プライベート・スペクタル

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第二話 第二章

第一節

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「~♪~~~♪♪~」
「おっ、ご機嫌だねぇ」
「うぃ」
鼻歌を歌い楽しそうに歩くエイプリル。その後ろを大和は追いかける。
ヒミコからの依頼とミコという新たな仲間を迎え入れた翌日。早速依頼での召喚を受けた大和達。
今は目的地で指定された北関東のとある山奥にエイプリルと二名で来ていた。
「だって久々の師匠との二人でのお仕事ですからね!心躍らずにはいられません!」
「へへっ、そう言ってもらえるのは嬉しい限りだねぇ」
依頼はヒミコがこちらの人数に合わせてくれたのか全部で三件。それぞれ大和、晴菜、門司で分け合って行うことになった。
またそれに合わせ一名ずつ支援も兼ねて相方をつけることとなる。大和にはエイプリル、晴菜にはチェルシー、そして門司には…。
「しっかし、まさか門司がミコを指名するとはな…」

『ミコは俺が引き受けよう…異論はないな?』
選考の際にそう言い放った門司。
当然大和も晴菜も異論などなく。ミコ自身もやる気なところでの指名だった為二つ返事でOKし、それによりコンビが決まったのであった。
「うぃ、面倒見が非常に良い方というのは何度もご一緒させて貰ったため知ってはおりましたが…………まさか自らが名乗り出るとは思いもよりませんでした…」
「だな」
意外…。
ミコ以外の全員がそう思ったのは難くない。
基本的には頼まれればきっちりと面倒を見る門司だが、基本あんなに積極的に受け持とうとするのは多くない。
大和達の為に裏方仕事も行っているのも大きいだろう。
『ふむ、案外貴方がエイプリルに仰がれるのを見て自分も…と思ったのかもしれませんよ……アレも冷静に見えてそういうところは結構ありますから…』
「って聞いていたのかよ!?」
いつの間にか通信機越しで会話に加わっていた睦美に驚いた大和。
今回は『フツノミタマ』との共同であるが故、ナビゲーションは必要最小限にし、情報収集や精査を行うと睦美本人が言っていたからである。
『勿論それらの手は止めておりませんよ…ただ貴方とエイプリルの担当する場所が他と異なり少々複雑ですからナビを…と思いましてね……気にしなくってもアチラと合流出来たら通信は切りますので……』
「ほいほいそうかよ」
「心配性だな」と感想は内心に収める大和。そのまま睦美の案内通りに先へと進む。
やがて木々の開けた場所に出た大和とエイプリル。そこに待機していた『フツノミタマ』構成員と随伴する陸上自衛隊の一部隊と合流した。
さっそく部隊を率いて今回の戦闘の要となる【星】と対面した。
「お待ちしておりました『創世神』のお二方様。このような僻地にわざわざお越しいただき誠にありがとうございます」
「君がトップ?」
「はい【星団】『フツノミタマ』戦闘班、名残なごり白雪しらゆきと申します。陸上自衛隊東部方面隊にも所属し階級は3尉。お二方の目の前におります新設兵科である特務星科とくむせいかの一部隊も率いさせております。どうぞよろしくお願い致します」
ピシッと敬礼をする【星】もとい白雪と隊員達。
動きやすく改良された戦闘服。対照的に迷彩柄の中であって映える純白のバンテージグローブに首元のスカーフ。きっちりと整えられたボブヘアの一部に白のメッシュを入れ『フツノミタマ』の紋章の髪飾りをつけている。
大和よりも若い歳ながら責任感を受け止め朴訥とした雰囲気から清流のような印象を与えていた。
「こいつはどうもご丁寧に【星団】『創世神』の呉成・大和だ。こっちは相棒のエイプリル。どうぞよろしく」
「勿論存じ上げておりますッ!!」
突然興奮気味に応じた白雪、ズズいっと輝かせた顔を近づける。
「我々若手、特に無手を常とする【星】にとって『龍王』呉成・大和様は憧れの存在ッ!天上の星のような者でありますッ!!」
「ようなも何も【星】なんだけれどな…」
「ッツ!?……ぁぁぁぁ~」
「って!?気にしなくていいから!辱めるそんな気持ちで言ったわけじゃあないから!!」
さりげない大和の茶々に顔を赤らめて横になる白雪。大和は急いでフォローを入れる。
そして即座に話を切り替えた。
「そ、それよりも!その言葉を聞く限り君も素手、徒手空拳での戦闘みたいだなッ!」
「…………は、はいッ!大和様のと比べたらみっともないモノでは御座いますがッ!」
「大和で良いって、でもそうかぁ~そいつは妙な親近感が湧いちゃうなぁ~…気持ち悪がらないでね」
「そのような気持ちとてもとても!むしろ今回の件でお恥ずかしい姿を見せないか心配で!!」
「どーんと気楽に行きゃあ良いと思うぜ。何かあったら俺達が全力で支えてやっから」
「大和様…ありがとう御座いますッ!!」
「だから大和で良いって、そんな御大層な男でも無ぇからよ俺ァ」
「はいッ!では……………大和ォッ!!!」
「………うん。そんなに怒鳴らなくても良いからな、ちょっと厳しめの部活の顧問じゃあないんだから………」
「ッ!?………ぁぁぁぁぁぁアア~~」
「って良いなァうん!?……元気いっぱいで素晴らしいと思うよおじさんはァ!!」
再び顔を赤らめて横になる白雪。話を切り替える。
「と、ところで…白雪は何時【星】に覚醒ったんだ?ちなみにおじさんは生まれた時からダヨ~」
「…は、はいッ!私は中学生の時からですッ!すぐに『フツノミタマ』に拾ってもらい以降ここまで来ました。能力の関係上でヒミコ様に自衛隊に勧められ国を守りたい思いから入りました。そこから『東京変革』まで二足の草鞋として、変革後からは新設兵科に所属することになったというわけですッ!」
「素晴らしい思いを持っているんだな、しかし中学かぁ~その年代が一番多いよなァ…俺の知り合い連中もそこからが結構多いし…」
「はいッ!やはりあの国民病によってが多いみたいです。自分も例に漏れず罹患し自らを『暗夜の白雪姫ダークネス・スノーホワイト』と名乗っ…て………ぁぁぁぁ~」
「って面倒くせぇ!この娘面倒くせぇ!!」
何度話を変えてもコレ…もはや自爆に近いやり方で顔を赤らめて三度目の横になった白雪に思わず心の中を叫んだ大和。
その厄介さから思わず彼女の部隊の隊員に助けを求めるが、全員が苦笑いをしながら目を逸らす。
「エイプリル!?」
藁にも縋る思いでエイプリルを見た大和。彼女ならほぼ同年代であろうし同性。キッチリと助け船を出してくれると信じていた。
「おおぅ…(ポンッ)」
「って納得しなくて良いから!イイ感じの新しいリアクションを手に入れたみたいなツラしなくて良いから!!」
全く役に立たなかった助け船。全滅した女性陣。
とりあえずこの娘相手には『創世神いつも」のノリだけはやめておこう。それだけは学んだ大和であった。
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