67 / 146
第二話 第三章
第六節
しおりを挟む
「睦美、敵のいる場所わかる?」
「ふむ、少々お待ちを…」
収容所の細長い廊下をひた走りながら睦美に問いかける晴菜。
と同時に触れると即座に凍結するような極寒の冷気が晴菜を襲う。
「ふッ!」
白雪達に纏わせたものよりさらに熱い炎の膜を纏うことで防いだ晴菜。
だが完全に防げたわけではなく一歩進む度に強まってくる冷気が容赦なく肌を刺す。
(異能の類、でしょうねアタシと同じ……ここまで影響を及ぼすなんて一体どれだけ強力なのよ)
均等に存在する房が極地の建物のように極太の氷柱を垂らしている様子を見て晴菜は思う。
【星】として異能を有しているのは別に珍しいことではない。晴菜の『爆炎』も元の部分は晴菜が【星】への覚醒の際に会得させた発火能力を昇華・習熟させたものだからである。
そのように個人に準じる異能。だからこそ異能にも個々人それぞれと同じようにそれぞれ威力の大小。性能や特質の多寡が存在する。
そしてそれは筋トレや実戦経験を経て成長する身体能力とは異なり心や魂といった精神性の部分を絡んでいる為、成長性は緩やかであると考えられている。
(強力な異能の持ち主はどれも精神的に恐ろしく強靭な者が多いと聞くけれど…タンドラって奴はそれだけ精神的に強いっていうの?)
とそこでもう一つの考えに至る晴菜。
それは……。
『晴菜さん。敵の場所がわかりました』
「…了解、案内して」
睦美の通信が入り思考を止めた晴菜。先程に至った考え、それが正しいかどうかは本人と出会えば否が応でも理解できることであろう。
故に先に進む。
案内に従い歩みを進める晴菜。
案内によって見えてきたのは軽度の収容者用のレクリエーションルームであった。
扉が凍結されていたので炎の拳銃で撃ち抜き、中へと突入する晴菜。
学校の体育館程度の大きさの内部。壁にバスケットボールのゴールが掛けられているのが一層そう思わせる。
【星】にとっては少々手狭だろうがある程度は身体を動かせるであろう。
そんな部屋の中央に…。
「あぁ、来た来だ…」
タンドラが座って待っていた。
「アンタが此処の襲撃のもう一人の主犯タンドラね」
「いがにも…収容者№T0219タンドラ…そういヴお前ば確か……『爆炎』早乙女・晴菜だったが?会えで嬉じい…」
「こちらこそね…」
世辞だがそう返す晴菜。
「でも良かっだ…スォーの奴が全部取ると思っで…仕掛げでみだがそれが功を奏じた…何とが一名でもゲット出来だ……」
鼻を啜りながら呟いたタンドラ。立ち上がる。
「得だ一名それも女…全力で楽しまないど……」
「…………………そう…」
「あ、でぼ…すぐに楽じんで他を追いがけるのも…いいがも……ぞれがジャック達と合流ずるのも……」
「もう結構…喋らなくて良いわよ…」
冷ややかにそう言い放った晴菜。
啜るような鼻声で且つ聞くに堪えない内容。
それに先程に至った考えが確信へと変わる。
強力な異能を有する持ち主のもう一つの可能性…。
それは善悪に対するタガが完全に無く。自分の欲望に対してのブレーキが無い者。
限りすら知らない狂気を有する者である。
(自らの悦楽、楽しみの為だけに他者を殺す。【星】でも人間でも、生き物としておおよそ生きて良い存在じゃあないわね…)
「だからこそコイツは此処で何とかしなくてはならない」その意思を込め両手に炎の拳銃を顕現させる晴菜。
「【星団】『創世神』所属。『爆炎』早乙女・はるッ!!?」
名乗りの途中で殺気を感じ、その場から跳び退いた晴菜。
瞬間、先程まで彼女の居た場所の地面が凍結した。
「いぢいぢ、これから殺す奴の事なんで…どうでもいい……」
「ある意味真理ね」
ぴょんぴょんと跳ねながら足場の凍結を躱す晴菜。跳ねながらタンドラに向けて撃ちまくる。
タンドラは凍結により生み出した氷の壁で防いだ。
そのまま凍結を躱しつつ弾丸を撃ち込んでいく晴菜。
これまでと同じように足場の凍結が始まったので跳び退こうとする。
だが突然凍結した足場から氷が伸び晴菜の足を掴んだ。
「ッツ!?」
「うざぎじゃあないのに……鬱陶しい」
【演目】 『喜楽・氷 凍掌』
晴菜の足首を掴んだまま凍結し胴体へと向かっていく氷。
晴菜は纏うように炎を出し溶かして脱する。
「ぞうか……お前ば炎使いだっだな……」
【演目】 『喜楽・氷 舞凍結』
自らの足元を凍結、成型し氷のスケート靴を作成したタンドラ。
同じく凍結した地面を滑走し高速で晴菜に近づく。
そして下方から上方に薙ぐように蹴りを放った。
「くッ…」
氷のブレードによる斬撃は防いだ晴菜。
だが、打撃の衝撃までは防げず空中に吹き飛ばされる。
「ヴん、少々物足りない…やばり、ほがの連中を………ヅッ!?」
【演目】 『爆炎 炎爆 グラビティ』
【演目】 『喜楽・氷 舞凍結』
上空から炎の投下型爆弾を抱えて急降下した晴菜を迎え撃ったタンドラ。炎と氷の【演目】で空気が爆ぜる。
互いに吹き飛んだ両名壁に叩き付けられず着地した。
「何だ、タガの外れた異能を有しているけれど……本人自体はそう大したことないのね」
「それはごちらのセリフだ……ッ!!」
煽りなのだが、見くびられたと怒りの表情を見せるタンドラ。
一方の晴菜は対照的に不敵な笑みを浮かべた。
「ふむ、少々お待ちを…」
収容所の細長い廊下をひた走りながら睦美に問いかける晴菜。
と同時に触れると即座に凍結するような極寒の冷気が晴菜を襲う。
「ふッ!」
白雪達に纏わせたものよりさらに熱い炎の膜を纏うことで防いだ晴菜。
だが完全に防げたわけではなく一歩進む度に強まってくる冷気が容赦なく肌を刺す。
(異能の類、でしょうねアタシと同じ……ここまで影響を及ぼすなんて一体どれだけ強力なのよ)
均等に存在する房が極地の建物のように極太の氷柱を垂らしている様子を見て晴菜は思う。
【星】として異能を有しているのは別に珍しいことではない。晴菜の『爆炎』も元の部分は晴菜が【星】への覚醒の際に会得させた発火能力を昇華・習熟させたものだからである。
そのように個人に準じる異能。だからこそ異能にも個々人それぞれと同じようにそれぞれ威力の大小。性能や特質の多寡が存在する。
そしてそれは筋トレや実戦経験を経て成長する身体能力とは異なり心や魂といった精神性の部分を絡んでいる為、成長性は緩やかであると考えられている。
(強力な異能の持ち主はどれも精神的に恐ろしく強靭な者が多いと聞くけれど…タンドラって奴はそれだけ精神的に強いっていうの?)
とそこでもう一つの考えに至る晴菜。
それは……。
『晴菜さん。敵の場所がわかりました』
「…了解、案内して」
睦美の通信が入り思考を止めた晴菜。先程に至った考え、それが正しいかどうかは本人と出会えば否が応でも理解できることであろう。
故に先に進む。
案内に従い歩みを進める晴菜。
案内によって見えてきたのは軽度の収容者用のレクリエーションルームであった。
扉が凍結されていたので炎の拳銃で撃ち抜き、中へと突入する晴菜。
学校の体育館程度の大きさの内部。壁にバスケットボールのゴールが掛けられているのが一層そう思わせる。
【星】にとっては少々手狭だろうがある程度は身体を動かせるであろう。
そんな部屋の中央に…。
「あぁ、来た来だ…」
タンドラが座って待っていた。
「アンタが此処の襲撃のもう一人の主犯タンドラね」
「いがにも…収容者№T0219タンドラ…そういヴお前ば確か……『爆炎』早乙女・晴菜だったが?会えで嬉じい…」
「こちらこそね…」
世辞だがそう返す晴菜。
「でも良かっだ…スォーの奴が全部取ると思っで…仕掛げでみだがそれが功を奏じた…何とが一名でもゲット出来だ……」
鼻を啜りながら呟いたタンドラ。立ち上がる。
「得だ一名それも女…全力で楽しまないど……」
「…………………そう…」
「あ、でぼ…すぐに楽じんで他を追いがけるのも…いいがも……ぞれがジャック達と合流ずるのも……」
「もう結構…喋らなくて良いわよ…」
冷ややかにそう言い放った晴菜。
啜るような鼻声で且つ聞くに堪えない内容。
それに先程に至った考えが確信へと変わる。
強力な異能を有する持ち主のもう一つの可能性…。
それは善悪に対するタガが完全に無く。自分の欲望に対してのブレーキが無い者。
限りすら知らない狂気を有する者である。
(自らの悦楽、楽しみの為だけに他者を殺す。【星】でも人間でも、生き物としておおよそ生きて良い存在じゃあないわね…)
「だからこそコイツは此処で何とかしなくてはならない」その意思を込め両手に炎の拳銃を顕現させる晴菜。
「【星団】『創世神』所属。『爆炎』早乙女・はるッ!!?」
名乗りの途中で殺気を感じ、その場から跳び退いた晴菜。
瞬間、先程まで彼女の居た場所の地面が凍結した。
「いぢいぢ、これから殺す奴の事なんで…どうでもいい……」
「ある意味真理ね」
ぴょんぴょんと跳ねながら足場の凍結を躱す晴菜。跳ねながらタンドラに向けて撃ちまくる。
タンドラは凍結により生み出した氷の壁で防いだ。
そのまま凍結を躱しつつ弾丸を撃ち込んでいく晴菜。
これまでと同じように足場の凍結が始まったので跳び退こうとする。
だが突然凍結した足場から氷が伸び晴菜の足を掴んだ。
「ッツ!?」
「うざぎじゃあないのに……鬱陶しい」
【演目】 『喜楽・氷 凍掌』
晴菜の足首を掴んだまま凍結し胴体へと向かっていく氷。
晴菜は纏うように炎を出し溶かして脱する。
「ぞうか……お前ば炎使いだっだな……」
【演目】 『喜楽・氷 舞凍結』
自らの足元を凍結、成型し氷のスケート靴を作成したタンドラ。
同じく凍結した地面を滑走し高速で晴菜に近づく。
そして下方から上方に薙ぐように蹴りを放った。
「くッ…」
氷のブレードによる斬撃は防いだ晴菜。
だが、打撃の衝撃までは防げず空中に吹き飛ばされる。
「ヴん、少々物足りない…やばり、ほがの連中を………ヅッ!?」
【演目】 『爆炎 炎爆 グラビティ』
【演目】 『喜楽・氷 舞凍結』
上空から炎の投下型爆弾を抱えて急降下した晴菜を迎え撃ったタンドラ。炎と氷の【演目】で空気が爆ぜる。
互いに吹き飛んだ両名壁に叩き付けられず着地した。
「何だ、タガの外れた異能を有しているけれど……本人自体はそう大したことないのね」
「それはごちらのセリフだ……ッ!!」
煽りなのだが、見くびられたと怒りの表情を見せるタンドラ。
一方の晴菜は対照的に不敵な笑みを浮かべた。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

Link's
黒砂糖デニーロ
ファンタジー
この世界には二つの存在がいる。
人類に仇なす不死の生物、"魔属”
そして魔属を殺せる唯一の異能者、"勇者”
人類と魔族の戦いはすでに千年もの間、続いている――
アオイ・イリスは人類の脅威と戦う勇者である。幼馴染のレン・シュミットはそんな彼女を聖剣鍛冶師として支える。
ある日、勇者連続失踪の調査を依頼されたアオイたち。ただの調査のはずが、都市存亡の戦いと、その影に蠢く陰謀に巻き込まれることに。
やがてそれは、世界の命運を分かつ事態に――
猪突猛進型少女の勇者と、気苦労耐えない幼馴染が繰り広げる怒涛のバトルアクション!
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
異世界で世界樹の精霊と呼ばれてます
空色蜻蛉
ファンタジー
普通の高校生の樹(いつき)は、勇者召喚された友人達に巻き込まれ、異世界へ。
勇者ではない一般人の樹は元の世界に返してくれと訴えるが。
事態は段々怪しい雲行きとなっていく。
実は、樹には自分自身も知らない秘密があった。
異世界の中心である世界樹、その世界樹を守護する、最高位の八枚の翅を持つ精霊だという秘密が。
【重要なお知らせ】
※書籍2018/6/25発売。書籍化記念に第三部<過去編>を掲載しました。
※本編第一部・第二部、2017年10月8日に完結済み。
◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。

婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています
とあるおっさんのVRMMO活動記
椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。
念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。
戦闘は生々しい表現も含みます。
のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。
また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり
一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が
お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。
また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や
無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が
テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという
事もございません。
また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。

迷宮(ダンジョン)革命
あきとあき
ファンタジー
アキラとマリは16歳の幼馴染。マリは金髪碧眼の美少女で人気者。アキラは普通の男の子。7年前世界中に迷宮が出現。アキラは迷宮に憧れていた。アキラとマリは互いに好きあっているが、最近けんかが多く気まずくなっていた。ある日マリは迷宮討伐のテレビ番組にスカウトされ、アキラも同伴ならと承諾した。アキラとマリが迷宮に入ったとき迷宮が崩壊し、世界は大災害に見舞われた。迷宮から脱出し、目覚めたら二人の心と体が入れ替わっていた。元の体に戻るため二人の冒険が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる