【完結】頂戴、と言われ家から追い出されました

さち姫

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馬に助けた男性と2人で乗っているが、居心地が悪くどうしていいのか分からずお尻がもぞもぞする。

シャオレ以外の男の人と、と言うよりも、貴族の男の人とこんなに近くにいるなんて初めてだった。

いつも、サラが前にいて、皆サラに取り巻いていた。可愛い顔と、声で、甘え上手で、私は存在というのが薄かったから、声をかけられることもなかった。

もしかしたら、サラがそばにいないのなら、私にもこうやって声をかけてくれる人が増えるのかもしれない。

サラ程要領は良くはないし、綺麗でもないけど、それでも、あの家を離れられただけでもマシかもしれない。

普通に、結婚して、普通の生活が手に入るかも、と思ったら、何だか世界が広がった気がした。

「アンタ、何で養女になったんだ?」

背後からガタルが聞いてきた。

私の後ろにガタルが乗り、馬を走らされているが、さほど速くはない。

至極当然の質問だと思った。

貴族から貴族の養子縁組なんて稀だ。

ましてや、爵位的に全く問題ない伯爵家からなんて、そうそうないだろう。よほど子供がいないなら分かるが、チェーンナ家は3人も男子がいるのだから、わざわざとる必要はない。

けど、まさか、

妹に、姉の地位が欲しいから追い出されました、

とは言いにくい。

「・・・すまない。余程の事がない限りこんな事にはならないな」

私が答えに困っていると、申し訳なさそう言った。

「いや、その、結構驚く内容で、そのまあ、色々あって。でも、私は養女に来てよかったと思ってる」

「そうだな。俺もアンタに拾って貰えたから、これも運命だな」

嬉しそうに言うけど、

「だから、拾ったんじゃなくて、助けた、でしょ?」

「同じだろ」

笑いながら答えられたけど、違うと思う。

悪い人では無さそうだけど、言い方がすこし変わった人だな。

ガタルは迷うこと無くチェーンナ家へと連れていってくれたので、安心したが、やはり身元はきちんと知りたい。

後で叔父様に聞いてみようと思った。

屋敷の門に着き、降りようと思ったら、

「開けろ」

馬上から偉そうに言ったから、驚き振り向いた。

「こ、これはガタル様。ミヤ様とご一緒とは、すぐに開けます」

慌てた門番の声に、ますます不思議に思った。

「あなた、誰?」

門番が全ての貴族を知っているなんて、考えられない。

初めから約束しているのであれば、分かるが、それなら馬車で来る。

こんな唐突に来て、それもこの人の名前を知っている。

親戚ではない。

「すぐ分かる。知ったところで、アンタが俺のご主人様に変わりはないよ。開いたぜ。前向けよ」

意地悪そうに笑うと、手網を引っ張った。

久しぶりのチェーンナ家は変わらず綺麗に整備され、芝生がキラキラ輝いていた。

馬上、ということもあるかもしれないが、いつもと目線が違い楽しかった。

屋敷の前に着くと馬を停め、先に降り、私を抱き上げ下ろしてくれた。

少し顔を歪めた。

「やっぱりまだ、痛いんでしょ。自分で降りたのに」

「何言ってるんだ。堂々と触れるのに」

そう言われて、今更だけど恥ずかしくなった。

すぐに屋敷の召使いがやってきて、大騒ぎになった。

「殿下!」

殿下?

「すぐにご主人様を呼んでまいります!」

バタバタの中に入っていった。

「殿下?」

ガタルの顔を見ると、なんともなさそうに、ああ、といった。

「この国の第2王子だ」

「・・・え・・・?」

意味が分からなかった。

「だから、いいもん拾っただろ」

えええええ!!!!

無意識に、下がろうしたところを、腕を掴まれた。

「逃げなんなよ。その驚い顔もいいけど、アンタに決めたんだから」

「な、何を決められたんですか!?」

「婚約者に」

当たり前の様に言われたけど、当然頭真っ白で、考える暇もなく、大騒ぎになり、屋敷の中に引っ張られた。

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