プライベート・スペクタル

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第三話 第三章

第三節

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「んじゃ婆ちゃん。そろそろ行くわ」
採れたてと自家製食材100パーセントの朝食をご馳走された大和とエイプリル。
それを食べ終え、いよいよこの【領域】を発つ事に決めた。
10日間過ごした三笠の家を後にした大和とエイプリル。
三笠は【領域】の入り口まで見送りに来てくれた。
「この10日間お世話になりました」
「あらあら急に改まって…良いのよぉ婆ちゃんも楽しかったわ」
キチンと向き直り頭を下げた大和に笑みで応じる三笠。
「お婆様。本当の本当にありがとうございました」
「エイプリルちゃんもいつでもおいで、何もない所だろうけれどここはもうエイプリルちゃんの家と同じだから……婆ちゃんいつでも料理を用意して待ってるからね」
「うぃ。近いうちに必ず会いに向かいます!」
三笠にこう言われ少し悲しい表情も晴れたエイプリル。そう約束をする。
「そいじゃ…」
名残惜しいが【領域】の出入り口に入った大和とエイプリル。
出入り口が閉じるまで手を振ってくれた三笠にこちらも手を振り返す。
こうして三笠の【領域】での修行は終わりを迎えたのであった。

「師匠。スゴく濃い10日間でした」
「そうだな」
「またお婆様に会いに行きます。今度は修行とか関係無しに……」
「良いなソレ♪婆ちゃんも喜びそうだ」
名残を噛みしめる大和とエイプリル。久々の『無間回廊』を歩く。
と『無間回廊』内にチェルシーが待っていた。
「修業お疲れ様ですぅご主人、エイプリル様」
「おお、何だ『創世神おれたち』の【領域】で迎えても良いだろうに…」
「いえいえ、この10日間あまりご主人のお世話が出来ませんでしたからねぇ~…従者としての感覚がそれを許してもらえず、居てもたってもいられずぅ」
「そいつはありがとう。でも他にも用があるんだろ?」
「おやおやぁ、ご察し頂き恐悦至極……ええ少し別件で伝えたい事がご主人に…」
「聞くぜ」
「ヒミコ様よりのご依頼です。『魔女の旅団』の宣戦布告について話がしたいと…すぐに『郷』の方にお越しいただきたく思いますぅ」
「遂に来やがったか…」
チェルシーの言葉に大和はいよいよだと応じた。

「おや今回はアンタ達二人で来たのかい?」
「ああ、門司と晴菜は今丁度『創世神』の【領域】に戻って来たってチェルシーから聞いたしな…長旅だったろうし疲れているから今回は俺とチェルシーだ」
『郷』に到着しヒミコの元に向かった大和達。
着いて早々…ヒミコは大和達を労う。
「まずは…大変だったねアンタ達も、式典の場があんなことになっちまって」
「まぁな、手痛い一撃を貰っちまったが…もう大丈夫だ。それにエイプリルが初戦を勝ったし、次こそはきっちりとリベンジを果たしてやるさ」
「そりゃ心強いね。なんだい、敗れてチョイと心配していたけれど、きっちりと強くなって杞憂だったね…」
大和達の様子を見てそう悟ったヒミコ。だったらと本題に入ることにした。
「さて、先の御法川・トワ並び彼女の率いる【星団】『魔女の旅団』は10日前の宣告通り日本時間の午前9時に主要国に向けて宣戦を布告。同時に各政府機関にメッセージを送って来たよ」
そう言って手を挙げるヒミコ。すると部屋に備え付けられたスクリーンが降り映像が映し出される。
「内容は指定地域への侵攻の時間とその指定地域の詳細さ…それと誰も要求を飲まなかった事への愚かさを説いた言葉をたっぷりと添えてね」
「みたいだな…誰も飲まなかったって、俺も婆ちゃんとエイプリルから聞いたぜ」
「舞園・三笠かい?…まあ今は置いておいて…さらに向こうはある総則ルールを提案して来やがったのさ」
「自分達の方が上だとでも言いたいのかね…」
「まあこちらも何様だい?と思ったけれど……おそらく連中の規模、アンタ等の求める【星具】合計3つの『無にして全』を持っているからだろうね」
「世界に喧嘩を売れるってか…これらを飲まなければこちらも無法の限りを尽くしてやるってか…」
「ああ、実質全世界の一般人を人質にした要求さ……先に公開された動画で一般人達も動揺しているって話だしね……」
「だったら乗るしかねぇわな……だが裏を返せば………」
「ああ…連中をぐぅの音も出ない程に叩き潰せるって訳さ、更には連中は開示した以上逃げることも出来ない。悪童のアンタ等には悪くない展開だろ?」
互いに意地の悪そうな笑みを浮かべた大和とヒミコ。有利不利なんて考えない。相手の土俵に上に立ち尚且つ完膚なきまでに叩き潰す。ただそれだけであった。
「決まりだね、それじゃあ連中が送って来た総則を見てもらおうじゃあないか」
そう言ってヒミコは大和達に送られてきた総則の書面を広げた。

※来週は休筆致します。次回更新は8/19予定です。
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