プライベート・スペクタル

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第二話 第三章

第六節

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「睦美、敵のいる場所わかる?」
「ふむ、少々お待ちを…」
収容所の細長い廊下をひた走りながら睦美に問いかける晴菜。
と同時に触れると即座に凍結するような極寒の冷気が晴菜を襲う。
「ふッ!」
白雪達に纏わせたものよりさらに熱い炎の膜を纏うことで防いだ晴菜。
だが完全に防げたわけではなく一歩進む度に強まってくる冷気が容赦なく肌を刺す。
(異能の類、でしょうねアタシと同じ……ここまで影響を及ぼすなんて一体どれだけ強力なのよ)
均等に存在する房が極地の建物のように極太の氷柱を垂らしている様子を見て晴菜は思う。

【星】として異能を有しているのは別に珍しいことではない。晴菜の『爆炎』も元の部分は晴菜が【星】への覚醒の際に会得させた発火能力を昇華・習熟させたものだからである。
そのように個人に準じる異能。だからこそ異能にも個々人それぞれと同じようにそれぞれ威力の大小。性能や特質の多寡が存在する。
そしてそれは筋トレや実戦経験を経て成長する身体能力とは異なり心や魂といった精神性の部分を絡んでいる為、成長性は緩やかであると考えられている。

(強力な異能の持ち主はどれも精神的に恐ろしく強靭な者が多いと聞くけれど…タンドラって奴はそれだけ精神的に強いっていうの?)
とそこでもう一つの考えに至る晴菜。
それは……。
『晴菜さん。敵の場所がわかりました』
「…了解、案内して」
睦美の通信が入り思考を止めた晴菜。先程に至った考え、それが正しいかどうかは本人と出会えば否が応でも理解できることであろう。
故に先に進む。
案内に従い歩みを進める晴菜。
案内によって見えてきたのは軽度の収容者用のレクリエーションルームであった。
扉が凍結されていたので炎の拳銃で撃ち抜き、中へと突入する晴菜。
学校の体育館程度の大きさの内部。壁にバスケットボールのゴールが掛けられているのが一層そう思わせる。
【星】にとっては少々手狭だろうがある程度は身体を動かせるであろう。
そんな部屋の中央に…。
「あぁ、た来だ…」
タンドラが座って待っていた。
「アンタが此処の襲撃のもう一人の主犯タンドラね」
「いがにも…収容者№T0219タンドラ…そういヴお前ば確か……『爆炎』早乙女・晴菜だったが?会えで嬉じい…」
「こちらこそね…」
世辞だがそう返す晴菜。
「でも良かっだ…スォーの奴が全部ると思っで…仕掛げでみだがそれが功を奏じた…何とが一名でもゲット出来だ……」
鼻を啜りながら呟いたタンドラ。立ち上がる。
「得だ一名それも女…全力ぜんりょぐで楽しまないど……」
「…………………そう…」
「あ、でぼ…すぐに楽じんでを追いがけるのも…いいがも……ぞれがジャック達と合流ずるのも……」
「もう結構…喋らなくて良いわよ…」
冷ややかにそう言い放った晴菜。
啜るような鼻声で且つ聞くに堪えない内容。
それに先程に至った考えが確信へと変わる。
強力な異能を有する持ち主のもう一つの可能性…。
それは善悪に対するタガが完全に無く。自分の欲望に対してのブレーキが無い者。
限りすら知らない狂気を有する者である。
(自らの悦楽、楽しみの為だけに他者を殺す。【星】でも人間でも、生き物としておおよそ生きて良い存在じゃあないわね…)
「だからこそコイツは此処で何とかしなくてはならない」その意思を込め両手に炎の拳銃を顕現させる晴菜。
「【星団】『創世神』所属。『爆炎』早乙女・はるッ!!?」
名乗りの途中で殺気を感じ、その場から跳び退いた晴菜。
瞬間、先程まで彼女の居た場所の地面が凍結した。
「いぢいぢ、これから殺す奴の事なんで…どうでもいい……」
「ある意味真理ね」
ぴょんぴょんと跳ねながら足場の凍結を躱す晴菜。跳ねながらタンドラに向けて撃ちまくる。
タンドラは凍結により生み出した氷の壁で防いだ。

そのまま凍結を躱しつつ弾丸を撃ち込んでいく晴菜。
これまでと同じように足場の凍結が始まったので跳び退こうとする。
だが突然凍結した足場から氷が伸び晴菜の足を掴んだ。
「ッツ!?」
「うざぎじゃあないのに……鬱陶うっどうしい」

【演目】 『喜楽ラクトアイス 凍掌フリーズハンド

晴菜の足首を掴んだまま凍結し胴体へと向かっていく氷。
晴菜は纏うように炎を出し溶かして脱する。
「ぞうか……お前ば炎使いだっだな……」

【演目】 『喜楽・氷  舞凍結フリーズダンサー

自らの足元を凍結、成型し氷のスケート靴を作成したタンドラ。
同じく凍結した地面を滑走し高速で晴菜に近づく。
そして下方から上方に薙ぐように蹴りを放った。
「くッ…」
氷のブレードによる斬撃は防いだ晴菜。
だが、打撃の衝撃までは防げず空中に吹き飛ばされる。
「ヴん、少々物足りない…やばり、ほがの連中を………ヅッ!?」

【演目】 『爆炎 炎爆 グラビティ』
【演目】 『喜楽・氷 舞凍結』

上空から炎の投下型爆弾を抱えて急降下した晴菜を迎え撃ったタンドラ。炎と氷の【演目】で空気が爆ぜる。
互いに吹き飛んだ両名壁に叩き付けられず着地した。
「何だ、タガの外れた異能を有しているけれど……本人自体はそう大したことないのね」
「それはごちらのセリフだ……ッ!!」
煽りなのだが、見くびられたと怒りの表情を見せるタンドラ。
一方の晴菜は対照的に不敵な笑みを浮かべた。
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