装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

443 妥協なんてないさ

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「いやー、浄水の力はすごいね! あっという間に異臭が消えちゃったよ!」

 パンドラボックスの解放からしばらく、とんでもなかった匂いは消え去った。
 浄水を霧状にして研究所各所に噴射したからである。
 火災用に取り付けていた散水装置が、火災ではなく異臭に役に立っていた。

「高コストになるが、飛行船内部を循環させることによって、空気清浄を行う装置を作れないだろうか?」

「さすが娘、僕も考えていたよ。同時に、飛行船内も一定温度に保つことができるね」

「浄水はそれ自体が魔力を蓄積しているし、予備魔力として非常時に使うこともできないか調べてみよう」

「じゃ、確認作業は頑張ってね。僕は実際に試作機に起こしてテストを開始するから」

 取り急ぎ、シャワーを浴びてきてもらってスッキリとした表情をする親子。
 浄水のこの結果を受けて、早速飛行船内部の浄化装置に組み込もうとしていた。

 俺の周りって、話が進まない連中が多いと思っていたけど。
 こいつらは別のベクトルで話が早く、そして進まないなと理解した。
 研究者って、みんなこういうタイプなのだろうか?

「で、君はいったい何をしに来たんだい?」

 差し入れに持って来たチョコレートをぽりぽりと食べながらシレッとそう尋ねるオスロー。

「竜樹持って来たから、その報告だよ……」

「おおっ! 竜樹を取ってこれたのかいトウジくん!」

「苦労しましたけどね」

 ポチをやられてしまったり、左腕を失ったり。
 でも、新たな仲間、そしてカカオ。
 他にも色々とお目当のものを手に入れることができた。
 和解もできたわけだしね。

 それに、まだ詳しく見てないがイグニールの杖も強化した。
 スペリオル装備が一体どれほどの強さになったのか。
 そいつは依頼を受けて冒険に出た時に語らせてもらおうと思う。

「大きすぎてここでは出せませんが、しっかり量は確保していますので」

「了解だよ。試作を終えて、実際に作り始める段階で使おうか」

 オカロは言う。
 竜樹の出番は、普通の丈夫な木材を使って試作とテスト飛行をしてから。
 高価な代物で盗難の恐れもあるから、俺が持って置いた方が良いそうだ。

 5億ケテルくらいする素材だからなあ……。
 持ってるのがバレると色々と厄介ごとを招くのだろう。

 金だってそうだ。
 だから、ちゃんと依頼を受けてお金稼いでますよって体裁をとらなきゃね。
 Aランク冒険者ともなれば、実力も認められて中々そう言う奴らも手を出せないのだし。

「ふむ、量があるとなれば……竜骨以外にも骨組み、張板、全てで竜樹を用いて使えるの可能性もあると?」

「娘ちゃんさ、僕の話聞いてた?」

「聞いていた。最強最高の飛行船を作るのならば、その全てを竜樹にしたいとは思わないか?」

 あっ、なんか最強最高ってどこかで聞いたことある!
 どこだったかなあ……もう忘れちゃったよ……。

 オスローは言う。

「理論値最強で最高の飛行船を作るには、全てを竜樹にするのが必要不可欠だぞ?」

「おおう……」

 理論値最強、と言う言葉を聞いて流されそうになってしまう俺。
 大は小を兼ねると言うように、最強は全てを兼ねるのだ。
 あとでこうしておけばよかった、なんてならないように、最初から良い物を作っておく。
 これ、買い物の鉄則だね。

 楽器でも、PCでも、なんでもそう。
 買うと決めたら良いものを、手の届く範囲で。

「ああ、トウジくんも……そういうタイプの人間だったよ……」

 オスローに流される俺を見て、額を押さえてため息をつくオカロ。
 彼は、竜樹自体は他の民間機にも使おうと思っていたらしい。
 そうすれば安全性や丈夫さをアピールできて、運用する際の強みとなるから。

「引き抜いた仲間内から聞いた話だけど、C.Bファクトリーも飛行船に着手してるよ」

「そうなんですか」

「うん。諦めは悪いやつらだからね」

 オカロは続ける。

「そんなわけだから、竜樹を使う飛行船は僕らの強みになるから無駄遣いは頷けないかな?」

 なるほど、だったら足りない分はまた取りに行けば良い。
 もうグルーリングたちとは繋がりがある。
 それに、苗木ももらって来たからそれをどんどん育てて行けば良いのだ。

「足りなかったらまた取りに行って来ます」

「ええ、まあ取って来た本人が言うなら……頷くしかないけど大丈夫かい?」

「大丈夫です」

 作ろう、最強で最高の飛行船。
 こればっかりは妥協するなと俺の心が言うのだ。
 空の快適空間が欲しいのである。

「クフフフ、私とトウジは飛行船を通して価値観を共有しているからな、心を通わせている夫婦のように、トウジの好みが私には手に取るように良くわかるのだよパパ」

「なんとなく父親として複雑なセリフだけど、トウジくん、そうなのかい?」

 振り返って俺に聞くオカロ。

「いや、わかんないです。パンダと心通わせたことないし」

「パッ──失礼な! シャワーを浴びたからちょっとはマシになってるだろう!」

「どう、ポチ?」

 俺の足元にいるポチに尋ねてみると、ポチは無言でプイッと首を振った。

「ぐふっ! 思ったよりメンタルに来てしまったようだ……」

 オスロー完全に嫌われたな、俺と心を通わせるならまずポチと通わせろ。
 話はそれからだぜ。

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