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第二話 第三章
第五節
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「こ、これはッ!?」
「ん、ん~♪。タンドラ殿……もう我慢が出来なくなったのですなぁ~」
突然の出来事にそう呟いたスォー。
屋内で且つ半地下のような場所なのにまるで豪雪地帯のブリザードのように暴風と氷雪が舞い上がり視界が白く染まる。
「うっ…ぅぅ……」
『現在、管理室内の温度は急速に低下。現在氷点下30℃まだ低下中です!』
ジュリの音声を正しいと答えるように凍結していく管理室内。モニター画面にひびが入り周辺機器や照明が沈黙していき薄暗くなる。
「さ、寒い……」
「ん、ん~…私を倒すのにさらに時間的制約が出来ましたなぁ♪従者の嗜み故、これぐらいの冷気私は慣れっこ。ですが……そちらの両名や自衛隊の方々は大丈夫ですかなぁ?」
イヤらしくも楽し気な笑みで白雪達を見つめるスォー。
晴菜やチェルシー等の実力の【星】ならまだ耐えることが可能ではあるが、白雪達にはまだ厳しい。
対【星】であり極地戦用の特殊装備を身につけた自衛隊員も尚更であろう。
「ハァ…ハアッ…ハッ……………」
『室温は現在氷点下70℃まで到達ッ!このままではッ…!』
【演目】『爆炎 鎮圧盾ライオット』
【演目】を演った晴菜。
瞬間、入り口に盾のような炎の壁。白雪達の周りに膜のようなものが覆い冷気が和らいだ。
「睦美!冷気の範囲は!?」
『ふむ、極低温範囲はその部屋と続く廊下を含む極一部といった状態です。そこから壁一枚隔てた部分はまだそこまで温度が下がりきっていないですね…』
「ありがと」
礼と同時に扉と対角部分の職員通路と繋がる壁に手をかける晴菜。
短く「良し」と呟くと掌に炎の拳銃を顕現させてその壁に向けて引き金を引く。
休みなく撃ちまくる晴菜。炎の拳銃は弾切れを知ることなく弾痕で人一人分程の大きさの直径の円を描く。
そして円の中心を蹴り飛ばし壁をぶち抜いた。
「ここはアタシ達が引き受けるわ。行って」
「晴菜殿ッ!?」
信楽達にそう指示する晴菜。
『信楽さん。ここは我々『創世神』に任せ奥へと向かった収容者達を追って下さい……主犯格と思わしき者の所在はこの強襲で全てこの場に居ると掴めました。でしたら先の手筈通りに収容者達の拘束をお願い致します』
「ッ……了解しました」
睦美にも後押しされ頷いた信楽達。そのまま穴を利用してその場を離れた。
「さてと…チェルシー。こいつの相手はお任せしても良いかしら?」
「勿論で御座いますぅ晴菜様。むしろお願いするところをわざわざ申し訳ございませんねぇ」
「そういうつもりはなかったけれどね…向こうの相手はアタシがやるわよ」
「…かしこまりましたぁ」
「それじゃあ頼むわね」
そう言って駆けだした晴菜。スォーを躱しながら部屋を飛び出し冷気の方向へと進んでいった。
管理室にはチェルシーとスォーのみとなった。
「邪魔をしなかったのですねぇ?」
「ん、ん~当然♪」
見た限りのスォーの実力なら晴菜を時間稼ぎの妨害や足止めをやろうと思えば可能であったはず、なのに素通りさせたという事でそう察したチェルシー。
「彼とはただ単純な利害一致での協力関係、仕えるべき主人でもましてや仲間では御座いません…ですが、一時とはいえ共に歩む縁。もてなさないわけにはいきますまい」
「おやおやぁ…仕えるべき主を殺した落伍者のくせに一丁前に語りますねぇ」
犯した罪状のわりにそのような考えに至る思考。禁忌を犯したとはいえ根っからの従者であるとチェルシーは感じる。
「ん、ん~ではそろそろ我々も始めましょうかな」
「えぇ、それだけは同意見ですぅ」
そう言いつつ構える両者。名乗りを上げる。
「ん、ん~所属無し元従者。収容者№J0123スォー。名前だけでも憶えて頂きたいものですぞ」
「【星団】『創世神』呉成・大和の従者チェルシー。正させていただきますねぇ~」
従者同士の礼儀として同時に恭しくお辞儀をしたチェルシーとスォー。
その数瞬後、掻き消えるように互いの姿が見えなくなると同時に激しい剣戟音が鳴り響いた。
『たった今従者チェルシー様とスォーの戦闘が開始。管理室内にて激しい白兵戦が繰り広げられています』
「了解ッ!」
「信楽さん、急いで!早く!!」
ジュリの無線での報告とスピーカー越しにでも伝わる激しい金属音の交差により白雪達は足を速める。
スォーはチェルシー。タンドラは晴菜。
主犯格を引き受け抑えてもらっている以上。一刻も早く辿り着き逃げ出した者達を抑えなければならないと感じた。
『前方の扉を開け二つ目の十時路を右折し階段を降下。それで目的地階層に辿り着きます!』
「はいッ!」
ジュリの通信に応じナビ通りに進む白雪達。
タンドラの冷気による寒さはあるが、それも耐えられる程度であり、それ以外の妨害らしい妨害も無く白雪達はすぐに目的地となる重要収容者層その入り口に到着した。
『この階層は国家転覆等の収容者の中でも重大な犯罪を起こした者達が収容されている区画です。くれぐれもお気を付けください』
ジュリの説明を聞きつつハンドサインを送りながら展開する白雪達。
そして覚悟を固めると一気に内部へと突入する。
「動くなッ!!」
「貴方がたを再び拘束いたしますッ!抵抗は止めて……なッ!!?」
そこで言葉を止めてしまった白雪。
「これは……ッ…!?」
目に入って来た目の前の光景に思わずそう呟くことしか出来なかった。
「ん、ん~♪。タンドラ殿……もう我慢が出来なくなったのですなぁ~」
突然の出来事にそう呟いたスォー。
屋内で且つ半地下のような場所なのにまるで豪雪地帯のブリザードのように暴風と氷雪が舞い上がり視界が白く染まる。
「うっ…ぅぅ……」
『現在、管理室内の温度は急速に低下。現在氷点下30℃まだ低下中です!』
ジュリの音声を正しいと答えるように凍結していく管理室内。モニター画面にひびが入り周辺機器や照明が沈黙していき薄暗くなる。
「さ、寒い……」
「ん、ん~…私を倒すのにさらに時間的制約が出来ましたなぁ♪従者の嗜み故、これぐらいの冷気私は慣れっこ。ですが……そちらの両名や自衛隊の方々は大丈夫ですかなぁ?」
イヤらしくも楽し気な笑みで白雪達を見つめるスォー。
晴菜やチェルシー等の実力の【星】ならまだ耐えることが可能ではあるが、白雪達にはまだ厳しい。
対【星】であり極地戦用の特殊装備を身につけた自衛隊員も尚更であろう。
「ハァ…ハアッ…ハッ……………」
『室温は現在氷点下70℃まで到達ッ!このままではッ…!』
【演目】『爆炎 鎮圧盾ライオット』
【演目】を演った晴菜。
瞬間、入り口に盾のような炎の壁。白雪達の周りに膜のようなものが覆い冷気が和らいだ。
「睦美!冷気の範囲は!?」
『ふむ、極低温範囲はその部屋と続く廊下を含む極一部といった状態です。そこから壁一枚隔てた部分はまだそこまで温度が下がりきっていないですね…』
「ありがと」
礼と同時に扉と対角部分の職員通路と繋がる壁に手をかける晴菜。
短く「良し」と呟くと掌に炎の拳銃を顕現させてその壁に向けて引き金を引く。
休みなく撃ちまくる晴菜。炎の拳銃は弾切れを知ることなく弾痕で人一人分程の大きさの直径の円を描く。
そして円の中心を蹴り飛ばし壁をぶち抜いた。
「ここはアタシ達が引き受けるわ。行って」
「晴菜殿ッ!?」
信楽達にそう指示する晴菜。
『信楽さん。ここは我々『創世神』に任せ奥へと向かった収容者達を追って下さい……主犯格と思わしき者の所在はこの強襲で全てこの場に居ると掴めました。でしたら先の手筈通りに収容者達の拘束をお願い致します』
「ッ……了解しました」
睦美にも後押しされ頷いた信楽達。そのまま穴を利用してその場を離れた。
「さてと…チェルシー。こいつの相手はお任せしても良いかしら?」
「勿論で御座いますぅ晴菜様。むしろお願いするところをわざわざ申し訳ございませんねぇ」
「そういうつもりはなかったけれどね…向こうの相手はアタシがやるわよ」
「…かしこまりましたぁ」
「それじゃあ頼むわね」
そう言って駆けだした晴菜。スォーを躱しながら部屋を飛び出し冷気の方向へと進んでいった。
管理室にはチェルシーとスォーのみとなった。
「邪魔をしなかったのですねぇ?」
「ん、ん~当然♪」
見た限りのスォーの実力なら晴菜を時間稼ぎの妨害や足止めをやろうと思えば可能であったはず、なのに素通りさせたという事でそう察したチェルシー。
「彼とはただ単純な利害一致での協力関係、仕えるべき主人でもましてや仲間では御座いません…ですが、一時とはいえ共に歩む縁。もてなさないわけにはいきますまい」
「おやおやぁ…仕えるべき主を殺した落伍者のくせに一丁前に語りますねぇ」
犯した罪状のわりにそのような考えに至る思考。禁忌を犯したとはいえ根っからの従者であるとチェルシーは感じる。
「ん、ん~ではそろそろ我々も始めましょうかな」
「えぇ、それだけは同意見ですぅ」
そう言いつつ構える両者。名乗りを上げる。
「ん、ん~所属無し元従者。収容者№J0123スォー。名前だけでも憶えて頂きたいものですぞ」
「【星団】『創世神』呉成・大和の従者チェルシー。正させていただきますねぇ~」
従者同士の礼儀として同時に恭しくお辞儀をしたチェルシーとスォー。
その数瞬後、掻き消えるように互いの姿が見えなくなると同時に激しい剣戟音が鳴り響いた。
『たった今従者チェルシー様とスォーの戦闘が開始。管理室内にて激しい白兵戦が繰り広げられています』
「了解ッ!」
「信楽さん、急いで!早く!!」
ジュリの無線での報告とスピーカー越しにでも伝わる激しい金属音の交差により白雪達は足を速める。
スォーはチェルシー。タンドラは晴菜。
主犯格を引き受け抑えてもらっている以上。一刻も早く辿り着き逃げ出した者達を抑えなければならないと感じた。
『前方の扉を開け二つ目の十時路を右折し階段を降下。それで目的地階層に辿り着きます!』
「はいッ!」
ジュリの通信に応じナビ通りに進む白雪達。
タンドラの冷気による寒さはあるが、それも耐えられる程度であり、それ以外の妨害らしい妨害も無く白雪達はすぐに目的地となる重要収容者層その入り口に到着した。
『この階層は国家転覆等の収容者の中でも重大な犯罪を起こした者達が収容されている区画です。くれぐれもお気を付けください』
ジュリの説明を聞きつつハンドサインを送りながら展開する白雪達。
そして覚悟を固めると一気に内部へと突入する。
「動くなッ!!」
「貴方がたを再び拘束いたしますッ!抵抗は止めて……なッ!!?」
そこで言葉を止めてしまった白雪。
「これは……ッ…!?」
目に入って来た目の前の光景に思わずそう呟くことしか出来なかった。
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