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本編
479 黄金樽の美酒と酒騒動・1
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「ただいまだし! おーい、ストロング南蛮ー! ただいまー!」
「クエーッ!」
家に帰ると、早速コレクトとジュノーがリビングからリビングへと向かっていく。
なんとも意味のわからない文章かもしれないが、そのままだ。
間借りしてある部屋のリビングから、ダンジョン部屋のリビングまでってこと。
「大所帯にこの部屋は手狭かと思ったが、ダンジョンが繋げてあるのか」
「そうそう、ジュノーの力だよ」
「つまり、トウジはこのギリスの地下に巨大なダンジョンを建設中ってことか?」
「いや、ダンジョン自体は森の奥で作ってて、入口をここにしてるだけ」
大都市の地下に作るとか、そんな危なっかしいことはできない。
野菜モンスもゴレオが地味に育て始めている状況。
突然変異して、このダンジョンから街に解き放たれてしまう、とか。
そんな状況になってしまえば、俺は監督責任を問われることになる。
「だから特に階層も増やしてないから、安全安心のダンジョンだよ」
「本能が階層を増やすことに傾倒するダンジョンコアをよく制御できるな?」
「はは、まあね」
パンケーキやれば黙るから、楽勝だ。
ダンジョンは恵みも与えるが、同時に中に入ったものを殺す存在でもある。
畏怖の対象としては当然なのだけど。
なんだかんだ内部に入って詳しく話を聞くと、そうでもない。
「ダンジョンコアって、話してみれば別に悪いやつじゃなかったぞ?」
「それはトウジの人柄だろうな」
「人柄って……」
どっちかと言えば、俺は身内以外にはクズの範囲に入るぞ。
損得勘定で動くし、金を積まれれば二つ返事野郎だ。
確かに媚を売って好かれることはあったけど、そりゃ八方美人である。
嫌いな奴がいたら、まず近寄らないことにしてるしな。
「最初から敵を決め付けてかからない所は、トウジの良い部分だと私は思う」
「うーむ? だいぶ決め付けてるけどな。好き嫌いは人より激しいよ」
決め付けない様に心がけてはいるが、人間だからね。
苦手な人とか、嫌な奴とか、面倒臭い奴とか。
その辺は取捨選択していかんと、ハゲてしまう。
「だが、実際にそれで私は生きているし、救われたのだから、良き様に転んでいるじゃないか」
「全部が全部そうだったら良いんだけどなあ……」
結論、俺の人柄良い奴だった、と言う訳ではなく。
今まで話が通じて来た相手は、そいつらが善人だった。
それに尽きるんじゃないかと思う。
「言っておくけど、俺は別に善人でもなんてもないから、そこんところはよろしく」
「ふっ、恥ずかしがってお茶を濁しても無駄だぞ?
「えぇ……」
「トウジは善なる心を持った良い奴だ。私の恩人であり一生の友であるのだから」
……重たい、重たすぎる。
恋人関係でもないのに、なんだこの重さは?
人と人とが関わりあってくると、こうした信頼関係の重圧ってあるよね。
ネトゲ内での繋がりって、そんな重圧感ってのがなかったからよかった。
人との繋がりが増えていくに従って、改めてそう思う。
そして、イグニールもマイヤーも、サモンモンスター達も。
その辺の距離感っていうのを大事にしてくれてるのかな、なんてね!
「ほら、立ち話もなんだし中に入って部屋を飾り立てましょ? ジュノーが怒るわよ?」
「そうだな、再会を祝う会の準備をしよっか」
イグニールの言葉で一度会話を切り上げて、ダンジョン部屋のリビングへ足を進める。
すると、中から叫び声が響いて来た。
「ト、トウジー! トウジー! トウジー!」
「クエーッ! クエーッ! クエーッ!」
ジュノーとコレクトの声である。
「なんだよ騒がしいな……」
と思って部屋に入ると、めちゃくちゃ散らかっていた。
脱ぎ捨てられた衣類、パンツ、ブラジャー。
それと同時に、空いた酒瓶がコロコロと頃がってトイレの方へ。
「な、なんだこれ……」
「すごい有様ね……ってか、なんかツーンとするわね……ま、まさか……」
そのまさかである。
この見覚えのある黒いパンツと黒いブラジャー。
マイヤーが好んで身につけているものだ。
イグニールは黒より白とか赤とか暖色派だからね。
なぜ俺が知っているかというと。
カナトコで見た目を移す際、全部見て触ったから。
それに一緒に生活してたらチラチラもするだろ?
そういうことだ。
だが、大丈夫。
やましい心に飲まれる前に、心を無にしたからね。
装備製作を無心でやったからね、安心だね。
「ふむ、女性の下着が脱ぎ散らかされて、酒瓶とともに点々としているな」
ウィンストが拾い上げて匂いを嗅いでいた。
「牝特有の臭気以外にも、胃酸の匂いも──」
「──ダメよ! 女の子を下着を匂っちゃ!」
すぐにバッとウィンストの手からマイヤーのパンツを奪い返すイグニール。
「問題ない。私に性欲は存在しないから、やましい気持ちなんて微塵もない」
「それでもダメよ! トウジだっているんだから!」
「え? 俺? あっうん……あんまりそういうの良くないよねっ!」
いきなり話を振られたので、適当に頷いておいた。
牝特有の臭気、という言葉が気になるが、そこは聞かなかったことに。
マイヤーの尊厳を守る的な意味を込めての英断。
しかし、胃酸ってことは……尊厳なんてもう守りきれない。
帰宅恒例となっている、いない間のマイヤーご乱心。
ストロング南蛮が彼女の飲酒を止める役割を担っていたが、今回ばかりは無理だった様だ。
何やら争った形跡のように、ストロング南蛮の抜け落ちた羽も散乱している。
「トウジ! こっち! こっちにマイヤーいる! 南蛮も!」
「クエーッ!」
「トイレか……」
どんな状況になっているか、なんて誰にでも想像できるな。
「ジュノー、マイヤーってもしかして全裸?」
「うん、なんかトイレですっごい嗚咽にまみれて泣きくれてた」
「そ、そっか……」
「体調が悪いのか? だったら私が聖属性で異常状態を」
「待て待てウィンスト。イグニールが行くから良いよ。薬だってあるから」
「そうね、私が行ってくる。霧散の秘薬ちょうだい?」
「はいよ」
こういう時、頼りになるのは同性のイグニールだな。
俺一人で対処する羽目になったら、なんか精神を持っていかれそうな気がする。
いてくれてありがとうイグニール。
そして、何やってんだよマイヤー、しばらく酒禁止だな、こりゃ。
「クエーッ!」
家に帰ると、早速コレクトとジュノーがリビングからリビングへと向かっていく。
なんとも意味のわからない文章かもしれないが、そのままだ。
間借りしてある部屋のリビングから、ダンジョン部屋のリビングまでってこと。
「大所帯にこの部屋は手狭かと思ったが、ダンジョンが繋げてあるのか」
「そうそう、ジュノーの力だよ」
「つまり、トウジはこのギリスの地下に巨大なダンジョンを建設中ってことか?」
「いや、ダンジョン自体は森の奥で作ってて、入口をここにしてるだけ」
大都市の地下に作るとか、そんな危なっかしいことはできない。
野菜モンスもゴレオが地味に育て始めている状況。
突然変異して、このダンジョンから街に解き放たれてしまう、とか。
そんな状況になってしまえば、俺は監督責任を問われることになる。
「だから特に階層も増やしてないから、安全安心のダンジョンだよ」
「本能が階層を増やすことに傾倒するダンジョンコアをよく制御できるな?」
「はは、まあね」
パンケーキやれば黙るから、楽勝だ。
ダンジョンは恵みも与えるが、同時に中に入ったものを殺す存在でもある。
畏怖の対象としては当然なのだけど。
なんだかんだ内部に入って詳しく話を聞くと、そうでもない。
「ダンジョンコアって、話してみれば別に悪いやつじゃなかったぞ?」
「それはトウジの人柄だろうな」
「人柄って……」
どっちかと言えば、俺は身内以外にはクズの範囲に入るぞ。
損得勘定で動くし、金を積まれれば二つ返事野郎だ。
確かに媚を売って好かれることはあったけど、そりゃ八方美人である。
嫌いな奴がいたら、まず近寄らないことにしてるしな。
「最初から敵を決め付けてかからない所は、トウジの良い部分だと私は思う」
「うーむ? だいぶ決め付けてるけどな。好き嫌いは人より激しいよ」
決め付けない様に心がけてはいるが、人間だからね。
苦手な人とか、嫌な奴とか、面倒臭い奴とか。
その辺は取捨選択していかんと、ハゲてしまう。
「だが、実際にそれで私は生きているし、救われたのだから、良き様に転んでいるじゃないか」
「全部が全部そうだったら良いんだけどなあ……」
結論、俺の人柄良い奴だった、と言う訳ではなく。
今まで話が通じて来た相手は、そいつらが善人だった。
それに尽きるんじゃないかと思う。
「言っておくけど、俺は別に善人でもなんてもないから、そこんところはよろしく」
「ふっ、恥ずかしがってお茶を濁しても無駄だぞ?
「えぇ……」
「トウジは善なる心を持った良い奴だ。私の恩人であり一生の友であるのだから」
……重たい、重たすぎる。
恋人関係でもないのに、なんだこの重さは?
人と人とが関わりあってくると、こうした信頼関係の重圧ってあるよね。
ネトゲ内での繋がりって、そんな重圧感ってのがなかったからよかった。
人との繋がりが増えていくに従って、改めてそう思う。
そして、イグニールもマイヤーも、サモンモンスター達も。
その辺の距離感っていうのを大事にしてくれてるのかな、なんてね!
「ほら、立ち話もなんだし中に入って部屋を飾り立てましょ? ジュノーが怒るわよ?」
「そうだな、再会を祝う会の準備をしよっか」
イグニールの言葉で一度会話を切り上げて、ダンジョン部屋のリビングへ足を進める。
すると、中から叫び声が響いて来た。
「ト、トウジー! トウジー! トウジー!」
「クエーッ! クエーッ! クエーッ!」
ジュノーとコレクトの声である。
「なんだよ騒がしいな……」
と思って部屋に入ると、めちゃくちゃ散らかっていた。
脱ぎ捨てられた衣類、パンツ、ブラジャー。
それと同時に、空いた酒瓶がコロコロと頃がってトイレの方へ。
「な、なんだこれ……」
「すごい有様ね……ってか、なんかツーンとするわね……ま、まさか……」
そのまさかである。
この見覚えのある黒いパンツと黒いブラジャー。
マイヤーが好んで身につけているものだ。
イグニールは黒より白とか赤とか暖色派だからね。
なぜ俺が知っているかというと。
カナトコで見た目を移す際、全部見て触ったから。
それに一緒に生活してたらチラチラもするだろ?
そういうことだ。
だが、大丈夫。
やましい心に飲まれる前に、心を無にしたからね。
装備製作を無心でやったからね、安心だね。
「ふむ、女性の下着が脱ぎ散らかされて、酒瓶とともに点々としているな」
ウィンストが拾い上げて匂いを嗅いでいた。
「牝特有の臭気以外にも、胃酸の匂いも──」
「──ダメよ! 女の子を下着を匂っちゃ!」
すぐにバッとウィンストの手からマイヤーのパンツを奪い返すイグニール。
「問題ない。私に性欲は存在しないから、やましい気持ちなんて微塵もない」
「それでもダメよ! トウジだっているんだから!」
「え? 俺? あっうん……あんまりそういうの良くないよねっ!」
いきなり話を振られたので、適当に頷いておいた。
牝特有の臭気、という言葉が気になるが、そこは聞かなかったことに。
マイヤーの尊厳を守る的な意味を込めての英断。
しかし、胃酸ってことは……尊厳なんてもう守りきれない。
帰宅恒例となっている、いない間のマイヤーご乱心。
ストロング南蛮が彼女の飲酒を止める役割を担っていたが、今回ばかりは無理だった様だ。
何やら争った形跡のように、ストロング南蛮の抜け落ちた羽も散乱している。
「トウジ! こっち! こっちにマイヤーいる! 南蛮も!」
「クエーッ!」
「トイレか……」
どんな状況になっているか、なんて誰にでも想像できるな。
「ジュノー、マイヤーってもしかして全裸?」
「うん、なんかトイレですっごい嗚咽にまみれて泣きくれてた」
「そ、そっか……」
「体調が悪いのか? だったら私が聖属性で異常状態を」
「待て待てウィンスト。イグニールが行くから良いよ。薬だってあるから」
「そうね、私が行ってくる。霧散の秘薬ちょうだい?」
「はいよ」
こういう時、頼りになるのは同性のイグニールだな。
俺一人で対処する羽目になったら、なんか精神を持っていかれそうな気がする。
いてくれてありがとうイグニール。
そして、何やってんだよマイヤー、しばらく酒禁止だな、こりゃ。
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