15 / 139
第二章
第五節
しおりを挟む
「…はてさて…終わったぜ睦美」
『ふむ、ご苦労…殺さずに倒せたようですね……こちらも【領域】の座標変更を終えたところです』
「そっちもご苦労さん。エイプリルの奴はどうだい?」
『座して不動。画面に穴が開きそうなほどの視線で貴方を見ておりますよ…凄い集中力です』
「へへっ、そりゃあ録画でもしといたほうが良かったか?俺も後から自分のカッコいい動きを見てうっとり出来るし…」
『うわキモ……』
「そういう直球やめて!一番傷つくから!!」
とか何とかいうやり取りはさておき…本題に入る。
「ところで…【天使】どうする?……殺したら刷新とはいえこのまま放置するっていうのも、後々面倒なことになりかねませんぜ社長」
『反応しませんよ…そうですねぇ………』
うーんと考える大和と睦美。
そこで何か思いついたのか大和は掌をポンと叩く。
「そうだ!いっそのこと封印するっていうのはどうだ!?」
『ふむ……で、どうやるんです?これまで私に隠していた秘められた能力が有るとでも…?』
即座に問題部分を返される大和。しばらく固まった後、良い笑みで…。
「それは睦美に任せるぜッ!」
「はぁ~……」
糞でか溜め息を隠そうとせずに吐く睦美。馬鹿が人の上に立つと碌な事にならない好例を見せられているようであった。
とそこでチェルシーがやって来る。
「お待たせいたしましたぁ~」
「ご苦労だったなチェルシー。怪我らしい怪我も無く何より…」
「いえいぇ、勿体ないお言葉ですよご主人」
ぺこりとお辞儀をしたチェルシー。とここで彼女にも意見を聞くことにする。
「ところでチェルえもん。今倒した【天使】の扱いに困っているんだ。何か良い方法はないかなぁ?」
「そうですねぇ……岩にでも埋め込ませて永遠に供養させましょうかぁ、ご主人の持っている漫画にもそんなやり方で敵を倒しておりましたしぃ」
「発想がサイコパスのソレ!?……いやいや、そんなドラム缶とコンクリを使った不思議なマジックじゃあねぇんだからよぅ」
「ちなみにご主人は何を思いついたんですぅ?おそらく封印とか言っていたんじゃあないですかぁ?」
「主人への理解度が100%で助かるよ……」
と話の途中。遠くで得体の分からない殺気を感じる大和。
「チェルシー、跳べッ!!」
燃える炎のような気からとっさにチェルシーに指示を出す。チェルシーも疑問に思うことなく指示に従い跳ぶ。
瞬間、彼らが立っていた場所が勢い良く燃え上がった。
「コイツは…」
付近の小型ビルの屋上に着地し様子を見る大和。
火の元が一切存在しなかったのに燃え盛る眼下。明らかに普通ではない。
「ご主人…これはぁ…」
「ああ、新手だろうな…」
言葉と同時に感じる先程と同様の殺気。これにはチェルシーも察知したのか大和と同時に屋上から飛び降りる。
数瞬後、先程と同じような爆発が起こった。
燃えていない地面を選んで降り立つ大和とチェルシー―。降り立つと同時に遮蔽物となりうる背の高い建築物の多い方向へと駆け出す。
感じる三度目の殺気。そこで大和は発火の原因を突き止める。
発火の原因。それは小型の炎の塊。銃弾のような形状のソレが何発もこちらに向かってきていた。
「どっせいッ!!」
地を砕くほどの踏み込みでコンクリートを畳返しの様にひっくり返す大和。盾となった壁を利用して炎の弾丸を受け止める。
壁は爆発と共に勢いよく燃え上がった。
「そこだなッ!!」
三度の攻撃で敵の大まかな位置を察した大和。爆発が収まると同時に起こした壁を砕き、敵の位置……少々離れた位置にあった雑居ビルの一角に蹴り飛ばす。
吸い込まれる様に高速で飛翔するコンクリート片。それを迎撃する様にビル一角から放たれる炎の弾丸。
コンクリート片は粉々に砕け散った。
「失礼いたしますぅ」
迎撃の隙をつく様に敵の居場所へと跳びかかるチェルシー。手刀を放つ。
「くっ…」
それを躱す形でビルから人影が一つ跳び出す。
灰色の外套を身に纏う人影。ボロボロの外套を頭まですっぽりと覆い容姿すら定かでないその姿はまるでボロ布の幽霊の様である。
そんな幽霊のような人影、だが放つ雰囲気はとても幽霊なんて呼べない噴火直前の火山を思わせるような熱量を放っていた。
「やれやれ…アンタかぃ?俺達に奇襲を仕掛けてきた闖入者っていうのは?」
「………………」
何も答えないボロ布。答えないというよりは「そんなわかりきっていることをいちいち問いかけるな」と言わんばかりに敢えて無視しているようでもあった。
大和も気にせず続ける。
「しっかし困るぜ、さっきのアンタの炎。それで折角殺さずに倒した【天使】が死んじまったじゃあねぇか…この人でなし!連中は殺されたら刷新されるって事を知らねぇのかい?」
「……………………」
「おいおいオイオイ…まだダンマリかぃ?だったら自己紹介からしようか?俺ァ……」
「呉成・大和……『龍王』…」
そこでようやく口を開いたボロ布。発する声色は女性を思わせるものであった。
「おっ、ようやく話が通じたな…俺の名前を知っているという事は俺目当てって事だろ?一体何の用だい?」
「…知れたこと。お前が奪った【星具】…それを返せ」
「返せ…ねぇ、成程…アンタもグラ…何とかさんのお仲間ってことね…」
「深く答える気は無い……返答は?」
「またまた~そんなの分かっているくせに~…お断りだよ、少しでも考えて欲しいってなら素顔を見せて親交を深めようとしてからにしな…」
「そうか…」
「残念か?」
「……いや…」
穏やかな声色のボロ布。まるで断ってくれるのを待っていたような心底安心したような態度である。
「良かった……本当に……」
ゆっくりと息を吐くボロ布。「ふぅ~…」っと胸の中の空気を全て出し切るような長い息。
そして…。
「じゃあ心置きなく……死ねェ!!」
そう言い掌をかざす。掌からは炎が勢い良く燃え上がる。
まるで巨大な生き物の様に揺らめく炎。勢いを下げることなくその形状を変える。
そうしてボロ布の手には炎で出来た拳銃が顕現したのであった。
『ふむ、ご苦労…殺さずに倒せたようですね……こちらも【領域】の座標変更を終えたところです』
「そっちもご苦労さん。エイプリルの奴はどうだい?」
『座して不動。画面に穴が開きそうなほどの視線で貴方を見ておりますよ…凄い集中力です』
「へへっ、そりゃあ録画でもしといたほうが良かったか?俺も後から自分のカッコいい動きを見てうっとり出来るし…」
『うわキモ……』
「そういう直球やめて!一番傷つくから!!」
とか何とかいうやり取りはさておき…本題に入る。
「ところで…【天使】どうする?……殺したら刷新とはいえこのまま放置するっていうのも、後々面倒なことになりかねませんぜ社長」
『反応しませんよ…そうですねぇ………』
うーんと考える大和と睦美。
そこで何か思いついたのか大和は掌をポンと叩く。
「そうだ!いっそのこと封印するっていうのはどうだ!?」
『ふむ……で、どうやるんです?これまで私に隠していた秘められた能力が有るとでも…?』
即座に問題部分を返される大和。しばらく固まった後、良い笑みで…。
「それは睦美に任せるぜッ!」
「はぁ~……」
糞でか溜め息を隠そうとせずに吐く睦美。馬鹿が人の上に立つと碌な事にならない好例を見せられているようであった。
とそこでチェルシーがやって来る。
「お待たせいたしましたぁ~」
「ご苦労だったなチェルシー。怪我らしい怪我も無く何より…」
「いえいぇ、勿体ないお言葉ですよご主人」
ぺこりとお辞儀をしたチェルシー。とここで彼女にも意見を聞くことにする。
「ところでチェルえもん。今倒した【天使】の扱いに困っているんだ。何か良い方法はないかなぁ?」
「そうですねぇ……岩にでも埋め込ませて永遠に供養させましょうかぁ、ご主人の持っている漫画にもそんなやり方で敵を倒しておりましたしぃ」
「発想がサイコパスのソレ!?……いやいや、そんなドラム缶とコンクリを使った不思議なマジックじゃあねぇんだからよぅ」
「ちなみにご主人は何を思いついたんですぅ?おそらく封印とか言っていたんじゃあないですかぁ?」
「主人への理解度が100%で助かるよ……」
と話の途中。遠くで得体の分からない殺気を感じる大和。
「チェルシー、跳べッ!!」
燃える炎のような気からとっさにチェルシーに指示を出す。チェルシーも疑問に思うことなく指示に従い跳ぶ。
瞬間、彼らが立っていた場所が勢い良く燃え上がった。
「コイツは…」
付近の小型ビルの屋上に着地し様子を見る大和。
火の元が一切存在しなかったのに燃え盛る眼下。明らかに普通ではない。
「ご主人…これはぁ…」
「ああ、新手だろうな…」
言葉と同時に感じる先程と同様の殺気。これにはチェルシーも察知したのか大和と同時に屋上から飛び降りる。
数瞬後、先程と同じような爆発が起こった。
燃えていない地面を選んで降り立つ大和とチェルシー―。降り立つと同時に遮蔽物となりうる背の高い建築物の多い方向へと駆け出す。
感じる三度目の殺気。そこで大和は発火の原因を突き止める。
発火の原因。それは小型の炎の塊。銃弾のような形状のソレが何発もこちらに向かってきていた。
「どっせいッ!!」
地を砕くほどの踏み込みでコンクリートを畳返しの様にひっくり返す大和。盾となった壁を利用して炎の弾丸を受け止める。
壁は爆発と共に勢いよく燃え上がった。
「そこだなッ!!」
三度の攻撃で敵の大まかな位置を察した大和。爆発が収まると同時に起こした壁を砕き、敵の位置……少々離れた位置にあった雑居ビルの一角に蹴り飛ばす。
吸い込まれる様に高速で飛翔するコンクリート片。それを迎撃する様にビル一角から放たれる炎の弾丸。
コンクリート片は粉々に砕け散った。
「失礼いたしますぅ」
迎撃の隙をつく様に敵の居場所へと跳びかかるチェルシー。手刀を放つ。
「くっ…」
それを躱す形でビルから人影が一つ跳び出す。
灰色の外套を身に纏う人影。ボロボロの外套を頭まですっぽりと覆い容姿すら定かでないその姿はまるでボロ布の幽霊の様である。
そんな幽霊のような人影、だが放つ雰囲気はとても幽霊なんて呼べない噴火直前の火山を思わせるような熱量を放っていた。
「やれやれ…アンタかぃ?俺達に奇襲を仕掛けてきた闖入者っていうのは?」
「………………」
何も答えないボロ布。答えないというよりは「そんなわかりきっていることをいちいち問いかけるな」と言わんばかりに敢えて無視しているようでもあった。
大和も気にせず続ける。
「しっかし困るぜ、さっきのアンタの炎。それで折角殺さずに倒した【天使】が死んじまったじゃあねぇか…この人でなし!連中は殺されたら刷新されるって事を知らねぇのかい?」
「……………………」
「おいおいオイオイ…まだダンマリかぃ?だったら自己紹介からしようか?俺ァ……」
「呉成・大和……『龍王』…」
そこでようやく口を開いたボロ布。発する声色は女性を思わせるものであった。
「おっ、ようやく話が通じたな…俺の名前を知っているという事は俺目当てって事だろ?一体何の用だい?」
「…知れたこと。お前が奪った【星具】…それを返せ」
「返せ…ねぇ、成程…アンタもグラ…何とかさんのお仲間ってことね…」
「深く答える気は無い……返答は?」
「またまた~そんなの分かっているくせに~…お断りだよ、少しでも考えて欲しいってなら素顔を見せて親交を深めようとしてからにしな…」
「そうか…」
「残念か?」
「……いや…」
穏やかな声色のボロ布。まるで断ってくれるのを待っていたような心底安心したような態度である。
「良かった……本当に……」
ゆっくりと息を吐くボロ布。「ふぅ~…」っと胸の中の空気を全て出し切るような長い息。
そして…。
「じゃあ心置きなく……死ねェ!!」
そう言い掌をかざす。掌からは炎が勢い良く燃え上がる。
まるで巨大な生き物の様に揺らめく炎。勢いを下げることなくその形状を変える。
そうしてボロ布の手には炎で出来た拳銃が顕現したのであった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
ああ、もういらないのね
志位斗 茂家波
ファンタジー
……ある国で起きた、婚約破棄。
それは重要性を理解していなかったがゆえに起きた悲劇の始まりでもあった。
だけど、もうその事を理解しても遅い…‥‥
たまにやりたくなる短編。興味があればぜひどうぞ。
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
(完結)私は家政婦だったのですか?(全5話)
青空一夏
恋愛
夫の母親を5年介護していた私に子供はいない。お義母様が亡くなってすぐに夫に告げられた言葉は「わたしには6歳になる子供がいるんだよ。だから離婚してくれ」だった。
ありがちなテーマをさくっと書きたくて、短いお話しにしてみました。
さくっと因果応報物語です。ショートショートの全5話。1話ごとの字数には偏りがあります。3話目が多分1番長いかも。
青空異世界のゆるふわ設定ご都合主義です。現代的表現や現代的感覚、現代的機器など出てくる場合あります。貴族がいるヨーロッパ風の社会ですが、作者独自の世界です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる