プライベート・スペクタル

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第三話 第四章

第四節

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『皆々様。自分達以外のグループとの初接触はどうやら終わったようだね』
「まるでアタシ達を待っていたかのような形ね…」
『さて見ての通りこの地下空間だが……ここは君達が先程までいた古城その地下となる。俺が少々弄らせてもらったが、天井の向こう側には先の城内大広間が…そしてさらに城内上階には『将』である俺が居るという構図になる』
言われ頭上を見上げたミコ。もちろん何気なくであり、石造りの天井によって作られた暗闇で当然見ることは出来ない。
落ちて来たであろう穴から漏れ出る僅かながらの光が夜空の星の様に見えるのみであった。
『当然、参戦者の皆々様はここから各々の立場に沿って『将』となるこの俺…R・Rを撃破するか守護するかの行動をとるのだろう……この地下空間から脱出して城内へと戻り己が目標を達成するためにね……』
「そんなの当然だろ?」
『だが、そのままホイホイと目標を達成されてしまっては芸がない。皆々様も俺も、そしてこの戦いを耳目に触れるトワ様にもね…だからこそちょっとした遊戯ゲームを提案したいと思ってね…如何かな?』
『ふむ、成程……最初からその遊戯をするつもりでのルールの変更無しという事ですか…突発的であり、『将』であるゲームマスターに裁量をゆだねる為に……』
『遊戯のジャンルは単純な競争レース。これから皆々様はこの地下空間と城内全てで誰が俺の居る部屋に一番に辿り着けるのかを競い合ってもらう』
「レースですって…」
そこでR・Rからルールが提示される。

ルール1。この競争のスタート地点は古城地下空間。ゴールはR・Rのいる部屋としR・Rは開始より動いてはならない。
ルール2。参戦者は今現在合流している面々で一つのチームとし、チームとして競争に挑む。人数は欠けてはならない。
ルール3。競争には中間地点チェックポイントが設けられる。中間地点は先着順でありそこに入らなければ脱落となる。

『以上がボクの考えたルールだ…どうだ、単純だろう?』
『コレは…結構マズいですね……』
「えぇ…わかるわよ睦美…」
ルールは確かに単純である。だが、問題はそこではない。
ルール3の先着順、ソレが厄介だ。
脱落というのはおそらく何らかの方法で参戦権をはく奪、最悪斃れる可能性すらあり得る内容だという事。この場に居る誰しもが何としてでも避けたい事案であろう。
避けたいという事は……。
そこに入る為に同じ陣営側でも蹴落とし潰し合いをしなければならないという事になるのである。
『それだけならまだ序の口…その後、潰し合いで消耗した状態で『将』であるR・Rと渡り合う必要があるという事です』
「想定以上に面倒な闘いになったわね……これだったら先の全裸の方がまだマシだったかもだわ…」
R・Rの力量がどれ程かはわからないが、トワに『将』として任される【星】。決して油断はできない相手だろう。
『それでは、ルールも説明したしそれでは始めるとしよう。誰になるかはわからないが、皆々様に出会える時を楽しみにしているよ……』
その直後、石造りの燭台に灯がともり、地下空間が明るくなる。
そして開始を告げるものであろうブザーの音が鳴り響く。
そして廊下の至る所に『20』というデジタル表記が浮かんだ。

「おい…早い者勝ちって事は、急いだほうじゃあ良いんじゃあねェか?」
「そうですねウルフさん!」
「待って!」
先へと進もうとする騎士ウルフとミコをそう止めた晴菜。
「進むことは必要だけれど、急ぐのは待った方がいいわ…」
「どういう意味だぁ『爆炎』?早い者勝ちって言っていたじゃあねェか!?ウダウダして脱落するなんてだせェ事はイヤだぜ!」
「だからこそよ…」
おそらくあの表示されている『20』というのが先着順なのだろう。あそこが0になるまでに中間地点にまで辿り着く必要があるに違いない。
だが、この表記と言い先着順と言い。どうもあのR・Rは参戦者を急かそうと考えていると思わざるを得ないのである。
『ふむ、その判断を提案するより先に行っていただいてありがとうございます晴菜。あのR・Rは焦らせるように誘導しているのでしょう。より悪辣な何かに嵌める為に…』
「おそらくね…それか、別の何かを張っているのか……まあその辺りはまだ情報がないと何とも言えないけれど……」
『ええ、コチラも他の参戦者のナビやおそらく様子を見ているであろうカメラから情報を集めておきます』
「お願い睦美。ミコもそういう事だからね……」
「わかりました晴菜さん。すみません少し慌てておりました」
「別に謝らなくてもいいわよ……騎士団のお二人もそれで良いかしら?」
同じ側であるがルール上同チームになった『星炎騎士団』の二名にも聞いておく晴菜。
急ごうとしていた騎士ウルフは兎も角、騎士ウォーロックは【星団】の№2だ。また『盤面指し』の銘を持つ名参謀だとも聞いている。
再会してから無言なのは気になるが、これぐらいの腹芸は持っているだろう…。
「……ウォーロック卿。どうします?」
「………レディの言う通りですよウルフ卿。焦らず情報を収集しつつ先へと進みましょう」
どうやら晴菜達の想定通りの考えを持ってくれていたようであった。
「ちッ!わかりましたよ……」
舌打ちしつつも騎士ウルフも言う通りにする。
その瞬間…。
ォォォォォォォォォォォォォォォォ……!!!
ァァァァァァァァァァァァァァァァ……!!!
地響きの様な叫び声が地下空間の至る所で聞こえる。
それだけで晴菜達はR・Rの思惑に乗ってしまった者同士の競争と同士討ちが始まったのだと察した。
「一応、先には進んでおきましょう…アタシが先陣を切ります。ミコとお二人は付いて来て下さい」
「わかりました!」
「ああ了解…」
こうして移動を開始した晴菜達。言った通り炎の拳銃を手にした晴菜が先行し、その後ろにミコ達が続く。
道中、何チームかと接近はしたが…全て隠れてやり過ごす。
「おい『爆炎』なんで他の連中と戦わないんだ?お前の実力なら問題ないだろ?」
「物事の先を見なさいウルフ卿。我々の目的は『将』のもとに辿り着く事…よけいな消耗をするのは得策ではありません」
「…わかりましたよ」
渋々納得した騎士ウルフ。
その後、何度か戦闘の光景を見つつも進んで行くと突如R・Rからの放送が入った。
『定時連絡だ。たった今、中間地点に到着したチームが2つ現れたね』
その報告と共に表記されていた数字が『18』と数を減らした。
『また脱落したチームも10に到達した……残る椅子は18参戦者の皆々様は頑張ってくれ』
暗に潰し合いを呷る様なR・Rの言葉。現にその報告で叫び声と戦闘音が強くなった。
「ちッ、中間地点は何処なんだよッ!!」
結構な距離を動き探し回っているのにも関わらず見えてこない中間地点に思わず苛立ちの声をあげる騎士ウルフ。徐々に減っていく数字に焦りも加わる。
『ふむ…おそらく何らかの仕掛けがあるのでしょう。今こちらもハッキングし終えたカメラの映像を洗い出しているところで……おや?』
「どうしたの?」
『それらしい仕掛けを一つ見つけました。場所をナビゲートします』
一つのチームがある地点を境に消えた事から仕掛けを見つけた睦美。
晴菜達にその場所を導く。
『少し直進した後、右に曲がって下さい』
「睦美さん。曲がると言っても壁ですよ!?」
『大丈夫です。おそらく……』
「信じるわよ睦美」
指示の通り壁に突き当たるような形で曲がった晴菜達。
瞬間、壁に当たったような感触は無く晴菜達は違う空間に現れた。
「おおッ!やるじゃあねぇか『爆炎』のナビゲーター!ここがゴールの為の仕掛け、隠し通路だったという訳か!?」
『ええ、おそらく…』
「だとしたら景気が良いや!このまま向かってあの野郎をぶちのめそうぜ!!」
「上機嫌はそこまでウルフ卿。しかしその前にやることがあるみたいです」
ウォーロックの視線の先、コレから向かう道に灯りがともる。
そこには四方が奈落の広場。そして晴菜達と同じ参戦者の別チームが対面に現れた。
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