上 下
195 / 682
本編

464 反撃開始だけど……ただの蹂躙になりそう

しおりを挟む
 召喚魔法陣からズモッと巨大なワシタカくんの顔面が出現する。
 そして、ひと鳴き。

「──ギュアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 キーン、と今だに響いていた音による攻撃。
 これまず一瞬でかき消えた。

「──!?」

 一気に攻めようとしていた盗賊たちの動きが止まる。
 そこへ、さらに全身まで姿を現したワシタカくんがひと羽ばたき。

 ブワッ!

 突風が巻き起こって、森の奥から放たれていた矢を落としてくれた。
 どうやら、守ってくれた様である。

「ギュアッ!」

 さらにもうひと羽ばたき。
 今度は、森の木々が風圧にやられてバキバキバキとへし折れた。

 相変わらずとんでもないな。
 最近移動とかばっかりで登用していたけど、やはり空の王である。

「ギュアッ!」

「うむ、任せた」

 ワシタカくんはロイ様と一言喋ったあと、ポチを頭に乗せて上空へ向かった。

「なんて言ってたの?」

「空は1分でケリをつけて来るであります……って言ってたし」

「なるほど……」

 ワシタカくんは言葉通り。
 上空を旋回していたワイバーンライダーを次々蹴散らしていく。

 相手がワイバーンライダーだったら、こっちはロック鳥ライダー。
 どっちが格上かと言われたら、そりゃポチとワシタカくんだ。

 ワイバーンよりも倍の体格と機動力を持つロック鳥。
 その上に、遠距離攻撃に絶対的な信頼のあるコボルト。
 ワイバーンライダーは「こんな奴にぐぬぬ!」って思ってそうだ。

「さて、地上波我らが任されよう──王室諸君、反撃である」

『承諾』

 ロイ様から再出現し、なんとも威風堂々とした面持ちのキングス。
 キングさんの様な猟奇的な笑顔感はまだ薄い。
 だが、なんとも底が知れない威圧感はばっちりだった。
 顔でかいしな、スライムキング種って。

「ワシタカが空を1分でケリをつけると言うのならば、我らは30秒だ」

『諾領』

「見せつけてやれ、王家の威信を。植え付けてやれ、権威の恐怖を!」

『委細承知!』

 ロイ様に鼓舞されたキングスたちは、一気に分裂した。
 キングさんがミニキング軍勢になった時と同じ様に。
 分裂して、小さいサイズのスライム軍勢と化して、ズドドドと森へ切り込んでいく。

「うおおお……なんかすげぇ……」

「王の中の王に、皆図鑑の中で鍛えられたからな、今こそ発揮である」

「そ、そうなんだ」

 キングさんより教えられた戦術らしい。
 ロイ様は語る。

「クリティカル発動率はグループメンバーとサモンモンスターに有効。全ての攻撃が確立で2倍のダメージ量になるのならば、手数が多い方が有利。多ければ、多いほど、期待値は高まるだろう?」

「そうだね」

 それを加味した上での、新たなる秘技と言えた。
 キング種を召喚できるスライムロイヤルならではの戦術。
 なんとも、得るべくして得たって特殊能力に思えた。

 まったく。
 図鑑の中、マジでどうなってんだ……?
 すげぇ気になるんだけど……?

「ねえ、近場にジャードはいないの?」

 イグニールが尋ねると、ロイ様が答える。

「うむ」

「だったら私もスキル使っちゃうわね?」

 詠唱したイグニールの杖から巨大な火球が出現した。
 太陽みたいなその火球は、月に変わってこの場を明るく照らす。

「すごーい! イグニール! それ、火柱と違うし?」

「うん、すげぇ……なにそれ新しいスキル?」

「ううん、ただの火球よ」

 驚く俺とジュノーの言葉に、首を横に振るイグニール。
 どうやら火属性魔法スキルの一番弱くて手頃な奴だそうだ。

「っていうか、昼間の火柱も、そこまで強いスキルじゃないわね」

「……まじか」

 なにそれ怖い。

 杖の魔力が尋常じゃなく。
 さらにレベルアップとともに属性強化の値も上昇。
 おかげで普通に魔法スキルがとんでもない威力になっているそうだ。
 つまり、これは大火球ではない、ただの火球だ、みたいな状況。

「明かりの代わりにもなるでしょ?」

「う、うん……」

 明かりの代わりというか、普通に太陽だよな。

「──ぎゃあああ! アチい、アチい!?」

「──な、なんだこのスライム!? ぐわっ!?」

「──ど、どうなってんだ! たかがAランクパーティーだろ!?」

 空をゆっくり移動する火球は、盗賊たち熱する。
 相当な熱量を持っているのか、当たってないのに熱がってダメージを受けていた。

「ちなみに、ぶつかったら爆発するんだっけ、あれ?」

「うん。するわよ」

「あ、危なくない? 大丈夫?」

「コフリータがいれば、勝手に動かしてくれるし爆発の衝撃も方向性持つから平気」

「そ、そうなんだ?」

「あと、イフリータを呼び出してたら、あれが勝手に周りにいる敵焼いてくれるわよ」

「お、おおう」

 なにそれ怖い。
 怖い!

「しかも、消費魔力は弱い火球と同じだから……割とコスパよくいっぱい作れるのよね」

 ボボボボボボッ。
 上空に巨大な火球が10個以上生成された。
 それが大群となって盗賊たちに向かっていく。

「──うわああああああああ!?」

「──火球がたくさん来るぞ! 備えろ!」

 阿鼻叫喚だ。

「うわぁ……これはひどい……」

「まさか形見の杖がここまで強くなるなんて、私も驚いてる。トウジ、ありがとね?」

「いや、良いよ。ちなみにステータスとかって、どうなってる?」

 一応イグニールにも全ステ%で揃えてはいないまでも、装備はINT%をかなりつけてあげている。
 俺よりも絶対強くなるだろうってことで、特に聞いてこなかったが……この威力は気になるところだった。

「他は微妙だけど、INTは……6万くらいね?」

「ろっ──!?」

「私もともとINTはかなり多かったの。それがトウジの装備でエゲツない強化されてるから」

 俺なんか全ステータス1万そこそこだってのに……。
 やっぱりこの世界の人は強いな。
 
しおりを挟む
感想 9,833

あなたにおすすめの小説

称号は神を土下座させた男。

春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」 「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」 「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」 これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。 主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。 ※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。 ※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。 ※無断転載は厳に禁じます

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

雪月 夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

もふもふ相棒と異世界で新生活!! 神の愛し子? そんなことは知りません!!

ありぽん
ファンタジー
[第3回次世代ファンタジーカップエントリー] 特別賞受賞 書籍化決定!! 応援くださった皆様、ありがとうございます!! 望月奏(中学1年生)は、ある日車に撥ねられそうになっていた子犬を庇い、命を落としてしまう。 そして気づけば奏の前には白く輝く玉がふわふわと浮いていて。光り輝く玉は何と神様。 神様によれば、今回奏が死んだのは、神様のせいだったらしく。 そこで奏は神様のお詫びとして、新しい世界で生きることに。 これは自分では規格外ではないと思っている奏が、規格外の力でもふもふ相棒と、 たくさんのもふもふ達と楽しく幸せに暮らす物語。

異世界に召喚されたけど間違いだからって棄てられました

ピコっぴ
ファンタジー
【異世界に召喚されましたが、間違いだったようです】 ノベルアッププラス小説大賞一次選考通過作品です ※自筆挿絵要注意⭐ 表紙はhake様に頂いたファンアートです (Twitter)https://mobile.twitter.com/hake_choco 異世界召喚などというファンタジーな経験しました。 でも、間違いだったようです。 それならさっさと帰してくれればいいのに、聖女じゃないから神殿に置いておけないって放り出されました。 誘拐同然に呼びつけておいてなんて言いぐさなの!? あまりのひどい仕打ち! 私はどうしたらいいの……!?

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。