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本編

469 勝ち確定ルート?

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「──グォオオオオオオオオオオオ!」

 咆哮の主であるワイバーンライダーが上空から俺の元へと姿を表した。
 ワシタカくんが空を見てくれているはずなのだが、来た方向は真逆。
 どうやら、戦力を温存していたらしい。

「フハハハ! 見ろ! デミドラゴン? 違うな、邪竜にも近い存在へと昇華している!」

 手元の瓶の中で叫ぶ怨嗟の鎖。
 邪竜にも近い、と言った瞬間。
 俺の右手にはめられている不滅の指輪がドクンと反応した。

「……一緒にされたくないってことか?」

 やっぱりインベントリに入ってない状況だと。
 俺たちの様子が見えているっぽい。

「……出してみよう、なんて思わんぞ?」

 ドクンドクン。
 抗議の波動を感じるが、絶対にダメだ。
 殺されかねませんのことよ。
 指輪を見ながら困惑していると、またうるさい声が響く。

「来るぞ、軍勢が、再び! 殺しに、貴様だけを、狙って!」

 倒置法に倒置法を重ねて、なんともご大層な言葉である。

「よし、ジュノーこれ持っててくれ」

「はーい」

 ジュノーに怨嗟の鎖を捕獲した瓶を持たせておく。

「何か言葉を発する度にナイフで小突くように」

「うん」

「殺す! 殺ス殺ス! コロスコロスコロス!」

「殺すって一回言う度に10回小突いていいよ」

「えー! 面倒臭いし!」

「10回小突いたらパンケーキ1枚」

「えっ! なら100回くらいだし?」

「60回だろ! ぐわああああああ!」

 ジュノー……、恐ろしい子!
 わざとなのか、それともふざけているのか。
 俺のフードの中で彼女はコツコツしていた。

 さてと、次はジャードに目を向ける。

「スライムキング、こいつを抱えてみんなの元に避難で」

「盟主はどうするのだ?」

「ここに残って戦うよ。怨嗟の鎖のヘイトは十分買ったからね」

「承知」

 怨嗟の鎖の狙いが俺ならば、周りから引き剥がすの良策。
 俺じゃなくて他の人を狙われる方が厄介だけど。
 どうやらこいつは自らの怨念に囚われ、俺しか見えていないらしい。
 厄介だけど、手間が省けるってもんだ。

「王室の主も、すぐに駆けつけるように連絡しておいた」

「ありがとう」

 一度ロイ様を戻すと呼び出したキングスも消える。
 だから、今回はロイ様には徒歩でこちらへ向かってもらうことにした。
 ドルジやルイスたちは、残ったキングスとイグニールに任せておけば良い。

「フォル、一旦戻すと24時間出せないから、能力使用してもらうかも」

「ええ、大丈夫ですよ盟主」

 進化の犠牲を強いることを意味するのだが、フォルは笑って許してくれた。

「ロイ様とディナーの約束があるってのに、ごめんな」

 早くしろ、とロイ様がキレていたのを思い出したけど。
 状況的にしのごの言ってらんない。

「落ち着けばまたしばらく一緒に過ごせますから」

「ありがとう。まったく良い嫁さんもらったな、ロイ様ってば」

「盟主様も、そろそろお嫁さんを探されてはどうですか?」

「うーん……」

 頭にパッと浮かんだのはイグニール。
 だけど、ただのパーティーだしなあ……。

「チロルちゃんなんか、どうですか?」

「ええ……」

「図鑑の中でずっと呼ばれるのを心待ちにしていますよ」

「使いどころがなかなか難しいからなあ」

 ずっと前の毒にやられた村みたいに、危機に瀕した状況もない。
 でもまあ、今度召喚してやるか、枕にすると気持ちいいし。

「で、どうですか?」

「スライムはNGで」

 せめて人間にしてくれよ、と思うのである。

「あらあら、チロルちゃん悲しんでしまいますね」

「……家に帰ったら召喚するよ」

 さてと、取り急ぎワイバーンライダー、もといデミドラゴンライダーが迫っている。
 強さは、おそらく怨嗟の鎖が言う通り、相当強い存在へと至っているだろうな。
 だが、こっちだって負けてないのさ。

「キングさん!」

「プルァッ!」

 一度ワシタカくんを戻して、開いたスロットにてキングさんを召喚する。

「よし、次にフォルはキン──」

「プルァッ!」

「──ひでぶっ!?」

 キングさんに叩かれてぶっ飛んだ。
 いきなりの出来事にびっくりする。

「なんで!?」

「プルァ」

「チロルちゃんをNG呼ばわりするとは、何事かですって盟主様」

「ええ……」

「プルァ」

「あれほど可憐で儚く愛くるしいスライムはいないって言ってるし」

 フォルとジュノーが、キングさんの言葉を翻訳してくれる。
 面倒だからロイ様早く来て権限渡してあげて……。

 そもそも、チロルかわいいってスライム目線の話だろ?
 人間である俺は、スライムなんてみんな一緒に見える。
 キングさんとかロイとか。
 我の強い、個性豊かなメンツの違いは分けるけどさ……。

「──グォオオオオオオオオオオ!」

「ほらもう来てるって! キングさんさっさと準備して!」

 キングさんは何か言いたげだったが、フォルに頼んですぐにグレイトキングへと進化してもらった。

「王の中の王、ご武運を」

「プルァ」

 消えゆくフォルにそう言われながら、頷くキングさん。
 ボコボコボコと進化して、これでグレイトキングさんの誕生だ。
 もうバーゲンセール並みにグレイトキングさんを使いまくってるな。
 だが、出し惜しみするよりかマシである。

「じゃ、次ワシタカくん再召喚ね」

「ギュアッ」

「プルァ」

 キングさんとワシタカくんは互いに目配せして意思疎通を取ると、コンビで夜空へと飛んだ。
 うむ、勝ちルートだな……負ける気がしない。
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