装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

463 先ずはワイバーンライダー……かと思ったら

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「──ギャオオオオオオオオ!」

 もう、かなり近くまで接近しているワイバーンの咆哮。
 翼を持つ存在と持たない存在では、機動力に大きな差がある。
 ここまで来てしまえば、もう逃れることは不可能に近かった。

 一応、この暗闇に便乗し、野山に息を潜めながら逃れる方法もある。
 だが、下は盗賊だって蔓延っているのだ。
 ふと、下は大火事、上は洪水ってなぞなぞを思い出す。
 答えはアレだよな?

「はあ、家に帰ってゆっくりさっぱりスッキリしたいなぁ」

「いくらでもスッキリさせてあげるから、しゃんとしなさい……ほら、来るわよ」

 お手の呟きにそう返したイグニールが、杖を持つ両手に力を込める。
 コフリータを自分の隣に出しておき戦闘態勢バッチリの様だ。

「了解」

 俺も片手剣と盾を両手に携えて、今か今かと機会を待つ。
 闇夜に響く羽音と咆哮。
 徐々に大きくなるにつれて、みんなの心拍数も上がっていた。

 作戦はこうだ。
 木の陰に隠れて、それぞれがポジションにつく。
 ワイバーンライダーが上空へと到着したら、ワシタカくんを召喚。
 そしてポチを乗せて強襲して叩き落としてもらう。

 で、落ちたワイバーンライダーは、地上で待つ俺たちがタコ殴り。
 タコ殴りのフルボッコ。

 とにかく、制空権を完全にワシタカくんとポチに掌握させる。
 そしたら地上はロイ様だ。

 Aランクパーティーも合計4パーティー分いる。
 案内役、ノーマリー、ドルジ、俺たち。

 戦力の要は従魔を有する俺らパーティー。
 召喚布陣はまだロイ様とポチだが、接敵と同時にワシタカくんを出す。
 先に出しておくと巨体でバレかねないから、後出しだ。

 別件のジャードは、ロイ様の呼んだ王種の一人が、先に捜索に向かった。
 もし、戦闘に巻き込まれてしまうことがあったら、守る様に言ってある。
 王室諸君を通じて、リアルタイムに他所の情報が分かるから便利だった。

「な、なんだかドキドキするし」

「フードの中から出るなよ?」

「う、うん」

 ジュノーは、俺のフードの中でワシタカくんの声を通訳。
 連携を取る上ではかなり重要な役割だよね、師匠って。

「ポチ」

「ォン?」

「ワシタカくんを召喚したら、吸着の靴を履いて上に乗って、とにかく撃ち下ろしで」

「アォン」

 わかってる、とばかりに頷くポチ。
 制空権が取れれば、あとはポチの独壇場でもある。
 ほんと、普段はもふもふで可愛いくせに。
 クロスボウを抱えた表情はコボルト界随一の凛々しさだぜ。

「私には何かあるかしら? トウジ、指示してよ」

「うーん……敵やっつけて……?」

「ちょっと、ちゃんと指示しなさいよ」

「えー」

 イグニールって、普通に何も言わなくても臨機応変に動いてくれる。
 だから下手に何か言うよりも好きに動いてくれた方が良いのだ。

「指示されたいの」

「あっはい」

 なんだかさっきからスッキリさせてあげるわよとか。
 指示されたいのとか。

 なんかなあ……。
 まあ、他意はないんだろうけどなあ……。

「強いて言うなら、この辺一帯にジャードの姿が見られなかったら大火力かましちゃって」

「任せて。絵とか料理とかは得意ではないけど、火属性魔法は得意だから」

 ビリビリパンケーキは、どうやら自分でもあまり良い出来ではないと感じていたらしい。
 ……それを食わせようとした彼女はやはり確信犯。

「でもこれから料理を少しずつ練習していくわね?」

「そ、そっか……た、頼むわ……」

 ポチがいるから大丈夫だよ、とはとてもじゃないが言えなかった。
 辟易としながら言葉を返すと。

「──ギャォォォオオオオオオオオ!」

 今一度、ワイバーンの咆哮。
 一応、ジュノーに通訳を頼むがただ闇雲に吠えているだけらしい。
 連携を取っているのかと思っていたが、俺たちをビビらせるだけの様だ。

「よし」

 みんなに目配せをして、そろそろだ、と言うところで──

 キィ──ンッッッ!!!!

「──ッ!?」

 いきなり、耳を劈く音が響き渡った。
 キングさんの衝撃を持った大雄叫びよりも高い周波数。
 脳内に直接響いて来るようなその音に、全員が目を向く。
 そして耳を抑えてフラつく。

「し──たっ! こ──は────だ──!」

 ドルジが何かを言う。
 だが、その音のせいか、それとも耳をやられているせいか。
 全く何を言っているのかわからなかった。

「──ジ! ──トウジ! 前!」

 直ぐ側にいたジュノーの声がようやく聞こえる。
 その言葉に、耳を抑えるみんなから視線を前に戻すと。

「──狩れ! 奴らはワイバーンライダーにビビってる」

「──大方、そっちにばっか気を取られたんだろうなあ!」

 すげぇ数の盗賊が、森の奥から襲いかかって来ていた。
 そして月が浮かぶ上空には、ワイバーンの姿も。

 なるほど。
 予想通り、ワイバーンライダーと盗賊は協力関係にあったっぽい。
 ワイバーンの咆哮に集中させて、森の中に忍び、音と同時に強襲。

 ダンダと比べて、かなり狡猾に思えた。
 だが、こっちも負けてないです。
 ワシタカくん、お願いします。

「──ギュアアアアアアアアアアアアアアアア!」
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