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第二話 第三章
第4節
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来た方向から聞こえる遠雷のような地響き。
それによって晴菜は大和と敵の戦闘が始まったことを悟った。
「睦美、あの馬鹿の様子はどう?」
『ふむ、どうやらあの二号はどうやらすぐに音声を切ったようですね』
「……はぁ…やっぱりか………」
溜息を吐く晴菜。あの反応から、おそらくそうするのではないかと予想していたが…悪い意味で期待を裏切らずその通りであった。
「全く…戻ってきたら半殺しにしてやるわ……」
そう愚痴りつつ自分だけでも足を急がせる晴菜。
やがて晴菜達はゲートのような場所へとたどり着く。どうやらここが収容所への入り口のようであった。
『……開錠出来ました!』
「行くわよ」
電子音が鳴り響きゲート横の通用口の電子錠が外れたのを確認した晴菜達。中へと入っていく。
中は鉄格子と鉄扉が並ぶ一般的な刑務所のような空間が広がっている収容所内部。
だが、誰もいないかのように静寂に包まれていた。
侵入と同時に襲ってくると考えた晴菜達。だが、あまりにも拍子抜けした内容に安堵よりも先に不気味さの方が襲ってくる。
「どういうことです?何故誰もいないのでしょうかッ!?」
「落ち着きなさい。まずは管理室に向かうわよ……」
『了解晴菜様。ナビゲーション致します』
焦る信楽を宥め、収容所全体が見えるであろう管理室へと向かう晴菜。
ジュリの案内によりすぐに目の前まで到着した。
自衛隊員や信楽達を後方警戒に当たらせ晴菜は管理室内に突入する。
「なッ!?」
勢いよく突入した晴菜。
だが、管理室内には誰も居なかった。
「どういうこと?」
足元に張られる大きな血だまりこそあれど、気配を感じない室内に戸惑いを覚える晴菜。
丁寧にクリアリングを行い取り敢えずチェルシーや白雪達を中へと招いた。
「おかしい…どうして誰も居ないのでしょうか?」
この施設の最重要である管理人室までこうも容易に到達した事、『守護神』を含め斃され、殺された職員たちが居ないことで拍子抜けどころか逆に不気味さのようなものを感じずにはいられなかった。
まずはメインシステムをジュリ達サポートに任し、監視映像を確認する。
「ねぇチェルシー…これは絶対に何かに誘導されているわよね?」
「えぇ、おそらく……」
「…………………ッ、見つけましたッ!」
叫んだ信楽。見つけた画像に晴菜達が駆け寄るとそこには複数名の収容者と思われる者達の後ろ姿が映り込んでいた。
「位置は?」
「画面の位置は…重要収容者層!?」
「やっぱりおかしいです!何で出口である外に行かずに収容所の最下層とも呼べる部分に!?」
「………失礼致しますぅ」
不思議に思う信楽と白雪に対しそう言ってスカートから取り出したフォークを投擲したチェルシー。
フォークは突然に驚愕した二名の首筋を掠め、代わりに密かに巻き付こうとしていた極最細のワイヤーを断ち切った。
そしてそのまま何が起こっているのかまだ追いついていない二名の間を駆け抜けるチェルシー。信楽の影に向かって回し蹴りを叩き込む。
だが蹴りは影から急に伸びて来たナプキンに絡みつかれ止められた。
「おやぁ?」
「ん、ん~淑女がそのような行い。はしたないですぞ」
その言葉と共に影から現れたのは、襲撃の主犯格の一名。元従者スォーであった。
「ん、ん~…惜しげも無しにそのようなあられもない姿を晒す。それがよりにもよって我が後進とは…『淑女たれ、紳士たれ』を是とする従者の質も随分と下がったようですな」
「おやおやぁ…誠心誠意奉仕し仕える主人を殺害し畜生へと転職なされた元先達方に言われるとはぁ…思いもよりませんでしたねぇ」
即座に拘束していたナプキンを解き即座に距離を取るチェルシー。少し乱れた衣装を整える。
「貴方がここを襲撃した一人スォーね…」
「ん、ん~そうですぞお嬢さん。収容者№J0123。スォーと申します。貴方のような麗しき女性に覚えて頂けるとは感激の極み。どうぞよろしくお願いしますぞお嬢さん」
晴菜に対し恭しく。否、仰々しいと言わんばかりにわざとらしく頭を下げるスォー。
そんな彼に白雪は問いかける。
「収容者№J0123。スォー、貴方の投降を呼びかけます!そしてこのような凶行を中止し、何故至ったかを洗いざらい答えて頂きますッ!!」
「ん、ん~…当然だと思いますがそのような事は出来かねますなぁ~『フツノミタマ』所属のお嬢さん」
「くッ…」
「ん、ん~…その苦虫を嚙み潰すような表情…素晴らしい!!エクセレント♪!!」
白雪の表情を見て叫ぶスォー。恍惚の表情を浮かべる。
「ん、ん~♪…そのような素晴らしき表情を見せていただいたとなれば、礼として語らせていただいても問題はありますまい……今私共のこの蛮行!これは単なる前菜!それに過ぎません!むしろ楽しむべき主菜はまた別にあるのですぞ!」
「何だって!?」
「おっと、今お伝えできるのはここまで……続きをご所望でしたらどうすればよいかお分かりですな♪」
「アンタを倒せって事よね」
「然り♪」
「さぁ皆々様!このスォーと一幕演じてみるのは如何ですかな!?見事私を両の手に宿すその正義の拳で打ち倒して見せればこの一件の真相をなんでもお答えさせていただきますぞ!!」
両手を大きく広げ高らかに叫んだスォー。
次の瞬間、管理室の扉が勢いよく外れ、冷気が吹き込んで来た。
それによって晴菜は大和と敵の戦闘が始まったことを悟った。
「睦美、あの馬鹿の様子はどう?」
『ふむ、どうやらあの二号はどうやらすぐに音声を切ったようですね』
「……はぁ…やっぱりか………」
溜息を吐く晴菜。あの反応から、おそらくそうするのではないかと予想していたが…悪い意味で期待を裏切らずその通りであった。
「全く…戻ってきたら半殺しにしてやるわ……」
そう愚痴りつつ自分だけでも足を急がせる晴菜。
やがて晴菜達はゲートのような場所へとたどり着く。どうやらここが収容所への入り口のようであった。
『……開錠出来ました!』
「行くわよ」
電子音が鳴り響きゲート横の通用口の電子錠が外れたのを確認した晴菜達。中へと入っていく。
中は鉄格子と鉄扉が並ぶ一般的な刑務所のような空間が広がっている収容所内部。
だが、誰もいないかのように静寂に包まれていた。
侵入と同時に襲ってくると考えた晴菜達。だが、あまりにも拍子抜けした内容に安堵よりも先に不気味さの方が襲ってくる。
「どういうことです?何故誰もいないのでしょうかッ!?」
「落ち着きなさい。まずは管理室に向かうわよ……」
『了解晴菜様。ナビゲーション致します』
焦る信楽を宥め、収容所全体が見えるであろう管理室へと向かう晴菜。
ジュリの案内によりすぐに目の前まで到着した。
自衛隊員や信楽達を後方警戒に当たらせ晴菜は管理室内に突入する。
「なッ!?」
勢いよく突入した晴菜。
だが、管理室内には誰も居なかった。
「どういうこと?」
足元に張られる大きな血だまりこそあれど、気配を感じない室内に戸惑いを覚える晴菜。
丁寧にクリアリングを行い取り敢えずチェルシーや白雪達を中へと招いた。
「おかしい…どうして誰も居ないのでしょうか?」
この施設の最重要である管理人室までこうも容易に到達した事、『守護神』を含め斃され、殺された職員たちが居ないことで拍子抜けどころか逆に不気味さのようなものを感じずにはいられなかった。
まずはメインシステムをジュリ達サポートに任し、監視映像を確認する。
「ねぇチェルシー…これは絶対に何かに誘導されているわよね?」
「えぇ、おそらく……」
「…………………ッ、見つけましたッ!」
叫んだ信楽。見つけた画像に晴菜達が駆け寄るとそこには複数名の収容者と思われる者達の後ろ姿が映り込んでいた。
「位置は?」
「画面の位置は…重要収容者層!?」
「やっぱりおかしいです!何で出口である外に行かずに収容所の最下層とも呼べる部分に!?」
「………失礼致しますぅ」
不思議に思う信楽と白雪に対しそう言ってスカートから取り出したフォークを投擲したチェルシー。
フォークは突然に驚愕した二名の首筋を掠め、代わりに密かに巻き付こうとしていた極最細のワイヤーを断ち切った。
そしてそのまま何が起こっているのかまだ追いついていない二名の間を駆け抜けるチェルシー。信楽の影に向かって回し蹴りを叩き込む。
だが蹴りは影から急に伸びて来たナプキンに絡みつかれ止められた。
「おやぁ?」
「ん、ん~淑女がそのような行い。はしたないですぞ」
その言葉と共に影から現れたのは、襲撃の主犯格の一名。元従者スォーであった。
「ん、ん~…惜しげも無しにそのようなあられもない姿を晒す。それがよりにもよって我が後進とは…『淑女たれ、紳士たれ』を是とする従者の質も随分と下がったようですな」
「おやおやぁ…誠心誠意奉仕し仕える主人を殺害し畜生へと転職なされた元先達方に言われるとはぁ…思いもよりませんでしたねぇ」
即座に拘束していたナプキンを解き即座に距離を取るチェルシー。少し乱れた衣装を整える。
「貴方がここを襲撃した一人スォーね…」
「ん、ん~そうですぞお嬢さん。収容者№J0123。スォーと申します。貴方のような麗しき女性に覚えて頂けるとは感激の極み。どうぞよろしくお願いしますぞお嬢さん」
晴菜に対し恭しく。否、仰々しいと言わんばかりにわざとらしく頭を下げるスォー。
そんな彼に白雪は問いかける。
「収容者№J0123。スォー、貴方の投降を呼びかけます!そしてこのような凶行を中止し、何故至ったかを洗いざらい答えて頂きますッ!!」
「ん、ん~…当然だと思いますがそのような事は出来かねますなぁ~『フツノミタマ』所属のお嬢さん」
「くッ…」
「ん、ん~…その苦虫を嚙み潰すような表情…素晴らしい!!エクセレント♪!!」
白雪の表情を見て叫ぶスォー。恍惚の表情を浮かべる。
「ん、ん~♪…そのような素晴らしき表情を見せていただいたとなれば、礼として語らせていただいても問題はありますまい……今私共のこの蛮行!これは単なる前菜!それに過ぎません!むしろ楽しむべき主菜はまた別にあるのですぞ!」
「何だって!?」
「おっと、今お伝えできるのはここまで……続きをご所望でしたらどうすればよいかお分かりですな♪」
「アンタを倒せって事よね」
「然り♪」
「さぁ皆々様!このスォーと一幕演じてみるのは如何ですかな!?見事私を両の手に宿すその正義の拳で打ち倒して見せればこの一件の真相をなんでもお答えさせていただきますぞ!!」
両手を大きく広げ高らかに叫んだスォー。
次の瞬間、管理室の扉が勢いよく外れ、冷気が吹き込んで来た。
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