装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

520 浮遊実験

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 俺たちは、中型船ミニガルーダ甲板にある操縦室へと乗り込んだ。
 大所帯だと少し手狭になるのだが、みんなレバーのような操縦桿に興味津々である。

 木造船だが、作りは竜樹を基にしたもの。
 かなり丈夫にできており、ゴレオが乗っても大丈夫だった。

 ゴレオに跳ねて見てとお願いをしたところ、悲しまれた。
 そして、女性陣からそういうことを言うなと大バッシング。

 立つ瀬がない。
 こういう時は、よくポチを抱きしめるんだけど。
 今日のポチはパインの代わりに社員食堂の営業手伝い。
 それから部活に顔を出すらしく、連れて来ていない。

 あまりポチを自由にさせておくのも、他のモンスたちに示しが悪いかもしれない。
 しかし、胃袋を握られているから俺にはどうしようもないのだ。
 今後、ゲテモノ料理は俺の要確認ということで許可を出した次第である。

 なんだかんだ、家のことは全部やってくれるポチだ。
 さらにポーションの瓶詰めも、俺の代わりに全部やってくれている。
 実は、見てないところでいろんなことを引き受けてくれているんだ。
 あんまり悪く言わないでやってくれ。

「さて、ではさっそく神鉄を使った浮遊結晶のテストを開始する」

「ついにか」

 操縦室には、スイッチと上下に動く操縦桿しかないのだけど。
 そんな簡単な操作だけで済むものだろうか気になった。

「この操縦桿で操作するの?」

「まだ方向制御や姿勢制御を行うスラスターは搭載していないから、簡単な作りにしている」

「なるほど」

 飛行機は操縦桿の上下操作によって、尾部の位置を調整し上昇下降を切り替える。
 しかし、浮遊結晶を用いたものは、送り込む魔力の量を変えることになるそうだ。

「まずはスイッチをオンにして、バッテリーから魔力を供給する回路を起動する」

「うんうん」

「そして徐々に上に倒せば、中に搭載しているバッテリーから魔力が供給される」

「ほーん、逆に下に倒せばその供給が止まっていくって仕組みやな?」

「その通り」

 マイヤーの言葉に頷いたオスローは続ける。

「今後、この操縦桿に方向制御用のスラスターとの連動も兼ね備え左右に旋回することもできるようにしていく」

 なんだか本格的だな……。
 いや、本気でオスローは空に飛ぼうとしているのだから当然か。

「現状でも、ワシタカに牽引させるのであれば可能だ。しかし、急制動の問題が出てくるから、実際にワシタカを用いた飛行実験は大きいものができてから行うことにする」

「了解」

 その時、イグニールの頭の上に座っていたジュノーが首を傾げながら言った。

「ねえ、レバー倒してもずーっと上に浮かんで行っちゃったらどうするし?」

「確かにそうやなあ……。オスローのことやから、周りのもんも一緒に浮かばないようには当然しとると思うけど、高度調節とかはどないするんやろうってうちも気になっとった」

 うむ、俺もその辺は気になっている。
 もっとも、そもそもの話。
 どうやって船だけ浮かぶようにしているのかすらわからない。
 だから無知を晒さないように敢えて何も聞かないようにしていた。

「それについては、浮力だけ持てば後はスラスターで上下すればいいと考えていたのだが、これよりももっと小さい試作品を作って色々試していた時に気付いたのだよ、それは──」

「──浮遊結晶に一つの構造物と認識されたら、魔力の量によって高度が決まる理論だね!」

 オスローが質問に答えようとしたところで、俺たちの目の前にオカロが現れた。
 空を飛ぶバイクのような乗り物に乗って操縦室の前に浮かんでいる。

「むっ、今私が説明しようとしたのに……」

「僕だって手伝ったんだから、説明する機会があって当然でしょ?」

「ふむ、そういうことにしておこう」

「なあ、説明の前にあの目の前で浮かぶ奴はいったいなんなんだ?」

 空に浮かぶバイクとか、めっちゃかっこいい。
 まさに漫画の世界みたいだった。

「あれは小型試作機グリフォン。飛行実験を行うために作ってみたものだ」

 みんな初めて見る空飛ぶ乗り物に、目を奪われている。
 それを尻目に、オスローは「丁度いい」と解説を始めた。

「グリフォンには、3段階の高度調節機能がついている。パパ、ほら早く」

「はいはい」

 オカロが頷きながら、足元のレバーをガチャガチャと足で操作する。
 すると、機体の体制はそのままで、約50センチ、1メートル、2メートルという高さに上下していた。
 足元のレバーで、段階式に魔力供給を設定しているらしい。

「見ての通り、使用する魔力量によって高度を制御することができる」

「構造体の重さが燃費に関わってくるけど、小型機なら問題なかったね!」

 この性質から、高度維持の問題は難なくクリアすることができたそうだ。
 右ハンドルを回し、直進は後ろに取り付けたスラスターから風を噴射し進む。
 旋回は、ハンドルを左右に切ると左右のスラスターが連動し、機体が回る。

「ちょっとコツがいるから何度も怪我しちゃったけど、乗って見たら意外と楽しいよこれ!」

 そう言いながら、2メートルほどの高さを維持してビュンビュン飛び回るオカロ。
 この親子、とんでもないものを作り上げてしまったみたいだ。

 同時に、周りのものも浮いてしまわないのかという疑問に対しても回答を貰う。
 どうやら、浮遊結晶そのままだと周りを浮かべる空間を作り出すものだそうだ。
 だが、何かに組み込むことによってその全体が浮かぶという性質らしい。

 地面に埋めたらどうなるんだろうと思ったけど。
 すでに試したらしく、供給する魔力によって浮かばせる範囲が変わり。
 範囲内の土ごと、ボコボコボコっと浮かばせてめくりあげたらしい。

「もっと複雑なものを想定していたが、思ったより単純明快だったのは幸いだった」

「そうだね! もっとも、扱いに気をつけないといけないことは変わりないけど!」

 アマルガムしかり、そのままの物が何かの拍子に魔力がずっと供給されてしまう。
 そんな事態になってしまったら、周りにあるもの一切合切を浮かべてしまうのだ。

 今まで作ってみた浮遊結晶と違い、ヒヒイロカネを利用した物の強度は計り知れない。
 もし巨大な魔力の塊がぶつかって、囲っているイレモノが壊れたら……。

 うん、とんでもないことになるな。
 あぶねぇし、やべぇ。

 ある意味、複雑化させるってことは、専門的な知識がないと扱えないことになる。
 それは自然と安全弁のような役割を果たしているのではないかと思った。
 シンプルな奴ほど強いって格言が漫画にあったけど、まさにそれである。
 シンプル・イズ・デンジャラス。

「……ガルーダ大丈夫だろうな?」

 不安に思ったのでそう尋ねて見ると、オスローは不敵に笑った。

「ふふふ、大丈夫だ。とりあえずゴレオに私を支えさせてくれ」

「え? まあ、いいけど」

 女の子座りしたゴレオに座ると、操縦桿が丁度いい高さになる。
 いったいなんのために座らせたんだろうな、と思っているとオスローは言った。

「発展に犠牲は付き物。なんのためにトウジを立会人として呼び出したと思っているんだ」

「へ?」

「では、さっさと高度実験をスタートする──ッ!!」

 操縦桿を一気に上に倒すオスロー。
 その瞬間、俺たちは操縦室の床に押し付けられた。

「おわあああああああああ!?」
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