プライベート・スペクタル

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第二話 第三章

第一節

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「くたばれ『龍王』ッ!!」
振りかぶった大鎌の一撃。大和は易々と躱す。
と同時に反撃の打撃を叩き込む。
相手の【星】は家屋数件をぶち抜きつつ吹き飛んだ。
「よっし、終了~」
戦闘不能になったのを確認して大和はそう呟いた。

あの打ち合わせの後、決まったように変わらず依頼を受け続けた大和達。
指定された地点に赴き、『フツノミタマ』と合流し、標的を倒すのを監督し、まれに自らが倒す。
そうして依頼を数十件程度受けた大和達。本命である『無にして全』はまだ巡り合っていないが、【星具】は五つほど手に入れることができた。
「いや~俺って働き者だねぇ~……」
またそうした合間にも空いた時間に【星具】絡みの他の依頼も受けている大和。
これもその内の一つである。
倒れた【星】に近づくと【星具】の一つである大鎌を拾い上げた。
「お疲れ様です大和さん」
「ミコもな…ホれッ!」
今回同行したミコがこちらにやってくる。大和は肩に担いだ大鎌【星具】をミコへと手渡した。
「うわっ!?とっと…これが死神の鎌って奴ですか……サブカルでよく見ましたが、見るのは初めてです」
「だろうな、俺も滅多に見ないもん」
大鎌を受け取るミコ。少々ふらついてはいたが、きっちりと握りしめた。
「それにしても凄まじいですね…これが『龍王』。強さの塊のようです」
大和の戦闘跡を見てミコはそう言う。
「強さの塊ねぇ」
「はい。バトル漫画やアニメのような華やかさやわくわく感もある。とても見ごたえも面白さのあるものでした」
「へぇ、中々に面白い表現だな」
こういう風に見ているミコに大和は思わず笑みを浮かべる。
「やはり【星】の方々はすごいです。大和さんや門司さんだけでなく睦美さん、晴菜さん、チェルシーさん、エイプリルさんのような若い方まで……私なんかと大違いです」
俯くミコ。自身の不甲斐なさを恥じているようである。
「人間と超人である【星】を比べなくても良いだろう」という慰めは野暮である。そんなことは十二分に理解はしている。
その上での不甲斐なさなのだ………。
「睦美さんから聞きました【星】の素質を持つ者は、【星】と行動を共にする事で【星】へと覚醒することが多いと……私が『創世神』へ入れさせてもらって早や数週間。しかし、私には兆候すら現れません……私には【星】への素質は無いのでしょうか?」
「それは大丈夫だと思うけれどなぁ」
そう答える大和。
訓練でも依頼でもミコはよく付いて来ていると大和自身は感じている。
素質に関しては「ある」と「無し」で言えば間違いなくある方であるし、何なら晴菜に並ぶ逸材である。
おそらく晴菜と同じように何らかのきっかけで覚醒に至るのであろう。
「ん?きっかけ……」
「大和さん?」
「そうだなミコ……ちょいと荒療治にもなるが試してみるか?」
そう言い大和が取り出したのは、『月下の雫』であった。
「それは…」
「素質のある人間が【星】の奴らと行動を共にすると同じ【星】に覚醒する。【星具】にも同じことが言えるってどっかから聞いたことがあってな…【星具】を使う人間は【星】に覚醒することがままあるらしい」
「そうなのですか!?」
「まあ【星具】は一般人からしてみりゃあ無用の長物か少々毒だけれどな……使うことによりなるんだと、荒療治って言ったのはこういうことだ。試してみるか?」
「是非ッ!……あっ、でも『月下の雫それ』は大和さんが使用しているのですよね?使っても良いものか…」
「構わねぇよ、見たように俺は元々徒手空拳の素手派だ。こいつを使わなくても大して変わらねぇ…………それに……」
「何ですか?」
「コイツはあくまで直感、勘みたいなもんだが…『月下の雫』はお前を呼んでるような気がするんだよな……俺もお前が使うのはなんかしっくりくるし……」
「私を……」
「まあ兎も角…折角だから使ってみたらどうだ?睦美とかにゃあ後で言っておくし」
そう言って剣を差し出した大和。
一瞬躊躇った様子を見せたミコであったが、持っていた大鎌と交換するような形で受け取った。
「大和さん。ありがとうございます!これを使いこなし皆様のお役に……」
「あっ、おい!?そんな不用意に抜いたらッ!?」
「たたたたたたたたたた~?……………………がッ…」
抜き放った瞬間何かを吸われたミコ。ミイラのようなゲッソリとこけた表情へと変わる。
そしてそのまま剣を抱いたままパタリと倒れた。
「先に説明しておくべきだったな、いざという時以外は抜くなって………」
死にかけの虫みたいにピクピク動くミコを見ながら呟く大和。
とそこに睦美からの通信が入った。
「ほいほい…どったの睦美?」
『ふむ、件の【星具】は無事頂戴したようですね』
「まぁな…で?要領得ないじゃあないの…一体何の用だぃ?」
『『フツノミタマ』より緊急の依頼です。どうやら収容者によって『フツノミタマ』の重要拠点の一つが乗っ取られたみたいです』
「へぇ…」
『貴方の今いる位置も教えました。すぐに向かって下さい』
そう言って切れた無線。
その数瞬後、ヘリのローター音が近づいてくるのを感じた。
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