【完結】頂戴、と言われ家から追い出されました

さち姫

文字の大きさ
上 下
8 / 19

8

しおりを挟む
屋敷に入っても大わらわだった。

多分私を待っていたと思うんだけど、叔父様と叔母様、兄様3人が揃っていた。

でも、意表を突く訪問者に、目が点になり、その上馬から落馬したと聞くと、侯爵家専属の医師が怪我を見ます、と顔真っ青でどこかへ連れていった。

私は私で、ガタルを助けた時に服が泥だらけになっていたので、お着替えを、と召使いに連れていかれ、着替えさせられた。

何も無ければ、3時のお茶にはついていたから、皆で和やかにお話を、という流れだったのに、あれやこれやで、やっと落ち着き応接間に座ったのが、もう夕方になってしまった。

ソファに座ったら何故か隣に当たり前のように、ガタルが隣に来た。

前に座る叔父様と叔母様、その横に座る兄様達が、何を聞いていいのか、相手が相手だけに、目配せしながら困惑しているのが手に取るようにわかった。

いや、私も同じです。

屋敷の下で聞いた、衝撃的な言葉が頭の中で繰り返し、そして、いや、あれは幻聴だった、と何度も言い聞かせていた。

冷静に考えて、こんな短い間でそんな言葉が出てくる訳が無い。

きっと、私があの屋敷から出れて、嬉しさのあまり変な妄想を、脳内変換をしたせいだ。

私ってば、本の世界のように王子様と運命的な出会いを夢見る少女だったんだ。

以外に可愛い性格持ってたわね。現実主義者だと自負していたけど、普通に感情豊かな女の子だったんだわ。

うん、きっとそうだ、と納得させていた。

「ガタル様、もうこんな時間ですが、王宮に帰られますか?それとも、ここに泊まって行かれるのですか?普通に考え、お供を巻かれたということは、王宮に帰られるのは、飽き飽きだということもありますが、ご主人様を見つけられた以上、お側にいることが宜しいかと思いますので、泊まって行かれますよね」

このいたたまれない空気を読んでいるのか読んでいないのか、シャオレがぶち壊した。

なんとも流暢に言葉を紡ぎ出す、私のはっきりと物言う召使いが後ろで控えているにも関わらず、一国の王子に対して、本当に澱みなく言った!

その上シャオレの言葉に、満足そうにガタルが笑う。

「確かにその通りだ。お前、俺が王子だとわかっいたんだろう」

「勿論でございます。その胸につけたブローチで一目見て分かりました。ミヤ様は社交界や貴族のことに疎いお方です。ですが仕方ありません。前の伯爵家では、派手な妹君の為ひっそりと慎ましくしておられた為、あえて、愚鈍を演じておいででした」

いい言い方をしたな、と素直に感心した。

こういう口の上手さは抜群だ。

「もともと聡明で賢き、そしてたおやかで美しい方です。これまで日々修行のような生活を送っていたお嬢様に、やっと降り注いだ、幸運を何故、私が邪魔をするでしょう。いい落とし物拾いましたね、ミヤ様」

珍しく褒めてくれた、と感心したのもつかの間、やっぱり、落としてくるな、と感心した気持ちを返してよ、と思った。

「ああ、いい拾い物したな。ミヤ」

「だから、拾ってない!助けたの!」

「お待ちなさい!」

急に割って出た、叔母様の声。

「ガタル殿下。つまりは、ミヤを気に入った、という事ですか!?それはつまり」

真摯な言葉と射抜くような顔で、叔母様はガタルを睨んだ。

その表情に押されるように言葉を失った。

叔母様?

見た事のない真剣な顔に驚き、不安になった。



しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

側妃に追放された王太子

基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」 正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。 そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。 王の代理が側妃など異例の出来事だ。 「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」 王太子は息を吐いた。 「それが国のためなら」 貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。 無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。

【完結24万pt感謝】子息の廃嫡? そんなことは家でやれ! 国には関係ないぞ!

宇水涼麻
ファンタジー
貴族達が会する場で、四人の青年が高らかに婚約解消を宣った。 そこに国王陛下が登場し、有無を言わさずそれを認めた。 慌てて否定した青年たちの親に、国王陛下は騒ぎを起こした責任として罰金を課した。その金額があまりに高額で、親たちは青年たちの廃嫡することで免れようとする。 貴族家として、これまで後継者として育ててきた者を廃嫡するのは大変な決断である。 しかし、国王陛下はそれを意味なしと袖にした。それは今回の集会に理由がある。 〰️ 〰️ 〰️ 中世ヨーロッパ風の婚約破棄物語です。 完結しました。いつもありがとうございます!

命を狙われたお飾り妃の最後の願い

幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】 重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。 イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。 短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。 『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

私は、忠告を致しましたよ?

柚木ゆず
ファンタジー
 ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私マリエスは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢ロマーヌ様に呼び出されました。 「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」  ロマーヌ様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は常に最愛の方に護っていただいているので、貴方様には悪意があると気付けるのですよ。  ロマーヌ様。まだ間に合います。  今なら、引き返せますよ?

姉妹の中で私だけが平凡で、親から好かれていませんでした

四季
恋愛
四姉妹の上から二番目として生まれたアルノレアは、平凡で、親から好かれていなくて……。

姉から奪うことしかできない妹は、ザマァされました

饕餮
ファンタジー
わたくしは、オフィリア。ジョンパルト伯爵家の長女です。 わたくしには双子の妹がいるのですが、使用人を含めた全員が妹を溺愛するあまり、我儘に育ちました。 しかもわたくしと色違いのものを両親から与えられているにもかかわらず、なぜかわたくしのものを欲しがるのです。 末っ子故に甘やかされ、泣いて喚いて駄々をこね、暴れるという貴族女性としてはあるまじき行為をずっとしてきたからなのか、手に入らないものはないと考えているようです。 そんなあざといどころかあさましい性根を持つ妹ですから、いつの間にか両親も兄も、使用人たちですらも絆されてしまい、たとえ嘘であったとしても妹の言葉を鵜呑みにするようになってしまいました。 それから数年が経ち、学園に入学できる年齢になりました。が、そこで兄と妹は―― n番煎じのよくある妹が姉からものを奪うことしかしない系の話です。 全15話。 ※カクヨムでも公開しています

何でも奪っていく妹が森まで押しかけてきた ~今更私の言ったことを理解しても、もう遅い~

秋鷺 照
ファンタジー
「お姉さま、それちょうだい!」  妹のアリアにそう言われ奪われ続け、果ては婚約者まで奪われたロメリアは、首でも吊ろうかと思いながら森の奥深くへ歩いて行く。そうしてたどり着いてしまった森の深層には屋敷があった。  ロメリアは屋敷の主に見初められ、捕らえられてしまう。  どうやって逃げ出そう……悩んでいるところに、妹が押しかけてきた。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

処理中です...