装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

468 毎日ハッピー禊

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「ぐあああああ! 出せっ! 出せえええええ!」

 颯爽と瓶に回収したら蓋をキュッと閉める。
 霧散の秘薬漬けになった怨嗟の鎖は、中で暴れていた。

「この! このおおおおおお!」

 瓶を破ろうと鎖が生み出される。
 だが、霧散の秘薬で次々に消滅していた。

「ひっ、割れないし……?」

「心配ないぞ」

 当然、瓶と蓋はVITガン盛りした装備をカナトコしてある。
 ちょっとやそっとの攻撃を受けてもパリンと破れることはない。
 見た目こそ瓶っぽくなっているが……。
 元の素材はオリハルコンとアダマンタイトの装備なのだから。

「どれだけ内側から削られようが、ゴレオの能力で耐久は戻る」

「おおお! さっすがトウジだしっ!」

 俺の横顔に抱きつくジュノー。
 ふむ、耳が心地よし。

「つーか鎖は消えても、本体までは消えないんだなあ」

 霧散の秘薬で打ち消せるのは本体ではなく、呪縛の鎖のみってことか。
 まあ、概念体だからだろう。
 消しても消しても片っ端から人の恨みの数だけ戻るのだ。

 こうして閉じ込めておくのが吉であるけど。
 ここにいるのは、世界が抱える恨みの一部。
 ぶっちゃけ、正直意味のないことだと思えた。

 厄介だな、本当に。
 でも、こうして手中に収めることができたのは良いことだろうか?

「閉じ込めても無駄だぞ! 無駄だぞ!」

 瓶の中で怨嗟の鎖は言う。

「私はこの世に意思がある限り、いなくなることはない存在だ!」

「それは読めてるよ」

 でも……。

「こうやって甚振ることはできるよな?」

「ぐあああああああああああああああ!」

 ハッピーナイフで、瓶を小突くと中の鎖野郎が悲鳴をあげた。

「な、なんかダメージ受けてるし……どう言うことだし?」

「この瓶は装備を利用して作ったものだからだよ」

「……ああ、納得したし」

 そう、ある意味この状態でも装備を身に着けるということが成立していた。
 だから、ハッピーナイフで小突けば小突くほどに、こいつは幸せになる。
 怨嗟の鎖には、幸せ効果が効果抜群。
 体の一部をこうして捕縛しておけば、いつでもどこでもお仕置き可能なのだ。

「お前がどこで何をしてるか知らんけどな?」

「う、ぐうう……!」

「どうせ毎日他人の恨みを操って悪さしてるんだろ?」

「そ、それがどうした……!」

「ってことで、全世界の人に向けて俺も毎日お前を幸せにします」

「ッ!?」

 神棚にでも飾って、毎日毎日、コツコツコツコツ。
 お前をハッピーナイフで小突く作業を日課に加えよう。

 俺の日課遂行率を舐めるなよ?
 どんなに忙しくたって、家にいる時は無限採掘。
 病気とかで強制的に止められない限りだ。
 職人技能のレベル上げもこなすのである。

「神棚にでも祀って、毎日毎日コツコツコツコツ──」

「ぐ、う……なにを……」

「毎日毎日コツコツコツコツ毎日毎日コツコツコツコツ」
「毎日毎日コツコツコツコツ毎日毎日コツコツコツコツ」
「毎日毎日コツコツコツコツ毎日毎日コツコツコツコツ」
「毎日毎日コツコツコツコツ毎日毎日コツコツコツコツ」
「奉ってやるから喜んでいいぞ?」

「──うわあああああああああああああ!」

 にっこり微笑むと、ボコボコボコッと錯乱する怨嗟の鎖。
 これから自分の身に起こる運命を受け入れきれないらしい。

 この世に恨みがあるのならば、俺が晴らしましょう。
 これこそ驚異の毎日ハッピー禊だ、妙案だ。

「ねえ、ちょっとあたしもやって見ていいし?」

「どうぞ」

「えいっ」

「や、やめろおおお! あああああ!」

「なんか面白い! えいえいえい!」

「あああああああああああああああ!」

 霧散の秘薬の効果だろうか、こいつは何故か本体に戻れない。
 そして死なないので、永遠に禊続けることが可能。
 カルマよ、押し寄せてくると言うのならば……かかってこい。
 禊ぐぞ、禊ぐぞ!

「ぐうう、それで恨みを晴らすことができると……ぐふっ、思わないことだ……!」

「そんなこと思ってねーよ」

 誰だって恨みを持つし、その感情は否定しない。
 だが、それを利用するのはいかんせん烏滸がましいとは思わないのだろうか。
 だからこいつが2度とそんなことしなくなるまで、俺はコツコツし続ける。
 永遠に、禊続ける。

 もっとも、これは禊を履き違えている感はある。
 でも、俺がスッキリすればもはやなんでも構わないのだ!

「ぐぞおおおおおおおお!」

「叫んでも無駄だぞ?」

「黙れ! 私はお前と取引するために寛大な心を持っていたが……もうやめにした!」

「ん?」

 元から取引したとしても、俺もウィンストの様に縛り付けるだけだろうに。
 今更どの口がそんなことを言ってんだってことだよな。

「減点1。蓄積するたびに10ナイフな」

 期待値的には10回に1回が幸せ発動だから、必ずダメージを受けることになる。
 10回攻撃しても発動しないってことも10%ってのはザラだ。
 だが、その度にホッと胸をなでおろしつつ、次は来るのか来ないのか、強い恐怖となる。

 むしろ、そこが狙い目と言えた。
 猿にボタンを押すと一定確率で餌が出て来る機械を渡すと、狂ったように押し捲るって言うだろう?
 それの逆で、いつダメージが来るのかわからない状況を作り込んでやると、こいつは狂うと見た。

 不安。
 俺が常日頃から戦い続けている、社会の波の一種である。
 とくと味わえ、不安を。
 そしてこいつの目の前で、俺はポチの飯を幸せいっぱいに食う。

「さて、怨嗟の鎖……自由に過ごしていいけど、永遠に苦しめよ」

「殺す殺す殺す殺ス殺スコロスコロスコロ──スッ!」

 にっこり微笑んであげると、目を血走らせて蠢くモヤモヤ。
 恨みつらみに巣食う存在が、煽り耐性0とはこれいかに。
 もやは、自分自身が強烈な恨みに飲み込まれてしまったようだった。

「私の全てをかけてでも貴様を殺す、殺ス、コロス!」

「やってみろよ。だが、お前に何ができるんだ?」

「フハハハハハ! いくら攻撃を受けようと、力を全て集約させれば良い!」

 カッと血走った目を見開いて、瓶の中の怨嗟の鎖は叫んだ。

「──良いのだッ!!」

 その瞬間。

『──グォオオオオオオオオオオオ!』

 けたたましく鳴り響く、魔物の咆哮。
 ピシピシと肌を刺すような威圧感。
 何か、強力な存在がこの近くにいることを意味していた。

「……何をしたんだ?」

「なあに、依代が強力でなくても、全力を出せば造作もないのだ」

「はあ?」

「私の全力をもってして、怨念の加護をワイバーンライダーに与えたまで」

 怨嗟の鎖は続ける。

「言っておくが……ただのワイバーンライダーとは思わないことだ。元より進化しデミドラゴン化していた魔物とその乗り手……それに私が加護と捕えた恨みを全て込めて力を与えた」

「……なるほど」

「貴様だけは絶対に殺す、殺ス、コロス! もはや竜とその乗り手となったライダーに食われてしまえ! そして、当然ながら不死身であり、眷属たち、そしてここにある盗賊どもの死体も……私の手中にある! フハハハハハ! 死ね、死ネ! シネ──ッッ!!」

「ふーん」

 全力を、総てこっちにもってきた、ね。
 煽った甲斐があったもんだ。

 ちょっと不味い敵が再び生み出されてしまったかも知れん。
 しかし、荒療治には困難は付きもの。
 俺たちも、前とは圧倒的に違うってところを一つ見せてやろうか。
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