プライベート・スペクタル

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第三話 第五章

第九節

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「……嬉しそ~うだね」
「えぇ、それはそれは…」
何度目かのフォークとナイフの投擲をしたチェルシー。当然、要塞の外壁に阻まれる。
だがそれは陽動、敵からも撃ち返される突起物を躱しながら小箱を辺り一面にばら撒いた。
「同じ手はさせな~いよ」
即座にばら撒かれた小箱を飴の沼が絡め取る。
「何かを狙っているだろ~うけれど…その企み…準備前に潰させても~らうね」
そのまま小箱を一か所に集め沼底に沈めた。
「おやおやぁ、コチラは先程貴方のダンスのお誘いに応じたと言うのにぃ…あまり自己中心的な行動は心証を害しますよぅ」
「それは苦言?ハハ~ハッ従者が言うねぇ!」
「いいえこれは苦言ではなく忠言ですよぅ!同じく誰かに仕える者としての」
「心外だなァ…俺は君みたいな従者じゃ~あないよ!」
「ほほぅ…ですが、一緒にいらっしゃる時や主からの扱いは随分、我々と似通っていましたよぉ?」
「ハハハッ!なるほ~ど【天使】達を差し向けたりコチラを監視していたの~は君かァ!?」

【演目】『どこにもいない/いる 第五幕 ラブコメディ 朴念仁』

【演目】『砂糖で出来た神話 神聖創造 塵旋風シュガーブラスト

【演目】の応酬。粒子状の飴を勢いよく巻き起こしグラインダーのように削り取ろうとするドロップ。チェルシーは布を使って風の一部を手懐けるようにヒラリ華麗に受け流した。
「俺がそんなに甲斐甲斐しく世話をし~ているように見えたの~か!たし~かにトワの下に付い~ているが…それは先の連中の様な気持ち悪い意志では決して無~い!」
「では何故、なにゆえそのようなぁ世界を敵に回してまでの事を?」
トワアイツの末路を見てみ~たいからさ!」
再び塵旋風を引き起こしたドロップ。一つだけでなく二つ三つ複数だ。
最終的に四方に取り囲むようになった。
「俺がこの茶番に~も似た自殺劇に身を投じるの~は、あいつの末路、結末を特等席、砂被り席で見たいか~らさ。あいつの企むモノの成否なんて正直興味す~らない!」
「…………」
「それがこ~の世界の最高の娯楽!そ~の最高の瞬間を見る為に、俺は努力を惜しまないんだよ~ん!!」

【演目】『砂糖で出来た神話 神聖創造 塵旋風×4 砂嵐シュガーストーム

「唐突で悪いけれどコレで終幕さ~ァ!!」
四方の塵旋風をチェルシーに同時に向かわせたドロップ。一つに合わさった塵旋風は巨大な砂嵐となり全てを甘く破壊しようと襲いかかる。
「成程、私もまだまだ未だ道半ばというモノですねぇ……我々と似通っているなどと評してしまうなんて………」
砂嵐が近づきつつもチェルシーは冷静にそう呟いた。
「確かにぃ我々と貴方様は違うようです。仕えるべき主の末路を自らの娯楽の為見たいなどと……そのような方が我々と同じな訳がありませんねぇ…」
「だから言っただろ~う!!」
「そんな貴方様に忠言を一つ差し上げたいと思いますぅ。志ある方々と共に歩むのなら……」
言葉の途中で砂嵐に飲み込まれてしまったチェルシー。
「アハハハッごめ~んね!決めるところだったんだろうけ~れど!そんなの俺には関係ないから飲み込んじゃった!!」
ゲラゲラと笑ったドロップ。
だが……。
「いえいえお気になさらずぅ…このような状況でもきちんと決める。それが従者たるものですからぁ」
その言葉と共に急に消え失せた砂嵐。そこからチェルシーは何事も無く現れた。
「なァ~ッ!?」
「そして先程の続きを…志ある方々と共に歩むのなら、自身もノリにノることをお勧めしますよぉ。そして、自らの全霊をもってその方々の旅路を彩って差し上げる。その楽しさをぉ…」
そう言ってこれまで見た事のないシルクハットとステッキを構えるチェルシー。
「少々お教えいたしますねぇ~」
そして笑みを浮かべる。
「おいお~い…だから従者風情が主でもな~奴に偉そうに講釈を垂れ~るなって!」

【演目】『砂糖で出来た神話 神聖創造 竜騎兵ドラグーン

チェルシーの言葉に少々いら立ちを覚えながら【演目】を演ったドロップ。火砲と剣を携えた人馬一体のケンタウロスの様な生物を数頭、飴で生み出した。
馬のようであり人外の動きでもある高機動で飴のケンタウロス達は襲いかかる。
「他の飴を操作出来なくなるのにぃ、このような手を打ってきたという事は余程…この【演目】に自信があるようでぇ」
「いい~や違うなぁ!これは言うなれば将棋やチェスの詰めの状況!砂嵐でとどめを刺そう~と思った次の策に過ぎないの~さぁ!!」

【演目】『砂糖で出来た神話 神聖創造 要塞+竜騎兵 複合 戦場ウォーゾーン

要塞からの突起部の射出。駆ける飴のケンタウロス。四方八方から、【演目】の名の通りまるで戦場のような様相でチェルシーを追い詰める。
だが……。
「確かにぃ、チェスや将棋の様な詰め方……でしたら此方もお付き合いいたしましょう」
そう言って手にしたステッキでハットを叩いたチェルシー。
すると先程の様な砂嵐が巻き起こった。
「なッ!?」
様なではない。これはドロップの起こしたモノとまんま同じである。
困惑するドロップを基に【演目】により生み出されたケンタウロスや射出した突起物を砂嵐は全て削り飛ばした。
「な、な~んでお前が俺の【演目】を……ッ!?」
「さぁ、何故でしょうねぇ~」
微笑みを浮かべながらチェルシーはとぼける。
(こ~いつが『どこにもいない/いる』なの~は間違いない。こんな隠し弾があったと~は)
何らかの方法で自身の【演目】をあのシルクハットに閉じ込めたのだと、そう分析したドロップ。
(だ~がどんな方法で?……そん~なことが可能なのか?)
それがわからなかった。
「タネがお分かりにならないようですのでぇ…もう少々お見せいたしませねぇ~」
再びステッキで叩いたチェルシー。すると今度は極低温の冷気が吹きすさぶ。
「コ~レは、タンドラの『喜楽・氷ラクトアイス』ッ!?」
少し前、行動を共にしていた【星】。その【演目】である。
かって知ったる冷気に包まれ、飴で出来たドロップの肉体は動きが鈍くなる。
「何故!?お前~が!!?」
あの時裏で手繰った故に知っているが、この従者がタンドラと戦った事は無かった筈だ。
冷気で形を変えることが出来ない為、少し砕いた身体の破片を散弾の様に飛ばすドロップ。
チェルシーは再びステッキを叩くと今度はドロップの目の前に現れた。
(瞬間移動。否、過程を省いたよ~うな動き、スォーの『切り貼りパッチワークス』ッ!?)
咄嗟に破片を掴み突き刺しにかかるドロップ。
チェルシーは軽やかに躱すとまたステッキを叩く。
今度は激しい爆発と炎が巻き起こった。
「『爆炎』すら~も!?」
(一体何な~んだ?……この従者の【演目】はッ!!?)
まるで予想外、奇想天外な数々に甘い汗が滴り始めたドロップ。コレが炎の熱によるものだけでない事はわかっている。
そんなドロップの疑問にチェルシーは答えず微笑みを浮かべるのみである。
「ではぁ、今度はこちらから言わせていただきますねぇ~……これにて終幕ですよぅ」

【演目】『どこにもいない/いる 第七幕 最高潮クライマックス

ステッキを叩いたチェルシー。すると炎と氷、飴の風が数多のトランプと一緒に舞い上がる。
それらはそれぞれ数多の鳩となりチェルシーの周りを飛び回り始めた。
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