装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

564 有能長男つえー

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「ほら末っ子ー!」

 三つの首を器用に動かして喧嘩をする邪竜三兄弟。
 その末っ子に今一度問いかける。

「食べたいか、食べたくないのか、どっちだー!」

「ギャォォォオオオオオ!」

 すると、末っ子はヨダレを垂らしながら空に向かって咆哮を上げた。

「なんて言ってるかわからないけど、多分食べたい、だな!」

「貴様の予想で概ね合っていますよ」

 お、長男が通訳を買って出てくれた。
 ありがたい。

「まったく、仕方ありませんね、今回だけ協力して上げましょう」

「兄者!? 宿敵に協力すると言うのか!?」

「……え、どういう風の吹き回し?」

 こればっかりは、俺も次男の意見に乗っかる。

「黙りなさい。指輪に戻ったら、お前は折檻です次男坊」

「ぐっ、兄者の正論は心に突き刺さるでのう……」

 露骨に凹む次男坊。
 まあ、何となく怒られている姿は想像できる。

「勘違いすること無きように。今回協力する理由は末っ子のためです」

「ギャオ!」

 長男が協力してくれると知って、末っ子は嬉しそうに鳴いていた。

「はあ……協力する代わりに……」

 ため息を吐きながら長男は言う。

「──クソまずい料理を食べさせたら、承知しませんよ?」

 そして、自分の体を中心に重力を発生させた。
 ──グォン! ゴゴゴゴゴゴ!

 邪竜の体から、得体の知れない力が広がっていく。
 すると衝撃によって発生していた高波が、津波が。
 一気に威力を失い始めた。

 ポセイドンが作り出していた無数の震源地。
 それも邪竜の力によって一気に消滅して行く。

「確か、魔物を100体狩れば1分持続するんでしたね?」

「え、あっ、はい。そうです」

「なるほど……では、これはサービスです」

 ズボッと海底から俺の方に大きな丸い塊が浮上してくる。
 それは、魔物を殺して固めた球体だった。
 えげつないが、一瞬でこれをやってのける長男もやばい。

「ついでにドロップアイテムとやらも、対象指定で引き寄せておきました」

「え、見えるの?」

「あなたが作り出した装備という理屈なら、当たり前でしょうに」

「あっはい」

 あれ、なんかすごく色々なことを理解してる感じ?
 なにこの長男、すっごい賢いんだけど。

「ついでに極彩マンボウも集めておきましょうか」

「えっ、そこまでしてくれなくても」

「貴方、他の目的に流されて忘れること多いでしょう?」

「えっ、まあ……はい、そうっすね」

「見ていて気持ち悪いんで、そこは直した方が良いですよ」

「あっはい」

 説教の後。
 別の重力場が出現して、そこにマンボウが100匹くらい引き寄せられる。

 なにそれ、重力ってそんな使い方もできるの?
 俺の知ってる重力と全然違うんですけど!

 長男有能すぎる。
 やべえ。

 さっきから「えっ」とか「あっはい」とか「やべぇ」しか言ってない。
 それくらいこの長男は細かくやってくれていた。

 敵にすると非常に厄介だが……。
 その分、味方につけるとやはり心強いな。

「まったく……世界を滅ぼす邪竜が、荒事を鎮める役目を担うとは……」

 ポセイドンが作り出した震源地をあっさりと相殺し。
 争いによって発生した高波や津波を力で捩伏せ。
 周りに散らばったドロップアイテムをごちゃごちゃして気持ち悪いからと集めて。
 さらには魚まで取ってくるという同時作業を簡単に行いながらため息をつく長男。

「兄者! 今からでも遅くない、そのままこいつを殺せ!」

 そんな長男のジレンマ発言に、次男が反応していた。

「世界を厄災に包むのが儂らの役目だ! 誰よりも先にやると決めただろう!」

「ギャオ!」

 未だに受け入れられない次男に、末っ子が吼える。

「弟よ! 兄貴に盾突くのか? また噛みつくぞ!」

「ギャォォォ……」

「喧嘩はやめなさい! そして少し黙れ、次男坊!」

「痛いッ!?」

 器用に重力場を制御しながら、長男の頭がしなって次男の頭を小突いていた。
 キリンがバトルするみたいに、グワァンって。

「兄者、儂に手を上げたな! 兄者ー!」

「手ではなく頭ですよ」

「うっ、兄者~~~!!」

 どつかれて、しゃがれた声で鳴き始める次男坊。
 よわっ。
 一番喧嘩っ早いのに、よわっ。

「お前は、飯抜き。私と末っ子だけで食べますから」

「あにじゃあああああ! そんな人間の食べ物を!」

 ……なんだ、食べたかったんじゃん。
 そんな視線を送っていると、長男が気づく。

「コホン、私が毒味しなくてはいけませんから」

「いや、食べたいなら食べたいって言ってくれて良いですよ。別に断らないですし」

「勘違いしないでください! 食べたい食べたくないではなく、毒味です!」

「ほーん」

 恥ずかしがり屋か、こいつ。
 まあいいだろう。
 その分仕事してくれたから、俺は構わんよ。

「さて、海もだいぶ平静を取り戻しましたが、あとはあいつらですか」

 長男首が、遠くで激しくぶつかり合うポセイドンとグレイトキングさんを向く。
 ワルプが限界になって気絶してから、ポセイドンも拘束状態から復帰。
 もう俺が見てないところで、二人で言い争いながらのしばきあいを続けていた。

『くそ! 拘束がなければ、貴様なんぞにやられっぱなしにならんわ!』

「たとえ拘束が解けようとも、我の拳で立ち上がれなくしてやる!」

『ヌオオオオオオオ!』

「プルァアアアアア!」

 いくら波を抑えようとも、発生要因が未だに健在。
 抑えても抑えても次々発生してしまうので、長男は元を断ちにかかる。

「スライムキングの方は死なないとして、ポセイドンは殺して良いんですか?」

「あっ、いや……殺すまではしなくて良いです……」

 ポセイドンも敵ではないというか。
 ダンジョンコアとの繋がりがあるっぽいので、できれば生かしておきたいのである。
 それに、もし俺にやばく強い奴が出てきたとしたら、飯の借りを返してもらうのだ。

「甘いですね、いつかどうにもならない時が来るかも知れませんよ?」

「まあ、その時はその時また考えます」

「ルーズな考えは苛立ちますが、まあ指輪の中から見せてもらいましょうか」

 それだけ言うと、長男は飛び立って戦う二人の間に介入する。

「──プルッ!?」

『──ヌウッ!?』

「どっちが強いかで揉めているなら、私も混ぜてください」

 そして間で一気に重力を発生させる。
 ズゥン、と突き抜けるような音と衝撃が響き渡り。

「もっとも、ダンジョンコア、勇者、賢者がタッグを組まなきゃ勝てない私に──」

 キングさんとポセイドンは重力に押さえつけられた。

「──今の貴方たちが勝てるとは思いませんが」 

「──!?」

『──!?』

 一瞬の内に、空間の歪みがズンと二人を襲う。
 それだけで、ポセイドンとキングさんは白目を剥いて気絶した。
 いったいなにをしたのだろう……。
 一瞬のこと過ぎて、まったくわからなかった。



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