装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

450 麓の村にたどり着いた

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 それから、5日ほどかけてようやく俺たちは現地へとたどり着いた。
 移動前のなんとも言えない不穏な空気に辟易としていたけど。

 馬車での移動は各馬車に一つのパーティー単位、食事もパーティー単位。
 意外と他のパーティーと依頼意外で交流することはなく平和に過ごせた。

 さらに傷の舐め合いという訳ではないが、ノーマリー達ともそれなりに楽しく過ごせた。
 彼らも俺らと同じように気まずさを感じていたから、同じもの同士ということである。

「やっとつきましたね」

「そうだな、お前達がいてくれなかったら精神的にどっと疲れていたよ」

「こちらこそです」

「ジャードって野郎はコボルトとかゴーレムとか馬鹿にしてたけどよ、実際すげえよな」

「そうですか?」

「うん、海での戦いとか俺は間近で見てた」

 ポチの遠距離から指揮官に当てた矢の一撃とか。
 ゴレオの暴れっぷりのことだな、懐かしい。

「それに料理もあんなに美味いなんて尊敬する」

 夕食を共にした、ということはポチの料理を食べたということだ。
 ノーマリーのパーティーは大絶賛。
 パーティー同士の交流も進み、なかなか良い日々を過ごせたと思う。

 どうなることかと思ったが、こうした良い奴らもいるのだ。
 それを再確認できた、そんな一幕である。

「あとな、あいつらは見た目で侮ってるけどさ」

 ノーマリーは言う。

「トウジは普通の見た目をしてて、実はえげつねえ強さ持ってるだろ?」

「ええ……?」

「ヤベェスライムキングにロック鳥とか……あの時の戦闘は、最後まで戦った冒険者の中で貿易船の奇跡だっつってめちゃくちゃ他の冒険者に語り継がれてるぜ?」

 俺のレベルがわかるのか、と一瞬思った。
 けど、俺ではなくキングさんとワシタカくんのことだった。

「語り継がれてるんですか……俺特に何もしてないですけど……」

「それだけ強烈だったってことさ」

 確かに俺も驚くほど強烈な一撃だったのは覚えている。
 嵐によってシケっていた海が、一瞬にして凪になったのだから。

「だからこの依頼でトウジの顔を見た時、これは勝ったって思ったぜ」

「そんな買い被らなくても良いですよ」

「いいや、平凡だからこそ俺は本当に強い奴がわかる」

 そう言いながらノーマリーは白い歯をむき出しにしてサムズアップした。

「格好悪いがこれからも贔屓にさせてもらうぜ?」

「リーダー本当に格好悪い! ダサい! 自分で言ってる!」

「うるせー! これが俺の処世術だ!」

「ハハハ、こちらこそ贔屓にさせてもらいます」

 割とこうやってコミュニケーションを円滑に取れる人は好みだ。
 初めからツンケンするよか、よっぽど行動を共にしやすい。

 どんな職場でもそうだけど。
 そこに足が向くかって大事なんだよな。

「トウジ、そろそろ現地の集合場所よ」

「うん、そうだね」

 イグニールの言葉に頷くとギリス中央山脈の麓に存在する村の一軒家を借りた場所へと俺らも続く。
 そこがワイバーンライダー討伐のために組織された冒険者たちの一つの拠点だ。

 冒険者は俺たちの他にもぞろぞろといる。
 それはすでに現地で待機している発見組のことだ。

 ワイバーンライダーを発見して、その動向を監視するために残った冒険者。
 現地に集まった合計パーティー数は、10パーティー。
 人数で言えば、軽く50人を超える大規模集団ともなった。

 故に、陣頭指揮を取る存在が欠かさず必要となり、《鉄壁》のドルジ。
 クランマスターである彼にその白羽の矢が立ったと言うことだ。

「割と多いわね」

「うん」

 小規模なスタンピードにはこの人数で対応できそうなほどだった。
 そして、それだけワイバーンライダーの規模が大きいこと表している。

「ちゃんと連携できるか心配になってきたなあ」

 以前、スタンピードの時は前線にはいたけど強敵と戦っていたのは高ランクパーティー。
 俺とポチはその合間を縫うように駆けずり回っていただけだった。
 こうして正式な戦闘員として依頼に出向くとなると、なんとも言えない緊張を感じる。

「何言ってんのよ、自分のレベルを考えてみなさい。それにステータスも」

「そうは言ってもなあ……」

 こうして今から討伐に行く、という依頼。
 防衛でもなく、相手の場所に行って倒す依頼はあまり受けたことがなかった。
 なし崩し的に、そういう場面に遭遇してしまうことはもちろんある。

 しかし俺が率先して倒しに行くのは……オーガの時以来だった。
 腰を据える、腹を括る。
 それが一番苦手な人間だから、やっぱり緊張もしてお腹も痛くなるさ。

「それは高ランクになれば野良以外のパーティーはそれぞれ持ち回りが決まってるのよ」

「う、うん」

「大まかな指示と動き方の説明はあるけど、細かな部分はパーティー任せが常なんだから」

「なるほどね」

 やはり、先輩冒険者のイグニールがいてくれて助かった。
 心強いです、好き。

「クエッ」

「コレクトがスライムたくさん倒した時と大違いっスね。だって」

「時と場を考えろ」

 あの時はキングさんがいた。
 ワシタカくんもいた。
 そもそもドロップ拾いで精一杯だったんだよなあ……。

「大丈夫よ、トウジ」

 イグニールが俺の前に来て手を握ってくれる。

「修羅場は何度もくぐり抜けて来たでしょ?」

「まあね」

 本当に色々あったよ。

「それに比べたら、ワイバーンライダーなんてどうってことないわよ」

「それもそうだな」

 キングさんが近くにいたら、覚悟を決めるのが遅いと俺を怒るだろう。
 邪竜とか、小賢者とか、ダンジョンコアとか。
 他にもネームドの伝説級とかと対峙して来た経験がある。

 まあ、なんとかなるか!
 みんながいてくれるからね!

 それに、ポチやゴレオを見た冒険者はだいたい俺らを侮る。
 前線よりもコボルトを使用した索敵メインでの動きになるはずだ。

「よーし頑張るぞ」

「そうね頑張りましょ」

「ォン!」

「クエッ!」

「どんな敵でもあたしがけちょんけちょんにするし!」

 シュッシュッシュッと空中でシャドーボクシングをするジュノー。
 ハハッ、ダンジョンから出たダンジョンコアに何ができるんだか。

「おい、ちょっと良いか?」

 集合した場所の一角で意気込んでいると、ドルジが俺らの前にくる。

「あっはい、なんでしょう」

 慌てて背筋を伸ばして気をつけして話を聞く。

「戦力温存のために、《名無し》と《平々凡々》には前線での索敵と雑魚との戦闘を任せたい」

 引っ張ってくれるのかと思っていたら、最初の露払いに大抜擢か……。
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