プライベート・スペクタル

点一

文字の大きさ
上 下
68 / 139
第二話 第三章

第七節

しおりを挟む
【演目】 『爆炎 炎銃 両腕 ミニ・ミトラィユーズ』
【演目】 『喜楽・氷 凍矢弾雨フリージング・マシンガン

【演目】 『喜楽・氷 場地凍風フリーズ・ドライ
【演目】 『爆炎 炎銃模倣 ドラゴンブレス』

互いに一歩も引かない【演目】の応酬。
晴菜とタンドラ。炎と氷。双方がぶつかり合う度に激突の中心部では水蒸気を伴う爆発が巻き起こる。
レクリエーションルームも陣取りのように半分は凍結し、もう半分は発火炎上するという世にも珍しい様相となっていた。
「はああッ!」
「ヴぅ!!」
巻き上がる水蒸気の中から飛び出した両者。互いに振るわれた近接攻撃の一撃に双方とも吹き飛ぶ。
(能力は完全に相殺の関係ね…向こうも思っているだろうけれど、やりにくいったらありゃしない…)
内心で愚痴りながら、休まずに炎の拳銃で弾丸を撃ち込む晴菜。氷の壁で作られ防がれる。
だが、これまでの攻防で分かったことが何点かあった。
(奴の氷。それは私のように無から発生させるタイプとは違う、身体を極低温に変えることで凍結させて生まれた副産物。それを操作すること事で氷柱を生み出したり操ったりしている)
管理室での一件やこれまでの攻防。ほぼ全ての【演目】がタンドラの足元や手元を起点に徐々に伝播するようにして凍っている事からそう察する晴菜。
そしてもう一点。
(奴は地面や壁などの固体をメインにしているってことは、空気等の気体は凍らせるのが難しいか…もしくは著しく弱まるということ)
であれば……。

【演目】 『爆炎 炎爆 ASM 対【星】地雷』

生み出した炎の地雷。それをディスクのように地面へ滑らせるように投擲する晴菜。
タンドラは跳ねる様にして躱した。
「そこ!」
即座に炎の拳銃に持ち替え弾丸を叩き込む晴菜。すると先程までのような壁が現れない。
弾丸は全てタンドラの胴体に吸い込まれるようにして命中した。
着弾により炎上するタンドラ。
だが、即座にタンドラを包んでいた炎は掻き消えた。
「ッツ!?」
「ヴ…ヴーん。こご最近…張り合いが無いごとが多かったがら…づい苦手な空中に行ってじまった………ありがどう、『爆炎』……おがげで……目が覚めだ…」
「成程、衣服ね……その厚着を凍らせたことにより鎮火させたということね」
炎が収まったことにより見えた状態からそう察した晴菜。そのエスキモーのような厚着は自分の寒さを防ぐ為でもあり、凍らせ堅牢な鎧に転化する為でもあったのだ。
「ごの服は穴だらげ…使えない……」
そういって服を脱ぎ捨てたタンドラ。上半身が裸になる。
「敵のアタシが言うのもなんだけれど、穴だらけでもアンダーぐらいは一応着ておいたら?その格好で攻撃を受ければ今度こそ終わりよ」
「ヴ?意外ど世話焼き……でも心配ない…もう油断ばじない…………ぞもぞも………」
「……ッ!?」
「お前を殺ずにば…このぐらい必要……」
均衡していたはずが氷一色に一気に変化したレクリエーションルーム。
(それに自身を抑える拘束服もだったって事ッ!?)
先程よりも明らかに凍結速度も範囲も数段近く跳ね上がっているのを見て確信した晴菜。
呼吸する度に肺が凍りそうな冷気が潜り込んで来ようとする。
「ざぁ……遊びば終わりだ…」
「くッ!」
弾丸を撃ち込む晴菜。だが弾丸は先程よりも厚く堅牢な氷の壁により容易く防がれる。
そのまま踏み込むような挙動をしたタンドラ。瞬間、晴菜の足元まで一気に凍結する。
炎を発し防御しようとする晴菜。だが……。
「ぞうじゃあない…」
晴菜を躱すように取り囲む形で作られていく氷。四方全てを取り囲まれる。

【演目】 『喜楽・氷 氷獄凍極フリーズ・コキュートス

そのまま氷の牢を作り上げ晴菜を閉じ込めた。
「……………………」
生き物の飼育容器に入れられたみたいに透明な立方体の中の晴菜。声が外に届かない。
「お前の炎は特殊でなぐ…酸素を燃焼させる普通の炎ど同じ……密閉させれば大きくば使えない…ぞれに使えば使うほど窒息の危険ずら高まる……」
そう言って氷の牢に近づくタンドラ。手を牢へと触れる。
「炎で溶がぜば良いど考えるだろうが………こうすれば溶がす度に凍るじ、中の空気ずらも徐々に凍結じ…使えなくなる………」
「…………………………」
「ごれがらお前がずる事…ぞれは苦しみながら無様に死ぬ事……その様子を俺に見せるだげだ……」
いやらしい笑みを浮かべたタンドラ、勝利宣言のようにそう言い放つ。
一方何も言わなくなった晴菜。牢の壁に手をやり俯いたような仕草を見せる。
「ヴ、ぞの表情ッ!絶望を気丈に耐えようとずるぞの表情良いぞッ!もっど見せでぐれぇ!!」
興奮した表情のタンドラ。楽しそうな表情で壁をダンダンと殴りながら叫ぶ。
何も言わなくなっていた晴菜はようやく口を動かす。
「ヴッ!命乞いが!?悲嘆の叫びが!?」
内部を食い入るように見るタンドラ。読唇で何を言っているのかを読み取る。
「何だ?……『………それが…なに…』?」
言葉と共に笑みを浮かべ炎の拳銃を構えた晴菜。引き金を引き絞る。
瞬間、氷の牢は一部を残し跡形もなく砕け散った。
「あヅッ!!?」
「あ~苦しかった……やっぱり娑婆の空気は美味いってね」
「ど、どうやっで?………空気はごくわずかしがなかっだはず…ぞれなのに何故ッ!?」
「酸素が無いと生み出せないのはアンタの読みに間違いはないわ。でもお生憎様…こういう状況への対策は、ネットで売るぐらいに編み出しているの、炎を扱う者として当然の義務としてね」
「グぅ……っ!」
苦虫を噛み潰したような表情を見せるタンドラ。
「それと「どうやって?」だっけ?本来なら企業秘密と考えていたけれど、アンタはバカそうだし……ここできっちりとへし折り叩き潰してやる為に教えてあげる……これよ……」
そう言って晴菜が掲げたモノ。それは彼女が作成する炎の弾丸その一発。
だがその弾丸は遠目で何も知らない者でも理解可能な程の高温を有していた。
「『爆縮弾』アタシはコレをこう呼んでいる。炎を過剰に充填する事で作成できる『爆炎アタシ』のみしか作成・使用することが出来ない特殊弾よ」
「特殊弾だど…っ」
見せびらかすように弾丸をくるりと回した晴菜。それだけで弾丸から炎が渦巻く。
「『爆縮弾コレ』の特性はこれまで充填させた炎を少ない空気で撃ち出すことが出来る非常に単純なモノよ」
炎の拳銃に弾丸を装填する晴菜。引き金を引く。
放たれた弾丸は大人一人分の直径の炎柱となり。タンドラの横を掠めた。
「最も充填チャージが必要という意味で数百発単位の作成も出来ないから、マシンガンみたいに乱射は出来ないし…ウチの馬鹿や門司みたいに接近戦主体で高速展開する戦闘にも向かないけれど…アンタみたいな臆病者の殺人鬼チキンにはもってこいってね…」
「グヴヴヴヴヴヴヴぅぅっ……」
「さあ審判の時間よ」
そう言って拳銃を突き付けた晴菜。照準はタンドラの中心に合わせ決して外さないようにする。
「ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ~~っヴヴ!!俺ばまだゴロスンダァ!!」

【演目】 『喜楽・氷 凍極魔神フリーズ・デス

全身を極低温にし突撃するタンドラ。晴菜を即凍結させようと抱きしめにかかる。
「いや終わりよ」

【演目】 『爆炎 炎銃 イーグル 爆縮イグニッション

冷たくそう言い放ち引き金を絞る晴菜。炎の柱はタンドラの氷を解かすどころか焼き尽くした。
「アタシが執行するのも畏れ多いけれどね……これまでの被害者の恨みと共に地獄の業火に焼かれてきなさい」
全身が黒焦げに焼かれ吹き飛ぶタンドラに晴菜はそう言いつけた。

※10/1は所用により休筆致します。次回更新は10/8予定です。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

いや、あんたらアホでしょ

青太郎
恋愛
約束は3年。 3年経ったら離縁する手筈だったのに… 彼らはそれを忘れてしまったのだろうか。 全7話程の短編です。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

ああ、もういらないのね

志位斗 茂家波
ファンタジー
……ある国で起きた、婚約破棄。 それは重要性を理解していなかったがゆえに起きた悲劇の始まりでもあった。 だけど、もうその事を理解しても遅い…‥‥ たまにやりたくなる短編。興味があればぜひどうぞ。

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

処理中です...