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本編
440 現状と頑張り屋さん
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少し話を整理しよう。
兼ねてC.Bファクトリーは、内部の腐敗によって禁止されている取引やアカン感じの魔導機器製作に着手していた。
禁止国との裏取引や密輸。
相手の魔力をちょこっと吸収して一つに集約する倫理に反した魔導機器。
それに反発したC.Bファクトリーの代表であるオカロは殺されかけ。
娘のオスローは、研究所に束縛されるという扱いを受けていたのだ。
だが、それは解決している。
たまたま死にかけていたオカロを俺らが救い出し、娘のオスローもちゃっちゃと内部に潜入して取り返した。
その時、オスローを束縛していたアイテムもぶっ壊し、倫理に反した魔導機器も別の物にすり替えている。
その後、元C.Bファクトリー代表と才能ある若き魔導機器研究者であるオスローとオカロを、アルバート商会頭取の娘であるマイヤーと繋げ、新しい魔導機器メーカーを作らないかという話になった。
さすがに関係ない他国の商会であるアルバート商会が、いきなりノウハウもなく新規参入は難しい状況だったのだけど、ちょうど繋がりのあったイグニールの友達であるローディ、彼女の勤める研究所に出資を行い参入。
C.Bファクトリーに一泡吹かせつつ、飛行船製作に着手することになったのだ。
竜樹を取りに行ったのは、オスローたちが飛行船の素材には必要不可欠だと言ったからである。
「ほら、とりあえずベッドに寝なよ」
「あかん! まだ終わってない!」
お姫様抱っこして自分の部屋に連れて行こうとすると、マイヤーはバタバタと手足を動かした。
「今日中に予算案とかまとめて、他の商会に交渉行ったるんや!」
「他の商会に交渉?」
「せやで、ええもん作ります言うて、お金を引っ張ってくるのが大事やろ?」
どうやら、研究開発費を国の補助以外からも引っ張ってくるために色々考えていたらしい。
資金繰りはアルバート商会の大資本と俺の金があれば良いのかと思っていたがそうではない。
そうして特価で降ろせる場所を探して、商品を回して行くのが重要とのこと。
「トウジの飛行船製作分のコストを除外したらな……意外とその他に予算を回すのはきついんや……」
「えっ? どゆこと?」
飛行船製作分のお金や素材はかなり準備したけど、どういうこと?
その言い方だと間接的に俺のせいってことになるんだけど……。
「この1ヶ月でオカロさんつながりの研究員をそれなりに引き抜いたんや」
「うん」
「それで最初は全員で飛行船の設計に着手してるんやけど……」
オカロは、自身の人望を元になんとか同額で来てもらえる人を引き抜いて来た。
しかし、研究員にも家族はいる。
C.Bファクトリーから引き抜くにはそれなりの報酬を出さなきゃいけない。
だが、飛行船に使う竜樹のためにお金を取っておくという前提があり、あまりお金を使えない状況。
研究者や従業員を養っていくための人件費が圧迫しているとのことだった。
「……帰りが遅くなってすまん」
「ええねん、ここはうちの腕の見せ所やろ?」
ベッドに寝かされたマイヤーは言う。
「普通の資金繰りはこうやってやるもんやし、それに……トウジに頼まれたからうちはやるんや」
「マイヤー……」
頑張り屋さんか!
俺も見習わなきゃいけない精神である。
そんなマイヤーに朗報だ。
「とりあえず竜樹は確保して来たから、竜樹のコストは全部研究所の人件費に回してくれ」
「ほ、ほんま?」
「うん、苦労したけどただでゲットしてきたから、そこは気にしなくていいよ」
それに、竜樹の苗木ももらったのであとはダンジョン内で育てることができる。
竜の実も分解して種を使って、さらに増やすことができる。
これで資源的な問題は、大きく解決したのだ。
「でもあかんわ」
マイヤーは首を振った。
「そこに頼ってちゃ、結局トウジ任せやろ? 他と取引して回して行かなあかんねん」
さらにマイヤーは続ける。
「ぬるま湯に浸かっとったら、いつまでたっても発展せんから、どっかで苦労しんと」
そんな訳で、販路や開発費用を求めて対外的に交渉する。
その役目を研究者の引き抜きに回るオカロの代わりにマイヤーが務めていた。
「アルバート商会を使った販路はどうなの?」
「それが、認可を受けてないと国外輸出があかんくてな……そのためには実績とかがいるんよね……」
「なるほど」
密輸扱いになってしまうから、先にやることがあった様だ。
知らなかった。
「でもって、研究員を引き抜かれたC.Bファクトリーの圧力とかあって、なかなか話を受けてもらえん」
「それでしのぎを削り合ってるって話だったのか……」
「せや、ここは実力や。あっちの圧力があったとしてもうちの方がええって思わせたらなあかんで」
マイヤーは立ち上がると、グッと拳を握った。
「飛行船の懸念は無くなったから、C.Bファクトリーに代わるブランドを立ち上げるんや。確かにシェアナンバー1のC.Bファクトリーは強い。けどな、うちらも負けないくらいのもんが揃っとるから、行けると確信しとる! ……って、あれ、足元がぁぁぁ~」
「おわっ」
ふらついて俺にもたれ掛かるマイヤー。
いくら頑張ろうとしても疲労は溜まっていく。
これ以上は寿命を削ってしまいかねないから、やはり寝たほうがいいだろう。
「やっぱり寝たほうがいい、とりあえず効率落ちるから」
「……ニャハハ、やっぱりそう?」
「うん、そこまで根詰めてくれるのはありがたいけど、健康第一だよ」
プライベート優先でも良いし、生きがいが仕事ならそれでも良い。
だが、しっかり健康でいることが大前提である。
深淵樹海に入る前に、色々と気づきました。
精神的疲労は、ポーションを使ってもあまり回復しない。
結論、寝たほうがいいのだ。
「はいトウジ、ポチとパインさんが作ってくれたホットチョコレートドリンクよ。マイヤーに渡してあげて」
「おお、ありがとうイグニール」
イグニールからもらったコップをマイヤーに渡す。
疲れた時はチョコレートだな。
「これはなんや?」
「深淵樹海でとってきたチョコレートだよ」
「甘くて美味しいから疲れバッチリとれるし! あたしの分は?」
「今は我慢しろよ……? もしくはポチに貰ってこい」
はーい、とリビングに飛んていくジュノーをやれやれと見送る。
「相変わらずやんなあ……」
「そうだね」
元気印のジュノーを見たマイヤーは、張っていた気が少し和らいだ様だった。
「飛行船が完成するまでは遠出はしないから、みんなで頑張ろう」
「トウジ……」
ちょっと涙ぐむマイヤー。
一人にさせてしまってすまないな、色々と背負わせすぎていた感が湧いてくる。
本当に申し訳ない。
商人歴は長く、腕もある。
だがまだ20歳になったばかりで、親元もずっと離れっぱなし。
寂しい気持ちもあるだろう、俺だってそうだ。
「とにかく今日はゆっくり休んで、みんなでご飯食べようぜ」
「うん……」
ポチとパインのおっさんが腕によりをかけて滋養強壮に効くご飯を作ってくれる。
まともに食事をしてないみたいだったから、美味しいご飯を求めているだろう。
やはり健康に一番大事なのは食生活だ。
そこはポチとおっさんがいれば大丈夫だな!
あいつらチートみたいなもんだし。
「あと言い忘れてたけど、ただいま、マイヤー」
「うん、おかえり……トウジィ……」
兼ねてC.Bファクトリーは、内部の腐敗によって禁止されている取引やアカン感じの魔導機器製作に着手していた。
禁止国との裏取引や密輸。
相手の魔力をちょこっと吸収して一つに集約する倫理に反した魔導機器。
それに反発したC.Bファクトリーの代表であるオカロは殺されかけ。
娘のオスローは、研究所に束縛されるという扱いを受けていたのだ。
だが、それは解決している。
たまたま死にかけていたオカロを俺らが救い出し、娘のオスローもちゃっちゃと内部に潜入して取り返した。
その時、オスローを束縛していたアイテムもぶっ壊し、倫理に反した魔導機器も別の物にすり替えている。
その後、元C.Bファクトリー代表と才能ある若き魔導機器研究者であるオスローとオカロを、アルバート商会頭取の娘であるマイヤーと繋げ、新しい魔導機器メーカーを作らないかという話になった。
さすがに関係ない他国の商会であるアルバート商会が、いきなりノウハウもなく新規参入は難しい状況だったのだけど、ちょうど繋がりのあったイグニールの友達であるローディ、彼女の勤める研究所に出資を行い参入。
C.Bファクトリーに一泡吹かせつつ、飛行船製作に着手することになったのだ。
竜樹を取りに行ったのは、オスローたちが飛行船の素材には必要不可欠だと言ったからである。
「ほら、とりあえずベッドに寝なよ」
「あかん! まだ終わってない!」
お姫様抱っこして自分の部屋に連れて行こうとすると、マイヤーはバタバタと手足を動かした。
「今日中に予算案とかまとめて、他の商会に交渉行ったるんや!」
「他の商会に交渉?」
「せやで、ええもん作ります言うて、お金を引っ張ってくるのが大事やろ?」
どうやら、研究開発費を国の補助以外からも引っ張ってくるために色々考えていたらしい。
資金繰りはアルバート商会の大資本と俺の金があれば良いのかと思っていたがそうではない。
そうして特価で降ろせる場所を探して、商品を回して行くのが重要とのこと。
「トウジの飛行船製作分のコストを除外したらな……意外とその他に予算を回すのはきついんや……」
「えっ? どゆこと?」
飛行船製作分のお金や素材はかなり準備したけど、どういうこと?
その言い方だと間接的に俺のせいってことになるんだけど……。
「この1ヶ月でオカロさんつながりの研究員をそれなりに引き抜いたんや」
「うん」
「それで最初は全員で飛行船の設計に着手してるんやけど……」
オカロは、自身の人望を元になんとか同額で来てもらえる人を引き抜いて来た。
しかし、研究員にも家族はいる。
C.Bファクトリーから引き抜くにはそれなりの報酬を出さなきゃいけない。
だが、飛行船に使う竜樹のためにお金を取っておくという前提があり、あまりお金を使えない状況。
研究者や従業員を養っていくための人件費が圧迫しているとのことだった。
「……帰りが遅くなってすまん」
「ええねん、ここはうちの腕の見せ所やろ?」
ベッドに寝かされたマイヤーは言う。
「普通の資金繰りはこうやってやるもんやし、それに……トウジに頼まれたからうちはやるんや」
「マイヤー……」
頑張り屋さんか!
俺も見習わなきゃいけない精神である。
そんなマイヤーに朗報だ。
「とりあえず竜樹は確保して来たから、竜樹のコストは全部研究所の人件費に回してくれ」
「ほ、ほんま?」
「うん、苦労したけどただでゲットしてきたから、そこは気にしなくていいよ」
それに、竜樹の苗木ももらったのであとはダンジョン内で育てることができる。
竜の実も分解して種を使って、さらに増やすことができる。
これで資源的な問題は、大きく解決したのだ。
「でもあかんわ」
マイヤーは首を振った。
「そこに頼ってちゃ、結局トウジ任せやろ? 他と取引して回して行かなあかんねん」
さらにマイヤーは続ける。
「ぬるま湯に浸かっとったら、いつまでたっても発展せんから、どっかで苦労しんと」
そんな訳で、販路や開発費用を求めて対外的に交渉する。
その役目を研究者の引き抜きに回るオカロの代わりにマイヤーが務めていた。
「アルバート商会を使った販路はどうなの?」
「それが、認可を受けてないと国外輸出があかんくてな……そのためには実績とかがいるんよね……」
「なるほど」
密輸扱いになってしまうから、先にやることがあった様だ。
知らなかった。
「でもって、研究員を引き抜かれたC.Bファクトリーの圧力とかあって、なかなか話を受けてもらえん」
「それでしのぎを削り合ってるって話だったのか……」
「せや、ここは実力や。あっちの圧力があったとしてもうちの方がええって思わせたらなあかんで」
マイヤーは立ち上がると、グッと拳を握った。
「飛行船の懸念は無くなったから、C.Bファクトリーに代わるブランドを立ち上げるんや。確かにシェアナンバー1のC.Bファクトリーは強い。けどな、うちらも負けないくらいのもんが揃っとるから、行けると確信しとる! ……って、あれ、足元がぁぁぁ~」
「おわっ」
ふらついて俺にもたれ掛かるマイヤー。
いくら頑張ろうとしても疲労は溜まっていく。
これ以上は寿命を削ってしまいかねないから、やはり寝たほうがいいだろう。
「やっぱり寝たほうがいい、とりあえず効率落ちるから」
「……ニャハハ、やっぱりそう?」
「うん、そこまで根詰めてくれるのはありがたいけど、健康第一だよ」
プライベート優先でも良いし、生きがいが仕事ならそれでも良い。
だが、しっかり健康でいることが大前提である。
深淵樹海に入る前に、色々と気づきました。
精神的疲労は、ポーションを使ってもあまり回復しない。
結論、寝たほうがいいのだ。
「はいトウジ、ポチとパインさんが作ってくれたホットチョコレートドリンクよ。マイヤーに渡してあげて」
「おお、ありがとうイグニール」
イグニールからもらったコップをマイヤーに渡す。
疲れた時はチョコレートだな。
「これはなんや?」
「深淵樹海でとってきたチョコレートだよ」
「甘くて美味しいから疲れバッチリとれるし! あたしの分は?」
「今は我慢しろよ……? もしくはポチに貰ってこい」
はーい、とリビングに飛んていくジュノーをやれやれと見送る。
「相変わらずやんなあ……」
「そうだね」
元気印のジュノーを見たマイヤーは、張っていた気が少し和らいだ様だった。
「飛行船が完成するまでは遠出はしないから、みんなで頑張ろう」
「トウジ……」
ちょっと涙ぐむマイヤー。
一人にさせてしまってすまないな、色々と背負わせすぎていた感が湧いてくる。
本当に申し訳ない。
商人歴は長く、腕もある。
だがまだ20歳になったばかりで、親元もずっと離れっぱなし。
寂しい気持ちもあるだろう、俺だってそうだ。
「とにかく今日はゆっくり休んで、みんなでご飯食べようぜ」
「うん……」
ポチとパインのおっさんが腕によりをかけて滋養強壮に効くご飯を作ってくれる。
まともに食事をしてないみたいだったから、美味しいご飯を求めているだろう。
やはり健康に一番大事なのは食生活だ。
そこはポチとおっさんがいれば大丈夫だな!
あいつらチートみたいなもんだし。
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「うん、おかえり……トウジィ……」
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