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本編
514 ライデンのレシピ
しおりを挟む「いやあ、まさかパーティークラッシャーというものがいるとは……すごい世界ですね冒険者って」
「まあ、わけわからん奴もたくさんいるけど、良い人もいるよ」
質疑応答講義はつつがなく終了し、俺はライデンとともに食堂へやって来ていた。
これまでの冒険者業というものを振り返りながら、和気藹々と昼飯を食う。
「最初に出会った冒険者の方々ですか?」
「そうそう」
元気にしているだろうか……《新緑の風》のメンバー。
関わった日数は、短い。
しかし、異世界に来て初めての俺に優しくしてくれた人たちだ。
荷物持ちとして、結構優遇されていたけど。
危険を顧みず逃げる手助けをしてくれた彼らを俺は忘れない。
手紙の一つでも出せば良いと思うのだけど。
まだ彼らがデプリ国内にいる場合。
色々と面倒ごとに巻き込む危険もあった。
だから、ずっと連絡をとりあえずにいる。
もしどこかで会うことがあれば、改めてお礼を言いたい。
どこかで会うことがあれば、だけどな。
彼らがデプリ国内を優先として活動している限り……。
ぶっちゃけ2度と会うことはないのである。
「野盗に襲われてる時、マイヤーさんにも出会ったんですよね?」
「うん、おかげで命拾いしたよ」
冒険者は、ある種危険な職業だけど。
それで信頼できる存在や友達と出会えた。
だから悪くないよね、そういうのも。
「旅の中でいろんな出会いがあるって……なんか素敵ですね!」
「うん、大変なこともあるけど、良いこともある」
最初は一人。
異世界に来て、放逐されて露頭に迷う。
なんとかできることを探して頑張った。
そしたらポチ、マイヤー……ゴレオ、コレクト、キングさん。
いつの間にか、側に頼れる仲間がいた。
それからジュノー、イグニール、ガレー、ノード。
頼れる存在がどんどん増えていく。
みんなが、俺の不安を少しづつ抱えてくれた。
「この歳になってから、仲間のありがたみがすごいわかる」
「そうなんですか?」
「うん、俺……学生の時、クラスに友達いなかったしな」
「えっ!? そうなんですか!?」
俺の他愛もない一言に驚くライデン。
「トウジさんって、すごく良い人じゃないですか!」
「そう?」
「そうですよ! 約束守ってくれますし、義理堅いですし、優しいですし、気を使えますし、強いですし、話も面白いですし……学生の頃友達がいなかったなんて、想像できないですよ!」
矢継ぎ早に出てくる褒め言葉。
嬉しいんだけど、なんかすごく恥ずかしい。
やっぱり褒められるのはなれないなあ……。
今まで褒められるような人生じゃなかったからね。
「いや、今でこそ少しはまともになったけど、薄暗い奴だったよ」
「そうなんですね……」
「それこそ、ライデンの方がよくやってる」
俺はいじめられて逃げ出したタイプ。
直向きに頑張ろうとするライデンは、正直尊敬できる。
俺よりも出来た人間だ。
「どんな学生時代だったんですか?」
「ずっと家にいたよ。引きこもって自分の好きなことばっかりやってた」
「好きなこと?」
「うん、魔物狩ってレベル上げしたり(ゲーム内で)、素材集めて来て装備作ったり(ゲーム内で)」
「おおおお! 学生の時から魔物と戦って、武具を作っていたんですね! さすがです!」
「あ、いやその……」
「学校に行く時間を最小限にして、あとは自分の腕を磨いていたってことですね! 尊敬です!」
「あっ」
やばい、なんか色々と勘違いさせてしまっている。
違うんだ、ライデン。
あくまでゲーム内でってことで、家にいたんだ。
腕を磨いていたってのは、あながち間違いじゃないけど。
そりゃゲーム内でのプレイヤースキルみたいなもんだ。
「うーん、ハハハ……」
真実を話せないのが、すごくもどかしくなった。
仮にゲームしてたとか言っても、理解できないと思うしな、これ。
「そうだ、トウジさん! ぜひ見せたいものがあるんです!」
そう言って、ライデンはテーブルの上にノートを出すと広げる。
白いノートには、かなり精巧な刀の絵が描かれていた。
「うん? なにこれ?」
「実際に作ってみようと思う、僕の魔導機器です!」
「あ、そう言えば魔剣を作るって言ってたっけ」
「はい! 僕も将来、トウジさんみたいな職人になりたくて、コツコツ設計図を作っていたんですよ!」
「お~! やるじゃんライデン!」
「ちょっと、見てもらえませんかね? トウジさんの目から見て、どんなもんかと気になってまして」
「へ? あー……」
目の前に広げられた設計図を前にして、困った。
俺、こいつには武器職人だとか適当ほざいてるけど。
実際には刀を打ったこともないし、魔導機器を設計したこともない。
アドバイスできるようなことなんて、一つもなかった。
「どうですか!」
しかし、キラキラとした期待の目線を向けるライデンに、そんなことは言えない。
なんとかアイデアを放り出さないといけないので、とりあえず設計図を読むだけ読んでみることにした。
「ふーむ……」
いかにも職人っぽい感じの唸り声をあげながら、ノートを見る。
刀をモデルとして、柄の部分に何やら細工をするらしい。
設計図の詳細を読むと、中にポーションを仕込んで、手のひらからじんわり体力を回復させる機能っぽかった。
〈【回復刀・下級】がレシピに登録されました〉
えっ!?
=====
ライデン、トウジに必要不可欠な存在になる?
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