装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

文字の大きさ
上 下
271 / 682
本編

540 ダンジョンリゾート・4 かりぷそ

しおりを挟む
「トウジさん! 遅いですよ!」

 オデッセイにある冒険者ギルドへ赴くと、少し怒ったエリナがいた。
 遅れてしまったので、素直に謝っておく。

「すいません」

「私だってこの日のために水着を用意して来てるんですからね!」

 どうやら、それで怒っているようだった。
 用事を早く済ませ、彼女もビーチに行きたかったらしい。

「浮き輪だってこの日のために準備してるんですからね!」

「そ、そっすか」

 一応、俺のサポートという形で派遣されているはずでは?
 まあいいや。
 まっさらな砂浜に打ち寄せる波を見たら誰だって遊びたくなるもんだ。

「よし! では後はギルドマスターが直接お会いになるそうなので!」

「え?」

「では、私は海にいってきまーす!」

「あちょっと!」

 もう職務放棄だろ、これ。
 遊びたくなるのは構わないが、それはさすがにどうなのかと思った。

「ポチ、クレームつけるか?」

「アォン……」

 それも吝かではない、と頷くポチ。
 ギルドの入り口を呆然と見ていると、後ろから声がかかる。

「あなたがトウジ・アキノさん? ようこそオデッセイ支部へ」

 振り返ると、ボンキュッボンなべっぴんさんが目の前にいらっしゃった。

「私はギルドマスターのカリプソと申します」

「あっ、どうも」

 ギルドマスターか……。
 しかし、ギルドマスターにしては、やけに若い見た目だ。
 確実に俺より年下で、イグニールと同じくらいの年齢に思える。

「とりあえず立ち話もなんですし、こちらへどうぞ」

「はい」

 案内されるがままに、奥の応接室へと足を運んだ。
 中へと入って、黒い革のソファーに腰掛ける。
 対面に座るギルドマスターのおみ足もすごく良さげだ。
 こういう時にサングラスって重要だと思う。

 さて、そんな話は置いといて、だ。

「えーと、学院での依頼に関しての報告などをすれば良い感じですかね?」

 書面に起こせと言われれば、少し時間がかかるが今日中には終わらせるつもりである。
 2000万もらってるんだから、なんでもやるってことだな。

「いえ、そのご報告はひとまず大丈夫です」

「そうですか?」

「私から一つ、お聞きしたいことがあるのですが、良いですか?」

「どうぞ?」

 聞かれることと言っても何かあったかな?
 その言葉に少し疑問を感じていると、ギルドマスターは言う。

「──アイシャ、という名前に心当たりはあるでしょうか?」

 いきなり出てきた聞き覚えのある名前。
 一瞬息を詰まらせてしまいかけるが、すぐにぐっと飲み込んだ。

「アイシャ? 誰ですか?」

 こういう時、下手に「知らない」とか「さあ」とかすっとぼけると嘘がバレると聞く。
 だから、基本的には「誰ですか?」と興味を持った風を装うのが一番らしいな。
 それに準えて答えると、ギルドマスターの目つきが変わるのがわかった。

「もうすっとぼけなくてもいいのよ、彼女を送ったのは私なんだから」

「……カリプソ、やっぱりお前が女の大海賊か」

 実は自己紹介を受けた時から少し気になってはいた。
 アイシャから得た女の大海賊という情報。
 それを元に他の賊達を尋問して聞き出した名前が、女帝カリプソと呼ばれる大海賊のことである。
 海賊がギルドマスターをしてるとも思わなかったから、さらりと流していたんだけど……。

 そのまさかだったようだ。
 相変わらずくじ運が悪いのかな、俺って。

「まあ、そんなに構えなくても良いのよー?」

 じっと鋭い視線を送っていると、急に口調を豹変させたカリプソが言う。

「今はギルドマスター、つまりあなたの取引相手なんだからさー?」

「……何が目的ですか?」

 俺も一応この支部のトップということで、敬語を用いることにした。
 しかし、面倒な状況になった。
 俺の元へと密偵を送り込んでいたボスがギルドの支部長とは……。
 これは冒険者ギルドやめるフラグ来たか?

「何が目的? 別に、興味が湧いたからよー?」

「興味……?」

「ほら、グレイトなんちゃら倒しちゃった人でしょ?」

「それだけで密偵を送り込まれてたら困るんですけどね」

「ふふん、他にも色々と理由はあるのよ。まあ秘密だけど」

「はあ……そっすか」

「それにしてもギリス首都一帯の密偵をスライムの従魔を使って洗い出すなんて、もっと興味が湧いちゃったー」

「湧かなくても良いっす……」

 なんだかこの気だるそうな話し方にはなれない。
 終始ペースをそっちに持っていかれそうな気がして。

 ちなみに、アイシャの他にもアイシャを監視する密偵を送り首都に忍ばせているそうだ。
 他の組織とは違って、密偵の密偵というダブル戦術を駆使するのは私だけと豪語していた。

 費用が2重にもかかりそうなもんなのだが、王室諸君が探っていたのは俺を嗅ぎ回る存在。
 その線引きに引っかからないうまい手段だと思えた、俺も真似しよう。

 そうなればさらに上を行く、密偵の密偵の密偵を送り込むぞ?
 泳がせ密偵(雑魚)。
 泳がせ密偵の密偵(中堅)。
 泳がせ密偵の密偵の密偵(プロ)。
 やばい、密偵がゲシュタルト崩壊してきそうだ。

「で、アイシャを返せば良いんですか?」

 そんなクソどうでも良いことはさておいて、話を戻す。

「そうね、一応私の部下だから返してもらおうかしら」

「なら、全ての密偵を引き上げさせてくれるなら考えます」

「あら、交渉なのー?」

「当然です」

 返せと言われて素直に返すのが嫌だからな。
 熨斗つけて返すぞ、倍返しが基本なんだ。

「敵に捕縛される、そんな使えない密偵はもう用済みでしょう?」

「そうねー、貴方の意見も一理あるからあげるわよー」

「あ、ならありがたくもらっておきますね?」

 ニヤニヤと笑顔を崩さないカリプソに、俺もニコニコ笑顔で返答だ。
 腹黒さでは、負けない自信がある。
 そう、俺は本音と建前を今まで使いこなして来た根暗なのだから。







=====
感想返信ができていない状況に、土下座します。
すいませんでした。
(でも2回更新はずっと続きます、皆さんの感想のおかげです。元気がでます)
しおりを挟む
感想 9,834

あなたにおすすめの小説

無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~

鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!  詳細は近況ボードに載せていきます! 「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」 特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。 しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。 バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて―― こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

スキルを得られない特殊体質の少年。祠を直したらユニークスキルもらえた(なんで??)

屯神 焔
ファンタジー
 魔法が存在し、魔物が跋扈し、人々が剣を磨き戦う世界、『ミリオン』  この世界では自身の強さ、もしくは弱さを知られる『ステータス』が存在する。  そして、どんな人でも、亜人でも、動物でも、魔物でも、生まれつきスキルを授かる。  それは、平凡か希少か、1つか2つ以上か、そういった差はあれ不変の理だ。  しかし、この物語の主人公、ギル・フィオネットは、スキルを授からなかった。  正確には、どんなスキルも得られない体質だったのだ。  そんな彼は、田舎の小さな村で生まれ暮らしていた。  スキルを得られない体質の彼を、村は温かく迎え・・・はしなかった。  迫害はしなかったが、かといって歓迎もしなかった。  父親は彼の体質を知るや否や雲隠れし、母は長年の無理がたたり病気で亡くなった。  一人残された彼は、安い賃金で雑用をこなし、その日暮らしを続けていた。  そんな彼の唯一の日課は、村のはずれにある古びた小さな祠の掃除である。  毎日毎日、少しずつ、汚れをふき取り、欠けてしまった所を何とか直した。  そんなある日。  『ありがとう。君のおかげで私はここに取り残されずに済んだ。これは、せめてものお礼だ。君の好きなようにしてくれてかまわない。本当に、今までありがとう。』  「・・・・・・え?」  祠に宿っていた、太古の時代を支配していた古代龍が、感謝の言葉と祠とともに消えていった。  「祠が消えた?」  彼は、朝起きたばかりで寝ぼけていたため、最後の「ありがとう」しか聞こえていなかった。  「ま、いっか。」  この日から、彼の生活は一変する。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

【完結】魔物をテイムしたので忌み子と呼ばれ一族から追放された最弱テイマー~今頃、お前の力が必要だと言われても魔王の息子になったのでもう遅い~

柊彼方
ファンタジー
「一族から出ていけ!」「お前は忌み子だ! 俺たちの子じゃない!」  テイマーのエリート一族に生まれた俺は一族の中で最弱だった。  この一族は十二歳になると獣と契約を交わさないといけない。  誰にも期待されていなかった俺は自分で獣を見つけて契約を交わすことに成功した。  しかし、一族のみんなに見せるとそれは『獣』ではなく『魔物』だった。  その瞬間俺は全ての関係を失い、一族、そして村から追放され、野原に捨てられてしまう。  だが、急な展開過ぎて追いつけなくなった俺は最初は夢だと思って行動することに。 「やっと来たか勇者! …………ん、子供?」 「貴方がマオウさんですね! これからお世話になります!」  これは魔物、魔族、そして魔王と一緒に暮らし、いずれ世界最強のテイマー、冒険者として名をとどろかせる俺の物語 2月28日HOTランキング9位! 3月1日HOTランキング6位! 本当にありがとうございます!

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

ハイエルフの幼女は異世界をまったりと過ごしていく ~それを助ける過保護な転移者~

まぁ
ファンタジー
事故で亡くなった日本人、黒野大河はクロノとして異世界転移するはめに。 よし、神様からチートの力をもらって、無双だ!!! ではなく、神様の世界で厳しい修行の末に力を手に入れやっとのことで異世界転移。 目的もない異世界生活だがすぐにハイエルフの幼女とであう。 なぜか、その子が気になり世話をすることに。 神様と修行した力でこっそり無双、もらった力で快適生活を。 邪神あり勇者あり冒険者あり迷宮もありの世界を幼女とポチ(犬?)で駆け抜けます。 PS 2/12 1章を書き上げました。あとは手直しをして終わりです。 とりあえず、この1章でメインストーリーはほぼ8割終わる予定です。 伸ばそうと思えば、5割程度終了といったとこでしょうか。 2章からはまったりと?、自由に異世界を生活していきます。        以前書いたことのある話で戦闘が面白かったと感想をもらいましたので、 1章最後は戦闘を長めに書いてみました。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。