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第二話 第一章
第六節
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「ふむ、上手くまとまりましたね…コレからさらに忙しくなりそうです」
「まぁな、悠々自適な左団扇にも憧れはするが、そいつはちょいと先だな…」
会談が終わりヒミコの元を後にした大和達。
仕事の際の召喚は追って連絡するという形となった。
「まあ仕方がないだろう兄弟。何と言ったって本件では……」
「ああ『無にして全』…そのうちの一つがが絡んでいそうだからな…」
この【星団】を結成した最大の目的。それが見えた以上引き受けずにはいられなかった。
「…コイツで二つ目かぁ……先はどうなることやら」
「皮算用は馬鹿がすることですよ大和。まあ馬鹿の貴方が言っても別に文句は言いませんけれど……」
「うっせぇやい!ちょっとぐらい先を想像してもイイだろうがい!?」
「まあそれも楽しいだろうが兄弟。今は今を楽しむとしよう…」
今現在、ひと段落をつけ、里帰りも兼ねてエイプリルの案内の元で『郷』の観光を行っている大和達。
次はエイプリルがどうしても会っておきたい者に合う為に足を進めていた。
「しっかしま、奇妙ちゃあ奇妙だな…本来ならマイノリティな【星】達がここでは一般人と変わらずにぶらつけるっていうのは…」
「全くだ。見てみろ…あそこに土産物を販売している」
「観光地みたいな事やってんのな……おッ…おっちゃんこの限定たい焼きってやつを5つ、中身はこのフツノミタマ桜餡ってので」
そんなやり取りで通りの商店で買い食いをしながら足を進める大和達。
そうして着いた目的地。そこは美容院であった。
「ここかエイプリル?」
「うぃ、ここになります」
頷いたエイプリル。扉を開けた。
「失礼いたします」
続いて中に入った大和達。中も同じく美容院のような内装。
そこに男性の【星】が一名立っていた。
軽くパーマのかかった髪。お洒落なワイシャツとズボンに身を包み。腰にはハサミや櫛といった道具を提げた。
如何にも美容師のような見た目の【星】である。
「…お、いらっしゃいエイプリル。随分とご無沙汰だね…」
「お久しぶりで御座います」
エイプリルの顔を見るや朗らかに挨拶をした男性。エイプリルもお辞儀をし、大和達に紹介する。
「皆様…こちら鬼柳さん、私を見つけていただき保護していただいた方です」
「へぇ、この方がね」
呟くような晴菜の声。一方の男性…鬼柳も大和達を一通り見終えると察する。
「見たところ君達がエイプリルの仲間達のようだね…どうも初めまして只今紹介に預かりました鬼柳です。一応『フツノミタマ』その末席に預からせてもらっている身だね」
「こちらこそ初めまして。『創世神』の呉成・大和と言います。右から仲間の門司、晴菜、睦美となります。どうぞよろしく」
「君たちが『創世神』。そして貴方が『龍王』。それに『鬼神』に『爆炎』ですか…噂はかねがね聞いているよ、近年の若手の中では輝かしいほどの実力を持つ【銘付き】だとね」
「いえいえ、あんまり御大層なものではないですし気軽に接して下さい」
「それならそのように…同じく君達も気軽にしていてね」
「でしたら」
鬼柳の言葉にいつも通りに戻す大和達。
「しかし…本当に驚いたね。ある【星団】に預けたとはヒミコ様に聞かされはしていたけれど……まさか預けたのが『創世神』で、さらにこんなに感情豊かになるとは…保護した時には能面のような無表情でどうしたものかと思っていたからね」
「そうだったのですか…その折はご迷惑を……」
「いやいやとても嬉しい限りだよ、保護した身としても如何したモノかと悩めたし…それにこの見た目通りの職業上、可愛い容姿が台無しになるのも辛かったからね…」
「うぃ…ありがとうございます鬼柳さん。師匠達に好くしていただいている賜物です」
「エイプリル…へへッ、ありがたいねぇ」
「まあ…たまに碌でもない部分も見てしまっているのもあるけれどね……」
「晴菜…余計なことは言わねぇんでいいんだぜ」
晴菜の茶々に笑みを固定したままそう返す大和。
そのやり取りを見て「成程、この雰囲気なら……」と鬼柳も納得したように呟いた。
「皆さん、それにエイプリル…彼女へのお礼と君への餞別を送らせていただきたいのだけれど……良いかね?」
「本当で御座いますか?ありがとう御座います鬼柳さん」
「ええ……ただスタイリストであるが故、大したモノは用意出来ないですけれどね……」
「ふむ、内装といい身なりといい…やはり美容師関係でしたか…」
「スタイリストと呼んで下さい。見てくれ通りですが僕は……」
【演目】『着の身気ままに…』
「この位しか出来ませんからね」
「「「「「なッ!?」」」」」
すれ違うような動きから一瞬で演たれた鬼柳の【演目】。
それにより大和達全員の身なりに変化が起きる。
エイプリルは、十字の意匠が強調され…新たな髪飾りが赤の髪に映えるように身に付けられる。
晴菜は身に着けたジャンパードレスが華美に且つ動きやすいように改良され。所々に白のラインを取り入れられた物へと変わる。
睦美は上着が軍服めいた意匠へと変わり、腰には本を収めるためのベルトが追加される。
大きな変化はそれくらいだが、大和や門司も身に着けているモノの意匠が強化洗練されていた。
「へぇ、なかなか素敵じゃない」
「ああ…それに材質だが、軽くそして動きやすいモノに変わっているな」
「とても丈夫でもありますよ門司君。相手の衣服を任意に変更・調整させる僕の【演目】で整えさせて貰いました……見たところ君達の衣服は全員結構使い込まれていましたからね…」
「良いじゃあねぇの、俺の一張羅がまた素敵になったってことだな…素敵やん」
「本当に、本当にありがとう御座います鬼柳さん。このような素敵なものを頂いて」
「良いんですよエイプリル。こんな事でも喜んでいただいてそちらの方が僕はうれしいからね」
エイプリルのお礼に朗らかな笑みで応じる鬼柳。それを見てエイプリルも「うぃ」と嬉しそうな声で笑った。
「まぁな、悠々自適な左団扇にも憧れはするが、そいつはちょいと先だな…」
会談が終わりヒミコの元を後にした大和達。
仕事の際の召喚は追って連絡するという形となった。
「まあ仕方がないだろう兄弟。何と言ったって本件では……」
「ああ『無にして全』…そのうちの一つがが絡んでいそうだからな…」
この【星団】を結成した最大の目的。それが見えた以上引き受けずにはいられなかった。
「…コイツで二つ目かぁ……先はどうなることやら」
「皮算用は馬鹿がすることですよ大和。まあ馬鹿の貴方が言っても別に文句は言いませんけれど……」
「うっせぇやい!ちょっとぐらい先を想像してもイイだろうがい!?」
「まあそれも楽しいだろうが兄弟。今は今を楽しむとしよう…」
今現在、ひと段落をつけ、里帰りも兼ねてエイプリルの案内の元で『郷』の観光を行っている大和達。
次はエイプリルがどうしても会っておきたい者に合う為に足を進めていた。
「しっかしま、奇妙ちゃあ奇妙だな…本来ならマイノリティな【星】達がここでは一般人と変わらずにぶらつけるっていうのは…」
「全くだ。見てみろ…あそこに土産物を販売している」
「観光地みたいな事やってんのな……おッ…おっちゃんこの限定たい焼きってやつを5つ、中身はこのフツノミタマ桜餡ってので」
そんなやり取りで通りの商店で買い食いをしながら足を進める大和達。
そうして着いた目的地。そこは美容院であった。
「ここかエイプリル?」
「うぃ、ここになります」
頷いたエイプリル。扉を開けた。
「失礼いたします」
続いて中に入った大和達。中も同じく美容院のような内装。
そこに男性の【星】が一名立っていた。
軽くパーマのかかった髪。お洒落なワイシャツとズボンに身を包み。腰にはハサミや櫛といった道具を提げた。
如何にも美容師のような見た目の【星】である。
「…お、いらっしゃいエイプリル。随分とご無沙汰だね…」
「お久しぶりで御座います」
エイプリルの顔を見るや朗らかに挨拶をした男性。エイプリルもお辞儀をし、大和達に紹介する。
「皆様…こちら鬼柳さん、私を見つけていただき保護していただいた方です」
「へぇ、この方がね」
呟くような晴菜の声。一方の男性…鬼柳も大和達を一通り見終えると察する。
「見たところ君達がエイプリルの仲間達のようだね…どうも初めまして只今紹介に預かりました鬼柳です。一応『フツノミタマ』その末席に預からせてもらっている身だね」
「こちらこそ初めまして。『創世神』の呉成・大和と言います。右から仲間の門司、晴菜、睦美となります。どうぞよろしく」
「君たちが『創世神』。そして貴方が『龍王』。それに『鬼神』に『爆炎』ですか…噂はかねがね聞いているよ、近年の若手の中では輝かしいほどの実力を持つ【銘付き】だとね」
「いえいえ、あんまり御大層なものではないですし気軽に接して下さい」
「それならそのように…同じく君達も気軽にしていてね」
「でしたら」
鬼柳の言葉にいつも通りに戻す大和達。
「しかし…本当に驚いたね。ある【星団】に預けたとはヒミコ様に聞かされはしていたけれど……まさか預けたのが『創世神』で、さらにこんなに感情豊かになるとは…保護した時には能面のような無表情でどうしたものかと思っていたからね」
「そうだったのですか…その折はご迷惑を……」
「いやいやとても嬉しい限りだよ、保護した身としても如何したモノかと悩めたし…それにこの見た目通りの職業上、可愛い容姿が台無しになるのも辛かったからね…」
「うぃ…ありがとうございます鬼柳さん。師匠達に好くしていただいている賜物です」
「エイプリル…へへッ、ありがたいねぇ」
「まあ…たまに碌でもない部分も見てしまっているのもあるけれどね……」
「晴菜…余計なことは言わねぇんでいいんだぜ」
晴菜の茶々に笑みを固定したままそう返す大和。
そのやり取りを見て「成程、この雰囲気なら……」と鬼柳も納得したように呟いた。
「皆さん、それにエイプリル…彼女へのお礼と君への餞別を送らせていただきたいのだけれど……良いかね?」
「本当で御座いますか?ありがとう御座います鬼柳さん」
「ええ……ただスタイリストであるが故、大したモノは用意出来ないですけれどね……」
「ふむ、内装といい身なりといい…やはり美容師関係でしたか…」
「スタイリストと呼んで下さい。見てくれ通りですが僕は……」
【演目】『着の身気ままに…』
「この位しか出来ませんからね」
「「「「「なッ!?」」」」」
すれ違うような動きから一瞬で演たれた鬼柳の【演目】。
それにより大和達全員の身なりに変化が起きる。
エイプリルは、十字の意匠が強調され…新たな髪飾りが赤の髪に映えるように身に付けられる。
晴菜は身に着けたジャンパードレスが華美に且つ動きやすいように改良され。所々に白のラインを取り入れられた物へと変わる。
睦美は上着が軍服めいた意匠へと変わり、腰には本を収めるためのベルトが追加される。
大きな変化はそれくらいだが、大和や門司も身に着けているモノの意匠が強化洗練されていた。
「へぇ、なかなか素敵じゃない」
「ああ…それに材質だが、軽くそして動きやすいモノに変わっているな」
「とても丈夫でもありますよ門司君。相手の衣服を任意に変更・調整させる僕の【演目】で整えさせて貰いました……見たところ君達の衣服は全員結構使い込まれていましたからね…」
「良いじゃあねぇの、俺の一張羅がまた素敵になったってことだな…素敵やん」
「本当に、本当にありがとう御座います鬼柳さん。このような素敵なものを頂いて」
「良いんですよエイプリル。こんな事でも喜んでいただいてそちらの方が僕はうれしいからね」
エイプリルのお礼に朗らかな笑みで応じる鬼柳。それを見てエイプリルも「うぃ」と嬉しそうな声で笑った。
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