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第2部
ガナッシュ目線1
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「ねえガナッシュ、スティング最近酷すぎだと思わない?」
避暑地へ向かう馬車の中、レインが私の腕に絡み、頬を膨らませた。
いつ見ても可愛い。
桃色の髪がふわふわと動き、くるくると瞳もよく動き、感情豊かに私を見てくれる。
こんなにも気持ちが温かくなるのに、スティング、と言う名前を聞くだけで胸糞悪くなる。
王宮での態度も気に入らなかった。毎回レインの顔を見る度に、まるで虐められているかのように泣きそうな顔を一瞬見せたかと思うと、何もなかったように微笑む。
あまりに露骨な態度に腹が立つ。
そんなに気に入らないのなら、来なければいいし、嫌なら黙って大人しくすればいい。口開ければ、レインの悪口しか言わない。
「本当はガナッシュの側にいたいのに、あんなに興味のないような言い方して、気を引こうとしてわざとあんなに大袈裟にしてるんだよ」
「そうだな。どうせ、私達の仲の良さに嫉妬してるのだろうけど、やり方が幼稚すぎる」
それも今日は、わざわざフィー皇子とカレン皇女お茶の席に、連れてきた。自分が何をやっても私の気が引けないのに我慢できず、今度は誰もが逆らえない人間を連れてくるなど、最低女だ。
きっとあることないこと吹き込み、自分が被害者面しているのだろう。
そうでなければ、これまで面識の少なかったフィー皇子とカレン皇女が私をあれほど罵倒する訳がない。
「うんうん。だあってえ、私達は両思いなんだよ。入ってこれる隙なんてないのにねえ」
甘える声で、私を見つめてくる。
いつ見ても、レインの顔は飽きない。
やっとこうやって側にいれるようになったのに、スティングは何時だって邪魔をしてくる。
「ガナッシュと結婚出来るんだよ。十分なのに、本当に欲張りだよねぇ。ガナッシュを好きになるのは当然なんだよ。だってガナッシュは、王子様。嫌いになる人なんていないのに、まるで自分だけだガナッシュを好きみたいな、特別的な感じでいっつもいたでしょう?」
「あ、ああそうだな。全く鬱陶しい限りだ」
何故だか歯切れが悪い答えになった。
「だよねえ。まるで私のガナッシュ、みたいな感じで私の邪魔してくるもん。おかしいよね。ガナッシュは、私のガナッシュなんだよ」
ね?
と上目遣いで見てくる愛らしい表情で、私のガナッシュ、と言われて嫌な気分になる訳がない。
「当たり前だ。その上、私だけならともかく、母上をワザと怒らせ、それをあたかも自分が被害者のように喚いたらしいしな」
王宮を出る時、クラウスが教えに来てくれた。
「もう!!ガナッシュが自分に向いてくれないから王妃様に八つ当たりしたんでしょ?何で自分のことしか考えられんないだろ。あ、ねえ!私いい事思いついちゃった」
「何を?」
「どうせね、スティングは、後から追いかけて来るよ。あんなに強がっていても、いっつもやってきて、殿下、殿下、と何回もしつこく迫って来るでしょう?」
確かに。その後にレインの躾がなっていない、とあのよく整った顔でイラつく程御託を並べてくる。
気持ちが悪い。
元々母上から頼まれて優しくしてやっていただけで、勝手に私を好きになり、しつこく言い寄ってきた。
仕方なく相手をしていたが、小等部を上がる頃には本当にウザかった。
たが、母上が、高等部になる時にレインを入学させてくれると約束したからこそ、中等部まで我慢できたのだ。
そうでなければあんな、高飛車で地位だけの女に興味が湧くわけがない。
「そうだ!ねえ、どうせスティングは後から来るだろうから、私達は、殆ど出掛けてて顔を合わさないようにしようよ」
「それはいい考えだな。ついでに服を買ってあげるよ。自分は公爵家だからいい物着れて当然なのを、フィー皇子やカレン皇女の前で馬鹿にするのは常識がなってない!」
「うん・・・私、すごーく悲しかったもん。でも、少しでいいよ。あんまり買ってもらうとお母さんに怒られるもん」
「わかった。しかし、スティングはどうにかならないのだろうか。公爵家の娘だからといって我儘過ぎる」
「でもお、公爵家ってすごーく偉くて、すごーく立場が強いんでしょ?だから、スティングが婚約者になったんでしょ?」
「だが、別にスティングではなくてもいい筈なんだ。もっと優しい貴族の女性は居るはずだ」
「そうだね。ガナッシュの事をちゃんと考えてくれる貴族の女性は絶対にいるよ。それに、いつまでも公爵家が強い、という訳じゃないもんね。だって、別にいなくてもガナッシュがこれからどんどん強くなるでしょ?」
甘い声で囁いてきた。
「確かにな。私が王になれば、もう今までのようにさせないつもりだ」
「うふふ。そうだね。でも私はスティングには王妃になって欲しいな」
毒を孕んだような、怪しい微笑みに、惹き込まれる。
「何故だ?」
「だあって、あんなに綺麗で、ガナッシュの為に何でもしてくれるお人形さんなんだよ。全部してもらったら、ガナッシュは私といっつもいれるよ。ねえ、そう思うでしょ?」
「確かにな。スティングは客人をもてなすのが上手いからな。だが、もうスティングの話はやめよう。何で二人でいる時んだから、もっと楽しい話をしよう」
「もう、ガナッシュったらあ。そんな事言ってたら可哀想だよお。ふふっ。仕方ないなあ、じゃあ、避暑地で何処に行くか、計画たてよう」
私の手に自分の手を重ね、可愛らしくおねだりするように笑った。
ふう、と力が抜けていく。
何だろうか、空気が重たいというか、居心地が悪く息が詰まるような気がした。
レインがスティングの話をするからだ。楽しい気分が台無しだ。
そこから私達は、出掛ける予定を楽しく決めていった。
避暑地へ向かう馬車の中、レインが私の腕に絡み、頬を膨らませた。
いつ見ても可愛い。
桃色の髪がふわふわと動き、くるくると瞳もよく動き、感情豊かに私を見てくれる。
こんなにも気持ちが温かくなるのに、スティング、と言う名前を聞くだけで胸糞悪くなる。
王宮での態度も気に入らなかった。毎回レインの顔を見る度に、まるで虐められているかのように泣きそうな顔を一瞬見せたかと思うと、何もなかったように微笑む。
あまりに露骨な態度に腹が立つ。
そんなに気に入らないのなら、来なければいいし、嫌なら黙って大人しくすればいい。口開ければ、レインの悪口しか言わない。
「本当はガナッシュの側にいたいのに、あんなに興味のないような言い方して、気を引こうとしてわざとあんなに大袈裟にしてるんだよ」
「そうだな。どうせ、私達の仲の良さに嫉妬してるのだろうけど、やり方が幼稚すぎる」
それも今日は、わざわざフィー皇子とカレン皇女お茶の席に、連れてきた。自分が何をやっても私の気が引けないのに我慢できず、今度は誰もが逆らえない人間を連れてくるなど、最低女だ。
きっとあることないこと吹き込み、自分が被害者面しているのだろう。
そうでなければ、これまで面識の少なかったフィー皇子とカレン皇女が私をあれほど罵倒する訳がない。
「うんうん。だあってえ、私達は両思いなんだよ。入ってこれる隙なんてないのにねえ」
甘える声で、私を見つめてくる。
いつ見ても、レインの顔は飽きない。
やっとこうやって側にいれるようになったのに、スティングは何時だって邪魔をしてくる。
「ガナッシュと結婚出来るんだよ。十分なのに、本当に欲張りだよねぇ。ガナッシュを好きになるのは当然なんだよ。だってガナッシュは、王子様。嫌いになる人なんていないのに、まるで自分だけだガナッシュを好きみたいな、特別的な感じでいっつもいたでしょう?」
「あ、ああそうだな。全く鬱陶しい限りだ」
何故だか歯切れが悪い答えになった。
「だよねえ。まるで私のガナッシュ、みたいな感じで私の邪魔してくるもん。おかしいよね。ガナッシュは、私のガナッシュなんだよ」
ね?
と上目遣いで見てくる愛らしい表情で、私のガナッシュ、と言われて嫌な気分になる訳がない。
「当たり前だ。その上、私だけならともかく、母上をワザと怒らせ、それをあたかも自分が被害者のように喚いたらしいしな」
王宮を出る時、クラウスが教えに来てくれた。
「もう!!ガナッシュが自分に向いてくれないから王妃様に八つ当たりしたんでしょ?何で自分のことしか考えられんないだろ。あ、ねえ!私いい事思いついちゃった」
「何を?」
「どうせね、スティングは、後から追いかけて来るよ。あんなに強がっていても、いっつもやってきて、殿下、殿下、と何回もしつこく迫って来るでしょう?」
確かに。その後にレインの躾がなっていない、とあのよく整った顔でイラつく程御託を並べてくる。
気持ちが悪い。
元々母上から頼まれて優しくしてやっていただけで、勝手に私を好きになり、しつこく言い寄ってきた。
仕方なく相手をしていたが、小等部を上がる頃には本当にウザかった。
たが、母上が、高等部になる時にレインを入学させてくれると約束したからこそ、中等部まで我慢できたのだ。
そうでなければあんな、高飛車で地位だけの女に興味が湧くわけがない。
「そうだ!ねえ、どうせスティングは後から来るだろうから、私達は、殆ど出掛けてて顔を合わさないようにしようよ」
「それはいい考えだな。ついでに服を買ってあげるよ。自分は公爵家だからいい物着れて当然なのを、フィー皇子やカレン皇女の前で馬鹿にするのは常識がなってない!」
「うん・・・私、すごーく悲しかったもん。でも、少しでいいよ。あんまり買ってもらうとお母さんに怒られるもん」
「わかった。しかし、スティングはどうにかならないのだろうか。公爵家の娘だからといって我儘過ぎる」
「でもお、公爵家ってすごーく偉くて、すごーく立場が強いんでしょ?だから、スティングが婚約者になったんでしょ?」
「だが、別にスティングではなくてもいい筈なんだ。もっと優しい貴族の女性は居るはずだ」
「そうだね。ガナッシュの事をちゃんと考えてくれる貴族の女性は絶対にいるよ。それに、いつまでも公爵家が強い、という訳じゃないもんね。だって、別にいなくてもガナッシュがこれからどんどん強くなるでしょ?」
甘い声で囁いてきた。
「確かにな。私が王になれば、もう今までのようにさせないつもりだ」
「うふふ。そうだね。でも私はスティングには王妃になって欲しいな」
毒を孕んだような、怪しい微笑みに、惹き込まれる。
「何故だ?」
「だあって、あんなに綺麗で、ガナッシュの為に何でもしてくれるお人形さんなんだよ。全部してもらったら、ガナッシュは私といっつもいれるよ。ねえ、そう思うでしょ?」
「確かにな。スティングは客人をもてなすのが上手いからな。だが、もうスティングの話はやめよう。何で二人でいる時んだから、もっと楽しい話をしよう」
「もう、ガナッシュったらあ。そんな事言ってたら可哀想だよお。ふふっ。仕方ないなあ、じゃあ、避暑地で何処に行くか、計画たてよう」
私の手に自分の手を重ね、可愛らしくおねだりするように笑った。
ふう、と力が抜けていく。
何だろうか、空気が重たいというか、居心地が悪く息が詰まるような気がした。
レインがスティングの話をするからだ。楽しい気分が台無しだ。
そこから私達は、出掛ける予定を楽しく決めていった。
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