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本編
448 血気盛ん
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依頼自体は当日出発とのことで、俺はイグニールたちを連れて集合場所である北門にやって来ていた。
今回は昇格依頼でもなく、Aランクパーティーが集められた遠征討伐。
ギルドから選ばれた高ランク帯の冒険者が集うとあって、前のCランクのような気苦労もないはずだった。
……のだが。
「コボルト? テメェなめてんのか?」
「ええ……」
待ち合わせ場所に向かって開口一番。
右に剃り込み、左は編み込み。
なんともジャンキーちっくな面構えをした短髪の男にそんな言葉を浴びせられた。
「しかも他はゴーレムとコレクションピーク?」
男の冒険者はポチから俺の肩に止まるコレクト。
そしてイグニールの隣に佇むゴレオに目を向けて、大きくため息をついた。
「はあ、召喚師かなんだか知らねえけど、ギルドもわけわかんねぇの応援に寄越すなよな」
なんだこいつ……。
面倒だなと思っていると、後ろからパーティーメンバーと思しき男が止める。
「ジャードやめろ、いきなり何やってんだ」
「本当にAランクか疑問に思ったんだよ」
「ギルドが寄越したんだから、当たり前だろうが」
男は振り返って俺たちに頭を下げる。
「すまない。こいつは思ったことをすぐ口に出すタイプなんだ。私がパーティーを代表して謝罪する」
「ああ、いえ……謝罪してもらえたなら大丈夫です」
ペコペコと頭を下げるパーティーリーダーの男。
なんとも血気盛んな若い後輩に、振り回されている先輩って感じがした。
苦労してそうなので、そこに免じてジャードと呼ばれる男のことは考えないことにする。
気にしても、時間と精神の無駄だからな。
「ほら、頭下げろ。いきなりギクシャクしたら面倒だろうが、まったく」
「チッ、俺は自分より弱い奴には頭はさげねぇよ」
「良いから下げろ」
「さーせんっしたーあー」
気だるそうに頭を下げた後、ジャードは舌打ちして俺たちから離れてった。
自分より弱い奴には頭を下げない。
なんとも冒険者らしいプライドだな、なんて思った。
「ムカつくし!」
「まあ、リーダーっぽい人も手を焼いてるようだから、元からああなんだろ」
頬をぷくーっと膨らませるジュノーを宥める。
あんなんでも、依頼の指名を受けるほどのAランクパーティー。
実力は折り紙つきってことだ。
他のメンツは俺らに向かってペコリと頭を下げているようで、印象は悪くない。
あいつだけ、ちょっと尖っちゃってるって訳なのだ。
血気盛んなのは悪くないし、尖っちゃうのも若気の至りってことにしておく。
「ポチとゴレオとコレクトは傷ついてないかしら?」
「ォン」
「クエ」
「……」
イグニールの言葉に、みんな首を横に振っていた。
特になんとも思ってなさそうで何より。
昔から散々こうして言われて来たし、もう気にもならないんだな。
俺たちはこのメンツでいろんな困難に立ち向かって来た。
だから、別に今更何を言われようが、周りからどう思われようが、なんだって良いのである。
「ま、こう言う最初の格付け合いはどこにでもあるから、気にしてもしょうがないわね」
「そうそう、気にせず行こうよ」
侮るなら侮っとけや。
ぜったいポチの飯あいつには食わしてやらんもんね!
「お、トウジさんじゃん、あんたもこの依頼を受けてたのか?」
「ん?」
まだ一部の冒険者が集合していないので、待っていると今度は他の集団が話しかけてきた。
「えっと……」
知らない顔だったから返答に困っていると、男は言う。
「まあ、覚えてないのもわかるぜ。海賊の時以来だしな」
「あっ、あの時一緒に船に乗ってた方ですか?」
なんと、海賊団と戦った時、貿易船に乗ってた方だった。
だったら俺を知っていてもおかしくない。
ワシタカくんとキングさんも出して、だいぶ派手な立ち回りをしたからなあ。
「乗ってたって言うか、一緒に戦った仲間なんだが……覚えてないのな……トホホ」
男はしょんぼりとした顔で項垂れる。
その後ろからケラケラと笑いながら他のパーティーメンバーたちがフォローしていた。
「リーダーどこにでもいそうな顔だからしょうがないって!」
「よっ、どこにでもいそうな顔ナンバーワン!」
「それやめろよ!」
後ろを振り返ってフォローではなくからかうメンツに言い返す男。
とりあえず、俺もしっかり謝っておこう。
「すいません、覚えてなくて……」
「いや、いいんだ。改めて自己紹介しておくよ。俺はノーマリー。Aランクパーティー《平々凡々の仲間》のパーティーリーダーを勤めているもんだ」
「あ、どうも。よろしくお願いします」
平々凡々の仲間って、まさかどこにでもいる顔とやらとかけているのだろうか?
そう思っていると、察したようにノーマリーが言う。
「パーティーネームに関しては、仲間が勝手に決めたから……その、気にしないでくれ……」
「あっはい」
平々凡々は彼のことで、仲間ってパーティーメンバーのことなんだな。
面白半分でつけたような名前だけど、悪くないよね。
なんだかんだ、信頼されている証拠なんじゃないかな、と雰囲気で察した。
「ちなみにトウジさんに絡んでた奴らは《誓いの編み髪》って名前のパーティーだぜ」
「誓いの編み髪ですか」
遠目から見てみると、確かにみんなどこかしら髪を編み込んでいた。
それがパーティーの証みたいなもんか。
ギャングのタトゥー的な、そんな感じなのだろうか?
「それなりにAランクの歴も長くて、実力も申し分ない良パーティー……いや、クランだった」
=====
今日がホワイトデーだったので、限界を越えた更新。
いつも読んでいただきありがとうございます。
本当にありがとうございます。ハッピーホワイトデー。
今回は昇格依頼でもなく、Aランクパーティーが集められた遠征討伐。
ギルドから選ばれた高ランク帯の冒険者が集うとあって、前のCランクのような気苦労もないはずだった。
……のだが。
「コボルト? テメェなめてんのか?」
「ええ……」
待ち合わせ場所に向かって開口一番。
右に剃り込み、左は編み込み。
なんともジャンキーちっくな面構えをした短髪の男にそんな言葉を浴びせられた。
「しかも他はゴーレムとコレクションピーク?」
男の冒険者はポチから俺の肩に止まるコレクト。
そしてイグニールの隣に佇むゴレオに目を向けて、大きくため息をついた。
「はあ、召喚師かなんだか知らねえけど、ギルドもわけわかんねぇの応援に寄越すなよな」
なんだこいつ……。
面倒だなと思っていると、後ろからパーティーメンバーと思しき男が止める。
「ジャードやめろ、いきなり何やってんだ」
「本当にAランクか疑問に思ったんだよ」
「ギルドが寄越したんだから、当たり前だろうが」
男は振り返って俺たちに頭を下げる。
「すまない。こいつは思ったことをすぐ口に出すタイプなんだ。私がパーティーを代表して謝罪する」
「ああ、いえ……謝罪してもらえたなら大丈夫です」
ペコペコと頭を下げるパーティーリーダーの男。
なんとも血気盛んな若い後輩に、振り回されている先輩って感じがした。
苦労してそうなので、そこに免じてジャードと呼ばれる男のことは考えないことにする。
気にしても、時間と精神の無駄だからな。
「ほら、頭下げろ。いきなりギクシャクしたら面倒だろうが、まったく」
「チッ、俺は自分より弱い奴には頭はさげねぇよ」
「良いから下げろ」
「さーせんっしたーあー」
気だるそうに頭を下げた後、ジャードは舌打ちして俺たちから離れてった。
自分より弱い奴には頭を下げない。
なんとも冒険者らしいプライドだな、なんて思った。
「ムカつくし!」
「まあ、リーダーっぽい人も手を焼いてるようだから、元からああなんだろ」
頬をぷくーっと膨らませるジュノーを宥める。
あんなんでも、依頼の指名を受けるほどのAランクパーティー。
実力は折り紙つきってことだ。
他のメンツは俺らに向かってペコリと頭を下げているようで、印象は悪くない。
あいつだけ、ちょっと尖っちゃってるって訳なのだ。
血気盛んなのは悪くないし、尖っちゃうのも若気の至りってことにしておく。
「ポチとゴレオとコレクトは傷ついてないかしら?」
「ォン」
「クエ」
「……」
イグニールの言葉に、みんな首を横に振っていた。
特になんとも思ってなさそうで何より。
昔から散々こうして言われて来たし、もう気にもならないんだな。
俺たちはこのメンツでいろんな困難に立ち向かって来た。
だから、別に今更何を言われようが、周りからどう思われようが、なんだって良いのである。
「ま、こう言う最初の格付け合いはどこにでもあるから、気にしてもしょうがないわね」
「そうそう、気にせず行こうよ」
侮るなら侮っとけや。
ぜったいポチの飯あいつには食わしてやらんもんね!
「お、トウジさんじゃん、あんたもこの依頼を受けてたのか?」
「ん?」
まだ一部の冒険者が集合していないので、待っていると今度は他の集団が話しかけてきた。
「えっと……」
知らない顔だったから返答に困っていると、男は言う。
「まあ、覚えてないのもわかるぜ。海賊の時以来だしな」
「あっ、あの時一緒に船に乗ってた方ですか?」
なんと、海賊団と戦った時、貿易船に乗ってた方だった。
だったら俺を知っていてもおかしくない。
ワシタカくんとキングさんも出して、だいぶ派手な立ち回りをしたからなあ。
「乗ってたって言うか、一緒に戦った仲間なんだが……覚えてないのな……トホホ」
男はしょんぼりとした顔で項垂れる。
その後ろからケラケラと笑いながら他のパーティーメンバーたちがフォローしていた。
「リーダーどこにでもいそうな顔だからしょうがないって!」
「よっ、どこにでもいそうな顔ナンバーワン!」
「それやめろよ!」
後ろを振り返ってフォローではなくからかうメンツに言い返す男。
とりあえず、俺もしっかり謝っておこう。
「すいません、覚えてなくて……」
「いや、いいんだ。改めて自己紹介しておくよ。俺はノーマリー。Aランクパーティー《平々凡々の仲間》のパーティーリーダーを勤めているもんだ」
「あ、どうも。よろしくお願いします」
平々凡々の仲間って、まさかどこにでもいる顔とやらとかけているのだろうか?
そう思っていると、察したようにノーマリーが言う。
「パーティーネームに関しては、仲間が勝手に決めたから……その、気にしないでくれ……」
「あっはい」
平々凡々は彼のことで、仲間ってパーティーメンバーのことなんだな。
面白半分でつけたような名前だけど、悪くないよね。
なんだかんだ、信頼されている証拠なんじゃないかな、と雰囲気で察した。
「ちなみにトウジさんに絡んでた奴らは《誓いの編み髪》って名前のパーティーだぜ」
「誓いの編み髪ですか」
遠目から見てみると、確かにみんなどこかしら髪を編み込んでいた。
それがパーティーの証みたいなもんか。
ギャングのタトゥー的な、そんな感じなのだろうか?
「それなりにAランクの歴も長くて、実力も申し分ない良パーティー……いや、クランだった」
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今日がホワイトデーだったので、限界を越えた更新。
いつも読んでいただきありがとうございます。
本当にありがとうございます。ハッピーホワイトデー。
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