プライベート・スペクタル

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第三話 第六章

第六節

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『…っ!?『時間に手をかける』それってつまり……』
「えぇ、おそらくぅ時間の操作。古今東西、数多ある異能力の中でも最強クラスの代名詞とも言われるモノですねぇ……」
『!!?』
「フフフっ……ようやくお気づきになられたようですね」
「ああ、先の式典の時や今に感じた妙な違和感…何かズルをしたような気配からおたくの何らか能力だと思い。色々想定して何点かそれらしいものに予想を付けていたって話だ」
「そのうちの一つが的中したという訳ですか?」
「ああ、まさか予想の中で最悪の可能性が当たるとは思いもよらなかったぜ……考えてみりゃあ『時極の魔女』という銘、まんま過ぎだよなぁ」
「それで時間を操作されていると認識をしたことで、対応が出来たと……褒めて差し上げますよ」
「ああ、こういうのに難なく適応できるのは、漫画を読んでいて良かったぜ」
受けた傷も逆再生の様に治るのは、まんま自らの時を逆再生させ、傷を負った部分を切除したに過ぎない。
『時間を操る』。そんな強力な能力を持つトワだが、認知をすればその効力が極端に落ちる。
それにより大和は脱することが出来たのであろう。
(ですが、ただ時間が操られていると認識出来たところで……効力は完全に殺しきれない。抜け出すことは相当難しい筈ですが……)
「フフフっ…やはり良いですねぇ貴方は!」
トワがそう言った瞬間、再び時間が操られている事を理解した大和。トワ以外の全てがスローモーションになりやがて動きを止まる。
「時を止める際の攻撃のお約束と言えばコレでしょう?」
「ッ!!?」
その中で何事もなくしゃべり普通に動いているトワ。懐から多数のナイフを取り出すとそれを一気に大和へと投擲する。
突き付けられた銃口の様に目の前で停止する無数のナイフ。それが一瞬のような感覚へと戻った後、一斉に大和へと襲い掛かった。
「ダラっしゃぁぁぁい!!」
拳でナイフを打ち落としにかかる大和。踏み込みによる地面の隆起で壁を作る隙すら与えてくれず、とてもじゃあないが全てを対応できないので、即興で優先順位を弾き出し致命傷になりそうなものを優先して叩き落す。
腕や脚に幾つかが突き刺さったが、致命傷となりそうなナイフは全て叩き落せた。
「フフフっ…創作物と違い。現実では中々難しいものですね……」
「糞ッ…流石に全部は叩き落とせなかったか……だが、コレでわかったろぅ。もうタネが割れているんだ。いい加減観念したらどうだ?」
(……時間の遡行、時間停止、前者は見たところトワ自身にしか用いていないし、後者は俺の体感で十秒にも満たしていない……俺が五体満足で生きているということは制限も多いと見たぜ)
自分の命を担保にそう読む大和。停止時間や遡行が長いならばとうの昔に自分達は全滅させられているからだ。
(残る時間系としてみては、跳躍か加速か……見せていない以上、制限ないし使えないかどっちかか…)
そう予想した大和。瞬き一つ、指先の動き一つ、全てに意識をし時間操作に対応しようとする。
とそこで……。
「フフフっ、フフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフっ!!」
いきなりトワは笑い始めた。
「フフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフっっっ!!!」
狂ったように笑い続けるトワ。
やがてひとしきり笑い終えると「フゥ…」と一息入れる。
「…僕を斃し、能力を看破し…まさかコレで、これだけで形勢はこちらのモノだとお考えですか?流石に『龍王』それは若い、若いとしか言わざるを得ませんね」

瞬間、トワから発せられた雰囲気が丸ごと変わった。

「ッ!?」
「……でしたらこちらも少々力を出させていただきましょう。コレも少々慣れる必要があると思いますので……」
(おいおいオイオイ、マジかよ……まだ力を隠していやがるのかよ!?)
まるで全てを冒涜、蹂躙し飲み込もうとする得体の知れない悍ましく気持ち悪い気配。まるで【銘付き】が十数名集まったような濃厚な威圧感。
そんなもの何処で得たのか、大和は直ぐに答えを察した。
「まさか秘密裏に行っていた儀式によるものか!?」
「では、参りましょう」
言った途端に姿が掻き消えたトワ。
直感でヤバいと感じた方向に防御姿勢をとる大和。
瞬間、トワの蹴りが防御した腕に深くめり込んだ。
「―ッッ!?」
枯れ枝の様にパキリと左腕が折れた事を理解する。
即座に受けた方向に打撃を叩き込むが、トワに掠らせることも出来ない。
それどころか更に首の一部が割れ、血が噴き出始める。
「時間の加速…ッ!?」
嫌な予感が最悪の形で的中した。
おそらくそれで振るわれた手刀で喉元をわざと掠めさせたのであろう。
それどころではない。自らの速度もまた遅くなっているということは時間の停止まではいけないとして時間の遅延も併用して使われている。
(儀式って、もしかして自分の能力を強化する為だったのかッ!?)
そうであるなら何故?
そんな事をせずとも奴の能力は強力と言わざるを得ない。
それにどう考えても「最強」なんてものは眼中にない性格の筈だ。
(つまりこいつは副次的な効果。目的として別の何かがあるって事か!?)
「ほらほら、一方的になっていますよ呉成・大和。ここからどうするのです?」
視界の端でわずかに捉えられる速度で動きながらそう言ったトワ。まさに生きている時間が異なっているように感じる。
だが…。
「ああッ…やっぱり俺って持っている男じゃあねーか…」
そこでいきなり笑みを浮かべた大和。
そしてなぜか唐突に構えをスッと解いたのだった。
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