサイズとなり。
 一緒の向きで寝ているのだ。

「……おぅふ」

 しかも水着で。
 やばいぞー、これは状況が一転したぞ。
 悪夢か、と思っていたのに。
 おきたら天国でした。

「……なんかの前触れか、これ」

 浮ついた思考が、夢の内容を思い出すことで冷静になる。
 これからデプリに行くって時に、なんとも嫌な夢を見たもんだ。
 俺の心の不安が、そんな夢を見せてしまったのだろうか。

 なんにせよ。
 天国から地獄、気を抜けば一気に転落もありえる。
 リゾートから帰ったら、気を引き締めてことに当たろうと思った。

「それにしても、ふーむ……嫌な夢を見たと言うのに我が愚息は……」

 みんなが起きる前に静まれー!






=====
この夢は、いったい……!


ちなみにトウジが爆睡している間に。
トウジの体でみんな遊んでました。
(顔を滑り台にしたり????)
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