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本編
485 黄金樽の美酒と酒騒動・7
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「イグニール!」
「ありがと!」
インベントリから装備をフルセットで身につけ、ついでにイグニールの杖も投げ渡す。
受け取ったイグニールは、すぐに詠唱を開始した。
「──ファイヤーボール」
「でっか!?」
俺が強化したスペリオル装備を身につけたイグニールの魔法陣から火球が生まれる。
その大きさを見て、マイヤーが目を丸くしていた。
「あれファイヤーボールなん!?」
「うん、たぶんね」
「火属性魔法スキルが使える人の最初のスキルやねんけど!?」
「そんなこと言われてもなあ」
俺の装備をフルセットでつけたイグニールのINTは6万越え。
さらに魔力の数値だって……武器と防具合わせて約500超。
並み魔法職の5~6倍の魔力を持つ。
火球の大きさが5~6倍になってもおかしくはないと言う計算だ。
もっとも、単純計算でそれ。
INTも普通の8倍~10倍近くあるから、本気を出した火球はもっとでかい。
「トウジ、今レベルいくつなん?」
「105くらい」
「ひゃ──」
言葉を失うマイヤーだった。
出会ってまだ1年も経ってない、野盗から命からがらで逃げていた男が、レベル100ってのは驚くだろう。
まあ経験値の秘薬とか、常に使ってたし、サモンモンスター達の経験値が入るからな。
普通の人よりは魔物を狩る早さも、今まで相手にして来た奴らも、段違いなのである。
格上相手にキングさん達がキルを取ってくれて、その分の経験値がドカンドカンと入っていた。
レベルアップが早い理由は、その辺。
「い、いつの間に……」
「まあ、それなりに修羅場超えて来たからかな」
「ぐむむ、なんか置いていかれた気分やあ……!」
そう悔しそうにするマイヤー。
仕方ない。
俺は魔物と戦うことのある冒険者だが、マイヤーは商人。
レベルの差が開いてしまうのはこの世界では当然である。
「心配すんなマイヤー、何があってもマイヤーとアルバート商会は守るから」
「いや、嬉しい言葉やけど……そう言うことじゃないって言うか……」
第一、とマイヤーは続ける。
「商会の本店はトガルやで? 半端な約束はするもんちゃうで?」
「ああ、その辺は全部ウィンストに任せてあるから大丈夫」
「……はああ? ほんまに?」
マイヤーは後ろを振り返る。
「賢者式宴会魔法スキル──ストーンゴーレム。精密操作でジャグリングできるまで30年かかったぞ!」
巨大な石のゴーレムが、賊達を手に乗せてジャグリングしていた。
阿鼻叫喚の叫び声が聞こえてくる。
「……ほんまに?」
訝しげな表情をしながら、今一度そう尋ねるマイヤー。
「い、一応すごい技術っぽいし、だ、大丈夫だろ、ハハハ」
俺は乾いた笑い声を浮かべるしかなかった。
あんなキャラだったっけ小賢さん。
とてもじゃないが、理解が追いつかない。
師匠が見たら泣くだろ、あれ。
ポチに目配せをすると、俺と同じことを思っていたのか呆れた目をしていた。
うむ、もう一度心に刻もう……酒は飲んでも、飲まれるな。
さて、そろそろイグニールとレッドオーガの戦いに決着がつく頃合いである。
視線を向けると、火球が連続してレッドオーガの体を焦がしているところだった。
「ゴ、ゴァァアア……」
「ふう、かなり手こずったわね……ほんとに、相当な耐久力よこいつ」
寒空だと言うのに、額の汗を拭うイグニール。
「おつかれさま。とどめは刺さなかったのか?」
「なんか途中で土下座みたいなことを始めちゃったから、毒気抜かれたのよ」
「土下座?」
名前持ちのレッドオーガー、リクールに目を向けると。
それはそれはもう見事な土下座をしていた。
大きかった体も少し縮んでしまっている。
体も徐々に色を赤から青に変えて、背中に雪が積もっていた。
雪土下座である。
「な、なんか小さいな……迫力のかけらもない……」
「あっ、聞いたことあるで」
すっかり大人しくなったオーガに困惑しているとマイヤーが言う。
「酒好きリクールって、もともとブルーオーガで、飲むとレッドオーガになるとか、そんな噂」
「……酒に酔っ払って強くなるってこと?」
「うん、聞いた話だとそうやで」
まさに酔拳オーガだ。
いったいどう言う仕組みなんだろう。
まあ、世の中不思議なこともたくさんある。
酒飲んで強くなるとか別に驚くことでもない。
「とりあえずさっさとトドメ刺して家に帰るぞ。ゴレオ頼んだ」
「…………」
「ゴレオ、はよ」
「…………」
命令しても、ゴレオが動かない。
いったいどうしたんだろうな、と思っているとジュノーが通訳してくれる。
「なんか、途中で手を抜いて戦ってたから、もう敵意は無いってさ」
「はあ? そうなの?」
「……」
コクリと頷くゴレオ。
「でも一応行商馬車を襲って、マイヤーの酒樽盗んだ犯人だろう?」
「ご、ごあ! ごあごあ!」
そう言うと、オーガが何かを叫んでいた。
「ごあごあって言われてもなあ……ジュノー」
「んー、酒は盗んだけど、馬車は襲ってないって」
「ええ……」
こいつが酒を運ぶ行商馬車を襲う特殊なオーガだってことも聞いている。
今後に及んでそんなことを言われても、信用できない。
「ごあっ! ごあっ!」
オーガは必死で訴える。
「馬車なんて生まれてこの方襲ったことはないし、今回も馬車を襲った盗賊から奪ったんだってさ」
「ありがと!」
インベントリから装備をフルセットで身につけ、ついでにイグニールの杖も投げ渡す。
受け取ったイグニールは、すぐに詠唱を開始した。
「──ファイヤーボール」
「でっか!?」
俺が強化したスペリオル装備を身につけたイグニールの魔法陣から火球が生まれる。
その大きさを見て、マイヤーが目を丸くしていた。
「あれファイヤーボールなん!?」
「うん、たぶんね」
「火属性魔法スキルが使える人の最初のスキルやねんけど!?」
「そんなこと言われてもなあ」
俺の装備をフルセットでつけたイグニールのINTは6万越え。
さらに魔力の数値だって……武器と防具合わせて約500超。
並み魔法職の5~6倍の魔力を持つ。
火球の大きさが5~6倍になってもおかしくはないと言う計算だ。
もっとも、単純計算でそれ。
INTも普通の8倍~10倍近くあるから、本気を出した火球はもっとでかい。
「トウジ、今レベルいくつなん?」
「105くらい」
「ひゃ──」
言葉を失うマイヤーだった。
出会ってまだ1年も経ってない、野盗から命からがらで逃げていた男が、レベル100ってのは驚くだろう。
まあ経験値の秘薬とか、常に使ってたし、サモンモンスター達の経験値が入るからな。
普通の人よりは魔物を狩る早さも、今まで相手にして来た奴らも、段違いなのである。
格上相手にキングさん達がキルを取ってくれて、その分の経験値がドカンドカンと入っていた。
レベルアップが早い理由は、その辺。
「い、いつの間に……」
「まあ、それなりに修羅場超えて来たからかな」
「ぐむむ、なんか置いていかれた気分やあ……!」
そう悔しそうにするマイヤー。
仕方ない。
俺は魔物と戦うことのある冒険者だが、マイヤーは商人。
レベルの差が開いてしまうのはこの世界では当然である。
「心配すんなマイヤー、何があってもマイヤーとアルバート商会は守るから」
「いや、嬉しい言葉やけど……そう言うことじゃないって言うか……」
第一、とマイヤーは続ける。
「商会の本店はトガルやで? 半端な約束はするもんちゃうで?」
「ああ、その辺は全部ウィンストに任せてあるから大丈夫」
「……はああ? ほんまに?」
マイヤーは後ろを振り返る。
「賢者式宴会魔法スキル──ストーンゴーレム。精密操作でジャグリングできるまで30年かかったぞ!」
巨大な石のゴーレムが、賊達を手に乗せてジャグリングしていた。
阿鼻叫喚の叫び声が聞こえてくる。
「……ほんまに?」
訝しげな表情をしながら、今一度そう尋ねるマイヤー。
「い、一応すごい技術っぽいし、だ、大丈夫だろ、ハハハ」
俺は乾いた笑い声を浮かべるしかなかった。
あんなキャラだったっけ小賢さん。
とてもじゃないが、理解が追いつかない。
師匠が見たら泣くだろ、あれ。
ポチに目配せをすると、俺と同じことを思っていたのか呆れた目をしていた。
うむ、もう一度心に刻もう……酒は飲んでも、飲まれるな。
さて、そろそろイグニールとレッドオーガの戦いに決着がつく頃合いである。
視線を向けると、火球が連続してレッドオーガの体を焦がしているところだった。
「ゴ、ゴァァアア……」
「ふう、かなり手こずったわね……ほんとに、相当な耐久力よこいつ」
寒空だと言うのに、額の汗を拭うイグニール。
「おつかれさま。とどめは刺さなかったのか?」
「なんか途中で土下座みたいなことを始めちゃったから、毒気抜かれたのよ」
「土下座?」
名前持ちのレッドオーガー、リクールに目を向けると。
それはそれはもう見事な土下座をしていた。
大きかった体も少し縮んでしまっている。
体も徐々に色を赤から青に変えて、背中に雪が積もっていた。
雪土下座である。
「な、なんか小さいな……迫力のかけらもない……」
「あっ、聞いたことあるで」
すっかり大人しくなったオーガに困惑しているとマイヤーが言う。
「酒好きリクールって、もともとブルーオーガで、飲むとレッドオーガになるとか、そんな噂」
「……酒に酔っ払って強くなるってこと?」
「うん、聞いた話だとそうやで」
まさに酔拳オーガだ。
いったいどう言う仕組みなんだろう。
まあ、世の中不思議なこともたくさんある。
酒飲んで強くなるとか別に驚くことでもない。
「とりあえずさっさとトドメ刺して家に帰るぞ。ゴレオ頼んだ」
「…………」
「ゴレオ、はよ」
「…………」
命令しても、ゴレオが動かない。
いったいどうしたんだろうな、と思っているとジュノーが通訳してくれる。
「なんか、途中で手を抜いて戦ってたから、もう敵意は無いってさ」
「はあ? そうなの?」
「……」
コクリと頷くゴレオ。
「でも一応行商馬車を襲って、マイヤーの酒樽盗んだ犯人だろう?」
「ご、ごあ! ごあごあ!」
そう言うと、オーガが何かを叫んでいた。
「ごあごあって言われてもなあ……ジュノー」
「んー、酒は盗んだけど、馬車は襲ってないって」
「ええ……」
こいつが酒を運ぶ行商馬車を襲う特殊なオーガだってことも聞いている。
今後に及んでそんなことを言われても、信用できない。
「ごあっ! ごあっ!」
オーガは必死で訴える。
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