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第一話

第一ステージ④

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「北斗さん…っ……」
「おっ、あれやな」
「えっ、ええッ!!?」
如何にも様子見をしようなポラリスを気にすることなく躊躇いなく隠れていた柱の陰から出た北斗。堂々とした足取りで神に近づく。
神はギロリと睨んだ。
「またか……一体何が起こっている…?」
「や~や~どーもどーも…」
「何だ人の子よ、何用だ?」
「ん、何用も何もおたく神さんなんやろ?人外云々は色々見て来たけれど神さんは生まれて初めてやからなぁ。もうチョイ近くで見ようと思って……」
(緩ッ!?緩すぎますわッ!!)
軽口を叩く北斗に内心ツッコむポラリス。
そんな北斗を神は不快そうな表情を見せる。
「そんな事の為に我が聖域を犯したのか!」
怒りを露わにする神。
だが北斗は気にすることなく神をジロジロと見つめる。
「へぇ~ほぉ~ふ~ん…」
「不快な視線を止めよ!我は今猛烈に不機嫌なのだ!二度も聖域を荒らされた事によってな!!」
そう言って手にした杖で何かを叩いた神。
(二度も?……ッ、アレは先程のッ!?)
その何かとは先程北斗に出会った和谷であった。
ピクリとも動かない和谷。一蓮托生となる近くにいる筈の『従魔』の気配が消滅していることから既に息絶えていることがわかる。
下顎から上の頭部が完全に無くなっていたが、身に着けていた黒コートとへし折れた剣で素性を判別することが出来る。
くり貫かれたような顔面の断面は完全に炭化していた。
「おうおう、君の方が二度と顔見せんようになったなぁ…」
「この不敬者は!聖域に土足で上がって来たのに飽き足らず我を見つけるや否や剣を振るってきたのだ!神の玉体に人の作った刃風情など通らんというのに!身の程も弁えずッ!!」
叫びながら杖で和谷の遺体をげしげしと叩く神。雷光が迸ると和谷の身体は今度こそ跡形も無く消滅した。
「更に同じく聖域に土足で立ち入る貴様等!今我は不快の極みなのだ!人の子よ、頭を垂れ平服せよ!そして同じ同胞の責を支払ってもらおうか!!」
(北斗さんッ!一体どうするつもりですの!?)
言葉を誤れば即座に戦闘に移りそうなほど怒髪天の神。
だが北斗は……。
「何や神さんって割にはえらい狭量やなぁ……どうせ神さんなんて神話に出てくるメジャーどころ以外はその辺ほっつき歩いているボンクラ捕まえて都合の良え力与えて駒にするか…同種の雌めがみ相手に腰振る程度しかやること無いから別に良えんとちゃうの?……知らんけど……」
(知らないんですのッ!?)
関西系お決まりを口にする北斗。全く持って緊張感の欠片すら見当たらない。
「……ふん、そのような口しか利けないとは救いのない畜生と同じか……目の前の神を見つつ敬うことの出来ない獣と同等の存在にそのような責を求める我が愚かであったな…」
(あんなに見下されて……)
言動から北斗を取るに足らない憐れなモノとして認識した神。北斗への視線が心底見下したモノに変わる。
だが、「どうしようもない存在」故に怒りを収めたようであった。
(アイン様。この男を自らでお選びになりましたが……本当に良かったんですの?)
「もうよい…憐れな者よ、怒りも冷めたわ……先の責は他の人に取らせることにする…我の気が変わらんうちに疾く失せよ」
「いやいや神さんそいつはチョイ無理な相談や」
「何だと?」
「実はおたくに用があって来たんやわ」
「用だと」
「俺もおたくがさっき消し炭にした奴と同じでな……」
そう言いながら着ている上着の内側に手を入れた北斗。
引き抜いた際に握られていたのは一振りの銃剣であった。
「は?」
「んじゃ、死んでくれや」
そう言い北斗は勢いよく駆けだした。
(速ッ!?)
撃ち出された大砲の様に…重力に従って落ちる様に……傍のポラリスがそう感じる程の速度に一瞬で達した北斗。
『従魔』が持たされる人間よりもはるかに優秀な動体視力でも残滓が微かに追える程度の余りにも人間離れした速度である。
「ッツ!?」
流石に脅威を感じ杖を構えた神。先端から雷を放つ。文字通りの雷、雷速である。
だが容易に躱した北斗。銃剣の射程圏内まで一気に詰め寄った。
「ふんッだが無駄だ!神の肉体に人間風情の作った短剣が突き刺さるかぁ!!」
(そうですわ!どうするんですの!?)
神の宣言した様に神の肉体に人間製の武器は基本的には通用しない。
人類とは次元が違う為、存在強度と言うのがまず人類と異なるのである。
ただの人外と同じだと思うのは軽率、おそらく先の和谷もそれを理解せず襲い掛かり返り討ちにあったのだろう。
それ程神々は人外の中では別格なのである。
刹那、神々に肉薄した北斗。銃剣を神々の肉体に叩き込む。
神の皮膚に容易く折られその刹那の後の死。そう確信したポラリス。
だが、銃剣は神々の肉体に深々と突き刺さった。
「ふぁッッツ!!?!?」
「……!?」
何の効果も無さそうな普通の銃剣が…あまりにもありえない光景に思わず素っ頓狂な声を上げてしまったポラリス。
神の方も理解が追い付いていないのか…口の端から血泡を漏らしながらも未だに呆けている。
流れる様に神の胸部を滅多刺す北斗。円を描く様に刺したようだが、コチラもあまりの速度に一突きに見える程である。
〆と言わんばかりに描いた円の中心に銃剣を突き立てた北斗。そのまま中のモノ…神の心臓と呼ばれるモノ神核を抜き取る。
「……………………は?」
そしてそのまま神核を握り潰した北斗。
最期まで訳を分かることなく神は派手に爆発四散した。
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