35 / 139
第四章
第二節
しおりを挟む
「ん…?」
急な浮遊感を感じたことにより自身のいる空間が組み替えられたことを理解したエイプリル。収まり開いた扉の方を見る。
入って来たのは晴菜であった。
「えっ、晴菜さん………?」
疑問を浮かべるエイプリルに何も答えない晴菜。檻の出入り口まで近づく。
手には炎の拳銃を握られていた。
そのまま拳銃の銃口を向ける晴菜。だが、向けた先はエイプリルではなく彼女の檻の錠前である。
そして引き金を引き錠前を破壊した。
「えっ!?……え…?」
「静かに……」
困惑するエイプリルに短くそう返し、懐から鍵を取り出した晴菜。その鍵をエイプリルの首輪へと差し込む。
ガチャリという音と共に首輪は外れ落ちた。
「良し、コレで良いわね」
「晴菜さん…あの……これって…?」
「決まっているでしょ、逃げるわよ…」
「え?」
晴菜のその言葉に戸惑いの声を上げるエイプリル。
「さあ、早く出て…」
「ちょ、ちょっと待って下さい!?どうしたんですかそんな突然ッ!?」
「……なに?自由の身になるのが嫌っていうの?」
「のぅ、そうではなく!?……どうしてこのような手助けを!?」
つい先日まで自分達と敵対をしていたのに…彼女の思惑と行動にエイプリルはまだ頭を追いつかせていけなかった。
「ああそんなこと…アタシの気まぐれよ……」
「……………………」
「っていうのは、流石に調子良すぎるわね…疑われているし……」
至極簡単なように返した答えを引っ込める晴菜。正直に話す。
「無くなったのよ…アンタ達と敵対する理由っていうのがね……」
「理由…」
扉の方を警戒しながら答える晴菜。
それを聞きながらエイプリルも檻の外へ出た。
「つい先日まで…アタシはアンタ達と戦う意味があった。だからこそイドの奴に雇われてやったし…喜々としてアンタ等を痛めつけようと思った。だけれど…アンタのお師匠とちょっとあってね…それももう失せたのよ……」
「………………」
「勘違いはしないでよ…契約金も前金を除いて全て返金してやったわ…持ち逃げなんてしいていない……傭兵としてその辺りはきっちりするわよ」
「……くすくす」
「……なに笑っているのよ…」
「…………いえ、やはり晴菜さんは優しい人だったなと…思いまして………」
「……ッツ!呑気なこと言ってないで、さっさとここを出るわよ!」
少し顔を赤らめそう言い放った晴菜。エイプリルは「うぃ」と笑みを浮かべた。
とその時…。
「……そうか…今になって裏切るか…『爆炎』…」
「「ッツ!?」」
出入り口から聞こえる声。
晴菜とエイプリルは即座に即座に身構える。
出入り口の前には二名の【星】がいた。
「やはり久弥の予想の通りになったか……そろそろ『爆炎』は裏切るかもしれない…とな…」
「ああ立派な裏切りだよ兄さん」
二名ともメキシコの楽団であるマリアッチのような衣装を身に包んだ壮年の男性。手にはそれぞれバンジョーのような弦楽器とマラカスを携えている。
似たような顔つきと言動から兄弟の様である。
「まさか虜囚を解放し…あまつさえ共に脱出を図ろうとするとは…」
「そうだね兄さん。後を付けておいて正解だったね」
兄だと思われるバンジョーを持つ方の言葉に頷く弟であろうマラカスを持つ方。
互いに楽器をかき鳴らし始めた。
「あら……契約金はキチンと返上しイドも離反には了承した以上。契約はそこで終わっているわ……その時点で自由になったアタシに裏切りだなんて…心外ね」
「だからと言って即座に利敵行為に移る行為が問題なのだ、恥を知れ」
「同じ立場で雇い主でも無いアンタ達に言われたくないわ……それに、契約にはその部分は一切書かれてもいなかったしね」
「書かれていなくても理解ることだ!信用まで捨てるなんて…『爆炎』ッ!貴様を雇う存在なんてもう存在しなくなるぞッ!」
「ご心配どーも…でももうアタシは傭兵は廃業するからそんなのはどうでも良いの…」
「このアマぁああああ!!」
そこで激昂した【星】の兄弟。叫びに跳びかかる。
「行くわよエイプリル」
「……うぃ!」
交差一閃。
炎の打撃と影の斬撃により、晴菜とエイプリルは兄弟を一撃のもとに吹き飛ばした。
「「……こはッ!?」」
「悪いけれど通してもらうわよ……アンタ等程度の実力、アタシの『爆炎』を使うまでも無い、描写すらも…ね…」
偶然の様に代わりに檻に叩き込まれた【星】の兄弟にそう言い放った晴菜。
エイプリルを連れて出入り口に向かう。
「さあ、さっさと行くわよエイプリル。来ているアンタのお師匠様と合流するためにね…」
「……ッ、師匠が来ておられるのですかッ!?」
「ええそうよ、ついさっきこの【領域】に踏み込んだみたい。まだ騒ぎが無いから敵にも気づかれていないみたいで……全く、どうやってここの情報を得たんだか…」
「でしたら、早く合流して止めて貰うように伝えないと…ッ!」
「止める?伝える?………一体何のことよ?」
「久弥とイドの目的の事ですッ!……彼らの目的、それは【星具】を兵器として用いた日本の破壊……復讐の為の日本という国家の壊滅ですッ!!」
急な浮遊感を感じたことにより自身のいる空間が組み替えられたことを理解したエイプリル。収まり開いた扉の方を見る。
入って来たのは晴菜であった。
「えっ、晴菜さん………?」
疑問を浮かべるエイプリルに何も答えない晴菜。檻の出入り口まで近づく。
手には炎の拳銃を握られていた。
そのまま拳銃の銃口を向ける晴菜。だが、向けた先はエイプリルではなく彼女の檻の錠前である。
そして引き金を引き錠前を破壊した。
「えっ!?……え…?」
「静かに……」
困惑するエイプリルに短くそう返し、懐から鍵を取り出した晴菜。その鍵をエイプリルの首輪へと差し込む。
ガチャリという音と共に首輪は外れ落ちた。
「良し、コレで良いわね」
「晴菜さん…あの……これって…?」
「決まっているでしょ、逃げるわよ…」
「え?」
晴菜のその言葉に戸惑いの声を上げるエイプリル。
「さあ、早く出て…」
「ちょ、ちょっと待って下さい!?どうしたんですかそんな突然ッ!?」
「……なに?自由の身になるのが嫌っていうの?」
「のぅ、そうではなく!?……どうしてこのような手助けを!?」
つい先日まで自分達と敵対をしていたのに…彼女の思惑と行動にエイプリルはまだ頭を追いつかせていけなかった。
「ああそんなこと…アタシの気まぐれよ……」
「……………………」
「っていうのは、流石に調子良すぎるわね…疑われているし……」
至極簡単なように返した答えを引っ込める晴菜。正直に話す。
「無くなったのよ…アンタ達と敵対する理由っていうのがね……」
「理由…」
扉の方を警戒しながら答える晴菜。
それを聞きながらエイプリルも檻の外へ出た。
「つい先日まで…アタシはアンタ達と戦う意味があった。だからこそイドの奴に雇われてやったし…喜々としてアンタ等を痛めつけようと思った。だけれど…アンタのお師匠とちょっとあってね…それももう失せたのよ……」
「………………」
「勘違いはしないでよ…契約金も前金を除いて全て返金してやったわ…持ち逃げなんてしいていない……傭兵としてその辺りはきっちりするわよ」
「……くすくす」
「……なに笑っているのよ…」
「…………いえ、やはり晴菜さんは優しい人だったなと…思いまして………」
「……ッツ!呑気なこと言ってないで、さっさとここを出るわよ!」
少し顔を赤らめそう言い放った晴菜。エイプリルは「うぃ」と笑みを浮かべた。
とその時…。
「……そうか…今になって裏切るか…『爆炎』…」
「「ッツ!?」」
出入り口から聞こえる声。
晴菜とエイプリルは即座に即座に身構える。
出入り口の前には二名の【星】がいた。
「やはり久弥の予想の通りになったか……そろそろ『爆炎』は裏切るかもしれない…とな…」
「ああ立派な裏切りだよ兄さん」
二名ともメキシコの楽団であるマリアッチのような衣装を身に包んだ壮年の男性。手にはそれぞれバンジョーのような弦楽器とマラカスを携えている。
似たような顔つきと言動から兄弟の様である。
「まさか虜囚を解放し…あまつさえ共に脱出を図ろうとするとは…」
「そうだね兄さん。後を付けておいて正解だったね」
兄だと思われるバンジョーを持つ方の言葉に頷く弟であろうマラカスを持つ方。
互いに楽器をかき鳴らし始めた。
「あら……契約金はキチンと返上しイドも離反には了承した以上。契約はそこで終わっているわ……その時点で自由になったアタシに裏切りだなんて…心外ね」
「だからと言って即座に利敵行為に移る行為が問題なのだ、恥を知れ」
「同じ立場で雇い主でも無いアンタ達に言われたくないわ……それに、契約にはその部分は一切書かれてもいなかったしね」
「書かれていなくても理解ることだ!信用まで捨てるなんて…『爆炎』ッ!貴様を雇う存在なんてもう存在しなくなるぞッ!」
「ご心配どーも…でももうアタシは傭兵は廃業するからそんなのはどうでも良いの…」
「このアマぁああああ!!」
そこで激昂した【星】の兄弟。叫びに跳びかかる。
「行くわよエイプリル」
「……うぃ!」
交差一閃。
炎の打撃と影の斬撃により、晴菜とエイプリルは兄弟を一撃のもとに吹き飛ばした。
「「……こはッ!?」」
「悪いけれど通してもらうわよ……アンタ等程度の実力、アタシの『爆炎』を使うまでも無い、描写すらも…ね…」
偶然の様に代わりに檻に叩き込まれた【星】の兄弟にそう言い放った晴菜。
エイプリルを連れて出入り口に向かう。
「さあ、さっさと行くわよエイプリル。来ているアンタのお師匠様と合流するためにね…」
「……ッ、師匠が来ておられるのですかッ!?」
「ええそうよ、ついさっきこの【領域】に踏み込んだみたい。まだ騒ぎが無いから敵にも気づかれていないみたいで……全く、どうやってここの情報を得たんだか…」
「でしたら、早く合流して止めて貰うように伝えないと…ッ!」
「止める?伝える?………一体何のことよ?」
「久弥とイドの目的の事ですッ!……彼らの目的、それは【星具】を兵器として用いた日本の破壊……復讐の為の日本という国家の壊滅ですッ!!」
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
ああ、もういらないのね
志位斗 茂家波
ファンタジー
……ある国で起きた、婚約破棄。
それは重要性を理解していなかったがゆえに起きた悲劇の始まりでもあった。
だけど、もうその事を理解しても遅い…‥‥
たまにやりたくなる短編。興味があればぜひどうぞ。
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる