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本編

530 諸作業を終えるとともに

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 さてと、まずは状況報告から行おう。

 俺のことを嗅ぎ回っていた密偵たちの状況はと言うと……。
 1週間程経った今でも継続して収容中だ。

 C.Bファクトリーの研究職は、オカロがプレゼンを兼ねた説得を試みている。
 これには乗らなくてもいいけど、乗ったらC.Bの戦力を大きく削げるからね。

 デプリや教団関係から俺の元に送られた、一部C.Bファクトリーにも手を貸していた暗殺者。
 こいつらに関しては、1日3食高カロリーな物をしっかり与えて運動もさせず、少し太らせた。
 運動も禁止にして、していたら収容所を管轄する王室諸君が叱り、食事を質素にしている。
 何が目的かと言うと、単純に動きを鈍らせたり堕落させたりすることだ。

 心が脆いタイプの暗殺者は、堕落すると中々這い上がって来れないし、他の任務を受けて死ぬ。
 それを想定して、ザ・ニート暗殺者製造計画と言うやつだな。
 事前にINT6万越えのイグニールに「誰々」口撃を行ってもらうとなお堕落して良し。

 次に、それでも折れないよく訓練されたタイプの暗殺者。
 そいつらに関しては、こっちから高い報酬を買収することにした。

 教団の支払いよりも3倍多い値段を提示し、前金3分の1、あとは密偵が終わり次第支払う。
 先見の目のあるものならば、拘束された時点で俺に交渉を持ちかけて来ることもあった。
 散々嗅ぎ回られたのだから、今度は逆転の発想として向こうを嗅ぎ回ってもらおうと思う。

 もし任務に失敗しても、すでに教団から受け取るであろう報酬は受けているから逃げればいい。
 やはり、金の力は偉大だった。
 捕まって買収されそうになっても、偽の情報を流させることも契約として交わしておく。
 プロ意識を持った連中ならば、しっかりやってくれるだろうし、金は払うぞ。

 もっとも、デプリや教団から高度に洗脳された暗殺者も中にはいた。
 最初から心が壊れているのかずっとニヤニヤしている。

 そういう奴らに対しては、俺の元いた世界で三大珍味とされているフォアグラだ。
 安いフォアグラを作る業者のように、無理やり飯だけ流し込んで肥えさせている。
 暗殺者は、生活習慣病にかかってしまえばいいと思うんだよねー?

 さて次。
 諸外国の密偵には、次捕まったらどうなるかはわからないことを告げて解放。
 密偵ではなく、普通に手紙をギルド経由で俺に送付しろってことにしておいた。

 何か言いたいことがあれば聞くし、繋がりを求めているなら直接会いに来い。
 そろそろ裏に隠れてコソコソするのも止めにする時が来たのかもしれないな。



「ふう、一通り今日で終わったな……」

「アォン」

 自室に戻ってポチを抱っこし、もふもふボディをぎゅっと抱きしめる。
 これが俺唯一の癒しだ。
 時たまキングさんが言うにはスライム界のアイドルらしいチロルも出して抱いて寝る。
 それが今の俺のブームでもあった。

 ひんやりしてて気持ちいのだよ、チロルに関しては。
 夏場はチロルで決まりだな、とも思うのだけど、ダンジョン部屋は常に一定の温度。
 そもそも寒さ対策も暑さ対策も、何もいらない高性能だった。

「ポチもご苦労さん、これだけの人数の料理を準備するのは中々骨が折れたよな?」

「ォン」

 俺の言葉にふるふると首を振るポチ。
 途中で水島やパインのおっさんが手伝ってくれたからなんとかこなせたらしい。
 みんな過密スケジュールの中でよくやってくれている。

 イグニールは引き続きオカロ、オスロー、マイヤーの護衛役。
 一応ギリス首都を全体的にさらっと調べたけど。
 こういう事態を想定して、隠れることに全力を出した暗殺者がいるかもしれない。
 暗殺者や、きな臭くてでかい集団と国に対しては、かもしれないが大事なのだ。

「ふんふんふーん」

 ベッドで座る俺の脇で、ジュノーが自分用の小さなリュックに荷物を詰めている。
 何をしているかというと、明日から行われる学院のイベントの準備らしい。

 今の時期、あまりギリス首都を離れるのは良くないのだが……。
 依頼だから行かざるを得ないんだよな、リゾートアイランド・オデッセイ。

 そのために、一旦研究所や製作所をもぬけの殻にして閉鎖した。
 全ての設備は研究資料などを、俺のインベントリ経由でダンジョン内に安置。
 その間、研究者にはウィンスト護衛の元、トガルへ国外旅行に行ってもらう。

 研究者の家族とか、丸ごと全部の経費は俺負担なんだけど、致し方なし。
 全てが丸く収まれば、あとはしっかり働いて結果を出してくれればいい。
 謀略ごととか、相手から攻撃を受けない交渉は難しいからね……。
 手元にある全部を守る方法といったら、金を使ってみんなを逃すこと。
 そして友人であるウィンストに護衛を頼むことしかできなかった。
 非常に手間がかかるので、早くデプリに暗殺者を返して、C.Bファクトリーも潰したい。

「アォン」

「え? オデッセイにいる最中の収容所の飯はどうするのかって?」

「ォン」

「残って作る係をしてもいい? いやいや、ポチは来ないとダメだよ」

 行きと帰りの移動も含めて十日間の日程なんだけど。
 その間、俺がポチから離れたままなのは絶対に許さない。
 こういうのはみんなで行かないといけないからね。

「パインのおっさんが引き受けてくれるっていってたから大丈夫だ」

 この状況を見越して頼みにいってみると、おっさんは快諾してくれた。
 色々とお世話になってるから、任せてくれとのこと。
 現状かなり多い人数を収容しているのだが、俺ならできると豪語していた。

 お世話になっているのは俺の方なんだがな……。
 まったく、人が良すぎるよおっさん。
 報酬はいらないというが、お金やクサイヤチーズなどの珍味を渡すことにしている。
 こうして協力してくれる人がいることは、本当にありがたいことだった。

「アォン……?」

「心配しなくても、オデッセイにいる間は港町のドアしか開放しないから、変な奴が来ることもない」

「そうだしポチ。トウジとあたしでこのダンジョンも少し大きくして防衛固めたんだし!」

「うん、ジュノーの言葉通りだ」

 そういう時のために、並行してダンジョンの拡張も行なった。
 ガーディアンの数を揃えて、パインのおっさんの言葉を聞くようにしている。
 おかげで日課も何も全くできない日々が続いてしまったのは痛いけどな。

「息抜きも必要だから全員で楽しもう」

 オデッセイにはパーティーとしてイグニールも行けるようにしている。
 みんな揃って全員で、これが一番だ。
 入島するのにも厳しい審査があって、実は安全な場所なのである。

 もちろん、エルカリノの縄張りである海域に近い場所に存在するから、その懸念もあった。
 しかし、逆に潰しに行く良い機会だとして、俺は見ている。

「よし、みんなももう寝ているし、明日の出発備えて早く寝るぞ」

「はーい!」「アォン」

「つーかジュノーは別にリュックとか必要なくないか? ストレージあるだろ?」

「気分だし!」
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