プライベート・スペクタル

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第二話 第三章

第二節

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「日本での【星】の収容施設ねぇ」
「はいッ!乗っ取られた施設はそこになります!」
やって来たヘリに乗り込んでの移動道中。
大和の問いかけに対して同じヘリに居た白雪はそう答えた。
「我々『フツノミタマ』が管理しております施設で、主に日本国の崩壊となりうる行為や売国行為等、日本国において害となると判断された【星】達が送られる施設となっております!」
「ふーん成程ね……どおりで目の前にいるこの危険な馬鹿が送られないかが分かったわ」
同じくヘリに居て納得する晴菜。納得しつつ大和の方に冷たい視線を送る。
「おいおいオイオイ晴菜さんや…君をここまで言わす奴とはよっぽどに素晴らしいナイスガイなんだろうなぁ~…一度は会ってみたいもんだ」
「会える簡単な方法を教えてあげようか?朝起きたら鏡を見るの…間抜け面が映ったら成功よ」
「オッケー試してみましょう」
それを軽く受け流す大和。晴菜は「やれやれ」と言わんばかりに溜息を吐いた。
「で。そんな施設が襲撃を受けたって訳だな…そんでそれを奪還する為の面子がここに集められたと……」
話を戻しヘリ内を見まわした大和。
ヘリ内には先程話に参加した白雪と晴菜の他。チェルシーと複数名の自衛隊員。あとは……。
「君は『フツノミタマ』所属の【星】ってことで良いの?」
「ハイッ!『フツノミタマ』戦闘班所属。信楽と申しますッ!よろしくお願いします『龍王』殿!」
そう言って頭を下げた男性の【星】。
合気道の道着のような袴と左手にのみ見える機械的な手甲、コンバットブーツを身に着けた熱そうな雰囲気をまとった青年である。
知っていた晴菜が話に割り込む。
「ちょっと前に話した私の担当の『フツノミタマ』の子よ…今回の任務で選出されたらしいわ…」
「ああ、お前が真っ直ぐって言っていた奴か」
「そ」
「はいッ!先の依頼より『爆炎』早乙女・晴菜殿からご指導ご鞭撻を賜っております!よろしくお願いいたしますッ!!」
「お~よろしくよろしく~………ちょっとタイム、なぁ晴菜、お前一体どんな監督をしたんだ?」
「言ったでしょ愚直って…アタシもそんな態度をしなくて良いって何度も言ったのよ…」
「……【星団】の気質てな話か…白雪もそうだったな………」
最敬礼でお辞儀をする信楽に応じつつ、傍らでそうやり取りする大和と晴菜。
とそこでヘリに無線での連絡が入る。
相手はヒミコであった。
『急に集まってもらって悪かったねアンタ達。感謝するよ…』
「そりゃどうも婆さん。形だけでの謝辞、恐悦至極ってな♪」
『………全く、可愛げのない悪童さね……』
軽いジャブのような大和の皮肉。ヒミコは溜息を吐きつつも話を続ける。
『まあ良いさ…今回、急の招集をお願いしたのは他でもない…愛すべき我が国を守る為に存在する日本国の【星】達の収容施設。そこが襲撃を受けて乗っ取られた。そこの奪還を頼みたい』
「聞いたぜ。アンチ婆さんみてぇな連中をぎっちり詰め込んだ場所なんだろ?うーわ想像しただけでイヤそう…」
『そうだよ。これでも他の国に比べりゃあ収容基準は随分ましだけれどね…アンタみたいなみたいな悪童を特急券付きで送っていないことが何よりの証拠さ?』
「へへッ確かに…」
皮肉を返すヒミコ。大和は笑みを浮かべる。
「しかしぃ…こういうのも何ですがぁ~そこにいらっしゃる【星】達かたがたは随分と聞き訳がよろしい方ばかりなのですねぇ~……合衆国の【星】達が脱獄したというのに…さぁ我々も!という考えには至らなかったようでぇ」
『理由は幾つかあるさね……まず一つは連中の多くは合衆国の連中とは違い燃え尽きての自首ではなく。何かを企てた所を私等や他の連中にぶち込まれた連中って事さ…これ好機と思うは思うだろうが、アンタのご主人のような悪童もうじゅうや『フツノミタマわたしら』のような組織だった狩人共が徘徊する庭の中にわざわざ出ようと思うかい?』
「成程ぅ…自由を阻むための壁は収容施設だけでなくこの国の国土そのもの…また収容者の折られた心というわけですかぁ…」
『そうさ、さらに二つ目は単純に収容施設の警備が厳重と言うのもあるだろうね…収容施設には対【星】用の装備で武装した一般職員の他、『フツノミタマウチ』所属の【星】も何名か常駐させていたからね。それもその中の内の一名は【銘付き】さ……アンタ等『守護神ザ・ガーディアン』って銘を聞いたことはあるかい?』
「おぅ聞いたことあるぜ!日本が誇る【銘付き】の内一名、厳格な性格の軍人みたいな男で銃剣付きの火器を用いた戦闘術を基礎とした【演目】を使う野郎だってな!…相当な強さなんだろ?」
『そうさ、特に鎮圧能力にかけては特級品。彼を収容所の任に就かせてから脱走者は一人も出ていない。彼が目を光らせていることで、あそこは収容者を決して逃がさない鉄壁の監獄となっていたのさ……数時間前まではね……』
そう言ったヒミコの声と共にヘリに備えつけられたモニターに映像が映し出される。
監視カメラで撮影したと思われる映像。
そこには、血塗れで倒れている軍服姿の【星】とそれを見下ろす二名の【星】の姿が映っていた。
映像のみでなく音声もきっちりと入っている。

『ん、ん~。これが『守護神』ですかな?』
『だいじたごと無い……』
『ぐッ…くッ……』
襲撃者である二名の【星】に足蹴にされ、うめき声をあげる軍服の【星】。二名のやり取りから彼が『守護者』であると察する。
『ん、ん~…ですがこれで我々としてのノルマは達成。早く来てくれると有難いですなぁ』
『ヴん…全然満足まんぞぐでぎない…一分一秒でもばやてほしい』
「ぐ……糞ォオオオオオオ!!」
何やら企みをしているであろう二名に対して吼えた『守護神』。折られた銃剣の破片を握りしめて飛びかかる。
だが、刃が二名に届く前にその腕ごと吹っ飛ばされた。
『ガ………ヒっ……』
『ん、ん~もう結構ですぞ貴方は』
『守護神』に対してそう言い放った襲撃者の内の一名。
そこで映像は途切れた。

『こいつらが施設を襲撃した主犯格の二名…一名は燕尾服を着ている奴が収容者№J0123。スォー…元従者であり…仕えていた主人とその血族やその関係者約数百名を見つけ出し丁寧に殺戮した狂人だよ』
「元従者…」
「へぇ…元同僚ですかぁ~…」
『そしてもう一名の鼻声のエスキモーは収容者№T0219。タンドラ…殺しの快楽に取りつかれ故郷の街どころかその周辺地域すら凍らせた『喜楽・氷ラクト・アイス』の銘を持つ無差別殺戮者さ』
「傭兵時代にそいつの名前は聞いたことがあるわね……信念や思想どころか所属や金銭すら糸目をつけずにどんな奴でも雇われて、息をするように他者を殺す氷雪系の能力を持った【星】が存在していたって…それがコイツって訳ね」
『№ってところから察しが付くだろうが…どちらも脱獄した収容者さ、そいつらから施設を奪還するのが今回お願いしたい事だよ』
「成程な…ちなみにだけどよ、今回は監督じゃあなくて俺らが…だよな?」
『察しが良くて助かるよ、ウチでも秘蔵の【銘付き】があれ程にあっけなくやられたからね…アンタ等が最初から出張ってくれると助かるさ…』
ヒミコの言葉に頷く大和。映像の限りだがあの二名はこれまでの脱獄連中と一段も二段も格が違う。これまでの実戦でいくらか腕は上げたのはわかるが白雪達には少々役者不足に違いない。
白雪達には十中八九解放されている収容者の鎮圧を任せ、依頼の協定通り大和達が前に出張る必要があるだろう。
「しっかしま…R18の中々に毒の強そうなお仕事になりそうだこと……エイプリルやミコを連れてこなくて良かったぜ!」
ミコとは先の場所で別行動としていた大和。今回の依頼に何かきな臭さを感じたヒミコによりメンバーを二つに分けるよう指定された為、話し合って大和と門司を軸で分けた時にそうなったのである。
今は門司やエイプリルの別動隊と共に保険として『郷』の中で待機という形をとっていた。
まあ【星具】に生命力を吸われて連れてこれるような状況でなかったのもあるが…今回ばかりはそれは幸運だったのだろう。
(でも婆さんのきな臭さっていうのはちょいとばかし同感だな……事ここに来ての連中のこの行動…何かやろうと考えているのだけは確かだ)
「皆さん!目的地点にまもなく到着!!準備をお願いします!!」
「…ま、良いさ。何を企んでいるかは連中に端の方までじっくりたっぷりとと聞かせてもらいましょう!」
「大和。何ぶつぶつ言っているの?……どーせ変な事考えていたんでしょう」
「5割正解50%間違い。まあ気にすんな!」
晴菜の視線をそうはぐらかし大和は着陸の準備へと入った。

※8/20は所用で休筆します。次回は8/27予定となります。
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