プライベート・スペクタル

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第二話 第一章

第五節

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「なんだよ婆さん。俺等を呼び出したってことは俺らに全員捕まえて欲しいのじゃあねえの?」
「捕縛の現場には出張ってきてほしいさ。だけど主体はこっちという形でお願いしたいんだよ」
「話が見えてきてこないな…何だ、連中を捕らえるという実績が政府連中に欲しいのか?」
「そんな下らないモノは要らないさ」
「んじゃ何だよ?」
「決まっているだろう。この国の地力の強化さ…」
とそこで説明してくれるヒミコ。

人と【星】が並び立つ現代。国家に超人達が参加するようになった今のこの状況。
ともすれば起こるのが【星】同士の闘争であろうとヒミコは睨む。国家が認めるような大ぴらな【星】同士の戦闘が頻発するようになるだろう。
【星】の戦力が=国家間戦力や外交力の時代になるであろう時代。
その時に備え自勢力の【星】を強化したいとヒミコは語る。

「ここに来る前にウチの戦闘班の姿を見ただろう?ああやって有事のための訓練をしてはいるけれど…実戦経験はやはり乏しくてね、だからこそ凶悪で悪辣な強い収容者にぶつけて経験を積ませておきたいのさ」
「成程な…」
「ただ単独で連中にぶつけりゃあ。最悪の可能性が少なからず出てくるだろうからね…保険の為に荒事や戦闘に慣れた手練れを後ろに付けておきたいのさ…アンタ等みたいなのをね」
「…つまるところ、連中の経験値を稼ぐための安全装置セーフティとして俺達を同行させたいってわけか……死んじまいそうになれば横やりを入れて助けるような形で……」
「それと…完全に手に余るような存在と出会った時の為にね………何だい、随分やる気が無さそうだね?」
「そりゃあ…なぁ……」
他人事のような感覚で呟いた大和。周りを見れば門司達もそうであった。
依頼である以上、もし引き受けるのであれば嫌でも完遂させてやるが、この内容はあまりこちらに旨みがあるように感じることが出来なかった。
だが、そんな大和達の反応は想定内であったのか、ヒミコはある内容を話し始める。
「そういえば脱獄した連中だけれど…連中の脱獄にはとある手段を取られたという情報が流れ込んでいてね」
「ある手段?」
「【星具】だよ…連中はそれを利用したとされているんだ」
「「「………ッ…!?」」」
空気が変わった大和達。畳みかけるようにヒミコは2枚のとある写真を見せる。
屋内と屋外の画像。その両方に収容者らしき者達が写っていた。
「こいつは収容所内の監視カメラの画像と数秒後の屋外の収容所敷地外の画像さ…わずか数秒でこいつらは此処まで移動している」
画像端に表記されている時間を見る限りどうやら事実のようである。
「更に合衆国側の者が先行して捕らえた者の中にはこう証言していてね……」
『拘束を解き、出口に向かおうとしていたら、いつの間にか外にいた…初めは誰かの【演目】だと思ったが違うと察した。収容者の一名が手にしたモノを見せびらかしながら「これでお前たちを出したんだ…」と語ったからだ……』
「ってね…そしてその時にまるで夜や闇を固めたような漆黒の立方体を見せたようだよ…」
「大和…コレは………」
「ああ俺たちの大本命『無にして全』。そのうちの一つだろうな…」
特徴からして大和達の最意中の【星具】。『現象を歪める』という能力を有し、全てを集めれば事実上あらゆる事が可能となる『王の器』。七つあるそのうちの一つであろう。
「その立方体を持つ者は同じく収容者の服装をしていたらしく…そいつは同じように逃亡したみたいだね」
「そうか、なら鉢合わせる可能性は高いだろうな……」
納得するような門司の言葉。それにより大和達の気持ちはすでに決まっていた。
「婆さん、その情報だけどよ…俺達を体よく動かすために吐いた都合の良い嘘じゃあないだろうな?」
「当然さ、そんなことして知られた時のアンタ等とのリスクの方が怖いし…何よりそんなミミっちいことするさね」
「…いいぜ婆さん。ならその依頼受けるぜ」
「ありがたいね」
「ただし…数点の条件を付けさせてくれ」
「言ってみな」
「まず一つ、複数の現場が同時に現れた際は【星具】を有している奴を優先して動かせてもらう。二つ目、監督した者が捕縛し宙ぶらりんになった【星具】は俺達のモノとすること……それを飲めるならだ…」
「…想像内の条件だね……良いさ、その程度の条件で引き受けてもらえるならこっちとしても願ったり叶ったりさ…」
「OK、なら交渉成立だな……」
交渉がまとまった両者。互いに笑みを浮かべた。
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