装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

457 久しぶりの野盗パイセン

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「トウジ!? 大丈夫かしら!!」

「ォン!? アォン!!」

 後頭部に手斧が直撃した瞬間を見ていたイグニールとポチが駆け寄ってくる。
 手で押さえながらHPを確認すると、1だけ減っていた。

 まあ、それもそのはず。
 手斧は錆びれて攻撃力も低そう。
 対して、俺はもうVIT値1万超え。
 さらに、ゴレオがいる事でダメージ半減。

「大丈夫大丈夫、ちょっとびっくりしたけど」

「そう……まあそれもそうよね、あんな鈍らじゃ」

 イグニールの言う通り、鈍らは通用せんのだ。
 せめて砥いでから来いよな、まったく。

「アフゥ……」

 ポチも一安心とばかりにため息をついていた。
 そんな様子を見ていたノーマリー達が唖然とした顔で言う。

「……今、もろ後頭部に刃が当たってたよな?」

「見たぜ、俺も」

「俺もだ俺も」

「私も」

「私も」

 兜も被らずに頭の防御はどうしてるんだ、と言わんばかりである。
 フード付きローブには頭部を守る機能搭載してること知らないのだろうか。
 それに、VITを強化していれば生身もそれなりに強くなる。

 装備を身につけていないところがダメージを受けるとか、そう言う仕様だったら。
 俺は邪竜の尻尾の一撃とか、サンダーソールの雷球で死んでいる。

 頭部はヘッドショットとか、クリティカルヒット的な概念もあるかもしれない。
 だが、過剰にVITを強化していれば、鈍らじゃヒットにもならんよ。

「……不届き者の剣は装備が堅牢なのかと思っていたが、体が丈夫なのか……?」

「いや、まあ……そっすね、ハハハ」

 《鉄壁》から体が丈夫とのお墨付きをいただいてしまった。
 とりあえずそう言うことにしておきましょう。
 説明するのも面倒だしね。

 でも、装備を脱いだらイグニールにすら腕力で負けます。
 本当の姿は雑魚なんです。

「で、誰が投げたんだ……この手斧は……」

 手斧を拾って、飛んで来た方向を睨んでいると、誰かが目の前に躍り出た。

「ハッハーッ!! まず一人だぜぇ!!」

 両手に同じ様な手斧を一本ずつ携えた、ボロボロの装備を身につけた小汚い男。
 なんとなく、その風貌から察する。

 ……野盗だった。
 懐かしき、野盗パイセンである。

「……って、あれ? なんで死んでないんだ?」

「おい、ちゃんと狙えつっただろうが!」

「狙ったよ! 痛って声聞こえて来たぜ!」

「生きてんじゃねーか!」

 痛って声聞こえてるなら、それは当たったとしても軽傷くらいなのでは?
 野盗の会話を聞いてそう思った。
 手応えあったら痛みに叫ぶし、重症だったら叫びも上がらん。
 それこそ一撃だったら声も出ないよな?

「こいつら、アホ?」

「アォン……」

 どことなく、昔出会った野盗達。
 ラステーリとは、かなり違うタイプの野盗だなと思った。

「ま、いいぜ。幸先悪いが、どっちにしろ殺して奪うことには変わりねぇや」

「そうだな、取り囲んでやっちまうべ?」

 気を取り直した野盗は言う。

「おら! 山狩りだぜ! 集合しろよダンダの一族! ダンダ団の力を見せてや──ペッ」

 意気揚々と松明に火をつけて、それを掲げた男の腕が切れ落ちる。

「ぁぎゃああああああああっっ!!」

「ダンダのお頭ぁっ!?」

 腕を抑えて倒れた男に駆け寄る、手斧を持った男。
 セリフ的に、目の前に出て来たのが野盗のトップだったのか。

 なんというか……バカだ。
 勝てるかもわからない敵の前に出てくるなんて、バカだ。

 エルカリノを見習え。
 真打は基本一番後ろで、満を持して登場するもんだぞ。

「だ、大丈夫かお頭! おい!」

「すぐに止血しろ! お頭ぁあああ!」

「あぎゃあああああ! いたいよー!」

「こ、こんな酷いことを、よくも!」

 俺をキッと睨みつける野盗の一人。
 そう、腕を斬ったのは俺だ。

 後頭部に一撃もらってるんだから、仕返しとばかりに思いっきり投げた。
 本当は投げた男にぶつける予定だったのだけど。
 すっぽ抜けて隣のお頭っぽいやつの腕に命中してズバッといってしまった。

「トウジ容赦ねえなおい……」

「野盗に人権はないです」

 昔散々やられてるし、野盗とか賊に落ちたやつにも無駄な恨みを受けた。
 ゴキブリと一緒だ、こう言うのはさっさと滅ぼしてしまった方がいい。
 割と根に持つ性格だから、普段はあんまり根に持たない様に自制しているけど。
 こういった手合いはまた別なのである。

「集まれ、ダンダ団の連中は全てここに集結しろ!」

「であえであえー!」

 そんな声とともに、奥からぞろぞろと出てくる野盗の方々。
 数で言えば、30人くらいいらっしゃった。
 マジでゴキブリみたいだな……。

「出ろ、ロイ」

 わらわらと武器を携えて俺たちを伺う野盗を見ながら、俺はロイを召喚した。
 王冠含みで7メートルを近いその巨体に、盗賊達は慄いている。

「──雑魚相手にやけに心が燃えたぎってるではないか、盟主よ」

 召喚魔法陣から出現したロイは、野盗の顔を見ながらやれやれといった表情を作っていた。

「よし、王族全部出してくれ。この盗賊を全部囲うぞ」

「私はあまり格下を弄ぶ様な趣味はないのだが……?」

「囲うぞ」

「まあ、命令ともあれば致し方ない。こちらが一撃、宣戦布告を受けているのだからな」

 やや乗り気ではなかったものの、ロイは渋々頷いてくれた。

「別にキングさんが怖いからとかじゃなくて、大勢を囲むならロイが良いなって思っただけだからね?」

「聞いてないんだが……? それは自供か盟主よ?」

「ぐっ」

 語りに落ちてしまった。
 まあいい、ロイは強い相手以外に出すなとかそんなの言ってないからな。
 この後、無駄に呼ぶなって言われたらそうするけど。
 まだ何も言われてない今はそんなの言われてないって駄々こねるもんね!

「さて、ならば盟主に従い王族を呼び出そう──」

 と、ロイが前に出た瞬間。
 野盗達からこんな声が上がる。

「ス、スライムキング……?」

「いやスライムキングにマントとかあったっけ……?」

「わ、わかんねえけど、冠ついてるのはスライムキングだよな?」

「ど、どうする?」

「知らねえよ、たかがスライムだろ! こっちはお頭やられてんだ!」

「おうよ!」

「雑魚のスライムが大きくなったところで、雑魚には変わらん!」

「ハッ! 俺らを大きさでビビらせようたって、そうは行かねえぜ?」

 スライムは雑魚だとか。
 大きいだけだとか。
 たかがスライムだとか。
 スライムキングだとか。

「──キングではない、ロイヤルだバカめ」

 そんな言葉を吐き捨てる野盗達にロイがボッと地を蹴って前に出る。
 そして、腕を抑えるお頭と思しき男をぶん殴った。

「ギャッ──!?」

「お頭ああああああ!?!?」

 きりもみ回転して飛んでいくお頭。
 周りにいる野盗達を睨みながら、ロイ言う。

「……こういう薄汚く、知性の欠片もない奴は好かん。適当にいたぶって放っておけば良いと思っていたのだが、気が変わった」

 あーあー、怒らせちゃったよ。
 一つ上のクラスに進化したロイヤルは、謎のプライドを持っているからな。
 下等種と一緒にされたのが逆鱗に触れたのだろう。

「──侮辱罪で極刑に処す」

 すぐに王族を全て呼び出して、一気に取り囲んだ。
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