【完結】頂戴、と言われ家から追い出されました

さち姫

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朝早くからガタルがやってきて、散歩に行こう、と誘われそれぞれ馬に乗り出かけた。

馬で2時間もかかかる所だったが、勝手知ったる、と言わんばかりに詳しい上に、

「王子!」

「おはようございます」

「なんだ、今日は誰を連れているんだ!?」

とか、とても親しそうに道行く人が声をかけてきた。

街の外れで馬を降りると、その近くの家の人が出てきた。

「なんだ、なんだ!!この人は誰だ!?」

年配の男の人が驚いて大声を出しながら、慣れた手つきで手網を貰っていた。

その声に誘われるように中から女の人、近くにいた人達が集まってきた。

「おい、王子!やっと女に目覚めたのか」

「だれだれ?」

「婚約者?」

「本物?」

凄い人だかりになってしまった。

「まてよ、ミヤが驚いているだろ。まだ、婚約はしてない。申し込み中だ」

すっと私の前に庇うようにたってくれた。

「なんだよ、これからか」

「でも、綺麗な人ね」

「お似合いだな」

「ええ!残念。私、狙ってたのに」

「まあまあ、また今度ゆっくり聞くよ。今日は、稲刈りに手伝いの約束だろ。まだ途中なんだろ?」

「最中だったのを、こいつガタル様が女を連れてきた、て騒ぐから皆できたんだ」

「なるほど、俺も有名人だからな」

「そりゃ、こんな王子なんかいないだろうしな」

「確かにな」

ガタルが得意げに言うと、皆が楽しく笑いだした。

「アンタは見といたらいい。結構楽しいぜ、畑仕事見るのも」

優しそうに笑いながら私に行った。

「さ、早く終わらせようぜ」

ガタルがそう言うと皆が歩き出した。

すっと手を繋がれた。

「・・・俺達も行こう」

少し顔が赤いような気がした。

「いつも来るの?」

歩きながら聞いた。

「たまにな。街の声を聞くぐらいなら俺でも出来るしな。本当なら兄さんも一緒に来たい、とよく言っているが、兄さんは国王になる身だ、下手に街なんか歩けない。じゃあ俺が行って教えてやるよ、て言ったら結構自由にさせてくれる。色んな愚痴をきける。それを聞いて、どうしたらいいのか兄さんと考えるんだ」

「凄いね」

素直にそう思った。

「ミヤなら、そんな顔してくれると思った」

「顔?」

「ああ。貴族の奴は街に来るのが嫌な奴が多い。身分が違うんだとさ。汚いものを見るような、明らかに見下してる。あいつらより、ここで働いている街の皆の方が、どれだけ凄いのか知りもしようとしない」

握る手が強くなった。

怒っているのがわかった。

「そうだね、貴族は貴族の、あの生活しか知らないからね」

サラを、と言うよりは、前の家のことを思い出した。

「あ、あそこだ。おーい」

手を振り、少し早歩きで向かった。

 
「手伝いしなくても良かったのに、汚れたな」

馬に乗り帰る途中でガタルがそう言いながらも、どこか嬉しそうだった。

最初言われるように見ていたが、手持ちぶさただし、見ているだけではつまらない、と思い手伝った。

皆があまりに簡単に稲を狩るからやれる、と思ったら、カマは重いわ、稲はチクチクするわ、なかなか稲は上手く掴めないし、切れないし、と悪戦苦闘だったけど、凄く楽しかった。

まあ、まだチクチクしてて、くすぐったいんだけどね。

「やりたかったの。けど、凄く楽しかった」

「そうかそれは良かった。このままチェーンナ家に泊まって帰ろうかな。さすがに今から王宮に帰ると遅くなるしな」

「もともとそのつもりで来たんじゃないの?」

「バレたか」

顔を見合わせて笑った。


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