【完結】頂戴、と言われ家から追い出されました

さち姫

文字の大きさ
上 下
5 / 19

5

しおりを挟む
「なんで今日まで黙ってたの?」

もう少し早かったら心の準備も出来きたし、サラから言われた時に、わかったわ、と言って、軽く流せたのに。

ホロ付き荷馬車で、たいして荷物もないので、さっさと朝早く屋敷を出発した。

勿論誰も見送りはない。今更見送る人が出できた方が驚く。

けど、やっぱり少し寂しかった。

「ご主人様に黙っておけと言われました。ミヤ様の驚いた顔が見たいとの事でした」

さらっと、手網を握らながら普通に言うけど、親としてどうなの?とため息をついた。

「もう、宜しいんではないですか。御家族からただの御親戚になったのですから、今更あの方達が変わるなんて有り得ませんし、何とかは死なないと治らない、という昔の方はよう言いました」

はっきり言うなあ。 

「チェーンナ侯爵家では、ミヤ様のお越しを大変喜んでおられます。あ、グラバト家も厄介者が居なくなって、大変喜んでおられたので利害一致という事ですね」

良かった良かったと、何度も頷くシャオレに、少しほっとした。

「喜んでいたのね、叔母様達は」

「はい。お返事が来る度に、ご主人様、ああ、前のご主人様ですね。小躍りして、前の奥さまとお話しておりました」

目に浮かぶわ。

いちいちいい直すところが、シャオレらしいし、何故か嫌な気分にはならない。

すっきりする。

これから行く家、と言うと語弊があるかもしれない。これから私の家になる、というのもまだ、ピンと来ない。

ともかく、チェーンナ侯爵家の奥方は、お母様のお姉様。元々お母様は隣の国の子爵の出生で、いつも、私の美しさがあったから、伯爵家に嫁げたのよ。その素晴らしい遺伝子がサラに流れてくれて、言うことないわ、ねえ、あなた、と常々聞いてきた。つまり、その美しさを見初めてお父様が求婚して、今に至る。

そこおかしな家系にお母様の性格はドンピシャで、確かに見初めらた、に間違いないと思う。

ただ、お母様の後に叔母様が自国の侯爵家へ嫁いだものだから、気に食わずいつも口の悪いことばかり言っていた。

お察しの通り、グラバト一族は誰もが認めるおかしな一族だ。いや私もその一族なのだから、私も実際はおかしいのかもしれないが、そこは自分では分からない所。

でも、この人達よりはマシだと、思いたい。

お母様の実家が、叔母様、ん?これからはお母様?

まあ、ここは、チェーンナ侯爵家についてから、相談して決めようと思う。

ともかく、実家がチェーンナ侯爵家の近くだったので、必然的に寄る事が多かった。

ご厄介になる度に、お姉様は爵位だけが欲しくて嫁いだから、そんな不幸な顔になってるよ、と叔父様や、ご子息がいる前で平然と口を開く。

勿論それを止める常識人がグラバド伯爵家には私以外にはいない。

お父様もサラも、さらに輪をかけて喋りだす。

そして最後は、何よお姉様、私の家族がそんなに気に入らないの、妬んでるからそんな顔になるのね、ああやだやだ、なんて性悪なの。

と、お母様が締めくくる。

帰り際に私がごめんなさい、と謝る事となる。

チェーンナ家の皆はそんな私を、いつも優しく、ミヤがうちの子だってら良かったのに、あんな家じゃおかしくなるわ、といつも言ってくれた。

その家の子に本当になれる。

正直嬉しかった。

「それと、チェーンナ家以外には全部断られてましたよ。そんなおかしな子を養女なんてもってのほか、とか、頭の悪い子はいらない、とか。私にしたら、あの一族が奇妙な人達です。まあ、ともかく、これからは人並みの生活がやっと手に入ったのですから、良かったです」

相も変わらず、酷い言い方だな。

人並みかあ。

どこの基準が人並みかは分からないが、誰かをけなす言葉を聞く回数が減るのは間違いない。

「天気が良くて良かったですね」

ぼんやりと外を眺める私に、シャオレは優しく微笑んんだ。

「うん。そうだね」

私が笑って返すと、とても満足そうに笑ってくれた。

しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

側妃に追放された王太子

基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」 正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。 そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。 王の代理が側妃など異例の出来事だ。 「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」 王太子は息を吐いた。 「それが国のためなら」 貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。 無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。

【完結24万pt感謝】子息の廃嫡? そんなことは家でやれ! 国には関係ないぞ!

宇水涼麻
ファンタジー
貴族達が会する場で、四人の青年が高らかに婚約解消を宣った。 そこに国王陛下が登場し、有無を言わさずそれを認めた。 慌てて否定した青年たちの親に、国王陛下は騒ぎを起こした責任として罰金を課した。その金額があまりに高額で、親たちは青年たちの廃嫡することで免れようとする。 貴族家として、これまで後継者として育ててきた者を廃嫡するのは大変な決断である。 しかし、国王陛下はそれを意味なしと袖にした。それは今回の集会に理由がある。 〰️ 〰️ 〰️ 中世ヨーロッパ風の婚約破棄物語です。 完結しました。いつもありがとうございます!

命を狙われたお飾り妃の最後の願い

幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】 重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。 イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。 短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。 『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

私は、忠告を致しましたよ?

柚木ゆず
ファンタジー
 ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私マリエスは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢ロマーヌ様に呼び出されました。 「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」  ロマーヌ様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は常に最愛の方に護っていただいているので、貴方様には悪意があると気付けるのですよ。  ロマーヌ様。まだ間に合います。  今なら、引き返せますよ?

姉妹の中で私だけが平凡で、親から好かれていませんでした

四季
恋愛
四姉妹の上から二番目として生まれたアルノレアは、平凡で、親から好かれていなくて……。

姉から奪うことしかできない妹は、ザマァされました

饕餮
ファンタジー
わたくしは、オフィリア。ジョンパルト伯爵家の長女です。 わたくしには双子の妹がいるのですが、使用人を含めた全員が妹を溺愛するあまり、我儘に育ちました。 しかもわたくしと色違いのものを両親から与えられているにもかかわらず、なぜかわたくしのものを欲しがるのです。 末っ子故に甘やかされ、泣いて喚いて駄々をこね、暴れるという貴族女性としてはあるまじき行為をずっとしてきたからなのか、手に入らないものはないと考えているようです。 そんなあざといどころかあさましい性根を持つ妹ですから、いつの間にか両親も兄も、使用人たちですらも絆されてしまい、たとえ嘘であったとしても妹の言葉を鵜呑みにするようになってしまいました。 それから数年が経ち、学園に入学できる年齢になりました。が、そこで兄と妹は―― n番煎じのよくある妹が姉からものを奪うことしかしない系の話です。 全15話。 ※カクヨムでも公開しています

何でも奪っていく妹が森まで押しかけてきた ~今更私の言ったことを理解しても、もう遅い~

秋鷺 照
ファンタジー
「お姉さま、それちょうだい!」  妹のアリアにそう言われ奪われ続け、果ては婚約者まで奪われたロメリアは、首でも吊ろうかと思いながら森の奥深くへ歩いて行く。そうしてたどり着いてしまった森の深層には屋敷があった。  ロメリアは屋敷の主に見初められ、捕らえられてしまう。  どうやって逃げ出そう……悩んでいるところに、妹が押しかけてきた。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

処理中です...