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本編

461 ドルジの約束

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「ルイス、今後に及んでまだそんなことを言っているのか……?」

「ド、ドルジ……でも!」

「全員の命がかかっている大事な状況で、お前だけ戦わずにジャードを探すのか?」

 それでは、ろくに連携も取れないとドルジは言う。
 今は一丸となる大事な時期、これ以上不安要素を抱えるつもりはないのだ。

「それでも探すと言うのなら、一人でやるんだな」

「うっ……」

 この森の中を一人で探す。
 それも、盗賊やワイバーンライダーがいる状況で。
 死ねって言ってることと同じだな……。

「考え直せルイス。仇討ちが目的ならば、この状況を切り抜ければどうにでもなる」

「……一人で探すよ」

「なんだと?」

 厳し目に言ったドルジの一言が裏目に出てしまった。
 ルイスはぐっと唇を噛み締めてジャードを探すと言い出したのである。

「これ以上、仲間を失ったらそれこそ死んだクランマスターに申し訳ない」

「あまり過去に囚われるなルイス。もう一度言う、考え直せ」

「誤解したまま放っておくなんて僕にはできないし、するつもりもない」

 険しい表情をするドルジに、ルイスは続ける。

「それに何もできずに一人だけ残ったら、それこそもう一生前なんて向けなくなる」

「……」

「悪いけど《鉄壁》への誘いは断るつもりだ。僕は仲間を見捨てないよ」

 黙って睨むドルジを尻目に、踵を返して森へと向かうルイス。

「……私情を挟む分には構わんが、優先順位を考えろと言っているのだ」

「……」

「ルイス! 戻れ! 今は俺が指揮を執る立場にある、戻れ!」

 無視するルイスに、ドルジは歯ぎしりしながら首を振ると言った。

「待て、ルイス。そいつの捜索も作戦の一つに加える」

 これには、《鉄壁》のメンバーも驚いていた。

「良いんだドルジ。僕は一人で探すから、これ以上みんなに迷惑をかける訳には……」

「《編み髪》との約束だから、貴様だけは死なせる訳にはいかないのだ……クソッ!」

「何故そこまでしてくれるんだい……?」

「前にも言ったが……約束したのだ。もし何かあれば、お前の面倒は俺が見ると」

 もう亡くなってしまった《編み髪》のクランマスターとルイス、そしてドルジ。
 この3人は同じ年であり、駆け出し冒険者の頃から知っている間柄だった。

 《編み髪》と《鉄壁》。
 その頃からお互いをライバル視ししており。
 よくルイスが彼らの間に入っていたそうだ。

「3人でクランを作ることは考えてなかったし?」

「こらっ、ちゃちゃいれんなって!」

「だって気になるし……」

 空気を読まずに、ドルジの話に入っていく師匠を止める。
 まったく……でも、俺もそこは気になったな。

「前衛同士で、戦い方も方向性も、それぞれ正反対だったからな、組むより別を作り協力する方が補えたからだ」

「なるほど……それでそれでどうなったし?」

「ルイスはクランなんか立ち上げずにソロでやってるから、俺らのどっちかがクランに入れることになった」

「へー」

「ちなみにジャンケンで負けた方を補う、と言う形で誘うことにした」

「そ、それ……僕も初耳なんだけど……?」

「仕方ないだろう。ランクも実力も拮抗してるんだから、運がない方が弱いとしてルイスを取る……合理的だ」

 それ、一歩間違えたらいじめになるぞ!
 小学生の時、サッカーとかドッジボールをする際。
 それぞれのチームリーダーがジャンケンして先にメンツを決めていくアレと似ている。
 俺は当然、一番最後に余って負けた方のチームでした。

「じ、地味にショックだ……」

「別に実力を侮っているわけではなく、両者ともルイスをクランに入れようとして譲らなかった結果だ」

 でも負けた方っつってんだよなあ……。
 シリアスな雰囲気が台無しだ。
 まあ、それが一番良いんだけどさ……ピンチっぽいのは性に合わない。

「もしどちらかが死んだらお前を取ることがその時に決まった。その約束を俺は果たす義務がある」

「いきなり《鉄壁》入りとか、この依頼に入れられた理由も、そう言うことか……」

「《鉄壁》を危険な目に合わせてしまうことは……申し訳ないがこれだけは譲れん。約束したからな」

 振り返って頭を下げるドルジに、《鉄壁》メンバーは笑顔を作る。

「クラマスが強情なのは知ってるぜ」

「おう、約束したら絶対に守ることだけは《鉄壁》だからな」

「だから、クラマスがそういうのならば、俺たちは協力するさ」

「助かる……さて、俺は理由を話した。だから次はルイス、お前が教えろ。何故あの小僧に固執する?」

 それは俺も思う。
 他のメンツも犠牲になっているのだから、ジャードだって同じだ。
 なのに、何故ジャードだけでも探しに行こうとしていたのか。

「実は、ジャードが変わってしまったのは僕のせいなんだ……」







=====
バタバタしていて更新遅れました申し訳ないです。
第2巻書影の方を、WEB版にて掲載しました。
まだ見ていない方はどうぞ見てくださいました。
そして担当イラストレーター様の素敵な宣伝イラストも掲載です!
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