プライベート・スペクタル

第四章

第五節

「師匠ッ！師匠ッゥ～！！じじょぅぅううううう～！！」
「スマン待たせたなエイプリル…」
「〝い〝い〝えぇ～私ごぞォ～ずみまぜんッ～！！！」
再会に感極まり泣きながら抱き着くエイプリル。大和はそんな彼女の頭を優しく撫でた。
そして晴菜の方を見る。
「晴菜もサンキュな、エイプリルを無事にここまで連れて来てくれてよ」
「……ふんッ！やっぱりマジモノの大馬鹿ねアンタ。そもそも彼女が囚われることになったのもアタシの所為…感謝なんてする必要すらないわ」
「でも、お前が教えてくれなきゃあアレで終わり、こっちの負けだった…反撃の機会を与えてくれたのも紛れもなく晴菜だ…だからこそもう一度だけ言わせてくれ、ありがとうな晴菜…」
「…ッツ！アタシはただ久弥やイドなんかにアンタが負けて欲しくなかっただけッ！アンタに敗北の屈辱と死を与えるのはアタシよ！わかったッ！！？」
「へへっ…ああッ！」
「……くくっ、ツンデレツンデレ……」
「これが漫画でよくある由緒正しき某王子系という奴ですねぇ～」
「なに笑っているのよそこッ！消し炭にするわよッ！！」
コソコソと話しながら笑う門司とチェルシーに顔を赤らめながら晴菜は叫ぶ。
そこで話を戻すために睦美は咳ばらいを一つした。
『さて全員、再会喜びは全てを終わらせてから…最後に残った目的も達成させましょうか』
「………ッツ！うぃ、そうでした！師匠ッ、わかったんですッ！彼らの計画の全貌をッ！【星具】を用いて何を企んでいるのかをッ！！」

「はぁ…これは、【星具】を弾頭としたミサイル弾。『月下の雫』を弾頭に用いることによりコレの能力『吸収・放射』で土地や周囲のエネルギーを吸い破壊に利用する。枯渇と同時に破壊をもたらす。【星】として英雄として活動しようとした俺を見限った日本にコレを打ち込み回復力すら含めて完全破壊する…これが俺達の計画だよ…」

「成程な、つまるところ【星具】を材料にした大規模破壊兵器作成と運用。標的は日本へってか」
『ふむ、命を吸い力を発揮するという魔剣の特性を最大限に活かした代物ですね……おそらくそのミサイルの発射もこの【領域】から行うでしょう』
「どういうこと？」
『【領域】はありとあらゆる空間や場所に繋がることが出来る。空間を繋げてしまえば何処の場所でも何処の国からでも…それこそ日本に友好的な同盟国から敵対感情を持っている某国でもどこからでも…』
「何処からか…の他国に繋げそこから撃ち込まれる人類側からしたら未知の超兵器。もちろんご丁寧に作った防空網ぐらい易々と抜かれるだろう。そんで日本の国土のエネルギーを吸収し破壊力に転用され放射、古くから龍脈みたいなそういった土地のエネルギーが豊富と囁かれている国だ。威力は本州の大半を飲み込むことになり。土地エネルギーすら枯渇させられた日本は再起不能なほどに壊滅的な打撃を受けることになる」
「そして生き残った日本とその同盟国と繋がり撃ち込むことになった国との戦争だろうな…「撃っていない」「そんなの知らない」なんて言い訳は通用しないだろう。実際に証拠が存在あるんだからな…国際世論からも認められた日本と同盟国の報復…さらには浮かびあがる【星具】兵器の存在、世界は戦争と疑心暗鬼による混乱の時代が来るだろうな…」
『ふむ、しかもエイプリルの言葉通りでは兵器は完成していると見ても良いでしょう。使用するのも時間の問題かと……』
「まさに瀬戸際、だな…」
ことの程度を認識した大和達。
【星具】興味を持たないとしたヒミコが何故頼んだのか、【天使】達が何故こうも一つの【星具】に執着したのか……全てががっちりと繋がるのを感じた。
そして今現状その危機を止めれるのは自分達だけだということを…。
噛み締めるようにほんの数秒間無言の時が流れる。

その沈黙を破ったのは門司であった。
「なあ鉄面皮、俺達が止めないと今の世界が滅びるらしいな？……」
『そうみたいですね…ですが我々は【星】今の世界秩序からは外れた存在です。今の世界が滅びようと関係ないですね……晴菜はどう思います？』
「アタシも同じよ、【星】になってしまった以上、今の世界なんて隣家程度。火事になろうが殺人事件が起ころうが関係ないわ…アンタはどうなのよ馬鹿？」
「どうだろうなぁ……まあ当事者とまでは言えんからな……関係ないんだろうなぁ、世界云々は…」
「師匠……」

「「「『だがあいつらは気にくわない！』」」」

「師匠ぅッ！」
世界なんてどうでも良い。それは本心…。
だが、負けでは終われない。
だからこそ大和達は決めたのだ、久弥と晴菜に聞いた、未だ大和達の前には現れないもう一名、イド。そいつらを完膚なきまでに叩きのめすことを！
「だからこそ、さっさとここの制御中枢に向かうぞ、そこ抑えりゃあ【星具】兵器の場所まで一気に近づける。晴菜わかるか？」
「ここは動いているから詳しい位置まではわからないわよ…けれど中枢はシステムの都合上、主となる空間とは必ず繋がっていると聞いたわ」
「そいつさえわかりゃあ十分行くぜ！」
「へぇ、負けちゃったかァ♪」
制御中枢へと急ごうとする大和達にそんな声がかかる。
声の方向を見るとそこにはイドが笑っていた。