装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

459 混み合ってまいりました

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 グレイトローバー、その名も轟く大盗賊の一人である。
 活動域は、トガルとデプリの境目に存在する山脈の北側。
 なんと、ラステーリを敗走に追いやった人物でもあった。

 まさかここに来て、そんな大盗賊の話があるとは……。
 急である。

 付き合って間もない頃に結婚の話しされて。
 そして困ってしまう感覚にちょっと似ている。
 ……想像での話、ね。

「少し前に盗賊達の抗争はようやく終わりを迎えた」

 ドルジは言う。
 それによって、ギリスとトガルを繋ぐ回路に出現するエルカリノの同じ。
 一大勢力の大盗賊が誕生したのだと。

「そもそもなんでこんなギリスの山奥にいるんですか」

 未だ半信半疑の俺は、そこについて尋ねてみた。
 奴さん、トガルとデプリの間の山脈で活動するんだろう。
 野山に潜伏して、野党的な活動をしているんじゃないのか?
 規模拡大したからって、ここまでくる意味がわからん……。

「いるんだったら、大陸の山脈でしょうに」

「何を言ってるんだ、街に普通にいるぞ」

「え……」

 ドルジの言葉に驚く。
 なんとなく、大盗賊ってRPGのように山中に砦を構えているもんだと思っていた。

「あー、普通にクラン潰しか……」

 拍子抜けしている俺の隣で、ノーマリーがそう言った。

「クラン潰し?」

「仕事の邪魔になりそうな冒険者とかクランを先に潰すんだよ、できる盗賊って。おっかねぇよなあ……」

 護衛依頼の最中に襲ったりとか。
 そういう盗賊ちっくな仕事をする上で、邪魔になりそうなのは先に潰しておくことがあるそうだ。
 他にも、規模を拡大した盗賊団は密輸密造も行うらしい。
 その上で、財産を隠しておく場所に立ち入る邪魔者は討伐専門クランなど。
 例外なく、良きタイミングで殺しておく対象となるのだ。

「ドルジさんは、どこでその情報を仕入れたってんだ? それが本当ならマジでやべぇぞ?」

 ノーマリーの問いにドルジが答える。

「仕入れた訳ではない。《編み髪》は野良のトロールに襲撃を受けたくらいでは対処できると俺は思っていた。故に、できないほどのトロールを嗾けられた、と言って恨みを我らに向けているのなら、我らではない何者かがそれを行った、と断定しても良いだろう?」

「勘ってことか」

「冷静に状況判断を行なってたどり着いた結論ではあるが、俺も半信半疑ではあった。だからこそ、誤解を解くために残った《編み髪》のメンバーをこの依頼に同行させたのだ」

 ドルジは続ける。

「《編み髪》からの疑惑の目は《鉄壁》内でも一つ禍根の火種としてくすぶりかねん。根も葉も無い噂を流布されればお互いの今後に不利益が生じるだろう。そしてそのままの状況でいた場合、もしその大盗賊が勢力をギリスまで伸ばしていることが発覚し、討伐隊が指揮された時……よくない結果を招く可能性もある」

 意外とめっちゃ考えるクランマスターだった。
 巨体と顔には似合わない、冷静な分析力。
 素直にその一面は尊敬できた。
 そして、ドルジは話を終えて一つ結論を導き出す。

「一旦退くぞ。弱小賊であるダンダが、そもそもグリフォンとトロールの巣食うこの山奥で活動なんかできる訳がなく。ああして果敢に攻めて来たのは、何かが後ろにいるからだ」

「なるほど……」

「ワイバーンライダーどころではない。むしろ、外から様子を伺うべきだ。ワイバーンライダーの集団と、盗賊たちによる熾烈な縄張り争いが始まるまで待って、そこから漁夫の利を狙うように我らも集団を組織し叩くべき──」

 その時、森の遠くの方から悲鳴が上がった。

『──うわあああああ!?』

 その声は、引き返して行った《編み髪》のメンバー達がいる方向から。

「み、みんな!?」

 聞き覚えがあったのか、すぐにルイスが誰の声か気づいていた。

「いかんな……トウジ、従魔を退かせろ」

「え?」

「離脱した《編み髪》達が戻った方向は、我らの退路だ」

 そこを塞がれたら、逃げる場所は一つしか選択できないとのこと。
 残された選択肢と言えば、山の奥。
 魔物や、ワイバーンライダーを相手しながら盗賊の相手もしなきゃいけなくなる。
 だったら盗賊の相手をする方がマシだとのことで、すぐにでも戻る決断をしたそうだ。

 な、なんだか非常に厄介な状況にいきなりなってしまっている。
 ダンダ団を山狩りしている場合じゃない。
 こうした狡猾な手腕は、まさに昔のラステーリ達を思い出した。

「トウジの従魔が戻ってきたら、すぐに下山するぞ」

「あっはい、できました」

 言われるがままに、山狩りを行うロイ達を図鑑に戻し、再召喚。

「──ラスイチだったのに、どう言う訳か説明してもらおうか盟主よ」

 すると、なんだか怒ってらっしゃるロイ様がいた。

「ご、ごめんって。でもそう言う状況じゃなくなってるっぽいんだ」

「詳しく説明しろ、盟主よ」

 か、顔が近い。
 圧がすごい。

「い、一瞬で戻せるのか……? そう言えば、常に連れていないから召喚スキルだったな……コボルト、ゴーレム、コレクションピークを常に引き連れているから、召喚ではないと騙されていたぞ」

 その様子を見ながら眉をあげるドルジ。
 冒険者相手にだったら、こうして油断を誘うこともできるんだな、と思った。

「とにかくまだ良い状況だ」

 ドルジは首を振って気を取り直す。

「時間をかければかけるほどに不利になるだろう。速やかに、全員で力を合わせて下山しよう」

「──説明しろ! 不敬罪で殺すぞ!」

「むっ!?」

 なぜかブチギレ出すロイ様。
 王族なのに置いてけぼりにされている状況が嫌だったのだろうか?

「私はさっさとやるべきことを終わらせて妻と夕食を取ることにしているのだ! あまり時間をかけさせるな!」

「す、すいません!」

 怒ってる理由そっちだった!

「ト、トウジ! 自分の従魔だろうに、な、何とかしてくれ! おっかねえよ!」

「わ、わかってますって!」

「ロイ様聞いてください!」

「速やかに話せ」

 俺は状況を説明した。
 ワイバーンライダーの他に、大盗賊までいる可能性があること。
 そして今、退路を塞がれつつあるのかもしれない悲鳴が聞こえたこと。
 つまり、この森はなんだか非常に混み合った状況になってるってことだ。

「──以上です! 説明終わりました!」

 ロイ様にペコペコと頭を下げる俺。
 それを見ながらイグニールが呆れたように言った。

「毎回思うけど……トウジって怖い顔に弱いわよね……」

「トラウマでもあるし?」

 す、好き放題言いやがって!
 そこは認めるけどね!

 ステータスとかレベル的には強くなったとしても。
 やはりそう言うのには中々慣れないものだった。
 社会に怯えて逃げてきた、そこが如実に出ていると思える。
 今この場ではっきり言っておくが、権力にも弱いぞ。
 下克上なんかせず、逃げの一手を選ぶくらいなんだからね!

「ふむ、山狩りの対象が増えただけで、造作もないわ──諸君聞いたか」

『承知』

 再び出てくるキングス達。

「では、先導し、出てくる盗賊と思しき連中は全て狩──」

「──ギャオオオオオオオオオオオオ!」

 ロイ様の声をかき消すように、また別の方向から雄叫びが聞こえた。
 聞いたことある、ワイバーンの声だ。

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