プライベート・スペクタル

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第三話 第三章

第五節

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「ふぃ~着いたなぁ~」
「うぃ。久しぶりです」
そしてようやく『創世神』の【領域】に帰還した大和とエイプリル。
わずか10日程の期間であったが、とてつもなく長い期間空けたような感覚であった。
「そう言えば師匠、門司さんや晴菜さんはもう戻っておられるのですよね?」
「ああ、『郷』に寄り道していたし俺等が最後だろうな」
そうやり取りをしながらいつもの作戦室へと足を運んだ。
「ただいま~っと」
「今戻りました」
「ふむ。今戻りましたか…」
作戦室に入った大和とエイプリル。
作戦室には睦美だけが居た。
「うぃ、お久しぶりです睦美さん」
「お久しぶりですエイプリル。強くなって早速雪辱を果たしたとか……チェルシーから聞きましたよ」
「うぃ、お婆様の指導のおかげですよ…えへへ……」
「それよりもアレ?睦美だけ?」
「この部屋にはそうですよ2号…一応、1号も晴菜、そしてミコも【領域ここ】には戻っては来ております。三人とも結構なところに赴いていたようで、身なりがボロボロだったので今は着替え中です。すぐにこちらに戻ってきますよ…」
ガチャっ…。
「ふむ。丁度いい所に…」
噂をすれば何とやら作戦室の出入り口が開く。
そして門司と晴菜が入って来た。
「兄弟、戻って来ていたのか?」
「そのアホ面だけは変わらないみたいね」
「門司、晴菜久しぶり!」
門司の言葉と晴菜の皮肉が久々に沁みた大和。二人にがっしりと抱きついた。
「門司さん、晴菜さんお久しぶりです」
「久しぶりエイプリル。色々と聞いたわよ……」
「【演目】か…俺達より強くなったんじゃあないか?」
「いえいえまだまだお三方の足元にも及ばず…」
そう漏らしたエイプリル。決して謙遜の意味ではない。
門司も晴菜もそして睦美も大和と同じく纏う気配が増している。詳細はまだわからないが各々修練を経て強くなったという事だけは理解出来た。
「あれ?門司、ミコの奴は?」
門司に付いて行ったミコの存在がないことを問いかけた大和。
「ミコか元気は元気だが……今は一人にしてやってあげてくれ」
そう返した門司。大和は何かを感じたのか「OK」と深くは聞かないことにした。
「そう言えば、その格好はどうしたんだよ?」
話題を変える意味を超えて門司と晴菜の身なりを眺めて言った大和。二人とも大きくは変わってはいないが、増えた意匠と一部が動きやすくアップグレードされていた。
「チェルシーが用意してくれていたんだ。『フツノミタマ』の職人連中と共同で仕立てた特注品らしい」
「へぇ~…………」
ボンッ!
「ゲッホ…まだ何も言ってなくね?」
「言いたい言葉が理解わかったからよ」
ノータイムで爆撃された大和。照れ隠しだと気にも留めない事とする。
「材質は軽くて丈夫…今後の活動でも十二分に役に立つだろう」
「えぇ~小型艦の艦砲にも問題なく耐えれるように作らせて頂きましたよぉ」
とそこでチェルシーが入って来た。おそらく大和とエイプリルのモノなのだろう布切れを持っている。
「おぅ、チョイと頼むわ…」
「承知いたしましたぁ~」
恭しく一礼の後に大和達の横を通り過ぎたチェルシー。
刹那で大和とエイプリルの衣装が繕われる。
「おお、確かに良いなコレ」
「うぃ、すごく軽いです」
門司達と同じくアップグレードした衣装の質感を見た大和とエイプリル。
「ふむ、ではそろそろ話を戻しましょうか…」
「おう」
そう軌道修正をした睦美。ヒミコからの協議の内容へと話を移す。
大和はヒミコと話をしたトワの情報。そして提示してきた総則を話した。
「……ふむ、そのような総則を提示して来ましたか…」
「ああ、結構な強気に出ていやがるぜ連中」
「おそらく、手にしている【星具】の力も勿論ありますが…式典の際、我々を分断したあの【演目】もあるからでしょうね……一般人への人質、あの【演目】による強制の二段構えであるのでしょう」
「それで、第二戦だが……誰が出る?」
「ああそいつなんだが……」

「今回の初戦。いやアンタ等が先におっ始めているから第二戦か……悪いがアタシ等『フツノミタマ』と合衆国の連中でやらせてもらうよ」
「何でぃ、いきなりだな…」
「別に因縁あるアンタ等に初戦と同じく任せても良いんだけれどね……アンタ等は修行を終えた直後、まだ万全じゃあないだろ?だったらアタシ等に任せな」
「いつになくやる気満々だな…今回は合衆国の土地。愛すべき日本とはほぼ一切関係ないんじゃあねぇの?」
「まあ確かに関係はないさ…だが、今回は収容者共の騒ぎとは異なり確実に合衆国に被害が出る一件さ……こちらの人員を割くだけで恩を売れるなら売っておくに越したことはない。今回の式典が台無しにされたから、それと国同士の同盟の義として参加してやるさ…表向きはね……」
「強かだねぇ」
「そりゃ国同士だから、お手々繋いで無償の奉仕なんて国政を担う連中がやったら下の下さ……民は兎も角、政の連中にだけ理解する否、させる様に立ち回ってやるさ…それに……」
「それに?」
「アタシ等や合衆国の連中。アンタ等以外の連中が勝てば連中の鼻っ柱を完全にへし折ることが出来る……幸先としてはこれ以上にないことになるだろうからね」
「そいつが本音か?」
「どうだろうねぇ……まあこの戦いだけはアンタ等はゆっくり観戦しておきな」

「だってさ」
「あの婆…また色々と企んでいやがるな…」
「全くだ。折角お土産とお洒落なビル群でお茶でもしたかったのによ」
「修業をしたのにそう言うところは相も変わらずなのね馬鹿……で正直なところどうする睦美?」
「ふむ。今回はヒミコの言われた通り…観戦に徹しましょう。一度しか参戦権が存在しない以上。今後の事を考えて任せた方が良いでしょうね」
「そりゃそうだな……あの婆の本領を見せてもらおうか……」
そう言って刀に手をやる門司。
そして約束となる日時。
『魔女の旅団』と全世界との戦端が開かれたのであった。

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