プライベート・スペクタル

点一

文字の大きさ
上 下
120 / 138
第三話 第四章

第七節

しおりを挟む
『対戦終了。対戦終了』
『勝者は【星団】『創世神』と『星炎騎士団A』の混成チーム。騎士ウルフ、夜剣・ミコとなります』
『お疲れさまでした』
終わりを第三者に告げる様に鳴り響いたアナウンス。
同時に現れた道から晴菜達がやって来た。
「ミコ!」
「……晴菜さん…」
「スゴイじゃない!大活躍よ!!」
「へへ…ッ……」
嬉しそうな晴菜。その反応にミコもややはにかむ。
『大金星ですねミコ。【星】二名相手にまさか単独で立ち回るなんて……』
「…いえいえ……ただ相性が良かっただけですよ……」
『それでもですよ…それにまさか馬鹿一号の【演目】を模倣するとは………』
「……見よう見真似…ですけれど一応は……担いだ剣での抜刀術で納刀も不完全で斬撃の制度も天と地ほどの差があってとても完全再現とは言えませんが……」
『ふむ…』
そう評したミコ。だが、睦美はそうは思わない。
おそらく門司と行動を共にしたことで不完全でも再現可能なレベルまで脳内に染みつけたのだろう。そして鍛錬を繰り返し習得したのだと睦美は分析する。
(それでも…まだ【星】に覚醒していない者が不完全ながらも【星】それも【銘付き】の【演目】を再現できるなんて……)
将来彼女はとんでもなく化けるのではないかという片鱗を見せられたそんな思いであった。
「…それに……操られてもなお抗ってくれたお二方のおかげの部分もあります……そんなお二方に慕われている……ウルフ……さんの……」
「おッ、おい!?」
そこで言葉が途切れてしまったミコ。どうやら完全に気を失ってしまったようである。
「たった一人であんな大立ち回りをしていたもの、仕方がないわね…」
「ですがここに置いて行くわけにもいきません。誰かが運ぶ必要がありますね…」
「俺に担がせてくれ、何にも出来なかったからせめてこれぐらいは……キィルとレェナも安全な場所までは連れて行かねぇと…」
「そうですね…頼みましたよウルフ卿」
ミコを背負っただけでなくキィルとレェナの二人もそれぞれ抱えたウルフ。
そうして晴菜達は先程のアナウンスの際に現れた新しい道を通り先へと進む。

進んだ先、冷やかな石段上った先に辿り着いたのは先程まで晴菜達が集まっていた大広間であった。
「ようやくここまで戻って来れたわね……」
感慨深く呟いた晴菜。広間には幾つかの気配を感じることが出来るが、先の地下での一件により疑心暗鬼に陥っているのだろう。コチラの様子を伺うばかりで姿を見せない。
とそこでR・Rからのアナウンスが入った。
『地下での競争お疲れ様だったな……ここが中間地点だ……』
「けッ、一体どの口がほざいていやがるんだかコイツは……」
『さて、ここからは後半戦だが、ここからも競争だ……前に言ったがここまでふるいにかけた全20チーム。その内、俺の元に辿り着いた最初の一チームだけが俺と相対することが出来る』
「一気に一つの椅子とは…かなりシビアですね……」
『勿論すでに始まっていて先着組は進んでいるぞ、先に着いたアドバンテージぐらいはきっちり与えておかないとな不公平だ……』
「げ!?俺達の到着順って何番だ!?」
「……落ち着きなさいウルフ卿。ここで先程と同じ轍を踏むつもりですか…」
「そうでした…」
『ちなみに今回は俺も全力で妨害させてもらう。後半戦だからな当然だ…』
『…ふむ、妨害に参加するとなったら、コレは少々不利になるかもしれませんね…ゲームマスターとはいえ彼も『魔女の旅団』の構成員……同じ陣営の側には手心を加えるかもしれません』
『そんな事を考えているならもうとっくにやっている。このゲーム俺はフェアを心掛けているんだ。そんな真似はしないさ……わかったか?』
『……ッ!?』
明らかに通信機の声も聞こえているようなR・Rの言葉。通信機の会話を割り込まれ聞かれた事に睦美は思わず声を強張らせる。
『それじゃあ、ずっと話で足止めさせるのもコレはコレでフェアじゃあない。スタートしても良いよ…月並みだが俺と会えるように頑張ってくれ』
そう言ってR・Rのアナウンスは途切れた。
「全く…人気アイドルみたいな事言って、アンタみたいな悪趣味な奴の握手会なんてこっちから願い下げよ…」
『晴菜、愚痴はそこまでに…取り敢えず先に進みましょう。こちら側も向こうの場所の情報を何とか探ります。今度は通信に入り込まれないよう慎重に行くので、いつもより手間取りそうですが…』
「構わないわ、有益な情報が分かり次第教えて…」
『あと逆探されないよう新たな通信機の周波コードも発行しておきます。暗号化して送りましたのでセッティングしてください』
「ありがとう………これで良いかしら?」
『ふむ、問題なしですね……では探ってみます』
そうして睦美との通信を終えた晴菜。
そこに少し場から離れていたウルフがやって来た。
「様子を伺っていた連中の中に俺達の仲間がいたからミコ達の事を任せておいた。消耗していたからここで待機していると快く応じてくれたぜ」
「そうありがとう」
これで一安心できた晴菜。R・Rが提示したルール2〈チームの人数は欠けてはならない〉に抵触する危険性はあるが、脱落はしておらず別行動をしていると押し切る事に決めている。
現にこちらを監視する状態なのに何の咎めも無いという事は容認しているという事なのだろう。
「それじゃあ行きましょ…」
こうしてウルフとウォーロックの三名で進む晴菜。大広間奥の扉を開け先へと向かう。
「そういえば…城の地上階部分は貴方達の【星団】が普段使いしていたのよね?R・Rが居そうな場所って見当がつく?」
「そうですね…普通に考えれば最奥に在る元城主の私室とかでしょうか?別の場所という事も考えられそうですが……」
「これまでの所業や先行組の動きが見えないのを見る限り、何かを仕込んでいるのは十二分にありえそうね……まあ睦美の情報を待ちつつひとまずはその元城主の私室に向かいましょうか」
「まあ場所は安心してくれ『爆炎』。勝手知ったる俺達の拠点だ。目的地まで最短で案内してやるよ」
そう言って扉を開けたウルフ。
扉の先は厨房であった。
「古城っぽい見た目だけれど、こういう部分は新しいのね。古民家の外装で中身最新型にリノベーションした形かしら」
何の変哲もない厨房を見つつ呟く晴菜。
「え…え?」
だがそんな晴菜とは別にウルフとウォーロックは戸惑いの表情を浮かべている。
「どうしたのよ?」
「私から説明します晴菜殿。この部屋の位置じゃあこの部屋は元衛兵の詰所なんです。だった筈なんです……それが何故厨房に…?」
ウォーロックのその説明だけで察した晴菜。つまりは城内の部屋がバラバラに入れ替えられているという訳である。
「……勝手知ったる連中が侵入者側だから当然と言えば当然よね……」
だが連中がこの古城を奪ったのは僅か数日前である。そんな短時間でこの巨大な建築物の中身を弄ったのだ。それだけでR・Rの【星】としての力量と御法川・トワに『将』を任されている理由をこれでもかと理解出来た。
(何かの【演目】?そうでなきゃ考えられないわね……)
壁を触ってみた晴菜。そこであることに気づく。
壁には無数の傷跡が付いていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

虚弱高校生が世界最強となるまでの異世界武者修行日誌

力水
ファンタジー
 楠恭弥は優秀な兄の凍夜、お転婆だが体が弱い妹の沙耶、寡黙な父の利徳と何気ない日常を送ってきたが、兄の婚約者であり幼馴染の倖月朱花に裏切られ、兄は失踪し、父は心労で急死する。  妹の沙耶と共にひっそり暮そうとするが、倖月朱花の父、竜弦の戯れである条件を飲まされる。それは竜弦が理事長を務める高校で卒業までに首席をとること。  倖月家は世界でも有数の財閥であり、日本では圧倒的な権勢を誇る。沙耶の将来の件まで仄めかされれば断ることなどできようもない。  こうして学園生活が始まるが日常的に生徒、教師から過激ないびりにあう。  ついに《体術》の実習の参加の拒否を宣告され途方に暮れていたところ、自宅の地下にある門を発見する。その門は異世界アリウスと地球とをつなぐ門だった。  恭弥はこの異世界アリウスで鍛錬することを決意し冒険の門をくぐる。    主人公は高い技術の地球と資源の豊富な異世界アリウスを往来し力と資本を蓄えて世界一を目指します。  不幸のどん底にある人達を仲間に引き入れて世界でも最強クラスの存在にしたり、会社を立ち上げて地球で荒稼ぎしたりする内政パートが結構出てきます。ハーレム話も大好きなので頑張って書きたいと思います。また最強タグはマジなので嫌いな人はご注意を!  書籍化のため1~19話に該当する箇所は試し読みに差し換えております。ご了承いただければ幸いです。  一人でも読んでいただければ嬉しいです。

アラフォー料理人が始める異世界スローライフ

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
ある日突然、異世界転移してしまった料理人のタツマ。 わけもわからないまま、異世界で生活を送り……次第に自分のやりたいこと、したかったことを思い出す。 それは料理を通して皆を笑顔にすること、自分がしてもらったように貧しい子達にお腹いっぱいになって貰うことだった。 男は異世界にて、フェンリルや仲間たちと共に穏やかなに過ごしていく。 いずれ、最強の料理人と呼ばれるその日まで。

女神様から同情された結果こうなった

回復師
ファンタジー
 どうやら女神の大ミスで学園ごと異世界に召喚されたらしい。本来は勇者になる人物を一人召喚するはずだったのを女神がミスったのだ。しかも召喚した場所がオークの巣の近く、年頃の少女が目の前にいきなり大量に現れ色めき立つオーク達。俺は妹を守る為に、女神様から貰ったスキルで生き残るべく思考した。

異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。

桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。 だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。 そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。

異世界複利! 【1000万PV突破感謝致します】 ~日利1%で始める追放生活~

蒼き流星ボトムズ
ファンタジー
クラス転移で異世界に飛ばされた遠市厘(といち りん)が入手したスキルは【複利(日利1%)】だった。 中世レベルの文明度しかない異世界ナーロッパ人からはこのスキルの価値が理解されず、また県内屈指の低偏差値校からの転移であることも幸いして級友にもスキルの正体がバレずに済んでしまう。 役立たずとして追放された厘は、この最強スキルを駆使して異世界無双を開始する。

18禁NTR鬱ゲーの裏ボス最強悪役貴族に転生したのでスローライフを楽しんでいたら、ヒロイン達が奴隷としてやって来たので幸せにすることにした

田中又雄
ファンタジー
『異世界少女を歪ませたい』はエロゲー+MMORPGの要素も入った神ゲーであった。 しかし、NTR鬱ゲーであるためENDはいつも目を覆いたくなるものばかりであった。 そんなある日、裏ボスの悪役貴族として転生したわけだが...俺は悪役貴族として動く気はない。 そう思っていたのに、そこに奴隷として現れたのは今作のヒロイン達。 なので、酷い目にあってきた彼女達を精一杯愛し、幸せなトゥルーエンドに導くことに決めた。 あらすじを読んでいただきありがとうございます。 併せて、本作品についてはYouTubeで動画を投稿しております。 より、作品に没入できるようつくっているものですので、よければ見ていただければ幸いです!

レベルってなんですか?

Nombre
ファンタジー
大学の入学式にバイクで向かう途中、主人公は事故によって命を落とす。 目が覚めるとそこは異世界だった!? そして指には謎の指輪が…… この世界で一人だけレベルがない主人公は指輪の力を使ってなんとか生き抜いていく! しかし、主人公に降りかかる数々の理不尽な現実。 その裏に隠された大きな陰謀。 謎の指輪の正体とは!そして主人公は旅の果てに何を求めるのか! 完全一人称で送る、超リアル志向の異世界ファンタジーをどうぞお楽しみください。 ㊟この小説は三人称ではなく、一人称視点で想像しながら是非お楽しみください。 毎週日曜投稿予定 「小説家になろう」「ノベルアップ+」「カクヨム」でも投稿中!

ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

にくなまず
ファンタジー
今年から冒険者生活を開始した主人公で【ソロ】と言う適正のノア(15才)。 その適正の為、戦闘・日々の行動を基本的に1人で行わなければなりません。 そこで元上級冒険者の両親と猛特訓を行い、チート級の戦闘力と数々のスキルを持つ事になります。 『悠々自適にぶらり旅』 を目指す″つもり″の彼でしたが、開始早々から波乱に満ちた冒険者生活が待っていました。

処理中です...