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本編

562 海の支配者(笑)

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 今の俺の大きさは、小人の秘薬のペナルティで17メートル。
 そしてステータス1万越えがクイック全力で海面を駆け抜ける。

『ほう、やはり冒険者、貴様も中々強そうじゃないか』

「うっせー! いいから津波止めろー!」

 もはや敬語は使わない。
 くそ、これ24時間続くんだぞ、どーすんだよ!
 このまま24時間帰れないとか……遊べねぇ。

 エルカリノ倒したら、再び海で水着鑑賞とか。
 ポチと一緒に日向ぼっことか。
 コレクトと一緒にリゾート探検とか。

 あとおっさんに言われていた極彩マンボウの買い付けとか。
 色々とやることあんだぞ、ちくしょー!
 せっかく学院以来で忘れていた青春を堪能できると思ったのに。
 お前のせいで、お前のせいで!

 三十路のおっさんの、心の底からの怒りである。
 とても三十路とは思えない、とかそう言うツッコミは無しでよろしく。
 よろしく頼むぞー!

「くそがー! ああああああああー!」

 悔やまれるが、このくらいの大きさにならなければ津波には飲まれる。
 ペナルティを受けたくないが、どうしようもないから、仕方なかった。

 ──ズオオオオオオオオ!

 ちょ、津波思った以上に大きいんですけど。
 こんな高さだなんて聞いてないんですけど。

「おおおおおお!?」

 目の前に存在する高波。
 その大きさに驚いていると、キングさんの声がする。

「主よ、その靴を履いている限り、のまれることはない!」

「は、はい! うおおおおおおおお!」

 キングさんの言葉で我に返って、俺は波の中に飛び込んだ。
 そしてすぐに浮上して上に立つ。
 これぞ本当の波乗りだな。

「ワルプ! 全力で海流操作! マジで全力で!」

「──ォォォォオオオオオオオオオオオオオ!!」

 俺の声に合わせて、ワルプも全力で波を消しにかかる。
 しかし、ゴゴゴゴゴと揺れ続ける衝撃の発生地点。
 ポセイドンめ、マジでどうしてくれるんだ。

「発生源止めろって!」

『ハァ? なんで貴様の言うことを聞かねばならん、止めてみろ』

 こいつ!!

『陸がどうなろうと我は海に生きるから知ったこっちゃないわ!』

 てめー!!

 誰彼構わず喧嘩を売るなんて、ぶっちゃけ傍迷惑なやつだと思っていた。
 それでもシーモンクがいい人っぽい雰囲気だから何も言わなかったのだ。
 返せよ俺の気持ち。
 つーか、シーモンクどこだよ、お前も焚きつけた本人だから責任とれよ。

「……ちーん」

 シーモンクはすでに高波に飲まれて無残に海に浮いていた。
 死んではいないと思うけど、これぞ因果応報だな。
 口は災いの元だってことを身を以て知った方がいい。
 あ、すでに海賊に捕まってるのにこの状況だから、意味ないか。

「フン、自分の技すら制御できんとは、雑魚の証明だろう」

『なんだと!?』

 集約された振動攻撃をその身に受け、平然としながらキングさんは言う。

「もう一度行ってやる、貴様の大技はスマートではない。故に雑魚」

「キングさん! もっと言ってやってください!」

「ふむ……? 我は言葉よりも拳で語るタイプだが……?」

「いいから!」

 つーかキングさんはどっちかっていうと拳でも口でも語るタイプだ。
 一撃一撃ごとに説教込めてぶん殴る姿を見ているから、確定である。

「正直言って、我より弱い海の支配者(笑)」

『──!』

「自分の技も制御できない海の支配者(笑)」

『──!!』

「敗北を素直に認められん海の支配者(笑)」

『──!?』

「そのくせ飯は大食らいの海の支配者(笑)」

『──?!』

 矢継ぎ早にキングさんの口から出てくる言葉。
 すごい、口でも完全に無双していた。
 これを受けたポセイドンは、プルプルと震え出す。
 そして額に青筋を浮かばせると、叫んだ。

『貴様たち──今ここで海の藻屑にしてやるぞ!!』

「ふん、ならばやってみよ、海の支配者(笑)」

「そうだそうだ!」

 つーか、とっくに津波で周りがやばいんだよ。
 巨大化した特大ワルプが頑張って抑えているが、そろそろ堪えきれなくなりそうだった。
 近づいて、直接体に触れて、スタンと暗黒を決めたいのだが、ポセイドンを渦巻く海流。

 これによってどうにもならない状況だった。
 そもそもこいつを止めても津波は止まらん。
 キングさんにボコボコにしてもらって、相手を俺は津波を止めないと!

「主よ、我にも秘薬を二つ渡せ、格の違いを見せつける」

「はい!」

 そして一気に巨大化するグレイトキングさん。
 海面にそびえるその姿は、ポセイドンと肩を並べるほどだった。

『ほう、結局主人の力を借りて我と戦うのか? スライムの王め』

「一つ言っておこうポセイドン(笑)」

『貴様、これ以上語尾にかっこ笑とつけるな』

 憤慨するポセイドンを無視して、キングさんは言う。

「我らが従魔は常に主と一つ。足りない部分を補う存在」

 キングさん……。

「我が約束したのは、絶対的で圧倒的な勝利の二文字だ」

『我と張り合う程の強者のくせに、安い言葉を並べるな』

「安いだと……?」

 キングさんはポセイドンにグッと顔を寄せて睨みを効かせると言った。

「──その言葉を知らんうちは、貴様は常に敗者である!」

 そして俺のクイックの効果もあって、一気にポセイドンを殴りつける。
 今まで空気を読んで使わなかったワルプの特殊能力が発動。

『──!?』

 ポセイドンは、ただのサンドバックと化した。

「貴様は自分の友も巻き込んで、何がしたい! それでも支配者か!」

 ドゴンドゴン!
 ほら、やっぱり説教しながらぶん殴ってるよ。
 キングさんは、喋りながらぶん殴る勢だ。
 こっわ。

「驕り高ぶった性根を今! 叩き直してやる! 支配者の矜持を!」

 さすがキングさんだ。
 よくやってくれる。

 しかし……。
 怒りの説教に任せた一撃によって……。

 ゴオオオオオオオオオオ!

 さらにでかい津波ができた。
 ワルプが堪えきれずに流される。

「……顕現せよ邪竜ー」

 俺はたまらず邪竜三兄弟を呼ぶことにした。
 もうどうにでもなれー。
 ではなく、一応これにも意味はあった。
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