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第三話 第二章
第三節
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全長2m程度。袴のような衣装に身を包み。木で出来た肌の表面には人形特有の球体関節が覗かせている。
また頭部には誰かはわからないが、何者かを模した顔が彫られていた。
「コレは?」
「自動絡繰人形『護国くん』よ。すごく要約するなら体術の出来るロボットのようなモノかな?功夫映画とかでよくある木人。あれの超アグレッシブ版よ」
「うぃ。師匠と一緒に何度か見た記憶があります」
「とある【星】が製作ったモノだから対【星】用でね、まずはこれとちょっとだけ戦ってもらおうかな……」
「うぃ」
「ちなみに今回は動きを見たいから能力は使用禁止。体術だけね」
そう言って人形を弄った三笠。
何回かの誤作動を挟みつつ人形は動き始めた。
「では開始」
瞬間、動き始めた人形。ロボットに似つかわしくない且つ【星】のような超人的な速度でエイプリルへと接近し腕部を振るった打撃を叩き込む。
「うっ!?」
打撃を捌くエイプリル。続く脚部と腕部の連撃も何とか防ぐ。
反撃で杖を振るうエイプリル。だが、人形は杖を的確に防ぐ。
同時に人形は一瞬視界から掻き消えた。
「えッ!?」
すぐに人形を探すエイプリル。だが見つけた時にはもう遅く。人形の腕部が眼前まで迫って来ていた。
(やられ…ッ!?)
目を閉じるエイプリル。
だが直前でその腕部は止まる。
「はぁーい。お疲れ様~」
「はぁはぁはぁ…」
「うんうん。欧州の【星】の体術『ステラ』で機能させたけれど……中々いい具合ね」
「寸止めですか?」
「そりゃそうよ。今回はエイプリルちゃんがどれぐらい出来るかを見る為のモノですもの…その前に怪我なんてさせてしまう程、面白くないことはないわ」
「そうですか…」
「それにしても、ふふッ…中々に面白い娘ねエイプリルちゃん。コレからの事を考えると婆ちゃん胸が高鳴るわ」
楽しそうに笑みを浮かべた三笠。突然ビシッとエイプリルに指さした。
「ではエイプリルちゃん。ここで早速ワンポイントアドバイスよ!」
「うッ、うぃ!?」
「考えるのは良いけれど、少々余分なモノが入り過ぎているように見えるわ…もっと情報の取捨選択をしないと……」
「余分なモノ。雑念のようなモノでしょうか?」
「そこを自分で見つけるのが練習。でもそれを如何にかするだけで、エイプリルちゃんは今より数段上の高みに至れることだけは確かね……【演目】もおそらく生み出せるできる程にね…」
「【演目】も…」
「見つけるのは貴方の練習。だけど見つけるお手伝いをすることは出来るわ。一緒に頑張りましょう」
「うぃ!!」
強く頷いたエイプリル。三笠は「良い返事」と笑った。
「ほぅほぅ成程ねぇ…」
この後、外と同じく流れるこの【領域】にて日が暮れるまで体術の手解きをしてもらったエイプリル。
その様子を聞きつつ大和はエイプリルの茶碗にご飯を寄そった。
「初めの頃の大和ちゃんを思い出すわねぇ……教えた事をまるでスポンジのように吸収していくんですもの」
「のぅ。お婆様の教えが非常に上手なんです」
三笠の指導。スパルタというには到底及ばない緩い部分もあるのだが…教えられる程に如実に実力は増しているとエイプリルは感じていた。
「まあ婆ちゃんは教え子の本質を捉えてそいつを伸ばす事に関しては天才級だからな…一日じっくり見てもらえたなら、自らを別人と自覚するまでのレベルアップは同意だわ」
「うぃ。ですが…最初に指摘された余分なモノの正体。それは尻尾すらつかめていない状態ですが……」
「それも師事したての俺と同じだなぁ……まあ俺もその答えを数週間は休まずに考えてようやく解決したぐらいだし。一朝一夕で解決できりゃあ世話ないわな」
「その解決法が『龍桜』だったわよね」
「まぁな」
「ところで師匠。師匠は本日一日如何様に過ごされていたのですか?」
「そうだなぁ…婆ちゃんに聞いた通り精神修養でほぼ修練所で過ごしていたな。大の字に寝そべってみたり座禅を組んだり、たまに身体動かしたり…」
「大和ちゃん。『龍桜』は演った?」
「してねぇさ『龍桜』は精神力を爆発させる【演目】。精神を落ち着けようとする行為とは対極だ…折角落ち着けようとしているのにそいつを無駄にするなんて愚行は犯さないさ」
「うんうん良かった。その通りだからね」
大和の回答にホッとした表情を見せる三笠。
「しっかし、久々にこんなのんびり出来たぜ。最近はちと色々あったからな…そんでエイプリルや婆ちゃんが疲れて帰ってくると思って飯を作って待っていたんだよ」
「え?師匠がこの料理を作られたのですか?」
「意外だったろ?」
焼き魚の主菜に芋の煮っころがしの副菜。豆腐と海藻の汁物にタケノコの炊き込みご飯という純和風のような食卓。それもどれもがおいしい。
普段はチェルシーに頼っている大和。やろうと思えば出来るのだとエイプリルは理解した。
「大和ちゃんの料理も久々ねぇ…やっぱり普段自炊する分、他の人の料理は尚更よくありがたく感じるわぁ」
「ここで修業していた時にゃあ毎日だったからな…懐かしいだろ?」
「ええ、とても……」
「うぃ。私も初めてです…とてもおいしい」
「そりゃよかった」
「ところで今、世間様はどうなっているのかしら?教えてちょうだいな…」
「ああそうだなぁ……」
その後、最近の出来事を話した大和とエイプリルに聞いて楽しく笑う三笠。
そんな感じで盛り上がりつつ、夜は更けていった。
また頭部には誰かはわからないが、何者かを模した顔が彫られていた。
「コレは?」
「自動絡繰人形『護国くん』よ。すごく要約するなら体術の出来るロボットのようなモノかな?功夫映画とかでよくある木人。あれの超アグレッシブ版よ」
「うぃ。師匠と一緒に何度か見た記憶があります」
「とある【星】が製作ったモノだから対【星】用でね、まずはこれとちょっとだけ戦ってもらおうかな……」
「うぃ」
「ちなみに今回は動きを見たいから能力は使用禁止。体術だけね」
そう言って人形を弄った三笠。
何回かの誤作動を挟みつつ人形は動き始めた。
「では開始」
瞬間、動き始めた人形。ロボットに似つかわしくない且つ【星】のような超人的な速度でエイプリルへと接近し腕部を振るった打撃を叩き込む。
「うっ!?」
打撃を捌くエイプリル。続く脚部と腕部の連撃も何とか防ぐ。
反撃で杖を振るうエイプリル。だが、人形は杖を的確に防ぐ。
同時に人形は一瞬視界から掻き消えた。
「えッ!?」
すぐに人形を探すエイプリル。だが見つけた時にはもう遅く。人形の腕部が眼前まで迫って来ていた。
(やられ…ッ!?)
目を閉じるエイプリル。
だが直前でその腕部は止まる。
「はぁーい。お疲れ様~」
「はぁはぁはぁ…」
「うんうん。欧州の【星】の体術『ステラ』で機能させたけれど……中々いい具合ね」
「寸止めですか?」
「そりゃそうよ。今回はエイプリルちゃんがどれぐらい出来るかを見る為のモノですもの…その前に怪我なんてさせてしまう程、面白くないことはないわ」
「そうですか…」
「それにしても、ふふッ…中々に面白い娘ねエイプリルちゃん。コレからの事を考えると婆ちゃん胸が高鳴るわ」
楽しそうに笑みを浮かべた三笠。突然ビシッとエイプリルに指さした。
「ではエイプリルちゃん。ここで早速ワンポイントアドバイスよ!」
「うッ、うぃ!?」
「考えるのは良いけれど、少々余分なモノが入り過ぎているように見えるわ…もっと情報の取捨選択をしないと……」
「余分なモノ。雑念のようなモノでしょうか?」
「そこを自分で見つけるのが練習。でもそれを如何にかするだけで、エイプリルちゃんは今より数段上の高みに至れることだけは確かね……【演目】もおそらく生み出せるできる程にね…」
「【演目】も…」
「見つけるのは貴方の練習。だけど見つけるお手伝いをすることは出来るわ。一緒に頑張りましょう」
「うぃ!!」
強く頷いたエイプリル。三笠は「良い返事」と笑った。
「ほぅほぅ成程ねぇ…」
この後、外と同じく流れるこの【領域】にて日が暮れるまで体術の手解きをしてもらったエイプリル。
その様子を聞きつつ大和はエイプリルの茶碗にご飯を寄そった。
「初めの頃の大和ちゃんを思い出すわねぇ……教えた事をまるでスポンジのように吸収していくんですもの」
「のぅ。お婆様の教えが非常に上手なんです」
三笠の指導。スパルタというには到底及ばない緩い部分もあるのだが…教えられる程に如実に実力は増しているとエイプリルは感じていた。
「まあ婆ちゃんは教え子の本質を捉えてそいつを伸ばす事に関しては天才級だからな…一日じっくり見てもらえたなら、自らを別人と自覚するまでのレベルアップは同意だわ」
「うぃ。ですが…最初に指摘された余分なモノの正体。それは尻尾すらつかめていない状態ですが……」
「それも師事したての俺と同じだなぁ……まあ俺もその答えを数週間は休まずに考えてようやく解決したぐらいだし。一朝一夕で解決できりゃあ世話ないわな」
「その解決法が『龍桜』だったわよね」
「まぁな」
「ところで師匠。師匠は本日一日如何様に過ごされていたのですか?」
「そうだなぁ…婆ちゃんに聞いた通り精神修養でほぼ修練所で過ごしていたな。大の字に寝そべってみたり座禅を組んだり、たまに身体動かしたり…」
「大和ちゃん。『龍桜』は演った?」
「してねぇさ『龍桜』は精神力を爆発させる【演目】。精神を落ち着けようとする行為とは対極だ…折角落ち着けようとしているのにそいつを無駄にするなんて愚行は犯さないさ」
「うんうん良かった。その通りだからね」
大和の回答にホッとした表情を見せる三笠。
「しっかし、久々にこんなのんびり出来たぜ。最近はちと色々あったからな…そんでエイプリルや婆ちゃんが疲れて帰ってくると思って飯を作って待っていたんだよ」
「え?師匠がこの料理を作られたのですか?」
「意外だったろ?」
焼き魚の主菜に芋の煮っころがしの副菜。豆腐と海藻の汁物にタケノコの炊き込みご飯という純和風のような食卓。それもどれもがおいしい。
普段はチェルシーに頼っている大和。やろうと思えば出来るのだとエイプリルは理解した。
「大和ちゃんの料理も久々ねぇ…やっぱり普段自炊する分、他の人の料理は尚更よくありがたく感じるわぁ」
「ここで修業していた時にゃあ毎日だったからな…懐かしいだろ?」
「ええ、とても……」
「うぃ。私も初めてです…とてもおいしい」
「そりゃよかった」
「ところで今、世間様はどうなっているのかしら?教えてちょうだいな…」
「ああそうだなぁ……」
その後、最近の出来事を話した大和とエイプリルに聞いて楽しく笑う三笠。
そんな感じで盛り上がりつつ、夜は更けていった。
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