装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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1巻

1-2

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「えーでもこの際いいんじゃないの?」
「ハハハ、足手まといになりますよ」
「そうなっても、戦闘には参加しなくて良いわよ? 一緒に行動するだけでかなりの貢献になるし」
「こらエリーサ。トウジさんが困ってるだろう?」

 アレスにたしなめられたエリーサは「はいはい、でも割と本気だからね?」と言いながらテントの設営を手伝い始める。
 専属かあ……彼らのようなパーティーならば楽しそうだけど、やっぱなしだな。
 せっかく便利系チートみたいな能力を手に入れたんだから、お金を貯めたら旅をしてみたい。
 同行する冒険者から情報を得たのだが、今この国は、魔王の国と不可侵条約を結んでいるらしい。
 過去に大きな戦があったそうだが、最近は平和な時が続いているんだとか。
 だとしたら、王様は何故勇者を召喚したんだろうな、とも思ったんだが……。
 それも国民に知れ渡っているようで、魔王の国と一番近いこの国が独断で勇者を呼んだらしい。
 神託がくだったとか、戦いの準備をしているらしいとの報告があったとか、そんな言い訳をしているようだが、他の国のおえらいさん方は、周りを出し抜くための戦力確保なんじゃないか、と言っているそうだ。
 それを知った瞬間、追い出されてむしろよかったと心の底から思った。
 こうして楽にお金も稼げることだしな。
 ちなみにこの国の名前はデプリ。でっぷりと太ったケチ王様に似合う名前である。
 ともかく、世界が平和だとわかったら、街にこもるよりもこの異世界を見て回りたいと思った。
 だからこうしてせっせこお金を稼いでいる訳である。今はレベル1だが、レベルを上げて武器や装備も強化して、強くなったらいろんな国を旅したい。

たきぎを拾ってきた。近場に魔物がちょくちょくいるから、警戒しておいたほうがいい」

 テント設営を終えたところで、《新緑の風》最後のメンバー、盾戦士のクラソンが枝を抱えて森から戻ってくる。どうやら薪拾いをしつつ、同時に周囲の確認をしてくれたようだ。
 アレスが両手剣、クラソンが盾、フーリが弓でエリーサが魔法。
 なかなかバランスが取れたパーティーだよな。

「ありがとうクラソン。なら、夜の見張りは二人ずつ交代でやろうか」
「見張りか……」

 俺にこなせるだろうか。そう思っていると、アレスが言う。

「トウジさんは寝てて良いですよ!」
「え? いやいや、見張りくらいは」
「有事の際は僕らが起きて対応しなきゃならないですし、普通に寝てても大丈夫です」

 確かにそうだった。魔物が近寄って来ても俺はろくに追い払うこともできないからな。
 ここは素直に言うことを聞いておくか。

「わかりました」
「そうそう、寝てて良いわよ? 今日の道中割と疲れたでしょ? レベル1なんだからあんまり無理はしないことね」
「は、はあ……どうもです」

 うーん、どうやら道中俺に合わせて歩いてくれていたみたいだな。
 思えばいつも以上の距離を歩いたのだが、そこまでしんどいとは思わなかった。
 体力がついたのかとも思っていたが、そうではなかったのである。

「俺に合わせてゆっくり歩いてくれたんですね。すいません」
「気にしないでくださいトウジさん、荷物を持っていただいて、僕達の方が楽をさせてもらってますから」

 楽させてもらってるのはこっちなんだけどなあ……。
 すごく良い人達なので、俺も頑張って役目をこなそうと思った。


 それから夕食も済ませて寝る時間になったのだが、寝ることはかなわなかった。
 夜、集団で襲いかかってきた狼のせいである。
 狼達を《新緑の風》が蹴散けちらして、その素材を回収していると気が付けば夜が明けていた。

「夜襲はグレイウルフの群れでした。一応縄張りから少し離れてテントを張ったんですが、まさかあんな大勢で襲ってくるとは……危険な目にわせてすいません、トウジさん」

 朝日が昇り、再び森の奥へと進みながら、アレスが俺にペコペコと謝る。

「いえいえ、大丈夫です」

 寝ることはできなかったが、その分ドロップアイテムをたんまり稼げたからな!
 そうとは知らないアレス達は、徹夜で素材集めをさせたことを謝罪する。
 なんだかこう謝られると心が痛くなってくるものだ。
 冒険者って、もっと自由奔放で荒くれているイメージがあったからね。
 そういう奴らももちろんいるから、アレス達がすごく良い人だってことがよくわかる。

「これは情報通り……やっぱりあいつがいるようね」

 エリーサが杖を構えて歩きながら言った。
 あいつとは、今回の討伐対象であるグレイトウルフ。
 彼女が言うには、群れを率いるグレイウルフの一頭が進化して、グレイトウルフになったことで縄張りが広くなった可能性があるとのこと。
 事前の情報により、縄張りから少し離れた位置にテントを設置したはずなのに、こうして襲われたのはそのせいではないか、ということだった。
 この世界の魔物は、レベルが一定を超えると強い魔物に進化するそうだ。

「それは危険な魔物ですかね?」
「徹夜だが問題ない。俺の盾でお前を守ってやる」

 俺の問いかけにそう豪語するクラソン。筋骨隆々の腕が頼もしい。

「護衛はきっちりやりますから、安心してくださいトウジさん」
「わかりました」

《新緑の風》のメンバーはすごく良い人達で安心できるのだが、やっぱり俺も戦えるように力を持つべきだと思った。
 もし同行した冒険者に森の奥深くで置き去りにされたら一巻の終わりだ。

「みんな、ストップ!」

 木の上を移動しながら、索敵していたフーリが唐突に叫ぶ。

「正面! グレイウルフの群れ! 数は……僕の索敵スキルじゃ把握しきれないかも!」

 どうやら敵襲のようだ。それもフーリの索敵では把握しきれない程の規模。
 大丈夫だろうか……?

「方向は正面ね? 距離は?」
「五秒後、五十メートル付近まで接近するよ!」
「了解!」

 エリーサが正面に立ち、そして杖を構えるとブツブツと言葉をつむぐ。
 詠唱という奴だ。彼女の言葉と同時に、杖の周りに光る文字が浮かび上がる。

「火炎のやり!」

 ボボボボッと何もないところからいくつもの炎が生まれた。
 その炎は槍の形になり正面へかっ飛んで行く。
 森の木々をがし、穿うがち、放った方向からは狼の悲鳴が聞こえてくる。

「ふう、これである程度は間引けたわ──ね──」
「──グォン!!」
「グレイトウルフッ!」

 ふうと汗を拭ったエリーサの右のしげみから、巨大な狼が牙を剥いて出現する。
 大きくあごを開いてエリーサにみつこうとするが、直前にクラソンが動く。
 持っていた鋼鉄の盾を用いて、グレイトウルフの顎をなんとか止めた。

「気を抜くな、エリーサ」
「クラソン助かった!」
「僕の索敵スキルにも引っかからないなんて、こいつ隠蔽のスキル持ちかも!」

 フーリがそう言いながら弓を弾く。
 それを視認したグレイトウルフはすぐに飛びのいて再び茂みに姿をくらませた。

「チッ、引くのが早いな……特殊個体っぽい動きだ!」

 アレスも両手剣を持ち、正面から特攻を仕掛けてくるグレイウルフ達をさばきながら言う。
 特殊個体ってことは、なんとなくドロップアイテムにかなり良いのが期待できそうなのだが、それ以上に危険な雰囲気を感じた。

「みんな四方を警戒して固まれ! フーリはもっと高い木の上に!」

 アレスの声に合わせて、みんながそれぞれ動いた。
 フーリ以外の三人が、俺を中心に四方を警戒しグレイウルフを蹴散らして行く。

「トウジさんは、そのまま頭を防御してしゃがんでいてください!」
「は、はひ」

 言われた通りにした。この状況が思ったよりも怖くて、言葉を噛む。

「特にクラソンからは離れないように!」
「必ず後ろにいろ」
「わ、わかりました」
「さあ、来なさい大きな狼ちゃん? 私の魔法で焼き焦がしてあげるんだから」

 グレイウルフのドロップアイテムを消える前に拾いに行きたいのだが、そんなことも言ってられない。
 彼らが警戒するほどの魔物だから、俺もしっかり自衛に努めなければ……アイテムボックスから、最初に買った長剣を一応取り出しておく。

「無理しないでね! トウジ!」
「い、一応念のためです」

 エリーサとそんな会話をしていると、フーリの声が響く。

「草が動いた! みんなクラソンの正面だよ!」
「ありがとうフーリ! 位置がわかってれば簡単だ! 迎え撃つぞクラソン!」
「了解した」

 アレスとクラソンがそれぞれ剣と盾を構えたところで、グレイトウルフがフーリの言った方向から出現。今度は鋭い爪でのはらい。

「ふん」

 ガギンと音がして、火花が散る。
 鋼鉄の盾を思いっきりいたのに欠けることもない、とんでもなく強靭きょうじんな爪だ。
 グレイトウルフはヒット&アウェイを繰り返して戦うつもりらしく、一度攻撃したらすぐに茂みに逃れようとする。

「させん、シールドバッシュ」

 そこへ、クラソンが盾で体当たりした。
 ギュンと加速して逃れようとしたグレイトウルフの後ろ足に激突する。

「──!?」

 グレイトウルフの動きが一瞬止まった。
 盾のスキルか。シールドバッシュは、どの世界でも相手の動きを止める効果を持つっぽいな。

「チャンスだ! 僕がスキルで切り込む! エリーサ!」

 動きを止められたグレイトウルフに、何やら風のようなものをまとったアレスがすごい速さで切り込んでいく。

「わかってるわよ! 私は周りの雑魚ざこをなんとかするわね! 火炎の雨!」

 アレスの一撃が致命傷となり、グレイトウルフは絶命する。
 その間に、エリーサは広範囲にわたる火属性魔法で周りの雑魚狼達を焼き焦がした。
 索敵役のフーリの指示から、ここまでの動き……実に見事な連携だった。
 明らかに特殊個体で強そうなグレイトウルフなのに、一瞬だ。
 首筋から血を流し倒れるグレイトウルフ。
 その巨体の周りに、俺だけに見えるドロップアイテムがたくさん散らばっている。群れを率いていたボスっぽい魔物だから、ドロップの量もかなりあったようだ。
 強化のスクロールに加え、なんと小さなナイフとマントまで落ちている。
 こっそり確認すると【大狼たいろう牙短剣きばたんけん】と【隠狼いんろうのマント】と書かれていた。
 レア装備っぽいドロップだ! やったでおい!
 さらにケテルを確認すると……なんと一頭で2000ケテル。
 グレイウルフが一頭200ケテル程度なのを考えると十倍だ。うまうま。

「ふう……討伐完了ね!」

 今度こそ、と息を吐くエリーサ。
 倒れたグレイトウルフを調べながら、アレスが喜んだ表情を作る。

「気配を消せる特殊個体だから、恐らくハイドウルフ系の進化をしたんだね。うん、これだと討伐報酬にも色がつくし、そのまま持って帰れば特殊な装備が作れるかもしれないから、今回の依頼はかなり得したよ」
「この大きさなら、みんなの分の装備もまかなえそうだけど……どうするアレス、売っちゃう?」
「いや、隠密効果が期待できそうだから、これは装備に変えたほうがいいと思うよ」
「賛成かな? 僕達は四人の少数パーティーだから、これがあるとかなり違ってくる」

 アレスの言葉にフーリも同意し、クラソンもウンウンと頷いていた。

「それもそうね」

 最後にエリーサも同意して、グレイトウルフの毛皮はみんなの装備になることが決定したようだ。

「トウジさんも、それでいいですか?」
「へ?」

 アレスがいきなり俺に話を振ってきたもんだから驚いた。
 まさかとは言わんが、グレイトウルフの毛皮を使った装備をくれるってことかな?

「いやいやいやいや、大丈夫です。俺に回す箇所は売ってください。報酬も多めですし」

 慌てて断っておく。俺はただ見てただけだしな。
 そもそも、ドロップアイテムを色々ゲットしてるんだし……なんかそこまで至れり尽くせりだと、バチが当たりそうな気がした。地味に昨日の夕飯だって面倒見てもらったしな。

「トウジさん……」
「トウジ……」
「荷物持ちさん……」
「……」

《新緑の風》のメンバーが、ジーンとした表情で俺を見ている。なんだこれ。

「この二日間で得られた素材は相当な物で、僕達はかなり得してるっていうのに……荷物持ちの報酬だけでいいなんて……どれだけ謙虚なんですか! 良い人過ぎますよ!」
「そうね……ここまでのお人好しは初めて見たわよ……」
「感心を通り越して、むしろこの先荷物持ちさんが大丈夫かどうか心配になってきたよ僕!」
「感無量」
「いやその……」

 めちゃくちゃ感謝されてしまったが、なんとも良心が痛む展開だった。
 お人好しっていうか……。
 諸々もろもろのセコい事情で、俺は今日までのドロップアイテムが丸々ゲットできてる訳だ。
 そんな状況でこれ以上を望んだら、それこそマジでバチが当たるだろう。

「ハハハ……まあ……残りの素材も回収して……帰りましょうか……」

 乾いた笑い声で自分の心をどうにか誤魔化ごまかしながら、グレイウルフの死体と一緒にドロップアイテムを拾い集めた。
 うーん、自分だけすっごい得をするってのも、心苦しいもんだな……。


       ◇ ◇ ◇


 なんだか自分だけ得をして、ちょっとした罪悪感を抱いた一件から、数日が経過した。
《新緑の風》が、かなりの素材をかき集めたのが噂になって、色々な冒険者から同行の頼みが舞い込んできている。
 そこそこ貯金できたので、同行は控えて自分のレベル上げを行うことにした。
 寄生だけじゃ、いつまで経っても俺のレベルが1のままで、危険だと思ったからである。
 と同時に、長剣の詳細を見た時に書いてあった、特殊強化の欄に開放レベルが設定されているところから察するに、レベルアップしたら能力が開放されて使えるようになるのではないか、と考えているのだ。
 確か俺がやっていたネトゲでは、レベル10になると職人技能クエストが出現して錬金術、装備製作、アクセサリー製作、採取、採掘が可能となる。
 中でも錬金術の職人技能を獲得したら、手っ取り早く稼げそうな気がした。
 万が一のことを考えれば、稼ぐ方法は複数持っていた方がいいと思うので、取り急ぎレベルを10まで上げて、それらが開放されるかどうかを確かめよう。
 そんな訳で、森でたまに出現する兎型の魔物──ラビッツなどを倒して、一人でレベル上げを行う。同時に薬草採取の依頼も受けて、冒険者ギルドでの依頼実績をコツコツと作りつつ、納品分以外は全て錬金術用に溜めておくことにした。
 Fランクの依頼は、街での清掃や小間使い的なものも多いのだけど、断固薬草採取である。
 そうして一人で兎狩りをしていて、一つ気づいたことがあった。
 なんと人が倒したものではなく、自分で倒した魔物の方がドロップケテルが多いってこと。
 確かに、大勢で狩るとお金のドロップが減るなんてことはゲームではよくあることだった。

「よし、レベルが上がった」

 ラビッツを長剣で倒したら、レベルが5に上がった。
 予想している職人技能開放まで折り返しといったところ。
 ステータスを確認しよう。


【名 前】トウジ・アキノ
【年 齢】29
【レベル】5
【H P】140
【M P】140
【STR】130
【DEX】130
【VIT】140
【INT】130
【AGI】120
【スキル】


 上昇値は、全てが等しくレベル×10ずつ上がっている。
 あの勇者連中と比べるとクソみたいな数字だが、これが一般的なステータスなのだ。
 ステータスと上昇値には、保持しているスキルに応じて伸びに個人差があるらしい。
 俺はスキルがまったくないって扱いだから、こうなんだろうな……と、分析している。


【長剣】

 必要レベル:0
 攻撃力:10(+3)
 UG回数:3
 特殊強化:レベル30より開放
 限界の槌:2


 あと、本当にゲットした強化のスクロールが使えるのかどうか、長剣にお試しで使ってみた。
 今まで手に入れたスクロールは三枚。
 内訳は成功率が100%の攻撃力のスクロールが一枚と、60%の攻撃力が一枚、さらに魔力のスクロールが一枚だ。
 改めて強化のスクロールの説明をしておくと、まずは成功率で大まかに分けて【100%】【70%】【60%】【30%】【10%】の五種類。
 そこから、それぞれ攻撃力、魔力、あとはSTRやVITなどの各種ステータスの上昇が見込めるものに細分化される。
 成功率の難易度に応じて、上昇値が変わって来る。


 ・100% …… 上昇値各種+1
 ・60%   …… 上昇値各種+2
 ・10%   …… 上昇値各種+5


 70%と30%は、それぞれ60%と10%のスクロールと上昇値は同じ。
 だが、成功率が若干高くなっている分、失敗した際は50%の確率で、スクロールを使用した装備類が破壊されてしまうという闇の深い仕様だ。
 今回は、100%と60%の攻撃力強化のスクロールを一枚ずつ使用して、無事成功。
 UG回数が5から3に減る代わりに、攻撃力+3の長剣に生まれ変わった。
 無事に装備を強化できることも確認したので、引き続きレベル上げをしよう。
 レベル10の楽しみは職人技能の開放だけではない。


【大狼の牙短剣】

 必要レベル:10
 攻撃力:20
 UG回数:5
 特殊強化:レベル30より開放
 限界の槌:2


【隠狼のマント】

 必要レベル:10
 UG回数:5
 特殊強化:レベル30より開放
 限界の槌:2
 装備効果:気配を少し察知されづらくなる


 実はこの間、グレイトウルフの特殊個体からドロップした装備。
 こちらはレベル10から装備可能だったのである。
 しかも特殊な魔物だっただけに、ドロップ装備もやや特殊で、装備効果というものがついている。
 俺のやっていたネトゲでも、寒くて毎秒ダメージがある地域では、専用装備を身につけているとダメージを受けないとか、そんな効果があったから似たようなものだ。
 気配を少し察知されづらくなる、という効果はそこまで有用なものではないのだが、低レベル装備なので特に気にすることはない。

「ラビッツ発見。ラッキーラッキー」

 とにかく今はレベル上げを最優先だ。この近辺にはグレイウルフの他に、ゴブリンやコボルトなども出現するのだけど、もう少し強くなってからにする。
 無理に挑んで、返り討ちにされたら怖いからね。
 それまでは一番弱いとされる魔物を狩るに尽きる。
 ラビッツは弱すぎて無視されることが多く、俺みたいなヌーブ(初心者)にはちょうど良い獲物なのさ。

「あ、トウジさんだ! トウジさーん!」

 薬草採取をしながらひたすら兎を狩っていると、遠くから声がした。
 目を向けると、森の入り口の方から同じマントを身につけた四人組が歩いてくる。
《新緑の風》のメンバーだった。アレスが手を振りながら近寄って来る。

「こんにちは、これから依頼ですか?」
「はい。また討伐依頼です! 近隣の村の近くにゴブリンの集落が出来てるらしいので」

 ゴブリンの集落討伐か。なんとも異世界モノにありがちな依頼である。
 しかも集落か……ゴブリン討伐はEランク指定の依頼であるが、集落を作り徒党を組むゴブリンの危険度はCランク~Bランクへと跳ね上がり、結構危険な依頼らしい。

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