プライベート・スペクタル

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第二章

第二節

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「…うぃ成程、私と師匠の間にそのような齟齬があったわけですね」
「そういうこった」
いつもの服装に戻し、訓練用の【領域】にてエイプリルの戦闘訓練に付き合った大和。
その休憩中に事の顛末をチェルシーに伝えたところ。デートで外食するだろうという理由から大和分の夕食の食材を用意していなかったらしく…食材の買い物を頼まれることになった。
そこで大和はエイプリルの社会勉強の一環として『領域』を出て大和のアパート近くまで一緒に買い物に行く事にしたのであった。
「では私は師匠を誘うような形になったというわけですね……お恥ずかしい」
「せやね、まあこっちも驚きつつも舞い上がっていたからな…おあいこってやつだ」
「うぃ…」
「………ちなみにだけれどよ、もし本来の意味でのデートはどうなんだ?」
「うぃ、そうですね……今の私は勉学中の身ですから、そのような事はまだ早いと思います」
「さいですか」
真っ直ぐに答えるエイプリルに少々、邪だったと大和は恥じる。
「それよりも師匠。先の訓練での私は如何だったでしょうか?忌憚ない意見をお願い致します」
「そうさな…基礎はきっちりしているな…うん」
初めてであったのでスパーリングのような形式で彼女の実力を見せてもらった大和。
言葉通り、戦闘での体裁きや杖道のような杖の扱い等の基本的な骨子はキチンと会得していた。
だがまだ基礎のみ、それらの応用には到底至っていない。
また大和は彼女には他の強みのようなものがありソレを把握しきれていないようにも感じられた。
「とりあえず、その基礎は疎かにせず自分自身を知る事から始めてみたらどうだ?」
「うぃ、わかりました」
だからこそそうアドバイスをした大和。しながらもチェルシーに頼まれた物のメモを片手に商店街を歩き回った。

そうして店を回る事数十分。大体の物を買い揃えることが出来た。
「うし、こんなもんだろ(むしゃむしゃ…)」
「うぃ……(もぐもぐ……)」
途中で購入したコロッケにパクつきながら、残りの物を買おうと大和とエイプリルは商店街を巡る。
「そういえば師匠…門司さんはどうしたのでしょうか?……あの作戦の後から姿は見ておりませんが……」
「ああ、アイツは睦美の頼み事で別件だよ……俺もアイツも普段は別々に動き回っているからな…」
「そうなのですか?てっきり同じ【星団】ゆえ行動を共にするものかと……」
「そりゃ偏見だ。俺もアイツも大切な仲間で絆は感じているが…俺達の目指す場所は色々必要で尚且つ少数だからな、別々に動かないと時間がかかっちまう」
「そうなのですか……それはちょっと心配ですね…」
「意外と心配性なんだな…先の時も俺の陽動を心配してくれたんだろう?門司から聞いたぜ」
「うぃ、何故か気になってしまいまして…」
「その気持ちだけで絶頂するぐらいに嬉しいが大丈夫だぜ…それに門司も門司で次に大きく動く時にゃあ戻って来るさ」
とそこで懐に入れていた大和のスマホが着信で震える。
手にとって宛先を見てみると何と門司からであった。
「ほら噂をすれば、ってな…もしもし、どしたい兄弟?」
『大和…今時間は大丈夫か?』
「問題ねーよ、どしたい?」
『少々マズイことがわかった』
「マズイこと?」
単刀直入な門司の言葉に大和は首を傾げる。
『今俺が別件で動いているのは知っているよな?具体的な内容で言えば先の奪った『月下の雫』、折れていたアレのもう片割れを情報収集なんだが…』
「ああ睦美から聞いているぜ、大変なら手ぇ貸そうか?」
『手は足りている。それよりもその際にある情報を得てな…』
「ある情報?」
『【天使】が俺達を嗅ぎ回っているらしい』
「連中がか?」
『ああ、どうやら連中。俺達が件の【星具】を奪い取ったとことを知ったらしい。それで俺達へ矛先を変えたというわけだ……』
「目標を定めちまえば相手が誰だろうとお構いなしだな連中……それに知ることが出来たのはおそらくあの場所で戦った【星】(だれか)が連中に捕まり、そこで自白ゲロったってところか……」
『おそらくな……とりあえずお前も警戒だけはしておいてくれ』
「………………いや、どうやらちいっとばかし遅かったみたいだぜ」
『まさか…』
「ああ、後でかけ直す」
そう言って一方的に電話を切る大和。
向き直った目の前。そこには似たようなスーツを着た大柄の男と小柄な男がいた。
「師匠、門司さんからの電話の内容は?……それに目の前の彼らは?」
「詳しい内容は後から話すが…大雑把に言えば目の前の連中【天使】についてだよ」
「……!?彼らがッ!!?」
買い物袋を置き即座に杖を構えるエイプリル。
そんなエイプリルに一瞥することも無く大柄なスーツの男は大和に問いかける。
「貴様が『龍王』呉成・大和だな?」
「…だとしたら?」
「奪った【星具】。それをこちらに渡せ」
単刀直入に言ったスーツの男。
それを聞いて大和は大笑いする。
「ぷっ…あははははははははははははははははははははははははッ!おいおいオイオイおいおいオイオイ!出会って数秒の間柄で即座に要求?今時の強盗でもしなさそうなことをテンプレみたいにするたァ!【天使】諸兄は世界を守ることに精一杯で今の時勢にすら疎いと見られる!」
「持っていることを否定はしないのですね?」
「何でそうする必要があるんだ?俺達が持っている事の裏は取れているんだろ?ただの機構であるおたく等とそんな問答を繰り広げたところで意味があるとも思えんしな」
「確かにその通りだな……聞いたこちらが間違いだった」
「無用な問答ついでに聞きますが…ちなみに返事は?」
「そいつも聞くのかよ。だったらきっちりと答えてやる。NOだ!おたく等みてーなただの機構には死んでも渡したくないねっ!!」
そう言い切る大和。その言葉でスーツの男は軽く息を吐いた。
「対象の要求の拒否を確認……これより実力行使に入る」
「了解」
そう言い臨戦態勢を取り始めるスーツの男達。まるで大波のような威圧感が発せられる。
「師匠…私はどちらに応じればよろしいでしょうか?」
ソレに呑まれまいと前に出るエイプリル。杖を構える。
「そうさな…お前のその想い。身包みを質に入れてでも買ってやりたいけれどな……チェルシー」
「はぁい」
【領域】と繋がったのか、近くの店舗から突如として現れるチェルシー。現れると同時にエイプリルを抱える。
「え?…え?」
困惑するエイプリル。それを他所にチェルシーは自らが現れた扉の中へ彼女を投げ入れた。
「まだ役不足だ。悪いが戻って睦美の手助けをしてやってくれ」
「師匠……私はッ!!」
言葉の途中に閉じた扉。
同時に大和は近くに停車していた乗用車を蹴り飛ばし扉を完全に破壊したのであった。
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